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The Scent of Spring

数ヶ月ぶりのカナダの空気はすっかり春です。冬の間、ずっと雨に浸されてきた樹々と大地が、柔らかい春の陽射しに照らされ始めると、何とも心が解れるような香りを放ちます。

今年の春は思いもよらない形で、ずっと追い求めていた「春一番の香り」を見つけることができました。それは、Cottonwood Budsの香り。「コットンウッド」は和名で「ヒロハハコヤナギ」と言うようで、ポプラの1種です。 空を仰ぐほどの高い木に成長し、夏前になると、ふわふわそこらじゅうに白い綿を雪の様に降り注ぎ、この幻想的なCottonwoodが私は大好きです。

早春と呼ばれる季節。Cottonwoodの枝から新芽が出始めます。この新芽の蕾の中に、オレンジ色の樹脂が含まれていて、カナダ先住民はもちろん、Cottonwoodが生息するさまざまな地域で、長年薬として使われて来ました。樹脂には、サリシンと言う抗炎症性の物質が含まれていて、鎮痛剤や解熱剤の効果を持っています。現代医療のアスピリンと同じ効能があることも分かっています。その他にも、ミツバチが樹脂を集め、巣作りに利用します。これが後のプロポリスにもなるそうです。Cottonwood Budsから抽出したオイルは、スキンケアとして、バームやマッサージオイルなど色々に活用するすることが出来ます。

そんな万能なCottonwood Budsですが、私が一番惹かれたのは香りでした。調べて行く中で、その香りを「地球上で最高の香水」と例える人もいれば、「温かなクリスマスツリー」、「甘いキャラメルとハニー」、「魅惑的なアンバー」、と言う表現が。そして誰もが、「一度嗅いだら忘れられない香り」と評するのです。

調べるほど想像は膨らむばかり。そんな香りを嗅ぎたい!と、長く思いを馳せていましたが、何かとタイミングが合わず、この数年Cottonwoood Buds の香りはおろか、その姿さえ見ることはありませんでした。

そして訪れた今年の春。導かれるように、Cottonwood Budsは意外にも身近な場所で、色々な偶然が重なって、私の前に現れてくれました!すでに蕾が大きく成長し、その先端から滴るように赤っぽいオレンジ色の樹脂の雫が、太陽に照らされてキラキラと輝いていました。樹脂は触ると糊の様にベタベタします。この蕾が開く直前に、ベタベタしていることを確認して収穫するのです。

胸が高鳴りながら初めて詰んだCotton Bud。そっと鼻先へ、その香りを自分の中に吸い込んでみると、何とも言えない力強く甘い香り!このままぺろりと舐めたくなる、まさにプロポリスのキャンディーそのものの香りです。

Cottonwood は手の届きようがない高い樹木なので、なるべく落下した新鮮な蕾がある枝を探してサステイナブルに収穫します。指先が樹脂でべったりとオレンジ色に染り、その祝福の香りを時折噛み締めるように嗅ぎながら作業を続けていたら、あっと言う間に夕暮れになってしまいました。

大切に家に持ち帰り、暖かい灯火を持ち帰ったかのような、そんな香りが部屋中に漂っていました。

ずっと会いたかったCottonwood Buds。「遠くに出向かないと見つけられないのではないか」と言う先入観があり、いつかどこかでと、憧れのような存在でした。しかし、自分の身の回りの自然をよくよく観察していくと、探している宝物は実は足元に転がっていたりするものです。当たり前のように目の前に存在する身近な自然こそ、沢山の気づきを与えてくれるのかも知れません。

収穫した蕾は、早速ティンクチャーとオイルに漬け込みました。Cottonwood Budsの香りと共に、これから忙しいフォレジング(野生の植物を採取すること)の季節の始まりです。

Growing Season

今年のカナダの秋は、晴天続きで気温も高く、10月も半ばになってから我が家の家庭菜園のGrowing Season(成長期)もようやく落ち着きました。

この春は、ケール、ビーツ、水菜、かぶ、絹さや、ラディッシュ、レインボーキャロットの種蒔きから始まり、ハーブはイタリアンパセリ、バジル、紫蘇、パクチー、ミツバ、なども全て種から育てました。

夏のスタートが遅かったのと、7月まで冷夏だった為、ジャガイモの種芋がどこまで育つかヒヤヒヤしながら観察していましたが、可愛らしい芽が伸びはじめた時は一安心しました。

野菜は苗から育てるよりも、種から育てる方が何となく強い気がするのと同時に、愛着も倍に湧きます。ミリ単位の種から発芽し、土の表面にニョッキリと姿を表すたくましい生命力。

毎日優しく水をあげながら、その成長を見るのが私の夏の日課でした。特にツル科の絹さやは、芽が出たと思ったら、あっという間に長い支柱を駆けのぼり花を咲かせてくれました。

 

ビーツやカブの収穫時には、まん丸に太った実が「早く採ってください!」と言わんばかりに土の表面から盛り上がり、ほんの少し引っ張るだけで簡単に収穫できました。野菜は自分の食べごろを色々な形で教えてくれます。

ジャガイモは冷夏の時期が長かったか、前年に比べて数はあまり採れませんでしたが、掘りたてのジャガイモを蒸してガーリックとディルで炒めたお味は最高でした!

家庭菜園の魅力はなんと言っても、もぎたての野菜を味わえることではないでしょうか。お陰で夏場は、ハーブ類と自分で育てた野菜の一部は市販のものを買わずに済ませることが出来ました。

農薬も肥料も与えず、米の研ぎ汁を定期的に与えただけで、害虫被害もなく立派に育ってくれた野菜達!特にレインボーキャロットは、10月末になってもまだまだ収穫出来るほど元気一杯でした。ケールだけ虫にやられてしまい、食する部分がほとんどなくなってしまったのが残念。ケールが大好きなだけに、これは来年の課題です。

今年は実だけでなく、花も沢山咲いてくれて、また来年用の種も収穫する事ができました。

野菜の種と同時に蒔いたカレンデュラの種は、ようやく夏の終盤に次から次へと咲き誇り、食べる植物だけでなく鑑賞用の花を植える楽しみも再発見。

そして春先から作り始めたコンポスト。

家庭で出たクズ野菜やお茶の出涸らしを土や米糠と混ぜてせっせと作っていたのですが、今年は堆肥化には間に合いませんでした。自分が排出しているオーガニックのゴミさえも、土に還るのにどれほどの時間を要すのか、改めて勉強になりました。ゴミはやはりゴミ。簡単に分解し、土に戻るものなどそうないのではないでしょうか。

以前、VOICEプロジェクトで農家の方を取材した時に、とても印象深い言葉をいただいたのを覚えています。「農業を始めた若い頃は、1年は4シーズンしかないと思っていました。でも、日々自然と向き合い、食物を育てることに携わっていると、1年は52シーズン以上からなっているのだと気づいたんです。食物を育てるには長い時間を要します。雪がなくなり、畑の土が見え始め、土の中の無数の微生物の匂いを嗅いだ瞬間から、秋の収穫に至るまで実に小さな変化を繰り返しながら、様々なシーズンが繰り広げられているんです。」

私もいつか52シーズンを感じてみたいと思いを馳せながら、今年のGrowing Seasonの幕が閉じました。

Noiseless World

バンクーバーの短い夏も終わりに近づき、少しづつ秋の空気を感じる季節になりました。今年は6月まで冷夏で、本格的な暑さが到来したのは7月と8月の2ヶ月間。駆け足の夏となりました。
夏の我が家はよくキャンプに出掛けます。カナダはもちろん、BC州だけでも半端なく広いので、キャンプの目的地まで何回もフェリーを乗り継いだり、ハイウェイを5時間以上走り続けたりと、その過程も「旅」となります。そして回数を重ねるごとに、キャンプ地もさらに遠くへ遠くへと行きたくなります。

