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Snow Day

こんこんと雪が降り頻る中で新年最初のジャーナルを書いています。2ヶ月間の日本の滞在を経て、一旦バンクーバーに戻って来ているのですが、同じ冬でもこんなに冬景色が違うのかと驚きます。

今年の太平洋側の日本は暖冬で始まりました。真っ青な冬晴れの空から差し込む太陽の光はぽかぽかと温かく感じられるくらいです。バンクーバーは、1月初めに大寒波が来て連日マイナス10度前後の厳しい寒さの中、冬晴れが続きました。研ぎ澄まされたカナダの冬空の夕焼けは、本当に神秘的な真紅のグラデーションを奏で、街中を紅色に染め上げます。珍しく晴れと美しい夕焼けの日々が続いていると喜んでいたら、今度は朝から一面の雪景色が広がっていました。

バンクーバーは雪より雨が多いので、雪が降ると冬の「プレゼント」をもらった気分で、なんだか嬉しい気持ちになります。大人も子供も関係なく、街ゆく人皆、はしゃいでいる様に感じます。 そして白銀の世界は、心を浄化してくれます。雪に音が吸収されて、全てが静かで、外から聞こえて来るのは子供と犬の遊び声だけです。ここまで雪が降り積もると、気持ちもどっしり落ち着いて、外に出ずに家で何か有意義なことでもしようと言う気持ちにさせられます。

温かいミルクティーを淹れたり、先延ばしにしていたデスクワークに取り組んだり。タイムリーに前夜から仕込んでおいた冬の味噌作りも、雪降る1日にぴったりの作業です。普段流している音楽も、雪景色を前にすると何だか違って聞こえて来ます。ぼーっと降り頻る雪を窓から眺めるのは、何とも贅沢な時間ではないでしょうか。

「寒いのは嫌い」と言う概念は北国の人にはないのかも知れません。逆に、寒さが心を落ち着かせ温めてくれます。冬の静けさの中で普段よりもゆっくりと丁寧な時間が流れているように思えます。   どこか自分の生活にロマンティシズムを与えてくれる北国の冬が、私は好きです。

Canadian Thanksgiving

カナダのサンクスギビング・デー(感謝祭)は毎年10月の第2月曜日にあります。一年の収穫やその年の祝福に感謝しながら家族や友人が集まってターキーを食べる祝日で、クリスマスにつぐ一大イベントです。歴史をたどると、イギリスから北米に渡って来た開拓者と呼ばれる人たちが新しい土地で初めての収穫を神に感謝したことが起源だそう。そしてアメリカとカナダのサンクスギビング・デーの日が違うのは、収穫の時期の違いにあります。カナダの冬はアメリカよりも早く始まり、収穫時期も早いので、サンクスギビング・デーも一足先にやって来ます。

日本では全く馴染みのない祝日ですが、カナダに来てから私も毎年お祝いするようになりました。近くに直系家族や親戚がいない海外生活では、このような大きい行事は親しい友人や友人家族と過ごすことが多いです。今年はある友人宅のサンクスギビングディナーに招待されたのですが、15人ほど集まったディナーパーティーで面識があったのは、友人とそのパートナーの2人のみでした。

お宅にお邪魔してから他のゲストに「初めまして」と挨拶を交わし、他の人達も顔馴染みの人もいれば初めての人も多かった模様。お国もそれぞれ違います。カナダ人もいれば、ペルー人がいたり、イスラエル出身の人もいれば、イギリス人もいたり、と移民の国カナダならではの多様性ある顔ぶれでした。カナダに住んでいるとこのように異なった国の人々、そして異なった宗教や社会的背景の人と交わることは日常的です。そして家族や親戚が居ない分、親しい仲間達が家族のような繋がりを持ったりします。

思い返すとこの数年間、取材などを通してカナダのブリティッシュ・コロンビア州各地を巡り、行く先々で小さな友情の種をたくさん蒔いて来た気分です。同じ場所を何度か繰り返し訪れていると、「久しぶり!元気だった?」なんて挨拶と一緒におおらかに迎えてくれて、あちらこちらに遠くの親戚がいるような感覚になり、ちょっと嬉しかったりします。印象深かったのは、今年の夏ある場所を2年ぶりに訪れた際、両手を広げて歓迎してくれた夫婦。旅の途中で急いでいて、ちょっと挨拶だけと思って寄ったら、「久しぶりの再会なんだから少しゆっくりしていったら?」と、結局2時間以上ゆっくりと話し込んでいました。異国ではそんな友情がとても心を温めてくれます。

話をサンクスギビング・デーに戻しますが、友人宅のロングテーブルにはそれぞれが思い思いに持ち寄ったご馳走がずらりと並んでいました。テーブルを囲みながら着席すると、両隣に座っているゲストの手を握り、「いただきますの前に、一人一人感謝の言葉を述べていきましょう」とホストである友人が提案したのです。さっき会ったばっかりの人と手を繋ぐのは、一瞬恥ずかしい感覚もありましたが、直ぐにこの友達の輪の中に打ち解けました。それぞれが発する感謝の言葉に耳を傾けていると、何だか今までで一番サンクスギビング・デーの真意に相応しい時間を過ごしているような温かい空気に包まれていきました。

今年一番感謝することは何だろうか?私の口からは迷わず「FRIENDSHIP」と言う言葉が出ていました。

Hollyhock

今年の夏、コルテス島にある待望のHollyhock Retreat Center(ホリホック)を訪れました。コルテス島は遠く離れた場所にあり、フェリーを3回乗り継がなければいけません。バンクーバーを朝イチ6時半のフェリーで出発しても、少し寄り道などしてしまうと半日はかかります。夕方 、最後に乗った3回目のフェリーの上で、いよいよコルテス島!と胸が高鳴り始めた時、幸運にもクジラの群れが泳いでいるのに出くわしました。少し遠くで潮を吹きながら4~5頭群れになっているようでした。すると、1頭が華麗なジャンプを披露してくれて、コルテス島への旅路は夢のような幕開けとなりました。

ホリホックの立地も本当に美しく夢のような場所です。カナダでは珍しく、目の前には白い砂浜と遠浅の青い海が広がっていて、その周りを静かな大樹の森が囲っています。果樹園には鳥が集い、辺りを鹿が散歩していたり、パラダイスと言う言葉がぴったりです。

さすが「癒しのリゾート」または、「スピリチュアルリトリート」と言う名で知られるホリホックと思いきや、実は世界的にも評判の高い学びの場所でもあります。1982年の創設から40年間、世界中から人々がやって来て、個人の成長とより良い社会にして行くための意義あるプログラムを開催している歴史あるリトリートセンターなのです。

ホリホックの広大な敷地の中で特に魅了されたのは、メインロッジの裏にあるオーガニックガーデンでした。美しい花々と大きく力強い野菜に華やかに埋め尽くされたガーデンの前で、足を止めない人はいないでしょう。

ホリホックで提供される1日3回の食事の主は、このガーデンから提供されます。

夏はホリホック名物、浜辺でのオイスターBBQもあり、高級レストラン並みに美味しいと評判の料理を島の人達も時折食べに来るそうです。

コルテス島に滞在期間中、私はこのホリホックのガーデンで毎朝ボランティアをしていました。「ガーデン作業は朝の7時からね」と言われたので、毎日早起きをして、朝の2-3時間をここで費やしました。主な仕事は草取りですが、この作業が思いの外、旅の一番の思い出として残っています。まだ誰も居ない静寂なガーデンで、鳥の鳴き声、朝露に濡れる花々を飛び交う忙しい蜂の羽の音、そして何よりフレッシュな空気に包まれて、草むしりという単純な作業がとても瞑想的に感じました。

ホリホックの敷地の外にも美しい手つかずの自然が広がっています。特にこの島の水の美しさは抜群で、海でも湖でも、南国を思わせる透明度と水色のグラーデションが眩しいほどでした。

