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Noiseless World

バンクーバーの短い夏も終わりに近づき、少しづつ秋の空気を感じる季節になりました。今年は6月まで冷夏で、本格的な暑さが到来したのは7月と8月の2ヶ月間。駆け足の夏となりました。
夏の我が家はよくキャンプに出掛けます。カナダはもちろん、BC州だけでも半端なく広いので、キャンプの目的地まで何回もフェリーを乗り継いだり、ハイウェイを5時間以上走り続けたりと、その過程も「旅」となります。そして回数を重ねるごとに、キャンプ地もさらに遠くへ遠くへと行きたくなります。

キャンプで過ごす時間は、私を「今」という時間にフォーカスさせてくれます。目の前に流れている一瞬、一瞬の「今」をただひたすら楽しむことを教えてくれるのです。特に予定は決めず、朝起きて晴れていれば、ハイキングへ行ってもよし。水辺が近ければ、海や湖で泳ぐのもよし。雨が降ったらテントの中で読書をする。お腹が減ったらご飯を食べて、暗くなったら火を囲み、夜空を鑑賞する。なんの華やかな行事はないけれど、のらりくらりと刻まれるシンプルな時間が、「今」と言う最高のギフトとなります。

携帯が繋がらなければ、更によし!ネット上に溢れんばかりに湧き上がってくる情報のノイズからしばし離れる時間も、また大切です。デジタルデトックスは、頭と心と体を休ませる最高の充電期間となり、自分だけと向き合う機会を与えてくれます。

ノイズは情報だけではありません。私たちはさまざまな「音」と共に暮らしています。近所を行き交う車や人々の会話、部屋の中の機械音、風の音、雨の音、動物や虫の鳴き声など、ノイズなしの世界はあり得ないと言っても過言ではありません。今回のキャンプで一番思い出深かったのは、「無音の世界」を体感したことです。真夜中にテントの中でふと目が覚めた時、何かいつもとは違う気配に気づきました。それは、水辺の音も、風の音も、全ての生きものが寝静まり、完全にノイズが消えた瞬間でした。1ミリの音さえ聞こえないという状況は、いくら自然の中でもなかなかないものです。色々な環境が奇跡的に、タイミング良く重なり合わないとノイズレスな瞬間は存在しません。自分の息も止めんばかりに寝袋の中で完璧な静寂な時を聞き入っていると、何か大きな「気配」を感じざるには得られませんでした。その時空は長く広く永遠に伸びている気がして、「宇宙とはこんな場所かな?」と思わず考えると同時に、音なき世界のパワフルさを感じました。言葉を並べてよく喋るよりも、たった一つのうなずきや微笑がパワフルなメッセージを持つように、何かを語りかけてくる印象さえ持ちます。


自分自身も日常の中で繰り広げられるノイズの一部だと意識することで、少しでも心地よい音色を奏でたいものです。キャンピングは非日常的な体験から、日常を振り返る素晴らしい機会を毎回与えてくれます。また来年も遠くへ遠くへ、何もない場所へとキャンピングに行くでしょう。
そこには「今」という一瞬を生きる喜びが待っているから…。

To the North

アラスカに生きたカメラマン・星野道夫さんが綴った「旅をする木」に出会ってから、いつかカリーブー地方と呼ばれるブリティッシュコロンビア州の北部を旅してみたい、と心の中にどこか憧れのような秘めた想いがありました。そんな想いが、この春、白樺樹液を採取しに行くという目的で実現しました。

4月は長い冬から目覚め、雪解けが始まる北の春。樹々が芽吹く直前に、白樺は大地から生命のエネルギーを吸い上げるように無色透明の樹液を出します。「森の看護婦」とも呼ばれる白樺樹液は、健康と美容に効果的な成分がとても豊富に含まれています。保湿力と抗酸化力に優れ、体内で生成することのできないアミノ酸、ヒアルロン酸やコラーゲンの保護に役立つポリフェノール、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ミネラル、そして美肌には欠かせないビタミンCなどの成分がバランスよく含まれているのです。昔から北欧やロシアでは民間療法で広く利用されている白樺樹液。いつかカナダで採取してみたいと思い続けていたところ、色々なご縁が重なり、白樺樹液を採取している農家さんに今年の春、「直接採取しに来ませんか?」とご招待して頂きました。

白樺樹液は冬と春の移行期間のほんの2週間程しか採取出来ません。この奇跡のような樹液を求めて、往復1,570kmものカリブー地方へのロードトリップを試みることになったのです。片道800kmほど、時間にして8時間以上のドライブですが、そんなに走ってもまだブリティッシュコロンビア州の中間部と言う、カナダのとてつもない距離感に圧倒されます。

北上していくと、同じ州とは思えないくらい、何ヵ国も国を跨いで旅しているような変化に富んだ美しい北の大地が広がっていました。緑深い山を越えると、一面砂漠地帯へ。

マーブルキャニオンと呼ばれる大理石のような岩山を横に、いくつもの渓谷を抜け、山火事の形跡か残る枯れた荒野が続いたかと思うと、

今度はのどかな牧草地帯が広がり馬や牛が放牧されていました。

湖水地方のような湿地帯…。

フレーザー川を見下ろす絶壁をゆっくりと走る列車を何度も追い越しながら、かつてゴールドラッシュで人々が積極的に北を目指した開拓時代のロマンとノスタルジア漂う情景…。

そして何より、永遠に続くような高原を進む中、4月ももう終わりというのに半分まだ氷を貼った湖の光景を目にした時、「あぁ、北に来たのだ!」と、その厳しい冬の終わりにある静寂な美しさに一瞬で心奪われました。

正直、白樺の事で頭がいっぱいだった私は、こんな美しいドライブが待っているなんて想像もしていなく、ドライブ中終始、カナダの美しさに改めて胸がいっぱいになっていました。

Quesnel (ケネル)という目的地に到着したのは、2日目の午後。3日間、65ヘクタールもの広大な農場の敷地に滞在しながら、白樺樹液の採取を体験させて頂きました。最初の夜は、まだ気温が0度近くに下がる中、「バンクーバーから来客が来てるから」と、仲良しご近所さんも集ってボンファイアを囲みながらBBQでおもてなししてくれました。「明日は、白樺樹液採取へ9時15分の出発だからね!」と言いながら、北の人達はお喋り好き。暖かい炎に包まれながらついつい夜更かししてしまいました。

翌朝は、胸が高なる中、夢にまでみた白樺採取へ!調べれば調べるほど、白樺樹液というのは神秘的で、採取時期も限られていますが、その保存方法も限られています。白樺樹液は、採取後2日と保たず、すぐに腐ってしまいます。こちらの農家さんは、毎年何100本という白樺から樹液を採取していますが、全てその日のうちに煮込んでシロップにしてしまいます。今年は3,000~3,500L採取予定だそうですが、多い年では6,000Lにも及ぶ樹液をシロップにしているそうです。私の目的は、白樺樹液を原液のまま保存すること。この旅を決めてから、多方面の白樺のプロや某大学の研究チームにまで問い合わせ、白樺樹液の保存方法のアドバイスを頂きました。この難題に、過去の実体験から快くご教授してくれた人達、研究資料を共有してくださった人達が頭に浮かび、「失敗は出来ない」と、採取当日の朝はちょっと緊張してしまったほどです。

実際、白樺樹液の採取作業は4人の男性チームで手際よく進められ、前日からバケツに溜まった樹液を回収していきます。1時間ほどで、200本の白樺に設置してあったバケツから400Lもの樹液を皆で運びました!

「ちょっと飲んでみる?」と、白樺に空けた穴からぽたぽたと滲み出てくる樹液を口にした時、そのフレッシュさと美味しさにまたまた感動!ほぼ無味ですが、どこかほんのり甘さを感じる優しい口当たり。大自然の貴重な恩恵を直に受ける時ほど、心が震えることはあるでしょうか?

採取後は2日にわたる長い保存作業が待っていて、こちらも時間との勝負。毎晩遅くまで食べる暇も惜しいほど、キッチンで作業に夢中になっていました。滞在最後の夜も、「お茶に行くね」と約束した仲良くなったご近所さんのミッシェルさんのお宅にも伺えず、夜9時過ぎまで白樺樹液の保存作業でクタクタになっていました。そんな所に、ミッシェルさんが真っ暗な夜道の中やって来て、「ちょっと家から出てきてもらえる?」と…。すると、「白樺好きなMINAにプレゼントがあります!」と、白樺の外皮をリボンにあしらった大きな紙袋を手渡してくれました。

そこには、彼が採取したチャーガと呼ばれる白樺のみに寄生するスーパーフードとして名高いマッシュルームの塊と、それを挽いたお茶、そして、彼の敷地内で採れたハニーの瓶が詰まっていました。その瞬間、疲れなど一瞬で吹き飛んで、北の人々の優しさに涙が溢れそうになりました。作業がやっと終わり、私に快くキッチンを占領させてくれた農家のオーナー夫妻のエロイーズとテッド、そしてミッシェルを交えて最後の晩餐。もちろん、飲み物は「白樺樹液」で乾杯!