キャンプで過ごす時間は、私を「今」という時間にフォーカスさせてくれます。目の前に流れている一瞬、一瞬の「今」をただひたすら楽しむことを教えてくれるのです。特に予定は決めず、朝起きて晴れていれば、ハイキングへ行ってもよし。水辺が近ければ、海や湖で泳ぐのもよし。雨が降ったらテントの中で読書をする。お腹が減ったらご飯を食べて、暗くなったら火を囲み、夜空を鑑賞する。なんの華やかな行事はないけれど、のらりくらりと刻まれるシンプルな時間が、「今」と言う最高のギフトとなります。

携帯が繋がらなければ、更によし!ネット上に溢れんばかりに湧き上がってくる情報のノイズからしばし離れる時間も、また大切です。デジタルデトックスは、頭と心と体を休ませる最高の充電期間となり、自分だけと向き合う機会を与えてくれます。

ノイズは情報だけではありません。私たちはさまざまな「音」と共に暮らしています。近所を行き交う車や人々の会話、部屋の中の機械音、風の音、雨の音、動物や虫の鳴き声など、ノイズなしの世界はあり得ないと言っても過言ではありません。今回のキャンプで一番思い出深かったのは、「無音の世界」を体感したことです。真夜中にテントの中でふと目が覚めた時、何かいつもとは違う気配に気づきました。それは、水辺の音も、風の音も、全ての生きものが寝静まり、完全にノイズが消えた瞬間でした。1ミリの音さえ聞こえないという状況は、いくら自然の中でもなかなかないものです。色々な環境が奇跡的に、タイミング良く重なり合わないとノイズレスな瞬間は存在しません。自分の息も止めんばかりに寝袋の中で完璧な静寂な時を聞き入っていると、何か大きな「気配」を感じざるには得られませんでした。その時空は長く広く永遠に伸びている気がして、「宇宙とはこんな場所かな?」と思わず考えると同時に、音なき世界のパワフルさを感じました。言葉を並べてよく喋るよりも、たった一つのうなずきや微笑がパワフルなメッセージを持つように、何かを語りかけてくる印象さえ持ちます。


自分自身も日常の中で繰り広げられるノイズの一部だと意識することで、少しでも心地よい音色を奏でたいものです。キャンピングは非日常的な体験から、日常を振り返る素晴らしい機会を毎回与えてくれます。また来年も遠くへ遠くへ、何もない場所へとキャンピングに行くでしょう。
そこには「今」という一瞬を生きる喜びが待っているから…。

Spring Foraging

バンクーバーの春は、Foraging(フォレジング=自然採集)にとても忙しい時期です。気がつけば、日々どこかで新しい命が芽吹き、私もあちらこちらへと大忙しに繰り出して行きます。とにかく自然の営みを目で見て、肌で感じることが大好きで、フォレジングを通して普段何となく知っている植物からも毎回学びが沢山あります。

ラズベリーリーフとブラックベリーの新芽から始まり、こごみ等の山菜採り。遠方の北まで足を伸ばし、人生初の白樺樹液の採集も体験しました。5月になるともう追いつかない程、花と新緑の祭りが始まります。つくしが顔を出したかと思ったら、あっと言う間にスギナが伸びます。繁殖力の強いスギナは駆除が困難な雑草として見られがちですが、カリウムが豊富でむくみを解消し、血液をきれいにしてくれます。スギナのケイ素は、歯・髪・爪の健康維持に欠かせない成分でもあります。

新緑だけでなく花の森かと思うほど、山にも美しい野生の花が咲き乱れます。ライラックの香りは大好きな花の香りのひとつで、雨が上がった早朝のライラックの香りは特に濃厚です。華やかな香りのリラックス効果と共に、沢山の抗菌・解熱・新陳代謝改善などの健康効果、そして美肌効果があります。

エルダーフラワーは咲く期間も短く、フレッシュなタイミングで摘む時期を見計らうのは至難の技です。エルダーフラワーは特に、副鼻炎やインフルエンザの特効薬として知られます。優れた抗酸化作用で、肌のキメを整え、シワや紫外線のダメージを改善する効果も。

そして、エルダーフラワーはとにかく美味しい!ぬるめのお茶にしてたっぷりとビタミンCを摂取するのも良し。砂糖とレモンで煮込んで作るエルダーフラワーコーディアルは格別です。冬の風邪薬にと2瓶作りましたが、あまりの美味しさに夏までに無くなってしまいそうです。

今年の春は色々な形で自然の恵みを楽しんでいますが、ハイライトは何といってもモレルマッシュルーム(アミガサタケ)。モレルは、カナダはもちろんヨーロッパでも春の珍味として食用に幅広く活用されますが、今回モレルのストーリーに心打たれました。モレルは、山火事で荒れ果てた山の斜面や、森林伐採された荒野に新しい命を吹き込むキノコです。凸凹した網状のカサに、植物の胞子を引っ掛け育み、枯れた大地に新しい息吹をもたらします。正直、今までモレルはそこまで関心がなかったキノコでしたが、その話を聞いてとても愛着が湧きました。

ご縁があり、モレルマッシュルームを毎年採取しているカナダ人に同行したある週末。私達が向かった先は、昨年の山火事で焼け焦げた木々が無惨に散乱している場所でした。まだ焦げ臭く辺り一面真っ黒な死の世界の様なその場所で、かろうじて直立している木々。その外皮に触れてみると、想像以上にふわっと柔らかく軽い炭のような感触でした。真っ黒に燃えても、内側はまだ生きているので材木としてそのまま切り倒され使用されることが多いそうです。木がなくなり、スカスカになってしまった山の斜面は、砂のようにとても乾燥していて斜面を登るたびに足が滑ります。

そんな場所に、モレルがニョッキリと顔を出しているのです。何とも可愛らしい、森の守護霊のようなモレル。「ありがとう。君達すごいね。」と感謝の気持ちを抱きながら、小さいサイズは避けて採りすぎに注意しながら採取しました。1日の終わりにはもう手は真っ黒、炭だらけ!

この日帰宅して料理したモレルの味は身に沁みる美味しさでした。

モレル採取中に、新しい野草にも出会いました。マイナーズレタスと呼ばれる、野生のレタス!100gのマイナーズレタスには、1日のビタミンC摂取量の1/3も含まれているそうで、そのままサラダとして美味しく頂きます。ワイルドストロベリーも可愛らしい花を咲かせていました。きっと美味しい実が成るだろうと想像しながら、山火事の荒野に存在するたくましい生命の循環を垣間見ることが出来ました。

野生の植物や花は、人間の頭では計り知れない大地の時間の流れとともに、正確に命の時を刻み、着実に彼らの使命を果たしています。山を生き返らせ、そこに生息する動物達の貴重な食糧ともなります。生命がきちんと循環するように、人間もまた来年同じ時期に自然の恵みを分けて貰えるように、サステイナブルを意識しながら採取する大切さを身をもって感じます。インターネットで表面的に何もかも知った気になってしまう危うい時代だからこそ、土臭い場所で五感で感じる行為をより大切にしたいと思うのです。

To the North

アラスカに生きたカメラマン・星野道夫さんが綴った「旅をする木」に出会ってから、いつかカリーブー地方と呼ばれるブリティッシュコロンビア州の北部を旅してみたい、と心の中にどこか憧れのような秘めた想いがありました。そんな想いが、この春、白樺樹液を採取しに行くという目的で実現しました。

4月は長い冬から目覚め、雪解けが始まる北の春。樹々が芽吹く直前に、白樺は大地から生命のエネルギーを吸い上げるように無色透明の樹液を出します。「森の看護婦」とも呼ばれる白樺樹液は、健康と美容に効果的な成分がとても豊富に含まれています。保湿力と抗酸化力に優れ、体内で生成することのできないアミノ酸、ヒアルロン酸やコラーゲンの保護に役立つポリフェノール、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ミネラル、そして美肌には欠かせないビタミンCなどの成分がバランスよく含まれているのです。昔から北欧やロシアでは民間療法で広く利用されている白樺樹液。いつかカナダで採取してみたいと思い続けていたところ、色々なご縁が重なり、白樺樹液を採取している農家さんに今年の春、「直接採取しに来ませんか?」とご招待して頂きました。