ある晩、ナイトカヤックのツアーに参加したのですが、この日は鏡のような静かな海へと漕いで行きました。

日没後、段々と暗くなっても海の底が見える程透き通っていて、海底に沈んでいる貝やらヒトデやらがくっきり見えます。こんなに美しく豊かな海が存在することに、何だかとても心を和ませてくれました。

そしてもう一つ心を和ませてくれたのが、海でも湖でもヌードで泳ぐ人がいたこと!「こんな綺麗な水、全身で感じずにはいられないよね」と言わんばかりに、皆が思い思いに自然と触れ合っている姿が興味深かったです。

ホリホックのCEOを務めるピーター・リンチさんとお話をした際に、「私たちの基本的な信念のひとつは、土地とのつながりを取り戻すことです。」と、語っていたのがとても印象に残っています。ホリホックは、あらゆる社会のノイズから離れ、非日常的な時間を過ごすことが出来る理想的な環境です。自分という人間と改めて「つながる」時間を与えてくれると同時に、コルテス島の楽園のような自然をさまざまなアクティビティーを通して体験することで、自然との「つながり」そして、一体感を感じさせてくれます。「この美しい自然をどう継承していけるだろうか?」「人と自然はどう共生していけるだろうか?」。ホリホックで時間を過ごした人なら、ふとそんな想いが頭の中に湧いてくるのでないでしょうか。ほかのどんな島でもない、素朴な自然が残っているコルテス島にあるからこそ、ホリホックが最高の学びの場所として成立するのではないでしょうか。「自然は偉大なる教科書」と言うように、ただそこにいるだけで学んだり考えるきっかけをくれるホリホックとコルテス島は、一心同体のような気がしてなりません。

そしてマジックのように始まった今回の旅は、マジックなしでは終わりませんでした。なんと、帰る日のフェリーが1日止まってしまったのです。余儀なく延泊を強いられたその日は、年に一度、島中が集いお祝いするコルテス島記念日!長らく夢見たこの島は最後の最後まで、時間を忘れて過ごしていきなさいと言わんばかりに、その魅力を私に見せつけてくれました。

 ホリホックの詳しいインタビューはこちらから⏩https://www.yushiin.com/ja/hollyhockretreatcenter

 

One Canadian Summer

7月1日はCanada Dayで、毎年この日を過ぎると本格的な夏が来たなと感じます。そしてキャンプシーズンも到来。早速バンクーバー島の海岸沿いにキャンプに行って来ました。すでに初夏の陽射しがジリジリと暑く感じる季節ですが、カナダの海は夏でも泳げない程冷たいのです。しかも、太平洋側の海岸は風も強く、朝晩の体感温度は10度並み?と思えるほど。着込んではいたけれど、流石にダウンジャケットを忘れてしまった私にはかなり堪える寒さでした。

そんな中でもやはりキャンプは最高です!夜は砂浜に打ち上げる波の音色と風を子守唄に。朝は決まって5時半頃から始まる小鳥のオーケストラを目覚ましに。大自然の中で過ごす非日常的な時間はやはり特別です。そして、ここ数年の旅の大きな目的の一つは、workation(ワーケーション)。旅先でローカル&サステイナブルなビジネスを取材しては、VOICEと言う記事にしています。今回も3件の島のビジネスを取材させていただきました。旅先でその土地に住む人々と繋がり、彼らのライフストーリーを聞くことで、その場所の風景が少し違って見えてきたりして、より一層印象深い旅の時間にしてくれます。時々、純粋なバケーションだけを楽しみたいと思うこともありますが、今はこのワーケーションスタイルが気に入っています。

そして今回の旅をよりスペシャルにしてくれたのは、久しぶりの友人との再会でもありました。旅先で何年振りの再会を果たすことは、男女問わず、どこかロマンチックでドラマチックな心情にさせられます。

最近、”Four thousand weeks – time management for mortals” ~「4000週間 – 限りある時間の使い方」と言うキャッチーな題名の本を読みました。4000週間とは、仮に人の寿命が80歳とした時に過ごす週の数です。4000と言う数分で容易に数え切れそうな数字に、人生の短さを感じられずにはいられません。すでに人生後半戦の自分が今後過ごせるであろう夏の季節の数を考えると、毎年当たり前のように来る夏がとても愛おしく尊く感じます。ひとつひとつの季節、そして、与えられた時間を出来るだけ丁寧に生きること。この本をきっかけに、自分の限りある時間の過ごし方をとても意識するようになりました

私の場合、自然と大切な人たちと繋がっていれば十分に幸せを感じます。特にキャンピングは単に外で寝泊まりしているだけなのに、最高の時間を過ごした気分になります。掘り下げていくと、人の幸せとは極端にシンプルなものなのかも知れません。幕開けたと思ったら、あっという間に終わってしまう短いカナディアンサマーだからこそ、ひと夏の一日一日を謳歌したいと思います。

The Scent of Spring

数ヶ月ぶりのカナダの空気はすっかり春です。冬の間、ずっと雨に浸されてきた樹々と大地が、柔らかい春の陽射しに照らされ始めると、何とも心が解れるような香りを放ちます。

今年の春は思いもよらない形で、ずっと追い求めていた「春一番の香り」を見つけることができました。それは、Cottonwood Budsの香り。「コットンウッド」は和名で「ヒロハハコヤナギ」と言うようで、ポプラの1種です。 空を仰ぐほどの高い木に成長し、夏前になると、ふわふわそこらじゅうに白い綿を雪の様に降り注ぎ、この幻想的なCottonwoodが私は大好きです。

早春と呼ばれる季節。Cottonwoodの枝から新芽が出始めます。この新芽の蕾の中に、オレンジ色の樹脂が含まれていて、カナダ先住民はもちろん、Cottonwoodが生息するさまざまな地域で、長年薬として使われて来ました。樹脂には、サリシンと言う抗炎症性の物質が含まれていて、鎮痛剤や解熱剤の効果を持っています。現代医療のアスピリンと同じ効能があることも分かっています。その他にも、ミツバチが樹脂を集め、巣作りに利用します。これが後のプロポリスにもなるそうです。Cottonwood Budsから抽出したオイルは、スキンケアとして、バームやマッサージオイルなど色々に活用するすることが出来ます。

そんな万能なCottonwood Budsですが、私が一番惹かれたのは香りでした。調べて行く中で、その香りを「地球上で最高の香水」と例える人もいれば、「温かなクリスマスツリー」、「甘いキャラメルとハニー」、「魅惑的なアンバー」、と言う表現が。そして誰もが、「一度嗅いだら忘れられない香り」と評するのです。

調べるほど想像は膨らむばかり。そんな香りを嗅ぎたい!と、長く思いを馳せていましたが、何かとタイミングが合わず、この数年Cottonwoood Buds の香りはおろか、その姿さえ見ることはありませんでした。

そして訪れた今年の春。導かれるように、Cottonwood Budsは意外にも身近な場所で、色々な偶然が重なって、私の前に現れてくれました!すでに蕾が大きく成長し、その先端から滴るように赤っぽいオレンジ色の樹脂の雫が、太陽に照らされてキラキラと輝いていました。樹脂は触ると糊の様にベタベタします。この蕾が開く直前に、ベタベタしていることを確認して収穫するのです。

胸が高鳴りながら初めて詰んだCotton Bud。そっと鼻先へ、その香りを自分の中に吸い込んでみると、何とも言えない力強く甘い香り!このままぺろりと舐めたくなる、まさにプロポリスのキャンディーそのものの香りです。

Cottonwood は手の届きようがない高い樹木なので、なるべく落下した新鮮な蕾がある枝を探してサステイナブルに収穫します。指先が樹脂でべったりとオレンジ色に染り、その祝福の香りを時折噛み締めるように嗅ぎながら作業を続けていたら、あっと言う間に夕暮れになってしまいました。