夕飯を囲んでいる最中、ふと「寒いことが人の気持ちを暖めるんだよ。遠く離れている事が人と人の心を近づけるんだ。」という、星野さんが語っていた言葉が、最後の夜を締め括るにふさわしく頭に浮かんで来ました。初めて会ったとは思えない程、家族のように、長年の友人のように、迎え入れてくれた北の人々。短い滞在なれど、そのコミュニティーの人間力に、何よりも感動させられた数日間でした。

カリブー地方は私が想像していた以上に遠く、美しく、温かく、そしてどこか懐かしい、また戻りたいと思わせてくれるそんな場所です。私が感じたこのエッセンスを、持ち帰ってきた白樺樹液に込めながら、また新たな旅がここから始まります。

Land and Sea

どんな時代でも、どんな場所でも、人の心を感動させる普遍的な美しさに私は惹かれます。カナダの大自然は、そんな普遍的な美を、いつもさらりと私の前に繰り広げてきます。

カナダの夏は毎年9月最初の月曜日、Labour Day(レイバー・デイ)の祝日と共に終わりを告げる気がします。この日を過ぎると途端に肌寒さを感じる曇りや雨の日が多くなり、長い冬への扉が少しづつ開き始めるのです。カナダ人は6月~8月の短い夏を謳歌する為に、本当に情熱的に各地方へ駆け巡ります。「夏の間はローカル(地元)のお客とほとんど会わなくなるの。」と、近所の小売店の人が言っていた言葉をふと思い出しました。

7月末までずっと日本に滞在していた私にとって、カナダの夏は数週間しか残っていませんでしたが、1年で最も活動的で美しい季節を逃すまいと、私も残りわずかな夏の日々を精一杯謳歌しました。9月頭にキャンプで訪れたバンクーバー島にあるMiracle Beach(ミラクルビーチ)。ここを拠点とした夏休みは、特に最高の時間となりました。

何キロメートルにも伸びる砂浜に、穏やかでガラスのような海。その優しい海の向こう側には本土沿岸にそびえ立つ氷河を抱いた山々が連なっています。南国のようなサンディービーチと青い海と雪山。シュールにも思えますが、これがカナダ西海岸の典型的な情景です。

朝の引き潮時には、沢山の海の生き物が顔を出します。特にびっくりしたのは、シーアスパラガス(厚岸草)の群生。海水で育つ為、かなりしょっぱいですが、私はこの塩気が大好きで生でポリポリ食べてしまいます。

引き潮の時間にしか姿を見せない自然のアート、砂紋も惚れ惚れする美しさでした。その場に足跡を残してしまったら申し訳ない程、完璧で繊細なグラフィカルアートです。夜は天の河がくっきり見える満天の星空を上に、満ちてくる波の音を聞きながら過ごしました。ミラクルビーチは1日に何通りもの違う美しさを見せてくれる場所です。

ミラクルビーチから車で30分ほど北上したCampbell River(キャンベルリーバー)と呼ばれる小さな町は、「サーモンキャピタル」と呼ばれるサーモン釣りのメッカです。9月頭と言うのに、既に沢山の釣り人で川は賑わっていました。そこからフェリー に乗ること10分。人口4,000人ほどの静かな島、Quadra Island(クアドラ島)にあっという間に到着します。船旅でたった10分の距離だけど、ここでは全く違う時間の流れと、抜群の透明度を誇る海が待っています。

海が豊かだと、生き物も豊か。ビーチ沿いには、生牡蠣やアサリがザクザク!!海岸を埋め尽くすように生息している海藻も青々しく輝いていて、とっても美味しそう!この日の夜、海の恵みで作ったアサリのビール蒸し、焼き牡蠣、海藻ラーメンは絶品でした。

クアドラ島には、カナダ最北端のワイナリーもあります。なんと偶然にもオーナー夫人が日系カナダ人の方で、オーガニックの葡萄で丁寧な優しいワイン作りをしています。地消地産の文化が根付くクアドラ島のシンプルな営みはとても贅沢に感じます。

美しさは海だけではありません。バンクーバー島の中部を占めるStrathcona Provincial Park (ストラスコーナ州立公園)は1911年に設立したBC州で最も古い州立公園です。むか~し昔、私の中学時代、バンクーバー現地校でここに修学旅行・野外研修で訪れたのを覚えています。2,458km2と言う広大な公園は、2,416km2と言う神奈川県面積と比較するとどれだけ広いか少し想像出来るでしょうか。そんなストラスコーナ州立公園は、まさにアウトドアのメッカ。ハイキング、カヌー、カヤック、釣り、ロッククライミング、スキー、と様々なアウトドアスポーツを楽しめます。

とにかく広いので、1日に1箇所と決めて行動するのが精一杯。とある1日、公園内にあるヘレン・マッケンジー湖とバトル湖を周遊する約10kmのトレイルをハイキングしました。Paradise Meadows(パラダイスメドウ)とも呼ばれるこのトレイルは、息を飲むほどの美しさで今回の旅のハイライトとなりました。

ちょうど夏から秋に移り変わるアルペン・ツンドラの紅葉時期で、その名の通りパラダイスの美しさです。大地を埋め尽くす草木の紅葉は満開の花畑のように、秋色のじゅうたんのように、鮮やかに辺り一面を染め上げていました。

沢山の小さな実をつけた山のブルーベリーや、甘~いハックルベリーなど、北の山の恵みも沢山楽しめました。それをご馳走に飛び交う野鳥達。以前からツンドラの紅葉を見たかった私は、パラダイスメドウのハイキングはちょっと別格で、終始足を止めては夢心地の気分に浸っていました。半日のハイキングが終わる頃にはちょっと寂しくなってしまうほど。。。

出口付近で子連れの家族がどのトレイルを進もうか迷っている様子だったので、思わず「このトレイルに行って!本当に最高だから!」と送り出しました。ストラスコーナ州立公園を再訪する時は、また必ず歩きたいトレイルです。

どんな時代でも、どんな場所でも、どんな人にも、自然はその美しさを惜しみなく披露し、人の心を充電してくれます。混沌とした世の中でも、海や山はただそこにあるだけで、全ての人に大きな喜びと感動を与えてくれます。その自然の一部になった時、人がどんなに小さく尊い存在かも気づかせてくれるのです。自然にしか成せない美の技に感服すると同時に、カナダの短い夏は、私にまた素晴らしい思い出をひとつ増やしてくれました。

Climate Change is Real

生まれて初めて山が燃える姿を見た瞬間、何とも言えない虚しさと共に足がすくむ思いをしました。

BC州ではこの夏、4月から7月にかけて起きた山火事は累計1,168件にも上り、約3.4万ヘクタールの大地が燃えました。9月に入った今日でも、未だ223箇所で山が燃え続けています。あまりにも広大な数字でいまいちピンと来ませんが、8月にカナダに戻った数日後にも何百キロと離れた山火事の煙がバンクーバー にも影響を及ぼしました。その日、バンクーバーは「世界一最悪の大気汚染の場所」としてランキングされてしまったのです。

山火事の煙で太陽が隠れ空が霞んでも、きな臭い匂いが街中を包んでも、実際に山が燃えている現場でオレンジ色に燃える炎を目撃するのとでは、ハッと目が覚める様な意識の違いがありました。

観測史上ワースト3に入る今回の山火事の最中、私と夫は仕事も兼ねて山火事が多発しているBC州の内陸にあるオカナガンに行くことになっていました。オカナガンはワインの産地として有名で、カナダの中でも最も乾燥している地域です。ギリギリまでニュースを注意深くチェックしながら、慎重に旅の準備を整え向かった結果、いつものワーケーション(仕事とバケーションを合わせた旅)とは違う、深い意味ある旅になりました。