白樺樹液は冬と春の移行期間のほんの2週間程しか採取出来ません。この奇跡のような樹液を求めて、往復1,570kmものカリブー地方へのロードトリップを試みることになったのです。片道800kmほど、時間にして8時間以上のドライブですが、そんなに走ってもまだブリティッシュコロンビア州の中間部と言う、カナダのとてつもない距離感に圧倒されます。

北上していくと、同じ州とは思えないくらい、何ヵ国も国を跨いで旅しているような変化に富んだ美しい北の大地が広がっていました。緑深い山を越えると、一面砂漠地帯へ。

マーブルキャニオンと呼ばれる大理石のような岩山を横に、いくつもの渓谷を抜け、山火事の形跡か残る枯れた荒野が続いたかと思うと、

今度はのどかな牧草地帯が広がり馬や牛が放牧されていました。

湖水地方のような湿地帯…。

フレーザー川を見下ろす絶壁をゆっくりと走る列車を何度も追い越しながら、かつてゴールドラッシュで人々が積極的に北を目指した開拓時代のロマンとノスタルジア漂う情景…。

そして何より、永遠に続くような高原を進む中、4月ももう終わりというのに半分まだ氷を貼った湖の光景を目にした時、「あぁ、北に来たのだ!」と、その厳しい冬の終わりにある静寂な美しさに一瞬で心奪われました。

正直、白樺の事で頭がいっぱいだった私は、こんな美しいドライブが待っているなんて想像もしていなく、ドライブ中終始、カナダの美しさに改めて胸がいっぱいになっていました。

Quesnel (ケネル)という目的地に到着したのは、2日目の午後。3日間、65ヘクタールもの広大な農場の敷地に滞在しながら、白樺樹液の採取を体験させて頂きました。最初の夜は、まだ気温が0度近くに下がる中、「バンクーバーから来客が来てるから」と、仲良しご近所さんも集ってボンファイアを囲みながらBBQでおもてなししてくれました。「明日は、白樺樹液採取へ9時15分の出発だからね!」と言いながら、北の人達はお喋り好き。暖かい炎に包まれながらついつい夜更かししてしまいました。

翌朝は、胸が高なる中、夢にまでみた白樺採取へ!調べれば調べるほど、白樺樹液というのは神秘的で、採取時期も限られていますが、その保存方法も限られています。白樺樹液は、採取後2日と保たず、すぐに腐ってしまいます。こちらの農家さんは、毎年何100本という白樺から樹液を採取していますが、全てその日のうちに煮込んでシロップにしてしまいます。今年は3,000~3,500L採取予定だそうですが、多い年では6,000Lにも及ぶ樹液をシロップにしているそうです。私の目的は、白樺樹液を原液のまま保存すること。この旅を決めてから、多方面の白樺のプロや某大学の研究チームにまで問い合わせ、白樺樹液の保存方法のアドバイスを頂きました。この難題に、過去の実体験から快くご教授してくれた人達、研究資料を共有してくださった人達が頭に浮かび、「失敗は出来ない」と、採取当日の朝はちょっと緊張してしまったほどです。

実際、白樺樹液の採取作業は4人の男性チームで手際よく進められ、前日からバケツに溜まった樹液を回収していきます。1時間ほどで、200本の白樺に設置してあったバケツから400Lもの樹液を皆で運びました!

「ちょっと飲んでみる?」と、白樺に空けた穴からぽたぽたと滲み出てくる樹液を口にした時、そのフレッシュさと美味しさにまたまた感動!ほぼ無味ですが、どこかほんのり甘さを感じる優しい口当たり。大自然の貴重な恩恵を直に受ける時ほど、心が震えることはあるでしょうか?

採取後は2日にわたる長い保存作業が待っていて、こちらも時間との勝負。毎晩遅くまで食べる暇も惜しいほど、キッチンで作業に夢中になっていました。滞在最後の夜も、「お茶に行くね」と約束した仲良くなったご近所さんのミッシェルさんのお宅にも伺えず、夜9時過ぎまで白樺樹液の保存作業でクタクタになっていました。そんな所に、ミッシェルさんが真っ暗な夜道の中やって来て、「ちょっと家から出てきてもらえる?」と…。すると、「白樺好きなMINAにプレゼントがあります!」と、白樺の外皮をリボンにあしらった大きな紙袋を手渡してくれました。

そこには、彼が採取したチャーガと呼ばれる白樺のみに寄生するスーパーフードとして名高いマッシュルームの塊と、それを挽いたお茶、そして、彼の敷地内で採れたハニーの瓶が詰まっていました。その瞬間、疲れなど一瞬で吹き飛んで、北の人々の優しさに涙が溢れそうになりました。作業がやっと終わり、私に快くキッチンを占領させてくれた農家のオーナー夫妻のエロイーズとテッド、そしてミッシェルを交えて最後の晩餐。もちろん、飲み物は「白樺樹液」で乾杯!

夕飯を囲んでいる最中、ふと「寒いことが人の気持ちを暖めるんだよ。遠く離れている事が人と人の心を近づけるんだ。」という、星野さんが語っていた言葉が、最後の夜を締め括るにふさわしく頭に浮かんで来ました。初めて会ったとは思えない程、家族のように、長年の友人のように、迎え入れてくれた北の人々。短い滞在なれど、そのコミュニティーの人間力に、何よりも感動させられた数日間でした。

カリブー地方は私が想像していた以上に遠く、美しく、温かく、そしてどこか懐かしい、また戻りたいと思わせてくれるそんな場所です。私が感じたこのエッセンスを、持ち帰ってきた白樺樹液に込めながら、また新たな旅がここから始まります。

Mindful Face 10 – Dr.Ginger

2月も末ですが、カナダではまだチラチラと雪が降る日がありました。翌朝は澄み切った冬晴れの空の下、うっすらと雪化粧をした街が眩しかったです。

冬は浄化されるような雪景色と、澄んだ空気が気持ち良い季節ですが、顔面神経麻痺を患っている方にとってはなかなか手強い季節でもあります。なぜなら、冷たい空気に患部がさらされたり身体が冷えることで、血の巡りが悪くなり、筋肉を強張らせ、症状が悪化することもあるからです。

特に冬場は内側から徹底的に温め、巡りをよくしてあげることを心がけましょう。体の内側と外側は面白いほど繊細に、密接に繋がっています。冬だけでなく、年間を通して温活療法を施してくれるお医者様的存在…。それは何と言っても生姜ではないでしょうか。

生姜は食べ物を陰陽で分けると、「陽の食材」。栄養素の宝庫でもあり、主な成分にカリウム、カルシウム、マグネシウム、ジンゲロン、とショウガオールなどがあります。特に、生姜の辛味成分であるジンゲロール・ショウガオール・ジンゲロンは体の内からも外からもポカポカ温活パワーを与えてくれます。

ジンゲロールは「生」の生姜に多く含まれていて、鎮痛・解熱・消炎・発汗作用があり、胃腸の調子を整え、風邪の予防にもなります。強い抗菌効果で体内の熱を取り除き、体の表面を温めてくれる効果も。肩こりや頭痛などの改善はもちろん、生の生姜をすり下ろして作る「生姜湿布」などは皮膚からジンゲロールを吸収させて、血行促進させます。基本的に生姜は体を温める「陽の食材」ですが、ジンゲロールに限っては、体温を下げようとする効果があるので、体調によって「生」か「乾燥」の生姜を使い分けると良いです。

ショウガオールは「乾燥」された生姜に多く含まれていて、ジンゲロールを加熱・乾燥させると一部がショウガオールに化学変化します。ショウガオールは深部から熱を作り出し、血を巡らせ身体を芯から温めて持続させる効果があるのが特徴です。加熱した生姜の温活パワーは、生の生姜よりも強力と言われているので、特に冬場や冷え性の人は積極的に熱を通しましょう!新陳代謝も促進され、血行の改善から美肌効果も期待出来ます。そして更に、抗酸化作用もパワーアップし、ショウガオールには抗ガン作用もあると言われてるので、毎日でも食べたい!