大切に家に持ち帰り、暖かい灯火を持ち帰ったかのような、そんな香りが部屋中に漂っていました。

ずっと会いたかったCottonwood Buds。「遠くに出向かないと見つけられないのではないか」と言う先入観があり、いつかどこかでと、憧れのような存在でした。しかし、自分の身の回りの自然をよくよく観察していくと、探している宝物は実は足元に転がっていたりするものです。当たり前のように目の前に存在する身近な自然こそ、沢山の気づきを与えてくれるのかも知れません。

収穫した蕾は、早速ティンクチャーとオイルに漬け込みました。Cottonwood Budsの香りと共に、これから忙しいフォレジング(野生の植物を採取すること)の季節の始まりです。

Growing Season

今年のカナダの秋は、晴天続きで気温も高く、10月も半ばになってから我が家の家庭菜園のGrowing Season(成長期)もようやく落ち着きました。

この春は、ケール、ビーツ、水菜、かぶ、絹さや、ラディッシュ、レインボーキャロットの種蒔きから始まり、ハーブはイタリアンパセリ、バジル、紫蘇、パクチー、ミツバ、なども全て種から育てました。

夏のスタートが遅かったのと、7月まで冷夏だった為、ジャガイモの種芋がどこまで育つかヒヤヒヤしながら観察していましたが、可愛らしい芽が伸びはじめた時は一安心しました。

野菜は苗から育てるよりも、種から育てる方が何となく強い気がするのと同時に、愛着も倍に湧きます。ミリ単位の種から発芽し、土の表面にニョッキリと姿を表すたくましい生命力。

毎日優しく水をあげながら、その成長を見るのが私の夏の日課でした。特にツル科の絹さやは、芽が出たと思ったら、あっという間に長い支柱を駆けのぼり花を咲かせてくれました。

 

ビーツやカブの収穫時には、まん丸に太った実が「早く採ってください!」と言わんばかりに土の表面から盛り上がり、ほんの少し引っ張るだけで簡単に収穫できました。野菜は自分の食べごろを色々な形で教えてくれます。

ジャガイモは冷夏の時期が長かったか、前年に比べて数はあまり採れませんでしたが、掘りたてのジャガイモを蒸してガーリックとディルで炒めたお味は最高でした!

家庭菜園の魅力はなんと言っても、もぎたての野菜を味わえることではないでしょうか。お陰で夏場は、ハーブ類と自分で育てた野菜の一部は市販のものを買わずに済ませることが出来ました。

農薬も肥料も与えず、米の研ぎ汁を定期的に与えただけで、害虫被害もなく立派に育ってくれた野菜達!特にレインボーキャロットは、10月末になってもまだまだ収穫出来るほど元気一杯でした。ケールだけ虫にやられてしまい、食する部分がほとんどなくなってしまったのが残念。ケールが大好きなだけに、これは来年の課題です。

今年は実だけでなく、花も沢山咲いてくれて、また来年用の種も収穫する事ができました。

野菜の種と同時に蒔いたカレンデュラの種は、ようやく夏の終盤に次から次へと咲き誇り、食べる植物だけでなく鑑賞用の花を植える楽しみも再発見。

そして春先から作り始めたコンポスト。

家庭で出たクズ野菜やお茶の出涸らしを土や米糠と混ぜてせっせと作っていたのですが、今年は堆肥化には間に合いませんでした。自分が排出しているオーガニックのゴミさえも、土に還るのにどれほどの時間を要すのか、改めて勉強になりました。ゴミはやはりゴミ。簡単に分解し、土に戻るものなどそうないのではないでしょうか。

以前、VOICEプロジェクトで農家の方を取材した時に、とても印象深い言葉をいただいたのを覚えています。「農業を始めた若い頃は、1年は4シーズンしかないと思っていました。でも、日々自然と向き合い、食物を育てることに携わっていると、1年は52シーズン以上からなっているのだと気づいたんです。食物を育てるには長い時間を要します。雪がなくなり、畑の土が見え始め、土の中の無数の微生物の匂いを嗅いだ瞬間から、秋の収穫に至るまで実に小さな変化を繰り返しながら、様々なシーズンが繰り広げられているんです。」

私もいつか52シーズンを感じてみたいと思いを馳せながら、今年のGrowing Seasonの幕が閉じました。

Noiseless World

バンクーバーの短い夏も終わりに近づき、少しづつ秋の空気を感じる季節になりました。今年は6月まで冷夏で、本格的な暑さが到来したのは7月と8月の2ヶ月間。駆け足の夏となりました。
夏の我が家はよくキャンプに出掛けます。カナダはもちろん、BC州だけでも半端なく広いので、キャンプの目的地まで何回もフェリーを乗り継いだり、ハイウェイを5時間以上走り続けたりと、その過程も「旅」となります。そして回数を重ねるごとに、キャンプ地もさらに遠くへ遠くへと行きたくなります。

キャンプで過ごす時間は、私を「今」という時間にフォーカスさせてくれます。目の前に流れている一瞬、一瞬の「今」をただひたすら楽しむことを教えてくれるのです。特に予定は決めず、朝起きて晴れていれば、ハイキングへ行ってもよし。水辺が近ければ、海や湖で泳ぐのもよし。雨が降ったらテントの中で読書をする。お腹が減ったらご飯を食べて、暗くなったら火を囲み、夜空を鑑賞する。なんの華やかな行事はないけれど、のらりくらりと刻まれるシンプルな時間が、「今」と言う最高のギフトとなります。

携帯が繋がらなければ、更によし!ネット上に溢れんばかりに湧き上がってくる情報のノイズからしばし離れる時間も、また大切です。デジタルデトックスは、頭と心と体を休ませる最高の充電期間となり、自分だけと向き合う機会を与えてくれます。

ノイズは情報だけではありません。私たちはさまざまな「音」と共に暮らしています。近所を行き交う車や人々の会話、部屋の中の機械音、風の音、雨の音、動物や虫の鳴き声など、ノイズなしの世界はあり得ないと言っても過言ではありません。今回のキャンプで一番思い出深かったのは、「無音の世界」を体感したことです。真夜中にテントの中でふと目が覚めた時、何かいつもとは違う気配に気づきました。それは、水辺の音も、風の音も、全ての生きものが寝静まり、完全にノイズが消えた瞬間でした。1ミリの音さえ聞こえないという状況は、いくら自然の中でもなかなかないものです。色々な環境が奇跡的に、タイミング良く重なり合わないとノイズレスな瞬間は存在しません。自分の息も止めんばかりに寝袋の中で完璧な静寂な時を聞き入っていると、何か大きな「気配」を感じざるには得られませんでした。その時空は長く広く永遠に伸びている気がして、「宇宙とはこんな場所かな?」と思わず考えると同時に、音なき世界のパワフルさを感じました。言葉を並べてよく喋るよりも、たった一つのうなずきや微笑がパワフルなメッセージを持つように、何かを語りかけてくる印象さえ持ちます。


自分自身も日常の中で繰り広げられるノイズの一部だと意識することで、少しでも心地よい音色を奏でたいものです。キャンピングは非日常的な体験から、日常を振り返る素晴らしい機会を毎回与えてくれます。また来年も遠くへ遠くへ、何もない場所へとキャンピングに行くでしょう。
そこには「今」という一瞬を生きる喜びが待っているから…。

Fur Baby

7月1日Canada Day (カナダ建国記念日)の前日に、新しい家族が我が家に加わりました。1.5~2歳(推定)のシュナウザーミックス・保護犬のTio (ティオ)くんです。

ちなみに、カナダは国民の58%は犬か猫など何かしらペットを飼っていると言う統計が出ているほど、ペットフレンドリーな国です。その内95%は、自分のペットを「家族の一員」と考えています。カナダでは、「Fur Baby」(毛皮の赤ちゃん)や、「Fur Parents」(毛皮の赤ちゃんの親)と呼ばれる、人間の赤ちゃんと同様にペットを可愛がる親のことを表現する言葉が存在するのです。