山火事は今世界が直面する大きな環境問題のごく一部に過ぎません。そして、山火事の多発する現地に住む人々の中でも様々な意見が飛び交います。「山は燃えるもの」と言う人や「良い年も悪い年もある」と言う人がいれば、若い世代の中には気候変動に対して「早くアクションを起こさなければ20~30年後に農業が出来なくなる」と危惧する声も。毎日メディアで大きく取り上げられることで、風評被害だと言う声も聞きました。同じオカナガンでも風向きによって煙の方向が変わったり、激しく燃えている地区もあればそうでない地区もあるので、夏の観光シーズン中に旅行者がコロナ禍に加えて激減してしまい、肩を落とすワイナリーも多々存在します。
「葡萄のことばかり煙の影響があると取り上げられて…。果物や他の農作物だって同じなのに、なぜメディアはワイナリーに対して厳しいのか。」と少し苛立ちを感じる声も。

個人的な経験から言うと、私が幼少期カナダに住んでいた80年代後半〜90年代当時、山火事の煙がバンクーバーにまで影響があった事は一度もありませんでした。山が燃えるのは自然のサイクルの一部であっても、その状況は刻々と悪化している事に間違いありません。

ハイウェイの両脇で黒く焼き焦げた木々が辛うじて立っている光景を目にしました。地面を這うように燻るオレンジ色の炎が揺れ動いていました。オカナガンでは珍しく、クマや野生羊や鹿が沿道に姿を表していました。きっと炎で山を追われて迷い込んで来たのだろう、そう思うと胸がズンと重くなります。頭上には絶え間なく消火活動に努めるヘリコプターが往来していて、いつもの夏とは違う「賑わい」を体験した感じです。

そんな一味違うオカナガンから戻って来て、自分の中で決めたことが幾つかあります。

①家では牛肉を食べない。もともとほとんど食べませんが、徹底しようと決意。畜産全体が排出するメタンガス排出量の80%は牛肉生産によるものです。

②ゴミを出さない。リサイクルやリユーズ(再利用)する事で、家庭内のゴミは1週間で手のひらサイズ程度に抑えられる事が出来ます。

③食品用ラップフィルムを使用しない。前から気になっていたサランラップなど、プラスチックゴミ削減の為、この機会におさらばする事にしました。

④衣類は天然素地のものを選ぶ。海洋プラスチック問題の大きな一因は、私達が纏う衣類からです。化学繊維ものはなるべく買わずに、肌にも環境にも優しいリネン、シルク、オーガニックコットを中心に選んでいます。

⑤買い物にはエコバックを。食材の買い物だけでなく、日用品にも必ずマイバックを持参。カフェや仕事現場には、マイボトルを。リサイクル用品だって再生するのにエネルギー消耗するのでなるべくリサイクル用品の数も減らせるように心掛けています。

まずは自分が始められる小さな行動の変化から環境問題にもっと取り組もう。そう再確認させてくれた今回の旅でした。

最近目に留まった言葉で、私の原動力になっている言葉は「You must be the change you want to see in the world.」(あなたが見たいと思う世界の変化にあなた自身がなりなさい。)
私は100年後も200年後も美しい世界を見たいから、今自分が生かされている時間の中でどれだけ自分の周りを汚さずに立ち去れるか、楽しみながら頑張っていこうと思います。ひとりひとりの小さな行いが、この大きな地球をきっと綺麗にお掃除してくれる事を信じて…。

Smell the flowers

4月の中旬から日本に一時帰国中の私に、バンクーバーの家のバルコニーから花便りが届きました。出発直前に撒いたスイートピー(さやえんどう)が元気よく開花している様です。花の後はちゃんと実をつけてくれるだろうか。。。写真を見ながらそんな事を思いつつ、この夏、我が家の小さなバルコニーガーデンの成長が見れずにちょっと寂しい気持ちになりました。

バンクーバーでは、春から夏にかけてそこら中に花が咲き乱れ、通りを歩いているだけでもふんわりと甘い香りが漂い、何とも夢心地な気分になります。特に夏に咲くワイルドローズの香りは格別です。

その反面、東京にいる時間は自然を身近に感じることが極端に少なくなります。都会の時間の流れが早すぎるのか、それとも眠らない都市のノイズの影響か、この2ヶ月ほどジャーナルに書く言葉がなかなか湧いて来ませんでした。身の回りの環境が人に与える影響は、自分の想像以上に大きいものではないかとつくづく思います。

都会のど真ん中で、それでも私は自然を探しているのでしょう。最近、何気なく道端や住宅地の片隅に咲いている花を目にする度に、可愛くて思わず足を止めてしまいます。

名前の知らない花に遭遇すると「あら、あなたのお名前なんて言うの?」と、つい心の中で尋ねてみたり…。

そして、決して理想的な環境でなくともカラフルに、可憐に、そして逞しく咲く花の姿にちょっと元気をもらったりします。

美しい花や小さな自然の営みを目にすると、またふわっと頭の中に言葉が浮かんで来て面白いものです。普段カナダではごく自然にジャーナルを書いていますが、私の語る言葉は単純にカナダの美しい情景にいざなわれているものなのかもしれません。

忙しく走り回る東京で自分の言葉を見つめる時間はなかなか無いですが、どんな忙しい日常でも、 ちょっと足を止めて花と会話をする時間を大切にしたいなと思います。

最後に、スイートピーの花言葉は花の色によって異なる様ですが、一番響く言葉は「ほのかな喜び」。私と花の時間にぴったりと合う言葉です。

Summer of 2020

秋分の日が過ぎ雨が降り始めると、バンクーバーの冬はもうすぐそこまで来ています。今年の夏は海外渡航や国内移動に厳しい規制があったにも関わらず、「最高の夏だった!」と言う声をよく聞きます。私もその1人です。

国外に出られない分、自分のいる場所を思いっきり満喫した夏でした。前年よりもっとキャンプに出かけ、山を歩き、湖や海で過ごしました。ずっと行きたかったワインカントリー・オカナガンにも旅する事が出来ました。

短い夏を活動的に動き回りましたが、それでもブリティッシュコロンビア州内のごくほんの一部。カナダがどれだけスケールの大きい国土なのか、同時に思い知らされた年です。

旅もそうですが、今年の夏は私の中でハイライトとなるイベントが2つありました。1つは、ローカルサポートプロジェクトVOICEを通じて知り合った、Ocean Ambassadors Canada (オーシャン・アンバサダーズ・カナダ/ 以下OACの創設者アリソンとの出会い。OACはプロジェクトVOICEが継続的に寄付をしている非営利団体で、海洋汚染問題に積極的に取り組んでいます。「海を好きになってもらう事で、海洋汚染問題に興味を持ってもらう事」を目的とし、地元の小学生を対象にスタンドアップパドルを教えて、海で楽しく遊びながら海洋プラスチックの問題や危機に直面している海洋生物について教え、変化を起こす行動を呼びかけています。

夏の終わり、アリソンが人生初スタッドアップパドルに誘ってくれました。水際で海を見るのと、パドリングで沖まで漕いで観察するのとでは景色がまるで違います。自分の真下でアザラシが小魚を追っている姿や、クラゲの大群がふわふわと波に揺られながら浮遊していたり。目の前の海の中で繰り広げられる別世界に魅了され、OACの思惑通り海洋汚染についてもっと勉強しようと思うようになりました。

海の中で何が起こっているのかは地上と違って、自分の目で確かめる事は難しい。ですが、マリンスポーツを通じてとてもわかり易く、より親身に海洋汚染問題を考えるきっかけを作ってくれます。「海」と言う共通の好きなものを通じて、アリソンと彼女の活動に出会えた事は、私の夏をより有意義なものにしてくれました。

2つめのハイライトは、The North Shore News(ノースショア・ニュース)を通しての出会い。The North Shore Newsとは私が今住んでいる地元新聞社で、1969年創業以来コミュニティーに密着したネタを取り上げている新聞です。新聞と言うものが主流でなくなり、オンラインに移行するも今は毎週水曜日、1回だけ新聞が発行されています。以前から私はこのThe North Shore Newsの愛読者で、彼らから「ローカルコミュニティーを支援しているプロジェクトVOICEを取材したい。」と連絡が来たときは、もう大喜び!!そして、流石に情報網が広いよね、と感心しました(笑)。

何回かメールでやりとりをし、電話インタビューを受けている最中にふと気がついたのです。やりとりをしている記者の名前が何か聞き覚えがあるなぁ〜、と。すぐに電話後、新聞を探ってみるとやはり!!!The North Shore Newsで私が一番大好きな記事を書いているアンディーさんが担当者だったのです! アンディーさんは元はスポーツ記者ですが、The North Shore Newsでは「Laugh All You Want」と言うコメディータッチのコラムを書いています。社会的問題を独特のユーモアセンスで面白おかしく書いている文章が私はとても大好きなのです。

