月別: 2019年11月

Mindful Face

人生には上り坂、下り坂、そして、ま坂(まさか)の3つの坂があります。40代にもなると、それなりのまさかを様々に経験して来ましたが、つい6ヶ月程前、想定外の大きなまさかがやって来ました。

それは仕事で日本に一時帰国中の出来事。バンクーバーから到着した夜、翌日に仕事を控え早めに就寝した私は、朝の4時にトイレで目が覚めました。右眼に違和感を覚え、飛行機の長旅で眼が浮腫んでしまったかなぁと鏡を見た時です。私の右眼はバッチリ見開いたまま、瞬きが出来なくなっていました。舌にピリピリとした痺れもあり、ヒャーっと一気に眠気も覚め、少々パニック状態で夜間緊急診療に電話をしました。幾つかの病院に問い合わせても症状を話すと、どの科か判断出来ない対応出来ないと次々に断られ、5軒目くらいで運よく某大学病院の緊急診療で受付けて貰い、飛ぶ様な思いで向かいました。

夜間診察で右アゴの奥に全く気づいてなかった帯状疱疹が見つかり、翌朝一番で歯科口腔科→耳鼻科→眼科で再診察して貰った結果、「ラムゼイ・ハント症候群」(以下、RHS)という今までに耳にした事もない病名が下されました。

RHSとは水疱帯状疱疹によって生ずる顔面神経麻痺。体調不良や疲れ、ストレスなどで免疫力が低下している時に体内に残っている幼少期にかかった水疱瘡のウィルスが再活性化し、耳の神経に潜入して顔面神経麻痺を起こします。日本では顔面麻痺全体の約10%、年間10,000人程が発症する稀なものです。ちなみに麻痺はウィルスに感染した片面にしか起こりません。

顔面麻痺になると言うまさかは、当事者の自分でさえ最初ピンと来なかったけれど、メイクアップアーティストと言う「美」を仕事とする立場にありながら、顔が歪み動かなくなってしまった事に大きなショックと戸惑いが徐々に沸き起こって来ました。

現在は発症から6ヶ月が過ぎ、周りから気づかれない程回復しましたが、麻痺と言うのは不思議なもので、自分にしか感じない細かい症状が幾つもあります。顔面麻痺は、初期の薬物治療は最重要ステップですが、その後はセルフケアしか有効な治療方法はありません。何が効いて何がいけないのか、特殊な症状だけに情報がとても乏しいのが現実です。

特に女性で顔面麻痺を患うと、表に出れない人も沢山いるでしょう。このまま何事もなかったかの様に進んでも良いかもしれない、けれど、少しでも情報が少ない人の為に自分の経験が役に立たないだろうか。人として、メイクアップアーティストとして、誰かの何かの支えになれたらと言う小さな思いが芽生えて来ました。

顔は、単に生まれ持った外見だけでなく、心と体、そして思考で造られます。そして、人の持つ自然治癒力は最も優れた医者と薬となり得ます。今までも信じて来たことですが、より一層濃く、明確に、私に語りかけて来てくれています。奮闘記としてではなく、これから与えられた数々の驚くべきレッスンをCanadian Beautyのジャーナルに織り交ぜて綴って行きたいです。

注)これはRHSに対する専門的医療知識を提供するものではありせん。あくまでも個人的な経験を通して感じた事や学んだ事として参考にして頂ければ幸いです。

 

[ IN ENGLISH ]

Life is full of hills: uphill, downhill and the “unexpected” hill.  Just when I thought I had enough of those hills for my 40s, I found myself upon another unexpected hill 6 months ago. 

It happened soon after I arrived to Tokyo for a business trip. I woke up around 4am to go to the bathroom and noticed a bizarre sensation around my right eye. It felt as if it were puffy from the long flight. I literally froze in shock when I saw my reflection in the mirror. My right eye was wide open and it had stopped blinking. There was also a tingling feeling on my right tongue.  I called the emergency medical line in a panic and stormed to the hospital. 

The ER doctor found symptoms of shingles hidden behind my right chin when he inspected my throat and asked me to come back first thing in the morning for more thourough examinations.  Doctors specializing in dental and oral surgery, otorhinolaryngology and ophthalmology all attended to me when I came back.  After examination, they diagnosed me with “Ramsay Hunt Syndrome” (RHS), a condition that I have never heard of in my entire life. 

RHS is a rare neurological condition characterized by the paralysis of facial nerves and a rash affecting the ear or mouth. It is caused by the varicella zoster virus (VZV), the same virus that causes chickenpox in children and shingles in adults. This virus stays dormant for years inside one’s body, but can be reactivated when one’s immune system is low due to stress, exhaustion, etc.  The virus spreads to affect the facial nerve, causing the paralysis. 10% of all facial paralysis cases are RHS in Japan.

The whole situation was rather surreal to me at first, but as it unfolded it hit me hard especially being a makeup artist.  Creating `beauty` has been my profession for almost two decades and it shook me to the core as I dealt with my paralysis. The right side of my face stopped moving completely and carried an uncomfortable, distorted look.  I was in desparate shock. 

It has been 6 months since my diagnosis.  Although I am still on the road to complete recovery, most people do not seem to notice what has happened to my face.  Paralysis is an interesting thing because even though others may not notice, there are a lot of small symptoms that I can feel and see. I want to stress to anyone who is may go through this that it is crucial to immediately take medications at the onset of the symptoms.  After this, self-care is the most effective way for the healing process.  The reality is that it is very hard to find out what works and what doesn`t work for RHS because there is little reliable information available. 