我が家も「Fur Baby」を求めて、2年程前から保護犬を探し始めていました。以前から、ペットを飼うなら保護施設からと決めていたのですが、コロナパンデミックもあって、ペットの人気はさらに急増。2013年に設立されカナダ国内外から虐待や殺処分待ちの犬を懸命に保護している非営利団体「Furever Freed Dog Rescue(FFDR)」のことを知り、ここで2年もの間、我が家のライフスタイルに合いそうな子を探しては、里親申請をしていました。

FFDRは選考基準がとても厳しい団体です。毎週世界中の犬を保護しているので、直ぐに我が家も里親先として選ばれるのではないか、と思っていた甘い考えは容赦なく覆されました。申請をする度に9ページにも及ぶ質問表を提出します。数ヶ月経っても、全く選ばれないので何が理由かを尋ねてみたことがありました。「我々は保護犬にとって最適・最善な環境を提供できる家族を徹底的に探します。あなたの場合、家がアパート(集合住宅)であること、他にペットを飼っていないので、正直優先される候補ではありません。保護犬の多くは仲間意識が必要なので、既に犬を飼っている家族や庭で走り回れる環境を提供できる家族が優先されます。その様な条件をあまり必要としない犬が出てきたら別ですが…。」、と衝撃的なメッセージをもらいました。

しかし、そんな厳しい基準を設けているからより信頼できるFFDRから授かりたい!、と決心を新たに続けること2年。流石にそろそろ諦めの気持ちが入りかけた頃、私の携帯にFFDRから連絡が来たのです。最初、「間違い電話?」と思ったほどでしたが、「あなたの家にマッチする犬が見つかりました。」と聞いた時の喜びは忘れられません。

里親先として選ばれてからも厳しいのがFFDR。とりあえず「里親候補」として選ばれ、ここからFFDRのボランティアが行う更なるインタビューとホームチェックと呼ばれる家庭訪問が続き、保護犬を迎え入れるにあたり本当に問題ないか、最終チェックされます。このホームチェックに来たボランティアのDさんが、とても親切な方で、保護犬との接し方や暮らし方を詳しく指導してくたのと同時に、近所の動物病院やおすすめのペットショップなど色々な情報を共有してくれました。Dさんも2匹の保護犬を飼っていて、不要になったフードボウルを譲ってくれたり、「困った時はいつでも連絡してきてね。」と連絡先まで交換してくれて、今でもとても頼りになる先輩的存在です。

そして、いよいよピックアップ当日。Tio はメキシコのストリートで保護され、この日10匹ほどの犬と一緒にトラックで2日間かけてアメリカを北上し、カナダに渡って来ました。指定されたピックアップ場所に行くと、「Fur Baby」受け入れ先に選ばれた人たちが、皆ソワソワしながらトラックの到着を待っていました。

白いミニトラックが予定時刻より1時間半遅れで到着すると、安堵のようなざわめきが…。
扉が開き、1匹ずつ丁寧に時間をかけながら、各家族に引き渡されていきます。クレートからTio が出て来た光景を目にした時、大小さまざまな犬に混じりながら、不安であったろう長旅を経てきたと思うとちょっと胸が熱くなりました。そんな気持ちをよそに、対面した時Tio がプイッとそっぽを向いた瞬間心折れましたが、とにかく無事に我が家に連れて帰ることが出来て一安心。

引き取ってからもまた厳しいのがFFDR! 1歳以上の保護犬は、即引き取れる訳ではなく、最長2週間のフォスター期間を経て、相性を確認してから正式に家族になることが許されます。

Tio の最初の2日間はよく寝てよく食べましたが、ほとんど目を合わせてもらえず、どうしたものかハラハラしましたが、時間の経過と共に少しづず心を開いて来てくれています。

今では、膝の上で昼寝をするのが大好き。夜のお気に入りポーズは、仰向けになり豪快にお股を広げていびきをかいて寝ます。

そして先日、マイクロチップとカナダの動物病院で最終健康診断を終了し、無事我が家の一員となりました。動物病院のスタッフが、「ママとパパになりましたね!おめでとうございます!」と、Tio の名字に我が家の名字が記された書類を渡してくれて、晴れて「Fur Parents」になったのだと実感しました。FFDR代表のLさんも同席していて、「良い子になって欲しいなら、甘やかさないでしっかりしつけるのよ!」と、博愛主義家にしては結構厳しくない?とちょっと引く程のしつけの仕方を幾つか教わりましたが、可愛いだけでは済まされない、命を育てていく重さを同時に感じました。

保護犬は私たちの知らない過去のトラウマを持っていることも多いので、これからトレーニングという課題もあります。「Fur Parents」として、愛の鞭を織り交ぜながら、とにかく健康で沢山の犬友と仲良く遊んでくれたらそれで良し!

Tioくん、カナダへようこそ。そして、我が家へ来てくれてありがとう。
これから一緒にカナダを冒険して行きましょうね。

Spring Foraging

バンクーバーの春は、Foraging(フォレジング=自然採集)にとても忙しい時期です。気がつけば、日々どこかで新しい命が芽吹き、私もあちらこちらへと大忙しに繰り出して行きます。とにかく自然の営みを目で見て、肌で感じることが大好きで、フォレジングを通して普段何となく知っている植物からも毎回学びが沢山あります。

ラズベリーリーフとブラックベリーの新芽から始まり、こごみ等の山菜採り。遠方の北まで足を伸ばし、人生初の白樺樹液の採集も体験しました。5月になるともう追いつかない程、花と新緑の祭りが始まります。つくしが顔を出したかと思ったら、あっと言う間にスギナが伸びます。繁殖力の強いスギナは駆除が困難な雑草として見られがちですが、カリウムが豊富でむくみを解消し、血液をきれいにしてくれます。スギナのケイ素は、歯・髪・爪の健康維持に欠かせない成分でもあります。

新緑だけでなく花の森かと思うほど、山にも美しい野生の花が咲き乱れます。ライラックの香りは大好きな花の香りのひとつで、雨が上がった早朝のライラックの香りは特に濃厚です。華やかな香りのリラックス効果と共に、沢山の抗菌・解熱・新陳代謝改善などの健康効果、そして美肌効果があります。

エルダーフラワーは咲く期間も短く、フレッシュなタイミングで摘む時期を見計らうのは至難の技です。エルダーフラワーは特に、副鼻炎やインフルエンザの特効薬として知られます。優れた抗酸化作用で、肌のキメを整え、シワや紫外線のダメージを改善する効果も。

そして、エルダーフラワーはとにかく美味しい!ぬるめのお茶にしてたっぷりとビタミンCを摂取するのも良し。砂糖とレモンで煮込んで作るエルダーフラワーコーディアルは格別です。冬の風邪薬にと2瓶作りましたが、あまりの美味しさに夏までに無くなってしまいそうです。

今年の春は色々な形で自然の恵みを楽しんでいますが、ハイライトは何といってもモレルマッシュルーム(アミガサタケ)。モレルは、カナダはもちろんヨーロッパでも春の珍味として食用に幅広く活用されますが、今回モレルのストーリーに心打たれました。モレルは、山火事で荒れ果てた山の斜面や、森林伐採された荒野に新しい命を吹き込むキノコです。凸凹した網状のカサに、植物の胞子を引っ掛け育み、枯れた大地に新しい息吹をもたらします。正直、今までモレルはそこまで関心がなかったキノコでしたが、その話を聞いてとても愛着が湧きました。

ご縁があり、モレルマッシュルームを毎年採取しているカナダ人に同行したある週末。私達が向かった先は、昨年の山火事で焼け焦げた木々が無惨に散乱している場所でした。まだ焦げ臭く辺り一面真っ黒な死の世界の様なその場所で、かろうじて直立している木々。その外皮に触れてみると、想像以上にふわっと柔らかく軽い炭のような感触でした。真っ黒に燃えても、内側はまだ生きているので材木としてそのまま切り倒され使用されることが多いそうです。木がなくなり、スカスカになってしまった山の斜面は、砂のようにとても乾燥していて斜面を登るたびに足が滑ります。

そんな場所に、モレルがニョッキリと顔を出しているのです。何とも可愛らしい、森の守護霊のようなモレル。「ありがとう。君達すごいね。」と感謝の気持ちを抱きながら、小さいサイズは避けて採りすぎに注意しながら採取しました。1日の終わりにはもう手は真っ黒、炭だらけ!