そんな敬愛するアンディーさんに記事を書いてもらえるなんて、人の巡り合わせとは何とも不思議です。ちゃっかりお茶の約束までして、つい先日直接お会いする事が出来ました。

この夏を振り返ると、そんな素敵な巡り合わせが多々ありました。限られた行動範囲で向かった美しい場所、出会った美しい人々、共有した有意義な時間…。とても身近なところで、人生の広がりを感じさせてくれた夏。パンデミックで強いられた特別な時間は、最高の夏を届けてくれました。

Wine Country Okanagan

カナダは実はワインの国です。大半が自国消費されるので、ほとんど輸出される事はありませんが、テロワール(風土と土地の個性)を重視したクオリティーの高いワインが数多く生産されています。その為、環境やサステイナビリティーに配慮したワイン作りが主流になってるワイナリーが多いのも特徴です。

BC州は、3702019年度統計)ものワイナリーが存在し、年間100万人以上の観光客で賑わいます。その中でも、オカナガンは「世界一美しいワインの産地」と呼ばれ、カナダワインの代表産地。南北に長くのびるオカナガン湖を中心に、ケローナから南はサマーランド、ペンティンクトン、ナラマタ、最南のオソユースとシミルカミーン渓谷まで、沢山のワイナリーが点在しています。

毎年大勢の観光客で賑わうオカナガンですが、コロナの影響とワイナリーの現状を、ローカルサポート「VOICE」の一環で取材して来ました。バンクーバーの日本語情報誌、「ふれいざー」9月号に投稿させて頂いた記事を織り交ぜながら、オカナガンの魅力をご紹介します。

オカナガン渓谷に隣接するシミルカミーン渓谷は、急斜面の山に囲まれた細長い渓谷です。風が絶え間なく吹くため害虫から守られ、農薬等の散布をあまり必要としない特徴もあります。「カナダのオーガニックキャピタル」として知られるほどオーガニック農法が盛んな地域でもあります。

ここシミルカミーン渓谷でナチュラルワインに力を注ぐ家族経営のワイナリー、Orofino –オロフィノ」。オーナー夫妻は元教師と元看護婦という異業種出身。2001年にサスカチュワン州から引っ越して来た時は、トラクターに座った事もない農業未経験者でしたが、今はシミルカミーン渓谷を代表するオーガニックワイナリーです。

サステイナビリティーにも拘り、わら式の屋内で温度管理は自然に任せ、じっくりとワインを自然発酵させて行きます。ワイナリーの電力も太陽光発電で補い優しい温もりを感じます。元看護師の奥様は元看護師なので、テイスティングルームの安全&衛生管理が徹底されていて、安心した時間を過ごさせてくれる配慮も流石。

「ワインキャピタル」と呼ばれるオカナガン渓谷の南に位置するオリバーは、BC州の約半分の葡萄畑があり、ここだけで40以上ものワイナリーが営まれています。パンデミックの真っ只中でも、新しいワイナリーが幾つか誕生していました。

French Door-フレンチドア」は今年6月にオープンしたウェスト・バンクーバー出身の家族が経営する可愛らしいワイナリー。フレンチシック漂う白を基調にしたテイスティングルームはフランスの田舎のファームハウスのイメージ。もちろん葡萄は全てオーガニック&自然発酵のワインです。プロヴァンススタイルのロゼが人気で、なんと今年は生産したワインが7月末には全て完売という好調スタート!これからが楽しみなワイナリーです。

Phantom Creek –ファントムクリーク」も同じくオリバーに6月に誕生したばかりの新星ワイナリー。オーガニック&バイオダイナミック農法のこだわりと世界有数の最先端の施設で作られるワインは「最高峰」という名が相応しく、今現在はワイナリーかオンラインオーダーのみ、ここのワインを飲む事が出来ます。

ゲートを抜けて小高い丘に向かってドライブしていくと、別世界のような美しい光景が待っています。美術館のように美しい施設、絶景に溶け込んだモダンなパティオ訪問の際は、ワイナリーツアーとテイスティングを必ずセットに予約して欲しい!CEOのシリー氏は、カルフォルニアとチリの有数なワイナリー経験の持ち主。ファントムクリークのワインを世界レベルのワインにすると張り切っています。

場所を移動して、お次はウエスト・ケローナへ。1859年、ここケローナで最初のブドウの苗が植えられたのがオカナガンワインの始まりと言われています。

Kalala Oragnic –カララ・オーガニック」のオーナーのカーネイルさんはインドのパンジャーブ出身でシーク教徒。「お酒を飲まないワインメーカー」として知られていますが、彼の作るワインは数々の賞を受賞しています。

カララは「奇跡の場所」という意味。コロナの影響で5月・6月とワイナリーを閉じていた際、支えてくれた人々に感謝を込めて、夏の間BC州内1ケース以上から送料無料キャンペーンを実施中。毎年限定でリリースされるオーガニックアイスワインも絶品です。

サマーランドは、オカナガン湖の南西に位置するなだらかな葡萄畑と青々とした湖が望めるとても美しい場所です。

ワイン作り8世代目の歴史あるドイツ系家族がサマーランドに移住を決めたのは2003年。8th Generation・エイスジェネレーション」は、今ではこの地域を代表する実力派ワイナリーです。もちろんお得意はリースリング!種類も豊富!スパークリングロゼには自家製炭酸を注入していると言うこだわりも。古い農家を改築したウッディーなテイスティングルームの中は、家族の歴代写真やローカルアーティストの作品が飾られ、友人宅に招待されたような居心地良い雰囲気が漂います。家族総勢でワイン作りに勤しむ姿勢にもほっこりさせられます。

Sage Hill・セージヒル」はサマーランドの外れにある、静かな道の行き止まりにあるワイナリー。周りはラベンダーの花が咲き乱れ、すぐ目の前にはオカナガン湖が広がり素敵な時間が流れています。

元大工でバーナビー出身のオーナー、リックさんがワインに興味を持ち始めたのはなんと幼少期!祖父が裏庭で穫れた葡萄で手作りワインを生産していた事がきっかけでした。ワインは全てオーガニック&ビーガンワイン。バンクーバーの高級ホテルを始め、数々のFarm-to-Tableのレストランに卸しています。因みに、彼の息子が近年手掛ける「Keenan-キーナン」ワインも人気急上昇中だそう。

最後の訪問地は、オカナガン湖の東側に位置するナラマタ。丘の斜面にびっしりと葡萄畑が連なり、大小様々なワイナリーが肩を寄せ合うように点在しています。その中をすり抜けるように走るナラマタロードをドライブするだけでも楽しい気分になります。

La Frentz –ラ・フレンツ」はナラマタを代表する実力派ワイナリー。オーストラリア系オーナーは、母国オーストラリアとオカナガンで長年の経験を持つベテラン。ここで7年間働くワインメーカーのドミニクさんも同じくオーストラリア出身。

サステイナブル農法で、「美味しい葡萄を育てる事が美味しいワインを作る」と断言。葡萄収穫後はあまり人の手を掛けません。ほぼ全てのワインが無清澄・無濾過で作られているのは、葡萄に絶対的な自信を持つ証です。ポートフォリオとリザーブの2種類のテイスティングが用意されていて、出来れば両方トライ!迷ったらリザーブがおすすめです。

Poplar Grove – ポプラーグロウヴ」は、オカナガンを代表するワイナリーで、男系の一族。初代オーナー・父親トニーさんと4人の息子家族(孫5人も全員男子!)がワイナリーの全ての業務に携わっています。生産されたワインの95%BC州で消費されると言うローカル人気が根強いワイナリーでもあります。敷地内にはレストランもあり、ワインとペアリングしながら食事も楽しめます。コロナ危機で経営難に曝されている飲食業界の支援の為に「レイクビューロゼ」のオンライン売り上げ毎$5BCホスピタリティー基金に寄付しています。でもやはり、ここの看板はピノグリ!作っても作っても足らない程の人気ぶりです!