ジンゲロンも加熱によりジンゲロールが変化したものです。新陳代謝の促進・血行の促進で、体を温め冷えを改善してくれると同時に、脂肪燃焼にも役立ってくれます。

となると、生姜は加熱して摂取した方が圧倒的に良いのでは?!と、私は普段から生姜を加熱して食すことがほとんどです。特に、20代の頃から愛読している医学博士の石原結實先生の「体を温めると病気は必ず治る」と言う本の中で紹介されている「生姜紅茶」は、今でも冷えを感じた時や、体を活性化したい時に必ず飲むお茶です。

レシピと言うまでもないくらい簡単で、熱い紅茶にすり下ろした生姜をたっぷり入れて、お好みで蜂蜜やプルーンを入れて熱いうちに飲みます。個人的には甘味はスキップしますが、甘味を加えることで滋養強壮作用があるそうです。これを飲むだけで、体がすぐにポカポカ、ちょっとした不調は吹き飛んでしまいます!

唯一のポイントは、オーガニックの生姜を皮ごと使うこと。生姜の皮にはポリフェノールやジンゲオールが豊富に含まれているので、切り捨てないで全て使ってください。カナダでは比較的オーガニック生姜は安価でどこのスーパーでも取り扱ってますが、購入が難しい場合は、重曹でよく洗って残留農薬を除去してから食してください。

どうせ飲むなら、紅茶にもこだわりたいもの!こちらも出来ればオーガニックのものを!そして、 ティーバックではなくホールリーフ(茶葉をカットしていないもの)を選びましょう。私は、エシカル・サステイナブル・フェアトレード認証されていて、ケニア自社農園直送ホールリーフ茶葉を扱っているJusteaKenyan Black Teaがお気に入り。地元バンクーバーのブランドで、「顔の見える」メーカーを選ぶのも安心安全の基準です。この紅茶を来客に出すと、いつも「美味しい!」と褒められます。

生姜を毎回すったり、切ったり、めんどくさい!手軽に温活パワーを吸収したい!と言う人は、乾燥した生姜パウダーもオススメです。最初からショウガオールの成分が豊富なので、飲み物や料理にパパッと加えられます。

もう一つのオススメは、「生姜ビネガー」。細かく刻んだ生姜を瓶に入れて、ひたひたにビネガーを注ぎ、冷蔵庫へ。長期保存可能なだけでなく、ドレッシングやヨーグルトのトッピングなど様々な料理の万能調味料として使えます。多少なり乳酸発酵する気がして、お酢の味が少しまろやかになります。私はこれを冷蔵庫に必ず常備!お酢と生姜のW血行促進パワーで、冷えを撃退しましょう。

たった一つの食材で、こんな恩恵が得られる生姜は真の温活ドクター!もう直ぐそこまで来ている春に向かって、体内の巡りと体温をしっかり整え麻痺部の硬直や不調を少しでも和らげておくと、春夏の回復力が変わってくる気がします。

体を温めると自然と心も緩みます。リラックスしながら寒さを乗り越え、温かい春を待ってみてはいかがでしょうか。

Taste of Autumn

本日カナダはハロウィーンのお祭りです。町中にゾンビ、ガイコツ、クモの巣、怪物やらお化けが賑やかに飾られています。そして、住宅地の玄関にはパンプキンをくり抜いて作られた提灯のジャック・オー・ランタンが、子供達を誘い入れる様に置かれています。

ハロウィーンの影響もあって、10月に入ると実に沢山の種類のカボチャ達が店頭に並び始めます。中にはとてつもなく巨大なお化けカボチャまで。これらの顔ぶれが揃いだすと、カナダも秋本番だなぁという気持ちになります。日本では濃い緑色のゴツゴツした皮に、鮮やかな黄色のかぼちゃが一般的ですが、カナダでは本当に沢山の形&味のカボチャ属が存在します。

そもそも西洋で知られるKabocha(カボチャ) はこの一派的な日本カボチャを指し、その他はPumpkin(パンプキン)とSquash(スクワッシュ)の2つに大きく分けられます。何が違うのか?それは簡単で、皮がオレンジ色でツルツルしているのがパンプキン。皮が緑色のものはスクワッシュと分類されています。

とにかく種類が多すぎるので、とりあえず一通り食べてみる!と言うのが私流。

Sugar Pumpkin (左:シュガーパンプキン)は主にパイやスイーツに使用するお菓子用パンプキン。Red Kuri(右:レッドクリ)で、外側も内側も鮮やかなオレンジ色。

 

Kuri=栗?と期待しましたが、栗の味はしません。煮物にも適していますが、スープにすると皮もオレンジ色なので色が濁らず華やかな仕上がりになるそうです。「来客用のスープとして失敗知らずで便利だよ」、とファーマーズマーケットですっかり親しくなり、我が家の5月〜10月のお野菜のほとんどを提供してくれているクリスくんが教えてくれました。

白と緑のストライプ柄は、Sweet Dumpling(左:スイートダンプリング)と呼ばれるもの。マイルドな甘さで、焼いたり、ローストしたり、マッシュしたり、スープに加えたりと色々活用できます。見た目がころんと可愛らしいのは、Acorn Squash(右:エイコーンスクワッシュ)。サイズが小さいものが多いので、種を取り除いた空洞の中にスタッフィングを入れて、チーズを振りかけてオーブンで焼くと食べ応えもあり美味しいです。マクロビ流あずきカボチャなどにも良さそうだなと、次回試してみたいと思います。

他にも、これカボチャですか?と疑ってしまう変わった色・形のDelicata(左:デリカッタ)。味はちょっとポテトっぽくホクホクしてるので、半分縦割りにして種を抜き、そのまま豪快にローストするのがお好みです。Butternut Squash (バターナットスクワッシュ)もユニークなひょうたん型。種もあまり無いので下処理が楽です。実は少し水っぽくねっとりしてるのでスープにするのが最適だそう。

色々ある中で、私のお気に入りはBlack Futsu(ブッラクフツ) と呼ばれるスクワッシュ。皮が部分的にカビぽっく白く濁り、表面もゴツゴツ岩の様にイカツイ様相。最初購入する時はちょっと勇気がいりましたが、お味はグッド!外皮も見た目とは逆に柔らかく調理しやすいです。

そこまで甘みはないので、ローストしてチップスの様に副菜として食べるのがお気に入り。熟してくると外皮がオレンジ色になって来ます。それまで、オーナメントとしてダイニングテーブルに飾って、秋の色を目で楽しんでみたり。

ちなみに、カボチャ属の栄養価は野菜の中でもピカイチ!βカロテン、カリウム、ビタミンC、ビタミンB群、ビタミンE、カルシウム、鉄など沢山含まれています。陽性のお野菜なので免疫力を高め、抗酸化作用も期待でき、お肌を丈夫にして、血行を良くし体を温めてくれます。冷え症の人は特に冬場、積極的に取り入れるのがおすすめです。

私は毎回オーガニックのものを購入して、皮ごと全て頂きます。種はパンプキンスパイスと海塩ひとつまみ振りかけて、ローストすると美味しい健康的なスナックに大変身!余すところがないサステイナブルなお野菜なのです。種が少ない時は、実をローストする際に脇で一緒に焼いてしまうと時短で簡単です。

沢山のカボチャの食し方を楽んで、私の秋はすっかりカボチャ色です。今年も沢山の種類のカボチャを食して、冬を乗り越えていこうと思います。

 