この日帰宅して料理したモレルの味は身に沁みる美味しさでした。

モレル採取中に、新しい野草にも出会いました。マイナーズレタスと呼ばれる、野生のレタス!100gのマイナーズレタスには、1日のビタミンC摂取量の1/3も含まれているそうで、そのままサラダとして美味しく頂きます。ワイルドストロベリーも可愛らしい花を咲かせていました。きっと美味しい実が成るだろうと想像しながら、山火事の荒野に存在するたくましい生命の循環を垣間見ることが出来ました。

野生の植物や花は、人間の頭では計り知れない大地の時間の流れとともに、正確に命の時を刻み、着実に彼らの使命を果たしています。山を生き返らせ、そこに生息する動物達の貴重な食糧ともなります。生命がきちんと循環するように、人間もまた来年同じ時期に自然の恵みを分けて貰えるように、サステイナブルを意識しながら採取する大切さを身をもって感じます。インターネットで表面的に何もかも知った気になってしまう危うい時代だからこそ、土臭い場所で五感で感じる行為をより大切にしたいと思うのです。

To the North

アラスカに生きたカメラマン・星野道夫さんが綴った「旅をする木」に出会ってから、いつかカリーブー地方と呼ばれるブリティッシュコロンビア州の北部を旅してみたい、と心の中にどこか憧れのような秘めた想いがありました。そんな想いが、この春、白樺樹液を採取しに行くという目的で実現しました。

4月は長い冬から目覚め、雪解けが始まる北の春。樹々が芽吹く直前に、白樺は大地から生命のエネルギーを吸い上げるように無色透明の樹液を出します。「森の看護婦」とも呼ばれる白樺樹液は、健康と美容に効果的な成分がとても豊富に含まれています。保湿力と抗酸化力に優れ、体内で生成することのできないアミノ酸、ヒアルロン酸やコラーゲンの保護に役立つポリフェノール、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ミネラル、そして美肌には欠かせないビタミンCなどの成分がバランスよく含まれているのです。昔から北欧やロシアでは民間療法で広く利用されている白樺樹液。いつかカナダで採取してみたいと思い続けていたところ、色々なご縁が重なり、白樺樹液を採取している農家さんに今年の春、「直接採取しに来ませんか?」とご招待して頂きました。

白樺樹液は冬と春の移行期間のほんの2週間程しか採取出来ません。この奇跡のような樹液を求めて、往復1,570kmものカリブー地方へのロードトリップを試みることになったのです。片道800kmほど、時間にして8時間以上のドライブですが、そんなに走ってもまだブリティッシュコロンビア州の中間部と言う、カナダのとてつもない距離感に圧倒されます。

北上していくと、同じ州とは思えないくらい、何ヵ国も国を跨いで旅しているような変化に富んだ美しい北の大地が広がっていました。緑深い山を越えると、一面砂漠地帯へ。

マーブルキャニオンと呼ばれる大理石のような岩山を横に、いくつもの渓谷を抜け、山火事の形跡か残る枯れた荒野が続いたかと思うと、

今度はのどかな牧草地帯が広がり馬や牛が放牧されていました。

湖水地方のような湿地帯…。

フレーザー川を見下ろす絶壁をゆっくりと走る列車を何度も追い越しながら、かつてゴールドラッシュで人々が積極的に北を目指した開拓時代のロマンとノスタルジア漂う情景…。

そして何より、永遠に続くような高原を進む中、4月ももう終わりというのに半分まだ氷を貼った湖の光景を目にした時、「あぁ、北に来たのだ!」と、その厳しい冬の終わりにある静寂な美しさに一瞬で心奪われました。

正直、白樺の事で頭がいっぱいだった私は、こんな美しいドライブが待っているなんて想像もしていなく、ドライブ中終始、カナダの美しさに改めて胸がいっぱいになっていました。

Quesnel (ケネル)という目的地に到着したのは、2日目の午後。3日間、65ヘクタールもの広大な農場の敷地に滞在しながら、白樺樹液の採取を体験させて頂きました。最初の夜は、まだ気温が0度近くに下がる中、「バンクーバーから来客が来てるから」と、仲良しご近所さんも集ってボンファイアを囲みながらBBQでおもてなししてくれました。「明日は、白樺樹液採取へ9時15分の出発だからね!」と言いながら、北の人達はお喋り好き。暖かい炎に包まれながらついつい夜更かししてしまいました。

翌朝は、胸が高なる中、夢にまでみた白樺採取へ!調べれば調べるほど、白樺樹液というのは神秘的で、採取時期も限られていますが、その保存方法も限られています。白樺樹液は、採取後2日と保たず、すぐに腐ってしまいます。こちらの農家さんは、毎年何100本という白樺から樹液を採取していますが、全てその日のうちに煮込んでシロップにしてしまいます。今年は3,000~3,500L採取予定だそうですが、多い年では6,000Lにも及ぶ樹液をシロップにしているそうです。私の目的は、白樺樹液を原液のまま保存すること。この旅を決めてから、多方面の白樺のプロや某大学の研究チームにまで問い合わせ、白樺樹液の保存方法のアドバイスを頂きました。この難題に、過去の実体験から快くご教授してくれた人達、研究資料を共有してくださった人達が頭に浮かび、「失敗は出来ない」と、採取当日の朝はちょっと緊張してしまったほどです。

実際、白樺樹液の採取作業は4人の男性チームで手際よく進められ、前日からバケツに溜まった樹液を回収していきます。1時間ほどで、200本の白樺に設置してあったバケツから400Lもの樹液を皆で運びました!

「ちょっと飲んでみる?」と、白樺に空けた穴からぽたぽたと滲み出てくる樹液を口にした時、そのフレッシュさと美味しさにまたまた感動!ほぼ無味ですが、どこかほんのり甘さを感じる優しい口当たり。大自然の貴重な恩恵を直に受ける時ほど、心が震えることはあるでしょうか?

採取後は2日にわたる長い保存作業が待っていて、こちらも時間との勝負。毎晩遅くまで食べる暇も惜しいほど、キッチンで作業に夢中になっていました。滞在最後の夜も、「お茶に行くね」と約束した仲良くなったご近所さんのミッシェルさんのお宅にも伺えず、夜9時過ぎまで白樺樹液の保存作業でクタクタになっていました。そんな所に、ミッシェルさんが真っ暗な夜道の中やって来て、「ちょっと家から出てきてもらえる?」と…。すると、「白樺好きなMINAにプレゼントがあります!」と、白樺の外皮をリボンにあしらった大きな紙袋を手渡してくれました。

そこには、彼が採取したチャーガと呼ばれる白樺のみに寄生するスーパーフードとして名高いマッシュルームの塊と、それを挽いたお茶、そして、彼の敷地内で採れたハニーの瓶が詰まっていました。その瞬間、疲れなど一瞬で吹き飛んで、北の人々の優しさに涙が溢れそうになりました。作業がやっと終わり、私に快くキッチンを占領させてくれた農家のオーナー夫妻のエロイーズとテッド、そしてミッシェルを交えて最後の晩餐。もちろん、飲み物は「白樺樹液」で乾杯!