華やかなイメージのオカナガンですが、今年は色々なチャレンジに直面しました。ワイナリーの応援は、現地へ訪れる事はもちろんですが、家に居ながらにしてサポート出来ます!クラブメンバーに入会したり、直接オンラインオーダーしたり、レストランやバーで意識的にカナダワインを飲んでみたり。

これから秋の収穫を迎えるオカナガン。今年は各テロワールでどんな葡萄が育ち、どんなワインになっていくのか。それぞれのワイナリーの想いが詰まったワインと来年出会えるのが待ち遠しいです。

Photos by YUSHiiN LABO

 

 

Under the Stars

降り注ぐような満天の星空を、キャンプで訪れた Kentucky Alleyne Provincial Park (ケンタッキー・アレイン州立公園)で見ました。沢山の流れ星と七色に発光するカラフルな星達。この世のものとは思えないほど幻想的で静寂な光景に時間を忘れ、ただ空を見上げて夜を過ごしていました。

ケンタッキー・アレイン州立公園はケンタッキー湖とアレイン湖から成る州立公園で、バンクーバーから内陸へ車で3時間ほどの場所にあります。公園のゲートから更に6km程行くとそこには2つの湖の他には何もない絶景キャンプ場が待っています。

湖の底に沈殿した火山灰が太陽の光が射すことで、水面を鮮やかなトルコブルーとグリーンに輝かせます。水辺には花が咲き乱れ「パラダイス」という言葉がぴったりの場所です。

柔らかい陽が当たる早朝の湖は抜群の透明度。数メートル先までガラスのように澄んでいて、思わずボーッと見入ってしまう程。静止した湖の対岸のどこからか、毎朝狼の遠吠えが響き渡って来るのが日課です。

真昼の太陽は湖全体をまるで絵具を垂らしたかのように、鮮やかなグラデーションへ変化させ、、、

その中をゆらゆらと魚が泳ぎ、時折ポチャンと水面を飛び跳ねる音が聞こえます。何だか北国の湖と言うよりも南国のリゾートに来ているような感覚にさえなります。

魅力的なトロピカルカラーとは裏腹に、水は冷たいですが泳がない訳にはいきません!遠浅な湖をちょっと沖まで泳ぎミルキーブルーの水に包まれると、もう冷たさなど忘れて何とも心地よい気分。

汲み取り式のトイレと水場しかキャンプ場にはありませんが、大自然の中にいる時間は自分を心から満たしてくれます。真の豊かさとは、モノや便利さに依存する事ではなく、身軽になって初めて見えてくるものとキャンプに来る度に確信するのです。

今年の夏は沢山の制限が敷かれ、会いたくても会えない人、行きたくても行けない場所も多いですが、最高のパラダイスは実は直ぐそばにあるという事をカナダの夏は気づかせてくれます。

タイトル写真 by YUSHiiN

Go Camping!

7月も半ば過ぎようやくバンクーバーにも遅い夏がやって来ました。今年は新型コロナウィルスの影響で必要不可欠な海外渡航以外は奨励されていませんが、ローカルを楽しむのはOK! BC州立公園運営のキャンプサイトが予約を再開した525日の朝7時には、5万人以上のアウトドア好きカナダ人が殺到してシステムがクラッシュした程でした。

私も7月に入り、オカナガンへキャンプに行って来ました。オカナガンはBC州最大のワインの聖地。同じ州内でもバンクーバーから高速に乗りノンストップで4時間は掛かります。キャンプしながらワイナリー巡り、と言う少し早めの夏休みを満喫して来ました。

毎年夏の恒例となったキャンピング。今回の旅の前半はオカナガン地域の南端、カナダとアメリカの国境にあるOsoyoos(オソイヨーズ)にあるオソイヨーズ湖のど真ん中に突き出ている半島、Haynes Point(ヘインズ・ポイント)州立公園のキャンプサイトを利用しました。38ヘクタール程の小さくて細長い州立公園ですが、その人気はNo.1! 毎年キャンプサイトの予約が始まる4ヶ月前には秒殺で埋まる人気の場所なのです。

ここは鳥の生殖地でもあって、終日沢山の可愛らしい鳥が飛び交い、彼らの鳴き声がノンストップBGMのように聞こえて来ます。Burrowing Owl (アナフクロウ)の会話するような掛け声も初めて聞きました。

朝は鳥の声で目覚め、柔らかい朝日を湖畔で浴びて…

地消地産のフルーツを朝食にとり、

日中はワイナリー巡り。

オレンジやマゼンタに染まる岩山を眺めたあと…

火を起こしてキャンプファイヤーの前でゆっくりと夕飯の準備をしながら、オカナガンワインで乾杯!!満点の星を仰ぎながら寝る静かな夜は本当に贅沢の一言です。

しかし!キャンプなので優雅なシーンだけではありません。特にへインズ・ポイントは湖と谷間の真ん中に位置している為、夜になると突風が吹き荒れる事がしばしばあります。ある日の夜は時速92km強の風が一時的に吹き、テントが飛ばされるか壊れるか不安で、夕飯どころではありませんでした。そして、鳥達もびっくりしたのか翌朝は至る所糞だらけ

後半に泊まったオカナガン・レイク州立公園のキャンプ場では、乾燥を避けるために自動稼働するスプリンクラーに気がつかず、出掛けている間に干していたバスタオルがぐっしょり濡れると言うハプニングもありました。

キャンピングにはとにかく色々とありますが、美しい自然が目の前にあったらそんなことはどうでも良し!やはりどんな宿泊施設より最高に贅沢な時間を過ごさせてくれます。今年前半は「Stay Home」を経験したからなおさら。自然と一体となって過ごす楽しさと厳しさ、唯一無二の時間を経験させてくれます。

Fly High

カナダにいると空を見るのが一段と好きになります。遮るものがない壮大なキャンバスに無限大の可能性を魅せる空の表情は、自分の中に様々な感情と感動を涌き起こしてくれます。

特に冬の澄み切った空気に広がる夕暮れ時。どうしたらこんなに美しいグラデーションが、カラーが創造出来るのだろうと、いつもぼーーっと魅入ってしまうのです。

仕事柄、飛行機に乗ることも多く、上空から眺める空の景色も大好きです。大自然の中にいる時と同様に、上空を飛んでいる自分と空とその下の広がりは、いつも人の存在をとても儚く、そしてちっぽけに感じさせます。

通り過ぎる空の下、どんな人や生活が繰り広げられているのだろう。そして、長く遠く伸びた地平線のそのまた先の空の下。そこには何が待っているのか、まだ見ぬ景色にちょっとしたロマンを抱きます。

インターネット上で指先一つ動かせば簡単に情報が手に入る時代。人はあらゆる情報を「知った」つもりになったり、どこへでも「行った」つもりになりやすいのではないでしょうか。でも、真実はやはり自分の目で見て、手で触れて、風を感じ、匂いを嗅いでこそ、その人に語りかけてくる気がします。

新年早々、仕事で初めて中国に行く機会がありました。中国は常に興味がありいつか行ってみたいと思っていた国です。中国系の友人や実際に行ったことのある人、もちろんネット上でも沢山の情報を入手していたので、ある程度の知識は持っていたつもりでしたが、やはり百聞は一見に如かず!!実際に訪れてみると、想像以上のサプライズ、今までの見解や関心を改めてくれる貴重な機会となりました。そして何より現地に住むローカルの人達と直接触れ合い交流することが、一番の「真」の体験となるのだと思います。

その瞬間その場所に居ないと味わえない感覚は、空が描き出す「瞬間の美しさ」と似ていて、自分にとって必要不可欠な肥やしであり、さらに新しい広い視野へと導いてくれます。

そんな5感で感じる体験を大切に、自分自身を育んで行きたい。まだまだ限りなく存在する未知なる世界へと繋げてくれる美しい空の広がりを見ながら、2020年がスタートしました。

 

Circle of Life 2019 – Fall in Cheakamus

バンクーバーから海岸沿いを70km以上北上した場所に、Cheakamus Center (チェカムスセンター)はあります。昔は先住民であるSquamish Nation(スコーミッシュ族)が暮らした土地で、165ヘクタールもの広大な自然をノースバンクーバー教育委員会が所有し、子供から大人まで参加できる様々な自然&生態系教育プログラムを提供している貴重な場所です。

チェカムスは「行く」より「呼ばれる」と言った方が何だかしっくり来ます。実際、チェカムスの森は普通の森とはちょっと違って精霊が宿っている、そんな雰囲気が漂っています。

太古のままの原生林は根元から枝の先までびっしり苔に蒸され、

ふかふかな絨毯の様な柔らかい土とサーモンが遡上してくる清流があり、秘密の基地みたいな森全体が何か語りかけてくる、そんな魅力があるのです。

10月初め、2年に1度遡上してくるピンクサーモンがチェカムス川を賑わせている季節に、スコーミッシュ族のメディスンマン、Henry Williams(ヘンリー・ウィリアムズ)さんから12,000年以上も前から伝わる薬草について学ぶワークショップがありました。Devil`s Club(デビルズクラブ)と呼ばれるその薬草は、名前の通り強い毒性を持ち、釘の様なトゲで枝全体が覆われています。