Woman are most often judged by their physical appearances.  It may be harder for women to accept the disorder/condition and come out of their shell once they suffered from the devastating effects of facial paralysis.  I could easily be that person who hides the struggle and live a life as though nothing had happened.  However, I decided that I was not going to be that person.  Instead, I feel a strength is growing within me.  I thought that maybe I can help someone in need by sharing my experience and knowledge so they can see the light at the end of their tunnel.  I am a makeup artist, and I feel that with my skill I may be able to help women feel beautiful again.  I don’t think anyone should suffer alone. 

Your face is shaped, not only by what you are born with, but also by your mind and body.  Interestingly enough, I have found that conscious thinking can change my face as well. All of these elements play into your beauty.  Your natural self-healing abilities could work as powerfully as a great doctor or medicine when you are recovering from effects like facial paralysis.  I would like to start sharing the important and tremendous lessons I have learnt from my own experience with RHS in my Canadian Beauty journals. 

NOTE: This is not a professional recommendation on how to deal with RHS, rather it is my personal journey through this rare condition. Everyone can have different experience and I am happy to share mine.

Circle of Life 2019 – Fall in Cheakamus

バンクーバーから海岸沿いを70km以上北上した場所に、Cheakamus Center (チェカムスセンター)はあります。昔は先住民であるSquamish Nation(スコーミッシュ族)が暮らした土地で、165ヘクタールもの広大な自然をノースバンクーバー教育委員会が所有し、子供から大人まで参加できる様々な自然&生態系教育プログラムを提供している貴重な場所です。

チェカムスは「行く」より「呼ばれる」と言った方が何だかしっくり来ます。実際、チェカムスの森は普通の森とはちょっと違って精霊が宿っている、そんな雰囲気が漂っています。

太古のままの原生林は根元から枝の先までびっしり苔に蒸され、

ふかふかな絨毯の様な柔らかい土とサーモンが遡上してくる清流があり、秘密の基地みたいな森全体が何か語りかけてくる、そんな魅力があるのです。

10月初め、2年に1度遡上してくるピンクサーモンがチェカムス川を賑わせている季節に、スコーミッシュ族のメディスンマン、Henry Williams(ヘンリー・ウィリアムズ)さんから12,000年以上も前から伝わる薬草について学ぶワークショップがありました。Devil`s Club(デビルズクラブ)と呼ばれるその薬草は、名前の通り強い毒性を持ち、釘の様なトゲで枝全体が覆われています。

そんな危険な外皮を剥ぐと、青々しい香りと共に鮮やかな緑色をした内皮が顔を出します。

何故かこの青い皮だけに様々な効能があるそうで、お茶、ティンクチャー、バーム等にして、主に痛みを伴う病気や怪我、そして炎症などに効果があるそうです。北米ではアラスカ人参とも知られています。

現代社会に生きて来たヘンリーさん。奥さんの持病がきっかけで、忘れかけていた先祖の知恵が詰まった薬草療法の道に再び戻って来たそうです。森からの恩恵は偉大である。そんな語らいの中で、「デビルズクラブはマザー(母体)を残して刈って下さいね。また成長させないといけないからね。」と教えるヘンリーさんの柔らかい言葉に、先住民と自然界はお互いを敬い、とてもバランスのとれた関係性であることを垣間見ることが出来ました。

次にチェカムスに呼ばれたのは、1ヶ月後。森とサーモンについて学びに行きました。

前回のピンクサーモンに代わりシロサケが川に帰って来ていて、それを狙って西海岸中の白頭鷲がこの周辺に大集合!いつもは「見れてラッキー!」な鷲が、頭上を見渡すとあちこち優雅に秋空を仰ぐ姿がありました。

「わぁ!サーモンの匂いがする~!」と、一緒に参加していた地元の小学生くらいの女の子。森の中で学習しているとサーモンの香りが自然と分かるんだな、と感心してしまいました。チェカムスの森は10月から1月までの間、サーモンの香りが漂います。それは産卵を終えたサーモンや餌として食べられたサーモンの死骸が川岸に打ち上げられているからです。

死骸と言うより綺麗に食べられたサーモンは、まるで化石みたいに骨だけになっています。何て無駄なく食べるのだろう!!と思わず感動する程。

更に、この時期に転がっている骨のほとんどは先月勢い良く泳いでいたピンクサーモンと聞いてびっくり!死を迎えた跡のすぐ横で、別の命の群れが続き懸命に泳いでいる。。。生と死をチェカムス川の岸辺でリアルに見せつけられました。

でも悲しい死ではありません。サーモンの残骸は、川や海の栄養分となります。サーモンを食べた鳥や動物のフンは、森を豊かにします。白頭鷲は高い木の枝で優雅に食事をするのがお好みらしく、木の上でサーモンを食い尽くした後、ポトンと下に落とす事で土を育てます。

こうして川や海、そして森へと散らばったサーモンは自然界を豊かにしながら命のバトンを繋いで行くのだ。。。もちろんその昔、先住民もサーモンのお陰で冬が越せたそうです。生命の輪がリアルタイムで繰り広げられるチェカムスの森は、人間が忘れかけている大事なレッスンを教えてくれます。

自然の営みを今後もずっと紡いで行く為に、人間は何が出来るだろう?そんな問いかけをチェカムスの森は私達にそっと提示しているのかも知れません。都市に帰れば、車が走り、ネオンが瞬き、デジタル社会の真っ只中にいる生活だけど、ほんの少し足を伸ばしたその先には太古のリズムが昔から変わることなく繰り返されている。自然界では当たり前の生命の輪を目の当たりにすると、何故か背筋がシャンとする。その感覚を再確認するのがとても大切な気がして、またチェカムスの森に呼ばれたいと思うのです。

Photo by YUSHiiN