夕飯を囲んでいる最中、ふと「寒いことが人の気持ちを暖めるんだよ。遠く離れている事が人と人の心を近づけるんだ。」という、星野さんが語っていた言葉が、最後の夜を締め括るにふさわしく頭に浮かんで来ました。初めて会ったとは思えない程、家族のように、長年の友人のように、迎え入れてくれた北の人々。短い滞在なれど、そのコミュニティーの人間力に、何よりも感動させられた数日間でした。

カリブー地方は私が想像していた以上に遠く、美しく、温かく、そしてどこか懐かしい、また戻りたいと思わせてくれるそんな場所です。私が感じたこのエッセンスを、持ち帰ってきた白樺樹液に込めながら、また新たな旅がここから始まります。

Spring Forward

本日は、春分の日。

それより先に、カナダでは3月13日に待ちに待ったサマータイムが始まりました。
「Spring Forward, Fall Back」という言葉を覚えてからは、時計の針を春は前に進ませ、秋は後ろに戻すという行為を、間違える事なく行えています。1時間、時間が前に進むと午後の日照時間が長くなり、これだけで気分も上がります。

カナダのコロナ関連の規則緩和も徐々に進み始めました。3月11日からは、公共の屋内でのマスク着用義務は不要になり、4月8日からはBC州内、ほぼ全ての場面でのワクチン接種証明の提示は不要になります。次々と規制緩和を打ち出す州政府に対して、連邦政府はまだまだ対応が遅いですが、カナダの厳しいコロナ関連規制の終わりが少しづつ見え始めて来ました。

見えない敵コロナと戦い始めて丸2年。先日、偶然目にした記事に興味深い調査結果が載っていました。今年3月初めに、18歳以上の2,550人のカナダ人に聞き取り調査をしたところ、5人中4人は、この2年間を経て「人々の間に距離が広がった」、「パンデミックは人々の中の嫌な部分を引き出した」という感想を持っているそうです。そして、60%の人が「カナダ人全体の思いやり」の姿勢が減ったと回答していました。80%以上の人が「人生で一番大切なものは何か気づかされた」と前向きな回答をしているのに対して、そこから何か新しい行動を起こした人は半数以下、そして、この2年間で「人生が暗転した」と答えた人は47%もいたそうです。

パンデミックのような前例のない危機を前に、世界中が右往左往して、社会・家族・友人の間でも見えない「距離」が生まれたことは間違いありません。ただ、少なからず2年前のパンデミック発生時は、皆がもっと団結し、お互いを思いやり、分け隔てなく感謝し合い、前を向いて進もうとしていたのではないかと思います。私が読んだ調査結果が2年前に行われていたら、人々の回答はちょっと違っていたかも知れません。

「人生で一番大切なものは何か気づかされた」人が大半であるのなら、今、もっと幸せを感じていても良いのではないだろか?そんな矛盾を感じさせた今回の記事。

明るい春に向かって、少しでも気持ちが前向きに前進できるように、2年前を少し振り返ってみるのも良いのではないでしょうか。私は沢山の笑顔、「THANK YOU」という感謝の言葉、そして何よりローカル支援が思い出されます。距離は2m離れていたけど、心は近かったあの頃。
日常生活では、今まで以上に手作りのものを増やし、缶詰作業、ガーデニングなど…興味あることはとことん学んで、それが今、自然と自分のライフスタイルの一部になっています。

あなたが思い出すパンデミックの気づきは何でしたか?

Mindful Face 10 – Dr.Ginger

2月も末ですが、カナダではまだチラチラと雪が降る日がありました。翌朝は澄み切った冬晴れの空の下、うっすらと雪化粧をした街が眩しかったです。

冬は浄化されるような雪景色と、澄んだ空気が気持ち良い季節ですが、顔面神経麻痺を患っている方にとってはなかなか手強い季節でもあります。なぜなら、冷たい空気に患部がさらされたり身体が冷えることで、血の巡りが悪くなり、筋肉を強張らせ、症状が悪化することもあるからです。

特に冬場は内側から徹底的に温め、巡りをよくしてあげることを心がけましょう。体の内側と外側は面白いほど繊細に、密接に繋がっています。冬だけでなく、年間を通して温活療法を施してくれるお医者様的存在…。それは何と言っても生姜ではないでしょうか。

生姜は食べ物を陰陽で分けると、「陽の食材」。栄養素の宝庫でもあり、主な成分にカリウム、カルシウム、マグネシウム、ジンゲロン、とショウガオールなどがあります。特に、生姜の辛味成分であるジンゲロール・ショウガオール・ジンゲロンは体の内からも外からもポカポカ温活パワーを与えてくれます。

ジンゲロールは「生」の生姜に多く含まれていて、鎮痛・解熱・消炎・発汗作用があり、胃腸の調子を整え、風邪の予防にもなります。強い抗菌効果で体内の熱を取り除き、体の表面を温めてくれる効果も。肩こりや頭痛などの改善はもちろん、生の生姜をすり下ろして作る「生姜湿布」などは皮膚からジンゲロールを吸収させて、血行促進させます。基本的に生姜は体を温める「陽の食材」ですが、ジンゲロールに限っては、体温を下げようとする効果があるので、体調によって「生」か「乾燥」の生姜を使い分けると良いです。

ショウガオールは「乾燥」された生姜に多く含まれていて、ジンゲロールを加熱・乾燥させると一部がショウガオールに化学変化します。ショウガオールは深部から熱を作り出し、血を巡らせ身体を芯から温めて持続させる効果があるのが特徴です。加熱した生姜の温活パワーは、生の生姜よりも強力と言われているので、特に冬場や冷え性の人は積極的に熱を通しましょう!新陳代謝も促進され、血行の改善から美肌効果も期待出来ます。そして更に、抗酸化作用もパワーアップし、ショウガオールには抗ガン作用もあると言われてるので、毎日でも食べたい!

ジンゲロンも加熱によりジンゲロールが変化したものです。新陳代謝の促進・血行の促進で、体を温め冷えを改善してくれると同時に、脂肪燃焼にも役立ってくれます。

となると、生姜は加熱して摂取した方が圧倒的に良いのでは?!と、私は普段から生姜を加熱して食すことがほとんどです。特に、20代の頃から愛読している医学博士の石原結實先生の「体を温めると病気は必ず治る」と言う本の中で紹介されている「生姜紅茶」は、今でも冷えを感じた時や、体を活性化したい時に必ず飲むお茶です。

レシピと言うまでもないくらい簡単で、熱い紅茶にすり下ろした生姜をたっぷり入れて、お好みで蜂蜜やプルーンを入れて熱いうちに飲みます。個人的には甘味はスキップしますが、甘味を加えることで滋養強壮作用があるそうです。これを飲むだけで、体がすぐにポカポカ、ちょっとした不調は吹き飛んでしまいます!

唯一のポイントは、オーガニックの生姜を皮ごと使うこと。生姜の皮にはポリフェノールやジンゲオールが豊富に含まれているので、切り捨てないで全て使ってください。カナダでは比較的オーガニック生姜は安価でどこのスーパーでも取り扱ってますが、購入が難しい場合は、重曹でよく洗って残留農薬を除去してから食してください。

どうせ飲むなら、紅茶にもこだわりたいもの!こちらも出来ればオーガニックのものを!そして、 ティーバックではなくホールリーフ(茶葉をカットしていないもの)を選びましょう。私は、エシカル・サステイナブル・フェアトレード認証されていて、ケニア自社農園直送ホールリーフ茶葉を扱っているJusteaKenyan Black Teaがお気に入り。地元バンクーバーのブランドで、「顔の見える」メーカーを選ぶのも安心安全の基準です。この紅茶を来客に出すと、いつも「美味しい!」と褒められます。

生姜を毎回すったり、切ったり、めんどくさい!手軽に温活パワーを吸収したい!と言う人は、乾燥した生姜パウダーもオススメです。最初からショウガオールの成分が豊富なので、飲み物や料理にパパッと加えられます。

もう一つのオススメは、「生姜ビネガー」。細かく刻んだ生姜を瓶に入れて、ひたひたにビネガーを注ぎ、冷蔵庫へ。長期保存可能なだけでなく、ドレッシングやヨーグルトのトッピングなど様々な料理の万能調味料として使えます。多少なり乳酸発酵する気がして、お酢の味が少しまろやかになります。私はこれを冷蔵庫に必ず常備!お酢と生姜のW血行促進パワーで、冷えを撃退しましょう。

たった一つの食材で、こんな恩恵が得られる生姜は真の温活ドクター!もう直ぐそこまで来ている春に向かって、体内の巡りと体温をしっかり整え麻痺部の硬直や不調を少しでも和らげておくと、春夏の回復力が変わってくる気がします。

体を温めると自然と心も緩みます。リラックスしながら寒さを乗り越え、温かい春を待ってみてはいかがでしょうか。

Mindful Face 9 – Keep Your Necks Warm

私が健康を考える時に必ず意識することは、まず体全体をケアしてあげる事です。人は誰でも不調があると、その一つのことばかりにとらわれてしまい、全体に意識が行きづらくなる傾向があります。体は心身ともに全て繊細に繋がっていて、不調の原因は実は全く違う要因が伴っていることもよくあります。顔面神経麻痺を患っている人も同じで、顔にばかり意識が行ってしまい、顔は入念にケアするけれども他は何もしていない、と言う方も少なくないのでは?