Land and Sea

どんな時代でも、どんな場所でも、人の心を感動させる普遍的な美しさに私は惹かれます。カナダの大自然は、そんな普遍的な美を、いつもさらりと私の前に繰り広げてきます。

カナダの夏は毎年9月最初の月曜日、Labour Day(レイバー・デイ)の祝日と共に終わりを告げる気がします。この日を過ぎると途端に肌寒さを感じる曇りや雨の日が多くなり、長い冬への扉が少しづつ開き始めるのです。カナダ人は6月~8月の短い夏を謳歌する為に、本当に情熱的に各地方へ駆け巡ります。「夏の間はローカル(地元)のお客とほとんど会わなくなるの。」と、近所の小売店の人が言っていた言葉をふと思い出しました。

7月末までずっと日本に滞在していた私にとって、カナダの夏は数週間しか残っていませんでしたが、1年で最も活動的で美しい季節を逃すまいと、私も残りわずかな夏の日々を精一杯謳歌しました。9月頭にキャンプで訪れたバンクーバー島にあるMiracle Beach(ミラクルビーチ)。ここを拠点とした夏休みは、特に最高の時間となりました。

何キロメートルにも伸びる砂浜に、穏やかでガラスのような海。その優しい海の向こう側には本土沿岸にそびえ立つ氷河を抱いた山々が連なっています。南国のようなサンディービーチと青い海と雪山。シュールにも思えますが、これがカナダ西海岸の典型的な情景です。

朝の引き潮時には、沢山の海の生き物が顔を出します。特にびっくりしたのは、シーアスパラガス(厚岸草)の群生。海水で育つ為、かなりしょっぱいですが、私はこの塩気が大好きで生でポリポリ食べてしまいます。

引き潮の時間にしか姿を見せない自然のアート、砂紋も惚れ惚れする美しさでした。その場に足跡を残してしまったら申し訳ない程、完璧で繊細なグラフィカルアートです。夜は天の河がくっきり見える満天の星空を上に、満ちてくる波の音を聞きながら過ごしました。ミラクルビーチは1日に何通りもの違う美しさを見せてくれる場所です。

ミラクルビーチから車で30分ほど北上したCampbell River(キャンベルリーバー)と呼ばれる小さな町は、「サーモンキャピタル」と呼ばれるサーモン釣りのメッカです。9月頭と言うのに、既に沢山の釣り人で川は賑わっていました。そこからフェリー に乗ること10分。人口4,000人ほどの静かな島、Quadra Island(クアドラ島)にあっという間に到着します。船旅でたった10分の距離だけど、ここでは全く違う時間の流れと、抜群の透明度を誇る海が待っています。

海が豊かだと、生き物も豊か。ビーチ沿いには、生牡蠣やアサリがザクザク!!海岸を埋め尽くすように生息している海藻も青々しく輝いていて、とっても美味しそう!この日の夜、海の恵みで作ったアサリのビール蒸し、焼き牡蠣、海藻ラーメンは絶品でした。

クアドラ島には、カナダ最北端のワイナリーもあります。なんと偶然にもオーナー夫人が日系カナダ人の方で、オーガニックの葡萄で丁寧な優しいワイン作りをしています。地消地産の文化が根付くクアドラ島のシンプルな営みはとても贅沢に感じます。

美しさは海だけではありません。バンクーバー島の中部を占めるStrathcona Provincial Park (ストラスコーナ州立公園)は1911年に設立したBC州で最も古い州立公園です。むか~し昔、私の中学時代、バンクーバー現地校でここに修学旅行・野外研修で訪れたのを覚えています。2,458km2と言う広大な公園は、2,416km2と言う神奈川県面積と比較するとどれだけ広いか少し想像出来るでしょうか。そんなストラスコーナ州立公園は、まさにアウトドアのメッカ。ハイキング、カヌー、カヤック、釣り、ロッククライミング、スキー、と様々なアウトドアスポーツを楽しめます。

とにかく広いので、1日に1箇所と決めて行動するのが精一杯。とある1日、公園内にあるヘレン・マッケンジー湖とバトル湖を周遊する約10kmのトレイルをハイキングしました。Paradise Meadows(パラダイスメドウ)とも呼ばれるこのトレイルは、息を飲むほどの美しさで今回の旅のハイライトとなりました。

ちょうど夏から秋に移り変わるアルペン・ツンドラの紅葉時期で、その名の通りパラダイスの美しさです。大地を埋め尽くす草木の紅葉は満開の花畑のように、秋色のじゅうたんのように、鮮やかに辺り一面を染め上げていました。

沢山の小さな実をつけた山のブルーベリーや、甘~いハックルベリーなど、北の山の恵みも沢山楽しめました。それをご馳走に飛び交う野鳥達。以前からツンドラの紅葉を見たかった私は、パラダイスメドウのハイキングはちょっと別格で、終始足を止めては夢心地の気分に浸っていました。半日のハイキングが終わる頃にはちょっと寂しくなってしまうほど。。。

出口付近で子連れの家族がどのトレイルを進もうか迷っている様子だったので、思わず「このトレイルに行って!本当に最高だから!」と送り出しました。ストラスコーナ州立公園を再訪する時は、また必ず歩きたいトレイルです。

どんな時代でも、どんな場所でも、どんな人にも、自然はその美しさを惜しみなく披露し、人の心を充電してくれます。混沌とした世の中でも、海や山はただそこにあるだけで、全ての人に大きな喜びと感動を与えてくれます。その自然の一部になった時、人がどんなに小さく尊い存在かも気づかせてくれるのです。自然にしか成せない美の技に感服すると同時に、カナダの短い夏は、私にまた素晴らしい思い出をひとつ増やしてくれました。

Climate Change is Real

生まれて初めて山が燃える姿を見た瞬間、何とも言えない虚しさと共に足がすくむ思いをしました。

BC州ではこの夏、4月から7月にかけて起きた山火事は累計1,168件にも上り、約3.4万ヘクタールの大地が燃えました。9月に入った今日でも、未だ223箇所で山が燃え続けています。あまりにも広大な数字でいまいちピンと来ませんが、8月にカナダに戻った数日後にも何百キロと離れた山火事の煙がバンクーバー にも影響を及ぼしました。その日、バンクーバーは「世界一最悪の大気汚染の場所」としてランキングされてしまったのです。

山火事の煙で太陽が隠れ空が霞んでも、きな臭い匂いが街中を包んでも、実際に山が燃えている現場でオレンジ色に燃える炎を目撃するのとでは、ハッと目が覚める様な意識の違いがありました。

観測史上ワースト3に入る今回の山火事の最中、私と夫は仕事も兼ねて山火事が多発しているBC州の内陸にあるオカナガンに行くことになっていました。オカナガンはワインの産地として有名で、カナダの中でも最も乾燥している地域です。ギリギリまでニュースを注意深くチェックしながら、慎重に旅の準備を整え向かった結果、いつものワーケーション(仕事とバケーションを合わせた旅)とは違う、深い意味ある旅になりました。

山火事は今世界が直面する大きな環境問題のごく一部に過ぎません。そして、山火事の多発する現地に住む人々の中でも様々な意見が飛び交います。「山は燃えるもの」と言う人や「良い年も悪い年もある」と言う人がいれば、若い世代の中には気候変動に対して「早くアクションを起こさなければ20~30年後に農業が出来なくなる」と危惧する声も。毎日メディアで大きく取り上げられることで、風評被害だと言う声も聞きました。同じオカナガンでも風向きによって煙の方向が変わったり、激しく燃えている地区もあればそうでない地区もあるので、夏の観光シーズン中に旅行者がコロナ禍に加えて激減してしまい、肩を落とすワイナリーも多々存在します。
「葡萄のことばかり煙の影響があると取り上げられて…。果物や他の農作物だって同じなのに、なぜメディアはワイナリーに対して厳しいのか。」と少し苛立ちを感じる声も。