そんな危険な外皮を剥ぐと、青々しい香りと共に鮮やかな緑色をした内皮が顔を出します。

何故かこの青い皮だけに様々な効能があるそうで、お茶、ティンクチャー、バーム等にして、主に痛みを伴う病気や怪我、そして炎症などに効果があるそうです。北米ではアラスカ人参とも知られています。

現代社会に生きて来たヘンリーさん。奥さんの持病がきっかけで、忘れかけていた先祖の知恵が詰まった薬草療法の道に再び戻って来たそうです。森からの恩恵は偉大である。そんな語らいの中で、「デビルズクラブはマザー(母体)を残して刈って下さいね。また成長させないといけないからね。」と教えるヘンリーさんの柔らかい言葉に、先住民と自然界はお互いを敬い、とてもバランスのとれた関係性であることを垣間見ることが出来ました。

次にチェカムスに呼ばれたのは、1ヶ月後。森とサーモンについて学びに行きました。

前回のピンクサーモンに代わりシロサケが川に帰って来ていて、それを狙って西海岸中の白頭鷲がこの周辺に大集合!いつもは「見れてラッキー!」な鷲が、頭上を見渡すとあちこち優雅に秋空を仰ぐ姿がありました。

「わぁ!サーモンの匂いがする~!」と、一緒に参加していた地元の小学生くらいの女の子。森の中で学習しているとサーモンの香りが自然と分かるんだな、と感心してしまいました。チェカムスの森は10月から1月までの間、サーモンの香りが漂います。それは産卵を終えたサーモンや餌として食べられたサーモンの死骸が川岸に打ち上げられているからです。

死骸と言うより綺麗に食べられたサーモンは、まるで化石みたいに骨だけになっています。何て無駄なく食べるのだろう!!と思わず感動する程。

更に、この時期に転がっている骨のほとんどは先月勢い良く泳いでいたピンクサーモンと聞いてびっくり!死を迎えた跡のすぐ横で、別の命の群れが続き懸命に泳いでいる。。。生と死をチェカムス川の岸辺でリアルに見せつけられました。

でも悲しい死ではありません。サーモンの残骸は、川や海の栄養分となります。サーモンを食べた鳥や動物のフンは、森を豊かにします。白頭鷲は高い木の枝で優雅に食事をするのがお好みらしく、木の上でサーモンを食い尽くした後、ポトンと下に落とす事で土を育てます。

こうして川や海、そして森へと散らばったサーモンは自然界を豊かにしながら命のバトンを繋いで行くのだ。。。もちろんその昔、先住民もサーモンのお陰で冬が越せたそうです。生命の輪がリアルタイムで繰り広げられるチェカムスの森は、人間が忘れかけている大事なレッスンを教えてくれます。

自然の営みを今後もずっと紡いで行く為に、人間は何が出来るだろう?そんな問いかけをチェカムスの森は私達にそっと提示しているのかも知れません。都市に帰れば、車が走り、ネオンが瞬き、デジタル社会の真っ只中にいる生活だけど、ほんの少し足を伸ばしたその先には太古のリズムが昔から変わることなく繰り返されている。自然界では当たり前の生命の輪を目の当たりにすると、何故か背筋がシャンとする。その感覚を再確認するのがとても大切な気がして、またチェカムスの森に呼ばれたいと思うのです。

Photo by YUSHiiN

A Journey of Pilgrimme – part 2

Pilgrimme(ピルグリム)のシェフ、Jesse McCleerly(ジェス・マックリーリー)の1日は朝の8時、淹れたてのコーヒーと共に始まります。レストランの営業日はそこからノンストップ。夜中までひたすらキッチンに立つのです。休日は買い出しや仕込みに追われ、5月に読み始めた村上春樹の小説も1ページもめくれない忙しさ。

そんな多忙なシェフを支えるように、農家や近隣の住人が家庭菜園で採れた珍しい食材をひっきりなしに運んでくれます。全員の収穫をどう平等に取り扱うかが至難の技で、「とても贅沢な問題だけど…。」と笑って返すシェフに、島の人達は「来年はどんな野菜が欲しいの?何を作って欲しい?」とリクエストを聞いてくるんだとか。そして決まってシェフは、その土壌に最適な野菜を育てて下さいとお願いするそうです。

観光客が少なくなるローシーズンは、Pilgrimmeの大半のお客はローカルに入れ変わります。自分達が育てた野菜が、シェフのマジックによってどんな変化を遂げるのか、そんな期待と誇りを持って皆食事を楽しむのではないでしょうか。シェフの掲げる地消地産は、温かさと微笑ましさに包まれたローカルコミュニティーとの絆の深さあってのものなのです。

彼らの農場まで出向く時のドライブも、シェフにとって貴重な時間。運転しながらの束の間の静かな時間と、その先で手にとったフレッシュな野菜を見た瞬間に料理のインスピレーションが湧くそうです。

1で変わるメニューもあれば、1回きりで終わってしまうものもある。「全ては自然の成り行きで進んでいるんだよ」と、柔らかく語るシェフの生き方そのものが、料理に投影されている気がします。

レストランがお休みになる12月半ば~3月は、好きな読書やハイキングを楽しんだり、新しいレストランを試しに行ったり、時々友人の厨房に助っ人で入ることもあるそう。そんな行事をこなしているうちに春がやって来て、Pilgrimmeのキッチンがまた賑やかになります。

Pilgrimmeもそんな彼の日々に沿ってゆっくりと変わります。長い計画は1年先までが精一杯だから、とりあえず来年の夏にはパティオで楽しめるランチサービスをスタートする為にちょっと改築したい。余裕があれば、コースメニューの他にシェアプレート(大皿メニュー)やフィンガーフードを加えてみるのも楽しいかも。と、今の形に留まらず、彼自身の旅の途上で自由な構想と「成り行き」で変化していく様がとてもピュアでしなやかで新鮮に映ります。

因みに、レストランPilgrimmeのスペルはデンマーク語。英語スペルは「Pilgrim」で遠い長旅をして聖地に向かう巡礼者を意味しますが、シェフの過ごしたデンマークのNOMAでの時間は彼自身がPilgrimmeでした。

遠く離れた場所を好み、旅を経てしか辿り着けない山小屋のテーブルに座った時、シェフの次なるジャーニーへと招待されて行く唯一無二の存在のPilgrimmeはガリアノ島の青い森の中にひっそりと佇み、旅人を温かく迎えてくれます。

Photo by: YUSHiiN

[IN ENGLISH]

Pilgrimme is closed from mid-December to March.  During this time, McCleerly enjoys going on hikes and catches up with his reading.  It’s also a time he gets to recharge but it sounds like he sometimes doesn’t get too far from the kitchen.  He has been known to help at his friend’s restaurants in the city and enjoy a meal or two at any new establishments.  Once it starts to warm up for Spring, McCleerly is back at his kitchen.

A typical day at Pilgrimme begins at 8am with a freshly brewed coffee. It ends well into the night after all the patrons and staff leave.  He may find himself away from the restaurant on his days off but it is usually filled with errands to help with food preparation like picking up ingredients from the local farmers and foraging the forest grounds.  

The dedicated farmers appreciate the busy chef and often drop off their yield as a loving gesture of support.  The Island’s gardeners also find their way to drop off their unique harvest to the chef; a true symbol of sharing rooted in Galiano.  McCleerly remarked that figuring out how to use all the abundance is a dilemma that he is always happy to have.  When the farmers asked what kind of crops he would like to see grown for the coming season, his supportive response was always “Whatever works best with your soil”.  I felt a deep respect and an awareness of each other’s importance between the smiling chef and the loyal farmers of Galiano Island.  The farm-to-table concept of Pilgrimme is deeply linked to the tight-knit support and love in the island community.  

I was told that local residents often fill the cabin during the shoulder season when there are fewer tourists.  I was in awe that the island community shows its support this way too.  I imagined how it would feel like as a resident dining at Pilgrimme.  I could only appreciate that their hearts must fill with pride when they are nourished by their harvest, their Galiano.  It must feel gratifying and encouraging especially because it is made by McCleerly who is equally passionate about Galiano as they are.  

McCleerly explained how he often finds inspiration when he visits the farmers.  The drive, the farm smell and the fresh produce in hand all help him discover what to create for the spread at Pilgrimme.  His menu is an organic concept.  There may be menu items that change weekly, and some may only be offered at one sitting.  This nonrestrictive approach to creating the dishes work in harmony with the Island and McCleerly’s vision.  After spending some time with him, I could see that the process of making his dishes was an embodiment of how McCleerly viewed life as well.  He focuses on the present moment and tries not to think too far ahead.  Small changes happen as they happen.  He ponders about a new lunch service on the patio next summer.  Ideas of adding share-plates or finger foods run through his imagination.  Rather than forcing a course of action, McCleerly cherishes the process of change when it feels ready to do so.  He treasures the journey thoroughly and deliciously.  