私は顔面神経麻痺が発症した当初から今に至るまで、体全体を温める「温活習慣」を徹底しています。もともと冷え症だった事もあり20代後半から様々な「温活」オタクではありましたが、常日頃から体を温めることで顔面神経麻痺の症状緩和にも繋がっていると思っています。

顔面神経麻痺になった当初、「冬の冷気には気をつけてください」とか、「扇風機・エアコンのようなさわさわと吹く冷風に顔を当てないように」とよく言われました。麻痺部分を冷やすことで、顔の筋肉が硬くなり余計な強張りを感じたり、動きが鈍くなったりと不調が出易くなるからです。
私は毎朝毎晩、温熱フェイスパッドで顔を温めていますが、これだけでは顔の冷えや不調は治りません。身体全体を温めて血行を良くし、温かい血液を全身に循環させる事こそが顔面麻痺部分の血液やリンパの廻りを良くしてくれて、効率よくそして長期的に顔の不調を改善することに繋がっていくのだと思います。

特に冷えを感じる冬の季節、繊細な顔を守ためにも私が東洋医学の先生に教わった面白い「温活方法」をご紹介したいと思います。

その先生の温活方法とは「自分の体にある4つの首を温める」こと。4つの首とは、首・手首・足首・乳首のことです。私は最初の3つの首はもともと意識していましたが、乳首には全く無頓着でした。「乳首が冷えに関係あるのだろうか…?」と最初は半信半疑でしたが、この日を境に家でノーブラ派だった私が、常にブラジャーを着用することを心掛けるようになりました。すると少しづつ体全体の温まり方が変わって来たのを覚えています。そして胸元全体の温度までほんわかして来ます。私のようにブラジャーが苦手な方は、ノンワイヤーでオーガニックコットン素材のものを選ぶと優しい肌触りで締め付け感もなく、ストレスフリーに過ごせるのでオススメです。

首元はなるべくハイネックのトップスを選んで着るようにします。首元をスッキリ見せたい時は外気にさらす部位を最小限にするために、V-ネックより丸首のものを選ぶと更に良いです。ネックウォーマーはトップスのスタイルに関係なく、着脱するだけで簡単に首の温活アイテムとなるので、素材違いで幾つか持っているととても便利です。

手首にはウールのアームウォーマーを着けると肘までカバーするので、毎年冬のマストアイテムです。7部袖や短い袖のトップスでも手首から腕全体的を温めてくれるので、冷え知らずになります。袖口が広いものも意外と手首から冷えてしまうので要注意!

そして、足首。足首には婦人科系のツボが沢山集中しています。婦人科系のトラブル予防にも大切な部位です。ここをしっかりとかかとソックスで温めてあげます。ずっと前から愛用しているPubicareのかかとソックスは、自分自身の体温と光電子の持つ遠赤外線効果で温め続けるエコロジカル素材「スーパーファーベスト」を使用していて、しばらく履いていると汗ばんで来るほどです。特に長時間のフライトの際には頼もしいお供。かかとソックスを履き始めてから足が浮腫んだことはありません。しかも、かかとまでつるんと保湿ケアしてくれるから一石二鳥!レッグウォーマーも冬のハイキングやデスクワークで体がじっとしている時に、履いているか履いていないかでは大違い。さりげなく温めてくれる重宝アイテムです。

また、足首は単に温めるだけでなく、1日に何回も回したり、朝晩足つぼマッサージを施してあげると下半身全体からポカポカし始めます。私のバイブル本でもある「押して健康・足のツボ」は、体の細かい不調ごとに、どのツボをどの様にどれ位マッサージしたら良いかイラストと共に詳しい解説があり、家庭の医学書のような本です。最近では目の疲れ、お腹の不調や肩凝りなど、「ちょっと調子悪いな」と感じる時は、まず足首を良く回してから足つぼを揉むようにしています。

特に女性にとって下半身の温活習慣は大事です。下半身が冷えると一気に体全体が冷え、血流が悪くなる~老廃物が溜まる~免疫力が下がる、の悪循環へ突入します。顔面神経麻痺は免疫力が低下した時に発症しやすいだけに、下半身を温める=免疫力アップが必須なのです。

4つのすべての首を温める時、肌に直接触れる素材にも気をつけてあげましょう。出来るだけオーガニックで天然素材のものを着けると、気分も上がり楽しく心地よく温活できます。私は、特にリネンとシルクが好きで、腹巻とレギングスが一体型になったシルクインナーをヘビロテしています。シルクは人の体と同じタンパク質で出来ているので、肌触りが良くかぶれにくいです。コットンの約1.5倍もの吸湿性と放湿性にも富んでいて、静電気が起こりにくく、直接肌に触れる素材としてはもちろん、重ね着素材としても最適です。

顔の不調を治そうとする時、まずは全身の冷えを徹底的にとってあげましょう。温活習慣は想像以上の健康促進効果が期待できます。全体の調子を良くする事が、小さな箇所を修正する近道だったりするのではないでしょうか。まずは4つの首から温めてみませんか?

注)これはRHSに対する専門的医療知識を提供するものではありせん。あくまでも個人的な経験を通して感じた事や学んだ事として参考にして頂ければ幸いです。

Taste of Autumn

本日カナダはハロウィーンのお祭りです。町中にゾンビ、ガイコツ、クモの巣、怪物やらお化けが賑やかに飾られています。そして、住宅地の玄関にはパンプキンをくり抜いて作られた提灯のジャック・オー・ランタンが、子供達を誘い入れる様に置かれています。

ハロウィーンの影響もあって、10月に入ると実に沢山の種類のカボチャ達が店頭に並び始めます。中にはとてつもなく巨大なお化けカボチャまで。これらの顔ぶれが揃いだすと、カナダも秋本番だなぁという気持ちになります。日本では濃い緑色のゴツゴツした皮に、鮮やかな黄色のかぼちゃが一般的ですが、カナダでは本当に沢山の形&味のカボチャ属が存在します。

そもそも西洋で知られるKabocha(カボチャ) はこの一派的な日本カボチャを指し、その他はPumpkin(パンプキン)とSquash(スクワッシュ)の2つに大きく分けられます。何が違うのか?それは簡単で、皮がオレンジ色でツルツルしているのがパンプキン。皮が緑色のものはスクワッシュと分類されています。

とにかく種類が多すぎるので、とりあえず一通り食べてみる!と言うのが私流。

Sugar Pumpkin (左:シュガーパンプキン)は主にパイやスイーツに使用するお菓子用パンプキン。Red Kuri(右:レッドクリ)で、外側も内側も鮮やかなオレンジ色。

 

Kuri=栗?と期待しましたが、栗の味はしません。煮物にも適していますが、スープにすると皮もオレンジ色なので色が濁らず華やかな仕上がりになるそうです。「来客用のスープとして失敗知らずで便利だよ」、とファーマーズマーケットですっかり親しくなり、我が家の5月〜10月のお野菜のほとんどを提供してくれているクリスくんが教えてくれました。