個人的な経験から言うと、私が幼少期カナダに住んでいた80年代後半〜90年代当時、山火事の煙がバンクーバーにまで影響があった事は一度もありませんでした。山が燃えるのは自然のサイクルの一部であっても、その状況は刻々と悪化している事に間違いありません。

ハイウェイの両脇で黒く焼き焦げた木々が辛うじて立っている光景を目にしました。地面を這うように燻るオレンジ色の炎が揺れ動いていました。オカナガンでは珍しく、クマや野生羊や鹿が沿道に姿を表していました。きっと炎で山を追われて迷い込んで来たのだろう、そう思うと胸がズンと重くなります。頭上には絶え間なく消火活動に努めるヘリコプターが往来していて、いつもの夏とは違う「賑わい」を体験した感じです。

そんな一味違うオカナガンから戻って来て、自分の中で決めたことが幾つかあります。

①家では牛肉を食べない。もともとほとんど食べませんが、徹底しようと決意。畜産全体が排出するメタンガス排出量の80%は牛肉生産によるものです。

②ゴミを出さない。リサイクルやリユーズ(再利用)する事で、家庭内のゴミは1週間で手のひらサイズ程度に抑えられる事が出来ます。

③食品用ラップフィルムを使用しない。前から気になっていたサランラップなど、プラスチックゴミ削減の為、この機会におさらばする事にしました。

④衣類は天然素地のものを選ぶ。海洋プラスチック問題の大きな一因は、私達が纏う衣類からです。化学繊維ものはなるべく買わずに、肌にも環境にも優しいリネン、シルク、オーガニックコットを中心に選んでいます。

⑤買い物にはエコバックを。食材の買い物だけでなく、日用品にも必ずマイバックを持参。カフェや仕事現場には、マイボトルを。リサイクル用品だって再生するのにエネルギー消耗するのでなるべくリサイクル用品の数も減らせるように心掛けています。

まずは自分が始められる小さな行動の変化から環境問題にもっと取り組もう。そう再確認させてくれた今回の旅でした。

最近目に留まった言葉で、私の原動力になっている言葉は「You must be the change you want to see in the world.」(あなたが見たいと思う世界の変化にあなた自身がなりなさい。)
私は100年後も200年後も美しい世界を見たいから、今自分が生かされている時間の中でどれだけ自分の周りを汚さずに立ち去れるか、楽しみながら頑張っていこうと思います。ひとりひとりの小さな行いが、この大きな地球をきっと綺麗にお掃除してくれる事を信じて…。

Hope and Cheer

柔らかい日差しが半年ぶりに戻って来て、春の訪れを感じる季節になりました。バンクーバーで春を感じる最初のサインは、クロッカスの群衆とスノードロップでしょう。クロッカスの花言葉は「青春の喜び」「元気」、そしてスノードロップの花言葉は「希望」「慰め」。どちらも春めいてくる時間の中で、心が浮き立ってくるようなそんな響きがします。

カナダの春は、生命力の強さを教えてくれます。まだ背後の山々には雪景色が広がり、ピンと張り詰めた冷たい空気が吹く中で、新しい命が芽吹く瞬間が私は大好きです。

特にクロッカスの群生はお見事。誰かが袋一杯の種を溢してしまったかと思うほど、木の根元や日当たりの良い芝生の上にお花畑のように咲き乱れます。一斉に太陽の方向を向いて、小ぶりで鮮やかな花を咲かせる力強いクロッカスの姿が、長い冬の終わりと共にやって来る春の時間を知らせてくれます。

クロッカスに続いて、霜や凍結にも負けずに勢いよく芽吹いて来る命はこの頃どんどん加速します。家の外のプランターに忘れたように植えてあったチューリップの球根がニョキニョキ芽を出始めました。

冬に植え付けたガーリックの芽も日々元気に伸びて行きます。今年の夏は初めて自らガーリックの収穫が出来るかな、と今からわくわくしています。

芽吹くのは種や球根だけではありません。黄色い枝を茂らせるサボテンのような形をした不思議な樹木が近所の公園に存在するのですが、毎年冬も終盤になると根元の大きな幹だけを残して市の役員が容赦なく剪定します。今年は偶然その剪定日に遭遇して、公園に大量に切り落とされた黄色い枝が無作法に放置されていました。しばらく観察していると、おばさんがいそいそとやって来て枝を拾い始めました。思わず、「その枝どうするんですか?」と尋ねてみると、「この枝は強くて丈夫で、ガーデニングに使うの。トマトや胡瓜などの支柱に最適よ。しかも、土に差し込んで置くと可愛らしい緑の葉っぱが芽吹くのよ!」と詳しく教えてくれました。市の方も、近隣の住人がガーデニング等にこの枝を再利用するのを知っているそうで、切り落とした枝を「ご自由にどうぞ」と言わんばかりに放置しています。おばさんと立ち話をしている最中に、どこから噂を聞きつけたか、人々が続々やって来て枝を拾い始めていました。

私も真似して数本持ち帰り水挿ししておくと、数週間後に緑色の小さな葉っぱがあちらこちらから顔を出し始めて、とっても可愛い!今ではちょっとした室内のミニオアシスになっています。

とある海岸沿いに生息していたローズマリーの生命力も強いです。ちょっと摘んで持ち帰り生けておくと、可愛らしいラベンダー色の花を咲かせてくれました。ローズマリーは簡単に挿木も出来て比較的簡単に増やすことが出来ます。

一見止まった景色の中に、新しい小さなパワーが宿っている。生命とは短く、はかなく、けれど強く根性あるものなのではないでしょうか。「希望」と「元気」と言う言葉がぴったりの春になって欲しいと今年はより一層強く思います。

Mindful Face 8 – Be Conscious of the Unconscious

無意識を意識する作業は、顔面神経麻痺を経験した人であれば誰もが意識する大事なトレーニングの一部ではないでしょうか。日頃気にも留めない小さなものが、顔の片面が動かなくなる事で、どれだけ大きな働きをしてくれているか気付かされます。数ある無意識の中でも、特に「瞬き」は私に大きな影響をもたらしました。

そもそも、顔の異変に気が付いたのは瞬きが出来ない自分の顔を鏡で見た瞬間でした。あまりにも無意識な仕草故、「何か目が変だな」と言う感覚だけで、鏡を見るまで自分の右目が瞬きをしていない事に気が付きませんでした。それに気付いてからは、さぁ大変!

一般の成人で1分間に10~30回繰り返すこの繊細な仕草は、自分の目をありとあらゆる外的要素から守ってくれています。まず、目が乾くので頻繁に軟膏や目薬で潤い補給をしないといけません。就寝時は柔らかい医療用テープでまぶたを閉じないと、寝ている間に大怪我になりかねません。更に、ふわりと風でも吹けば目がしみる。小さなホコリや虫が飛んで来ても、目を見開いて待ち構えるしか出来ません。この時期、私の右目は沢山の虫をオープングローブの様にキャッチしていました。まつ毛も日々抜けて生え変わりますが、それが目の中に入らない様に守ってくれているのも瞬きです。髪の毛先が1本でも触れれば、「痛っ!」となるありさま。シャンプーや洗顔の時も細かい注意が必要です。瞬きなしの眼球は、素足で山登りをしている位、何とも過酷な状況に曝されるのです。

私の場合、最初の数ヶ月は軟膏とヒアルロン酸ナトリウム点眼液を毎日ヘビロテしていました。更に、医者からは充血がある時の軟膏と、痒みが出た時の点眼液、そして長期戦を考慮して長く安心して点眼できる無添加の人口涙液型点眼剤を処方され、目薬だけでも5種類以上も保持するという大掛かりな事になっていました。自分のポケットや化粧ポーチの中に、必ずお守りのごとく点眼液が装備されている状態が1年以上続いたのです。