The namesake of his restaurant came full circle to me.  Pilgrimme is the Danish equivalent of pilgrim, paying homage to his time at NOMA in Copenhagen.  I encourage you to find your way to the blue forest of Galiano Island.  On your journey, smell the salt in the air and feel the waves underneath you.  On your walk, breath the forest heavens and listen to the twigs and leaves on each step.  When you see the glow, anticipate the warmth and make your way closer.  When you hold the door open, prepare your five senses.  I assure you, this is a Pilgrimme worth making.
English Translation by Anna Sano

 

A Journey of Pilgrimme – part 1

都市の中心からずっと遠く離れた場所。旅をしないと辿り着かないような人里離れた場所にレストランを作りたい。そんな想いで、ガリアノ島にあるFarm-to-Tableレストラン、Pilgrimme(ピルグリム)は誕生しました。2015年にオープンすると瞬く間に同年のカナダの新しいレストランTOP3に輝き、それ以降もベストレストラン100選の常連を貫いています。

ガリアノ島の旅行を決めたのも、Pilgrimmeを訪れてみたかったから。レストランで旅先を決めるなんて今までにない経験です。こんな小さな島でピークシーズンには予約は1ヶ月前に埋まり、カナダ全土から、世界各地から、人々が食べにやって来ます。1年の内オープンするのは約9ヶ月、週4日、毎晩25名限定に振舞われる料理とはどんなものだろうと、ずっと気になって仕方ありませんでした。

Pilgrimmeで食事をして貰うことはガリアノ島を体験して貰うこと」と、語るシェフのJesse McCleerly(ジェス・マックリーリー)は、「スターシェフ」と言う肩書きとは裏腹にゆるやかな川の流れのような佇まい。伝説のレストランNOMAでの見習を経て、カナダで自分のレストランを開く場所を探していた最中に、偶然ガリアノ島と巡り会ったそうです。半年以上置き去りになっていた元フレンチレストランを改装して、森の中にポツンと暖かい灯がともる居場所を作ったのです。

実際、Pilgrimmeの敷地に入ると何だか実家に帰って来たような、心がストンと落ち着く空気が漂っています。長い旅路の先にたどり着く山小屋の中は、モダンでいてどこかノスタルジック。「ただいま~。今日のご飯なに?」なんて会話があっても不思議でない居心地の良さがあります。

徹底的な地産地消のこだわり、環境へのインパクトも配慮しつつ、シェフ自ら海や森に繰り出して、その土地のその時の恵みを採取します。

カヤックを漕いで取った昆布、ビーチに生えている海草、森に生息するキノコや葉や枝も料理に加わり、それでもどうしても島で手に入らない野菜やお酒類を、フェリーに乗って近郊のビクトリアやバンクーバーから仕入れて来るそうです。

Tasting Menuと呼ばれる8コースディナーの品書は、使われた食材がごくシンプルに綴られているだけですが、実際に見て食すと、とっても複雑な素材のコンビネーションプレーに驚くばかり!

特に可愛らしい日替わりのSnacks(スターター)。ローストされたかぼちゃに発酵したローズの花びらとカリカリに焼いたワイルドライスが添えられていて、香り・食感・味ともに絶妙なコンビネーションで最初からノックアウト!スタッフも「まだ新しいメニューで私も食べたことないのよ」と羨ましそうに語ってくれました。

5感で楽しませてくれるメニューは島の風土と季節をテーブルに運んで来てくれます。

料理を引き立てるつけ添えのオイル、発酵も、麹も、全て自家製。焼き上げられた熱々のポテトと古代米のサワードウブレッドのお供はお手製の焦がしタマネギのバター。ホイップクリームのようにふわっふわっで、これだけでお酒が進んでしまう程でした!

一つ一つの調味料や脇役の全てがガリアノ島の「今日」の味を表現しています。

日が経っても、レストランで体感した味を一品ずつ覚えているとはなんて素敵なことでしょう。旅のアルバムの様に、一度食べたら忘れないスペシャルな思い出を作ってくれる、そんな場所です。

(後編へ続く)Photo by YUSHiiN

[IN ENGLISH]

Pilgrimme – A farm-to-table restaurant quietly found its place on Galiano Island in 2015.  A place where their patrons travel far from the city to experience all of what Galiano has to offer from its land and surrounding waters.  It became one of Canada’s top 3 restaurants in its opening year and has continued to rank highly as one of the best restaurants to dine in Canada.

I wanted to make my way to Pilgrimme so I carefully planned my travel to Galiano Island with the secluded destination in sight.  It was genuinely a unique experience to have this restaurant as the reason for my travel.  The restaurant operates 9 months out of the year.  Reservations have to be made at least a month in advance during the peak season as people from all over Canada and around the world come to taste the culinary magic.  Only 25 lucky patrons get to dine on each of the 4 nights per week during the open months.

I had the pleasure to meet the owner and chef.  “To eat at Pilgrimme is to experience what Galiano Island is,” says chef Jesse McCleerly, whose presence is like a gentle flowing river.  His demeanor was a beautiful contrast to what I would have expected from his title of Canada’s “star chef”.  After an apprenticeship at the legendary NOMA restaurant in Denmark, McCleerly jumped on the chance of a vacant property on Galiano Island.  He transformed the former French restaurant into a warm and inviting place where people can come to be nourished by the surrounding landscape.  Pilgrimme stood softly lit in the evening forest; the glow from the restaurant enticed the way for its visitors.

When I arrived at Pilgrimme, there was a feeling of calm in the air as if I had come back home after a little journey. I basked in a nostalgic feeling when I stepped foot in the forest cabin. The place was so inviting that I found myself wanting to say “I am home!  What’s for dinner tonight?”

McCleerly’s thoughtful menu paid close attention to local ingredients with dedication to sustainable environmental practices.  Menu items were dotted with blessings of the season’s abundance, including items that were foraged by McCleerly, himself: seaweed collected from the island’s beaches, kelp picked while on a kayak out in the ocean, mushrooms, leaves and branches harvested from the old growth forest.  Other ingredients and alcohol that aren’t available on the island are purchased during his weekly ferry outings to nearby Victoria and Vancouver.

I enjoyed the eight course tasting menu.  Each course had a simple list of ingredients with a short description.  I was surprised and amazed by the combination of complex flavours and textures offered by each dish.  The winter squash with fermented rose petals and roasted wild rice puffs was particularly amusing as a starter.  I can still remember the exquisite aroma and texture that set up the beginning of my dining experience.  Menu items listed with deceptively “simple” ingredients like the potato and heritage grain sourdough with fresh butter and burnt onion were full of flavour and heartiness.  This particular dish, with a white wine pairing, left a lasting smile of tranquility for the rest of the evening.  The tasting menu entertained all my five senses, or shall I say, the Island did.  All of what the season had to offer from the island was on the table in front of me.  McCleerly’s time consuming work of making infused oils, fermenting ingredients and crafting koji created the depth and complexity in all of the offerings.  Every single detail expressed the taste of what was Galliano’s “today”.

I look back to this experience at Pilgrimme with fondness.  Every dish encapsulated Galliano Island in the form of an edible curiosity.  In many ways it was an unrepeatable experience.  All the moving parts came together and culminated on to my table that one evening: the island, the ingredients, the chef, the farmers, the staff and the slice of time.  I will never forget how utterly fortunate I was to experience Pilgrimme. (Continued in part 2)

English Translation by Anna Sano

Island Way of Life

1年に1島、島を巡る。そんな目標が出来たのは、ブリティッシュコロンビア州だけでガルフ諸島と呼ばれる島々が実に200以上もあるからです。バンクーバーから比較的アクセスしやすいサザンガルフ諸島だけでも7島あり、それぞれ独特の島文化が根付いています。

島に生きるとは?最近訪れたガリアノ島に魅了され、よくそんな事を考えます。ガリアノ島はサザンガルフ諸島の1つで、全長27.5km、幅は一番広い場所で6kmと細く長い形をした島。人口1,000人程が暮らしています。

この島には私達が日常的に目にするコマーシャルなモノは一切存在しません。ガソリンスタンド1件、グロッサリーストア3件、ATM3件、カフェもレストランも全ての商業施設は個人経営。もちろんスタバもマクドナルドもありません。病院もなく、ヘルスケアセンターと言われる簡易的なものがあるだけ。医者にかかる事になったら近くのバンクーバー島までエアバスで搬送されるそうです。

夏の観光シーズンの賑わいも消え、秋は静かに冬に向けての準備期間。お店も冬季閉店する場所もあります。

ランチタイムの11:30-2:00しかオープンしない(しかも週4日、たまに急用で休業)ローカルに大人気のFlying Black Dog。外に可愛いイートインスペースが設置してあり、こちらのバイソンバーガーは絶品!なのですが、こちらもそろそろシーズンクローズです。

最近の旅のテーマは「何もしない」こと。ガリアノ島は自然以外本当に何もないので、強制的にゆっくりさせられます。メインロードは縦に1本、信号のない道が走っているだけ。日中でも対向車に出会すことは滅多にありません。出会うのは鹿くらいで、地図がなくても大抵の場所に辿り着けます。

商業的な要素はゼロですが、ガリアノ島は美しく魅力溢れた海に囲まれています。

小さいにも関わらず島全体で73箇所もの公共ビーチアクセスがあり、この数は他のサザンガルフ諸島の島々に比べると驚異的な数!