白と緑のストライプ柄は、Sweet Dumpling(左:スイートダンプリング)と呼ばれるもの。マイルドな甘さで、焼いたり、ローストしたり、マッシュしたり、スープに加えたりと色々活用できます。見た目がころんと可愛らしいのは、Acorn Squash(右:エイコーンスクワッシュ)。サイズが小さいものが多いので、種を取り除いた空洞の中にスタッフィングを入れて、チーズを振りかけてオーブンで焼くと食べ応えもあり美味しいです。マクロビ流あずきカボチャなどにも良さそうだなと、次回試してみたいと思います。

他にも、これカボチャですか?と疑ってしまう変わった色・形のDelicata(左:デリカッタ)。味はちょっとポテトっぽくホクホクしてるので、半分縦割りにして種を抜き、そのまま豪快にローストするのがお好みです。Butternut Squash (バターナットスクワッシュ)もユニークなひょうたん型。種もあまり無いので下処理が楽です。実は少し水っぽくねっとりしてるのでスープにするのが最適だそう。

色々ある中で、私のお気に入りはBlack Futsu(ブッラクフツ) と呼ばれるスクワッシュ。皮が部分的にカビぽっく白く濁り、表面もゴツゴツ岩の様にイカツイ様相。最初購入する時はちょっと勇気がいりましたが、お味はグッド!外皮も見た目とは逆に柔らかく調理しやすいです。

そこまで甘みはないので、ローストしてチップスの様に副菜として食べるのがお気に入り。熟してくると外皮がオレンジ色になって来ます。それまで、オーナメントとしてダイニングテーブルに飾って、秋の色を目で楽しんでみたり。

ちなみに、カボチャ属の栄養価は野菜の中でもピカイチ!βカロテン、カリウム、ビタミンC、ビタミンB群、ビタミンE、カルシウム、鉄など沢山含まれています。陽性のお野菜なので免疫力を高め、抗酸化作用も期待でき、お肌を丈夫にして、血行を良くし体を温めてくれます。冷え症の人は特に冬場、積極的に取り入れるのがおすすめです。

私は毎回オーガニックのものを購入して、皮ごと全て頂きます。種はパンプキンスパイスと海塩ひとつまみ振りかけて、ローストすると美味しい健康的なスナックに大変身!余すところがないサステイナブルなお野菜なのです。種が少ない時は、実をローストする際に脇で一緒に焼いてしまうと時短で簡単です。

沢山のカボチャの食し方を楽んで、私の秋はすっかりカボチャ色です。今年も沢山の種類のカボチャを食して、冬を乗り越えていこうと思います。

 

Plant a seed

カナダは移民の国です。移民対策に寛容で「多様性は国の力」と公言するカナダの裏側に、語られて来なかった影のストーリーがあります。過去160年もの間、先住民の子供たちは強制的に寄宿舎に入れさせられ、彼らの文化や権利が迫害を受けた悲しい歴史があります。寄宿舎に送られた子供の数は累計15万人と言われ、何と1996年まで続いたのです。今年の5月、BC州にあった先住民寄宿学校の跡地で215人の子供の遺骨が発見されたニュースが報道された時、カナダ人の誰しもに衝撃が走ったのではないでしょうか。
今年の9月30日に新しく出来た祝日「National Day for Truth and Reconciliation」(真実と和解のための日)は、国や州政府が過去の過ちを認め、問題と向き合うために生まれました。負の歴史と向き合い、新しい和解の歴史のスタートを切る1つの種になって行くのではないでしょうか。

そんな記念すべく祝日の翌日、個人的にも記念すべく1日がやって来ました!去年の4月からローカルに着目した支援活動に取り組んで来たオンラインメディア・VOICE。1年半と125件のインタビューを経て募った基金を、未来の種の為に使う日がやって来たのです。

コロナ禍の苦境の中で、VOICEに賛同し寄付をはじめ様々な形で応援してくれた人達の想いをど紡いで行くのがベストか?答えは、とても早い段階から「環境問題と未来の子供達にの為に役立てよう!」と決まっていました。

VOICEの活動を通して、地元で海洋プラスチック問題に取り組んでいるNPO団体のOcean Ambassadors Canada (オーシャン・アンバサダーズ・カナダ)と出会い、彼らが主宰する小中学生を対象にしたOcean Camp(オーシャン・キャンプ)という課外授業に低所得家庭の子供達を招待する事を目標に活動して来ました。先祖代々からの土地を奪われ、自然と共存する文化を忘れてしまった先住民の現状に敏感なOACから、「在学生の100%が先住民の子供や知的障害児であるX’pey Elemetay Schoolの生徒を招待してはどうだろう?」と提案された時も、迷わず賛成しました。

10月1日のこの日は長く続いた秋雨も止み、久しぶりに太陽の日差しが心地よく感じる穏やかな朝からスタートしました。課外事業の開催場所に選んだKitsilano Beach(キツラノビーチ)は、風もなく湖のような静かな海が広がっていました。「子供たちがパドリングするには最高の日だね」とスタッフと話していると、私達がアレンジしたスクールバスから降りてくる15人の子供たちの賑やかな声が聞こえて来ました。車で15分ほどの場所に学校があるにも関わらず、子供たちのほとんどは、バンクーバーの西側にあるキツラノビーチに来た事がありません。海を経験するのが初めての子もいます。朝起きた時には両親が不在で、登校するのに先生が迎えに行く生徒もいるそうです。そんな子供たちにこの日は思いっきり海を楽しんでもらおう。自然と触れ合ってもらおう。スタンドアップパドルを一緒に楽しもう。そう思うと、私自身の胸も高鳴って前日の夜はなかなか寝付けませんでした。

特に人生初のスタンドアップパドル体験をする子供たちは、もう大騒ぎ!水が冷たいだの、ウェットスーツが着心地悪いだの、色々騒いだ後にいざ海の上に出るとその眼差しは真剣。おっかなびっくりで大人しく漕ぎ始めるも、少し落ち着いて来るとわざと海の中に落ちてはしゃいだり、本当に可愛いらしい光景でした。

海辺での海洋生物の観察もまた微笑ましい。

自分が見つけたカニの赤ちゃんに名前までつけてずっ~と大切に手のひらに持っていた女の子もいました。カニの雄雌の分別方法や海洋プラスチックのライフサイクルなど、OACのスタッフの熱心な授業を子供たちと一緒に私まで楽しく勉強させてもらいました。

VOICEに賛同してくれたウェストバンクーバー のカフェ、Anchor(アンカー)のクッキーとブラウニー、そしてビーガンホットチョコレートを提供してくれたZimt Chocolate(ジムト・チョコレート)の差し入れもあって、子供たちのテンションは終始マックス状態に…!

約4時間の課外授業が終わる頃には、大人の方がぐったり疲れましたが、別れ際に1人1人抱きしめてあげたくなる程の愛おしい時間を過ごさせて貰いました。

「学校のクラスの中での表情と違って、みんな生き生きしていたわ。それもそうよね、先住民の子供たちは本来なら自然と共に生きているんだから。」と、学校の先生と交わした会話がとても印象的でした。そして最後に、昨日の「真実と和解のための日」の為に学校で作ったと言うピンバッチをプレゼントしてくれました。何だか素晴らしい勲章を貰ったようなそんな気持ちになり胸が熱くなりました。

15人の子供たちが、この日のことをどれだけ記憶してくれるだろうか。海洋生物とプラスチック問題の話など、すっかり忘れてしまうのかもしれない。パドリングの楽しい思い出だったり、カニや貝を拾ったことだけでも覚えていてくれたら、それで良い。そんな小さな思い出がいつか大きな変化を起こす1つの種となるかもしれないから。未来に向けて小さな種蒔きをさせて貰えただけでも、私にとっては大きな大きな出来事でした。