薬を好まない性格上、ここ最近はアーユルヴェーダの自家製ギーを目のトリートメントに愛用しています。ギーはバターから水分と不純物(タンパク質)を取り除いた純粋なオイルで、消化促進、免疫力向上、悪玉コレストロールを下げ、質の良いエネルギーとして食用に幅広く使えます。また、眼のケアとしても有名で、ギーに含まれる豊富なビタミンAは眼の健康維持や視力改善に役立ちます。携帯やパソコンで目を酷使している人やドライアイの人にもナチュラルな眼のトリートメントとして、手足のマッサージオイルとして、アンチエイジング効果や抗酸化作用もあったりと沢山の効能が備わっています。食べて良し塗って良し、お家で簡単に作れる我が家の万能オイルです。

瞬きは無意識なだけに、トレーニングするのも一番根気がいる作業です。変に意識して瞬きを試みると、顔の他の部分に力が入ってしまったり、シワが寄ってしまったりで、綺麗に開閉出来ません。顔全体の力を抜いて、顔面神経麻痺スペシャリストに習ったピラティスの様に地味なトレーニングをコツコツと続けるしか道はありません。ミリ単位で瞬きが上手になっていく度に感極まる思いでした!

人は何かを失う事でそのありがたみを知ることが多々ありますが、不思議な事に、まず失ってみないとそれに気が付きません。顔に限らず日常の中の無意識を探して見ると、些細なものに守られているそんな日常が見えてくるのではないでしょうか。小さなものや、空気の様なもの、当たり前に存在するもの程、なくてはならない絶大なものなのだと、瞬きが教えてくれました。無意識を意識してみると、身の回りの小さなミラクルに感謝せずにはいられません。

注)これはRHSに対する専門的医療知識を提供するものではありせん。あくまでも個人的な経験を通して感じた事や学んだ事として参考にして頂ければ幸いです。

A walk in the woods

「森へ歩きに行かない?」そんな友人からのお誘いが最近増えました。何て粋でカナダらしいお誘いだろうと常々思います。コロナウィルス感染拡大防止の為、家族以外となかなか外出や外食が出来ない中、唯一カナダの美しい自然は厳しい現状を忘れられる憩いの場を私達に提供してくれます

冬は太陽の顔を忘れる程、毎日雨が降り続くバンクーバーですが、カナダ人は傘もささずに平気で雨の中を歩いたりジョギングしたりします。私は流石に雨の中は歩きたくないと長らく思っていましたが、最近小雨程度ならありかもと、冬の雨の森を歩くのも好きになって来ました。

冷たい雨に濡れた針葉樹と苔蒸した香り、樹々の合間を幻想的に揺れる霧のカーテン、そしてあちらこちらから溢れた小川がトレイルにまで流れ込み、足元でチョロチョロと可愛らしい音をBGMに聴きながら歩くのは何とも清らかな気持ちにさせてくれます。

面白い事に、カナダ人はハイキング中終始お喋りが止まりません。しかもカフェで話す様な本気のお喋りがほぼ休みなく続くのです。これはコロナに始まった習慣ではなく、一緒に歩く相手が家族、恋人、友人、誰であろうと大抵皆ぺちゃくちゃお喋りをしながら歩いている姿が以前から印象的でした。「何をそんなに熱心に話してるんだろうか?」黙々と静寂なトレイルを歩くのが好きな私の素朴な疑問の1つでした。

最近、その疑問が何となく明らかになってきました。カナダ人の友人とハイキングに行く時、歩き始め前半は決まってお互いの近況報告会から始まります。ここ最近何していただの、どんな出来事があっただの、そんな会話を木の根っこを避けながら、雨でぬかったトレイルを登ったり下ったり結構なスピードで進みながら、話し続けます。一通りお互いのアップデートが終わると、お次は大抵自分達が気になっている自治問題の話題へ移行します。実は、私はここのトークが結構好きです。違う人種や文化背景を持つ人が、世の中の情勢やカナダで起きている社会問題をどう捉えているのか、違う角度からの意見は毎回とても興味深いです。ちょっと重いトピックでも、身体を動かしながら、周りの美しい景色も手助けしてか、「この問題についてはどう言う意見?」なんて、さらっと意見交換出来たりするのです。ハイキングも終盤に入ると、話題もその場その場で適当に移りますが、とにかくお喋りはノンストップ。このトレイルでこのスポットが一番お気に入りだとか、急に謎謎やお互いの質問コーナーが始まったり。そんな感じで数時間喋りっぱなしのハイキングが続きます。

ちょっと静かに森の声も聞きたくない?とふと思っていると、「今の音聞こえた?あれはリスの鳴き声ね」とか「ちょっと止まってみて!静かよね~~」なんてちゃっかり自然にも耳を澄ませていたりもするから可笑しくなります。

カフェで会ったり、街に繰り出すよりも、私は森の中で友人と会う時間がどんどん好きになって来ました。美しい自然と冬の澄み切った空気の中では、自然と伸び伸びと会話も弾みます。すれ違う人も皆笑顔で挨拶を交わします。「森へ歩きに行く」は、とてもカナダらしい社交場なのではないでしょうか。濡れた森を歩く度に心が晴れあがります。そして何より、森でお喋りをする度にまた一つ友人の事が深く知り合える、そんな素敵な交流の時間が流れています。

Local Feast!

買い物をする度、BC州内で生産・製造されたローカル商品を意識的に購入する事で、個人が担うフットプリント(環境負担)の軽減に繋がるそうです。あるBC州のリサーチでは、個人消費のわずか10%がローカルビジネスに傾くだけで、雇用や利益の循環が生まれ、多国籍企業に比べ何倍もの経済効果が期待出来ると言われています。

私も日々、個人消費がローカルに向くよう心がけています。今年のクリスマスは80%ローカルを目指してお祝いしようと、様々なローカルビジネスからの食の恵みと面識ある彼らのストーリーを思い返しながら楽しみました。

初トライしたお手製パンプキンパイ。主役のパンプキンは、バンクーバーから車で約1時間の農業都市、Abbotsford(アボッツフォード)のオーガニックファームClose to Home Organics(クローズ・トゥ・ ホーム・ オーガニックス)より。オーブンが強かったか、ちょっとひび割れましたが優しい甘さのパンプキンパイが出来ました。

テーブルセッティングには、100%オーガニックリネンを扱うCloth Studio (クロス・スタジオ)のテーブルナプキンと、Reclaimed Print Co (リクレイムド・プリント社)の廃材を再利用したコースターをワイングラス用に添えてみました。どちらとも素朴だけど温かみある素材が大好きです。

アパレティフはオカナガンにあるワイナリー、8th Generation (エイスジェネレーション)から発泡酒、Integrityをチョイス。オカナガンの「プロセッコ」と親しまれ、ワインを仕込む過程で発生した炭酸をそのまま瓶詰めしているので、頭痛や嫌な膨満感が出ません。

アパレティフのお供は、Golden Ears Cheese Crafters (ゴールデンイアーズ・チーズクラフターズ)の牧草牛のチーズと、最近ハマっているオーガニックビーガンクラッカーのHippie Snacks(ヒッピー・スナックス)。チーズは普段あまり口にしませんが、このコンビが堪らなく美味しい!幾つでもいけちゃいます。

メインはもちろんチキンロースト。今年はノースバンクーバーにお店を構えるホルモンフリーでサステイナブルな食肉を扱うTwo Rivers Meats(ツー・リバーズ・ミーツ)のオーガニックチキンを丸ごと一匹焼き込みました。昔友人に教えて貰った秘伝のタレで漬け込む事3日間。失敗知らずのレシピとローカルスイートポテト&自家製ギーのマッシュ添え。

お野菜は大好物のローカル芽キャベツを2種類。カナダ先住民でLGBTQ経営者のOne Arrow Meat (ワン・アロー・ミート)のスモークベーコンと一緒にメープルローストした1皿と生サラダ仕立てにしたものを作ってみました。

チキンのお供にはオカナガンはMoon Curser(ムーン・カーサー)2018年シラーを。シラーだけどチキンに合うと言うレビューを信じちょっと冒険してみたけど、やっぱり重め。ワインのペアリングはやはり大事です。気を取り直して、8th Generation2017年メルローxカベルネソーヴィニヨンを開けました!シラーはシラーでとっても美味しいけれど、チキンにはこちらで正解!