その理由はガリアノ島の自然は皆で共有するものとして島全体で守っているからだそうです。

特にガリアノ島が面している海は、クジラやシャチが頻繁に行き交うActive Pass(アクティブパス)と言う貴重な海峡があることでも有名です。

私もハイキングで登ったMt. Galiano(マウントガリアノ)の頂上から広大なブルーの海原を悠々と泳ぐクジラの姿をキャッチしました。そんな光景が当たり前のように飛び込んでくる島の世界観が余りにファンタジーで、しばらく興奮が冷めませんでした!

美しい自然は個人レベルでもシェアします。近隣の人達に楽しんでもらえるよう開放している個人所有地もあります。「Talking Trees」と名付けられたトレイルは、80歳になるお婆さんが所有する壮大な土地の中にあってローカルは誰でも自由に歩けます。10分ほど行くと美しい眺めの海岸に出てとても気持ち良い場所です。

週末に開かれる可愛らしいサタデーマーケットは10店ほどのお店が集まり、それぞれの物語が詰まった商品が沢山並んでいました。人気が集中している老夫婦が作るベーカリーは朝イチに並ばないと直ぐに売切れてしまいます。

丹精込めて収穫されたオーガニック野菜や、環境と体に優しいソイキャンドル等、みんなゆっくり会話を楽しみながら作業するのでお店ごとに話し込んでいると結構な時間が経ってしまいます。

島人はほとんどの人が知り合いで、名前を言うと「ハイハイ!〇〇さんね!」と分かってしまう程。

滞在先のキャビンは、更に人里離れたノイズレスな環境へ。

ゲートを越えて一山登ったその先は、オーナーのメインハウスとキャビン以外文明の気配は消え、羊と朝食の卵を産んでくれる鶏のみ!去年の冬は大雪で山から降りれず4週間も自宅から出られなかったそうです。

キャビンから続く幾つものトレイルを気の向くままに散策したり、

夕日を眺めながら大好きなワインを楽しんだり、

夜は風の奏でる音に耳をすまし、暖かく燃えるシダーウッドの香りに癒されたり。人工的な音を遮断して流れ行く時間はとてもシンプルで最高の贅沢に感じます。

島の生活は不便であり、想像以上の困難も沢山あるはず。でもそこにはお金やモノでは代え難い、自分らしい幸せがあるのではないでしょうか。

島と言う限られたスペースと資源の中だからこそ、人はよりクリエイティブに、そして助け合いと分かち合い豊かな精神を持って生きられるのかもしれません。そんな精神がこの地球に住む11人が育めたら何て素敵だろう。

眺めの良い丘で大型フェリーが行き交うのを見て、ガリアノ島の人達は便利さを恋しく、都会を恋しく想うだろうか?答えはきっと決まっているでしょう。

My hidden gems

人に教えたくない秘密の場所があるとしたら、それは間違いなくSunshine Coast(サンシャインコースト)でしょう。

夏の終わりに都市から遠く離れた静かな場所に行きたくなって、サンシャインコーストへキャンプに行って来ました。サンシャインコーストは半島ですが大陸と通じている道路がなく、交通手段はフェリーか飛行機のみ。半島の南部と北部さえも海で隔てられ、こちらもフェリーで移動します。

バンクーバーからまずフェリーでサンシャインコースト南部にあるLangdale(ラングデール)と言う港に行き、そこから車で北上すること1時間20分。更に別のフェリーに乗り継ぎ、サンシャインコースト北部のSaltery Bay(ソルタリーベイ)が今回の目的地。同じBC州内ですが、バンクーバーから実に4時間も掛かります。

そんな不便で陸の孤島のサンシャインコーストの魅力は北部から始まると言って良いほど、想像以上のパラダイスが待っていました。

キャンプ地はもちろん圏外。何か特別な観光ものがある訳ではないけれど、ため息が出るほどの美しい海とビーチ、そして陸には山々に包囲された無数の湖が点在していて、壮大な自然のアドベンチャーランドです。

今回のテーマは「何も計画しないこと」。気の向くままにドライブして、目の前に飛び込んでくる景色を楽しみ、偶然見つけたビーチを散歩したり、キャンプ場の海辺でゆっくりピクニックを楽しんだり。

私はサンシャインコーストを「北のハワイ」と勝手に呼んでいますが、この地域の海は透明度抜群で、海水もぬるめ。鮮やかなエメラルグリーンやトルコブルーに輝く海に飛び込まずにはいられません。

海辺には、何十回も繰り返し素潜りの練習をしている頬笑ましい親子がいたり、読書をしている人や、近隣からカヤックでやって来てお昼寝してたり、それぞれが思い思いに夏の1日を過ごしています。

サルタリーベイから車で34km程北上すると、Powell River(パウエルリバー)と呼ばれる古き良き可愛らしい田舎町があります。田舎町と言っても19世紀には豊かな森林源を生かしたパルプ産業が栄え、世界的に紙の生産を支える産業都市として成長を遂げていた時代も。豊かな海洋生物が生息する海では時折イルカやクジラが目撃されるそう。

ローカルに勧められたPowell Lake(パウエルレーク)の湖畔に小さなビーチがあり、周りの針葉樹がそのまま溶け込んだようなモスグリーンの湖水の中でのんびりと泳いで、本当に気持ち良い場所でした。

ひと泳ぎしたら半島北部の最終地点、Lund(ランド)へ。ここはサンシャインコーストを一線で繋ぐ約156kmのハイウェイ101が終わる所です。ランドから内陸に10分ドライブするとOkeover Arm Provinciual Park(オケオーバー・アーム州立公園)があります。

長い入り江に面したこの州立公園は、カヤックやヨットマンにとって憧れの場所、「この世の天国」とも呼ばれる壮大なフィヨルド地帯に広がるBC州最大の州立マリンパーク、Desolation Sound Marine Provincial Park(ディソレーション・サウンド・マリーン州立公園)の入り口でもあります。

引潮の浜辺で、ローカルのグループがしゃがみこんで一生懸命に砂を掘っているので尋ねてみると、なんとオイスターとアサリが獲れると!バケツ一杯に入った大量の貝を誇らしげに見せてくれました。

試しに手でちょっと掘ってみると、XLサイズのアサリがゴロゴロ出てくる、出てくる!!何十年ぶりの潮干狩りを思いもよらず一緒に楽しませてもらいました。(注:海や川で海産物を獲るにはBC州のフィッシングライセンスが必要です。)

この日の夜の食卓に並んだのは、もちろん、掘ったアサリのビール蒸しと帰り道に地元の漁師ファミリーから購入した見事なハリバット(大鮃)のステーキ!!その日の恵みをその日に頂く贅沢なご馳走に大満足。

豪華ディナーの後は、お決まりマジックアワーの時間帯。まだ日も長く午後8時半過ぎが日没です。自然が染め上げる空のファンタジーは飽きる事がありません。

そして、この日は丁度満月の前夜。薄暗くなって来た夜空に浮かび上がる山のシルエットから太陽のように輝きながら、神々しく昇って来る月を見た瞬間、何事かとびっくりしてしまいました。鏡の如く静止した海面にムーンロードが照らされ、その光景があまりにも幻想的で平和で、違う時空に迷い込んだかのような、心から感動した夜でした。

食べて、泳いで、寝て、歩いて。。。何も特別なことをしないシンプルな時間こそが最高に贅沢な時間なのだと、サンシャインコーストは教えてくれます。いつもここに来ると魔法のような美しい世界が待っています。

それは、道に迷って偶然たどり着いた景色が一番のお気に入りとなるような、そんなささやかなプレゼントを与えてくれる秘密の楽園なのです。