そして、ディナータイムは終始、Hives 4 Humanity (ハイブス・フォー・ヒュマニティー)の手作りミツロウキャンドルの柔らかい光が、美味しい時間を美しく演出してくれました。

と、100%とは行かずとも大半ローカルで挑んだ今年の我が家のクリスマス。食事から装飾品まで自分が住む州内のものでほぼ完結出来るって、とても貴重で贅沢な事だと常々思います。「今日は何%ローカル達成~!」と毎日の消費行動に取り入れてみたら、知らずと楽しくローカルビジネスに貢献しながら自分のフットプリントも削減出来るのかも知れません。

注)食事を楽しむのに夢中で、写真がお粗末なのをご了承ください…(。-_-。)

Sprout Power!

最近、スプラウティング(発芽)にハマっています。

きっかけはオーガニック+ビーガン+ローフードのシェフであるAgathe(アガト)さんと知り合ってから。彼女はバンクーバーでSprightly Plant Power(スプライトリー プラントパワー)と言うブランドを持ち、オンラインでも購入できる健康で美味しいクリエイティブな食を作っています。

全ての種子や穀物類はスプラウティングさせてから、生地にしたりミルクにしたりクッキーにしたりと、調理します。アーモンド、カシューナッツ、ウォルナッツ、ひよこ豆、レンズ豆、黒豆、蕎麦の実、キヌア、玄米…と、とにかくスプラウティングの達人。エイジレスでチャーミングで、食は人を造るのだと自ら体現してくれている女性です。

私もナッツや豆類を多く食べるけど、沢山摂取すると逆にお腹を壊したり、膨満感が出たり。そんな悩みをアガトさんに言ってみると意外な答えが返ってきました。

「人間の体は硬い種子を食べ慣れていないの。だからそのまま食べると体や消化に負担がかかる。種子や穀物類をスプラウティングすると、芽が出てとても栄養価が高い植物になる。吸収も消化も抜群で良い事だらけなのよ!」アガトいわく、スプラウティング=「種子」を食べ慣れた「植物」に変える作業なのだ。

芽を出すと種子や豆の中に蓄積してきた栄養素が新たなビタミンや栄養素に変化して、栄養エネルギーが最高レベルになるのです。と、そんな事を知ってしまったら、全ての種子や穀物類をスプラウティングしたくなってしまう!

もう何年も玄米はスプラウティングして炊いてるけど、他もやってみるとグングン芽の成長が観察出来て面白い!種子の状態や環境条件にもよるけれど、大体2〜3日で発芽してくる姿はなんとも可愛らしい。

ひよこ豆、大豆、白インゲン豆などは比較的簡単にスプラウティング出来ます。発芽したら、カレーやスープ、サラダのトッピングなど色々使えて便利。

黒豆もスプラウティング!これで黒豆煮を作るとぐちゃぐちゃになるのでおすすめしませんが、黒豆茶におすすめ。軽く炒ってお茶にして飲んで楽しんだ後、黒豆ご飯として炊きます。無駄なく完全なるホールフード!

一番コツがいるのは、キヌアのスプラウティング。あまりに小さいので芽が出るのか?と疑っていたけど、ちゃんと出ます!発芽したキヌアは、全ての必須アミノ酸、高プロテイン、植物繊維、鉄分が豊富な最強スーパーフードに変身。しかも発芽すると生でも食べれるので、そのままスムージーやサラダのトッピングにしたり。私は朝食のオートミールと一緒に軽く調理してから食べるのが好みです。

ちなみにかぼちゃの種は発芽しずらい種子の1つ。こちらはオーブンで海塩と少量のココナッツオイルと一緒にさっと焼いて、ヘルシースナックとして頂きます。

小さな種子に宿る、大きな生命力。

どんなものにも命が宿り、食べることは命(エネルギー)を頂くと言うこと。袋や容器の中で静かに長期間眠っている種子や穀物でも、溢れんばかりのエネルギーが詰まっています。スプラウティングをしてその栄養素を最大限に目覚めさせてあげる事を心掛けてみませんか?

因みに、貴重な栄養素を壊さない為にもなるべく火を通さないか、46度以下で軽く調理する位で頂くのがおすすめです。

Fall Affair

111日、カナダでは冬時間に時計を1時間戻します。夏時間と冬時間。いつもどっちに時計の針を動かすか覚えられなくて、友人から「Fall Back, Spring Forward」(秋は戻して、春は前に飛ぶ)と、とっても自分の気持ちにシンクロする言葉を教えて貰い、これからは馴染めそうです。

今年のバンクーバーの秋はなかったに等しい位、あっと言う間に過ぎ去り、秋と冬が同時に到来したような寒い季節が足早にやって来ました。寒暖の差が激しかった分、紅葉は鮮やかに美しく、短い期間でしたが十分に楽しむことが出来ました。

カナダの東は「メープル街道」と言われるほど、街を真っ赤に染めあげる赤い紅葉で有名ですが、バンクーバーがある西側は赤と言うより黄金色の眩しい色が目立ちます。私はそんなオレンジや黄金色に輝く温もりのある秋の色も大好きです。

山間や苔むす森の中の秋化粧は、深いトルコブルーの湖面や苔の緑とのコントラストで一層鮮やかに映え、ずっと佇んでしまう程私の目を楽しませてくれます。

そして、秋と言えば「食欲の秋」!!今年の秋は、ご近所さんから頂いた、大量のリンゴでアップルソースやアップルバターを沢山漬け込む作業からスタート。1週間ほどリンゴ漬けになり、様々なレシピのリンゴを食べました。人生初の缶詰作業もトライして、この冬は美味しいリンゴを長く楽しめそうです。

10月~11月にかけては、初の松茸狩り!松茸狩りは、プロの職業としている人も多く、過剰な採取を避ける為、地元の人でさえそう簡単に松茸が生息している場所を知る事は出来ません。幸運にも今年はご縁が重なり、松茸狩りを何回か楽しむ機会がありました。やはり、自分の足で山に入り、松茸を探し手で掘る作業は最高の秋のイベントです。

土瓶蒸し、松茸ご飯、松茸のすき焼きと、日本の松茸に負けない位、風味豊かな松茸を堪能しました。

サーモンの国カナダでは、サーモンの遡上が秋の風物詩でもあります。川沿いを歩いていると、この時期必ず誰かしらサーモン釣りをしている光景に出会います。

カナダ人は筋子に興味が無い人も多く、釣った鮭の筋子を川に放流している事もあります。偶然川辺で見つけた筋子。。。「おいしそう!」と思わず持って帰りたかったけど、流石に鮮度が不明だったので断念しました。

ワイルドは諦めて、今年は新鮮な筋子を購入して初のイクラの醤油漬けを作ってみました!以前から作ってみたかったお手製のイクラ作りに大興奮!!

手作りのイクラは、市販のものとは比べ物にならない程、ぷりっぷりで透明感あるオレンジ色の宝石の様。贅沢に出し汁と醤油、そして日本酒で漬け込んで、最高の珍味となります。

何だか今年の秋は「人生初」イベントが盛り沢山で、あっという間に過ぎ去りました。明日には終わってしまうかもしれない秋をどれだけ充実させたかで、長い冬を前向きに乗り越える心の準備が整います。

カナダの秋は、いつも私にお金では買えない素晴らしい恵みと贅沢なひとときが存在することを静かに教えてくれます。