月別: 2019年10月

A Journey of Pilgrimme – part 1

都市の中心からずっと遠く離れた場所。旅をしないと辿り着かないような人里離れた場所にレストランを作りたい。そんな想いで、ガリアノ島にあるFarm-to-Tableレストラン、Pilgrimme(ピルグリム)は誕生しました。2015年にオープンすると瞬く間に同年のカナダの新しいレストランTOP3に輝き、それ以降もベストレストラン100選の常連を貫いています。

ガリアノ島の旅行を決めたのも、Pilgrimmeを訪れてみたかったから。レストランで旅先を決めるなんて今までにない経験です。こんな小さな島でピークシーズンには予約は1ヶ月前に埋まり、カナダ全土から、世界各地から、人々が食べにやって来ます。1年の内オープンするのは約9ヶ月、週4日、毎晩25名限定に振舞われる料理とはどんなものだろうと、ずっと気になって仕方ありませんでした。

Pilgrimmeで食事をして貰うことはガリアノ島を体験して貰うこと」と、語るシェフのJesse McCleerly(ジェス・マックリーリー)は、「スターシェフ」と言う肩書きとは裏腹にゆるやかな川の流れのような佇まい。伝説のレストランNOMAでの見習を経て、カナダで自分のレストランを開く場所を探していた最中に、偶然ガリアノ島と巡り会ったそうです。半年以上置き去りになっていた元フレンチレストランを改装して、森の中にポツンと暖かい灯がともる居場所を作ったのです。

実際、Pilgrimmeの敷地に入ると何だか実家に帰って来たような、心がストンと落ち着く空気が漂っています。長い旅路の先にたどり着く山小屋の中は、モダンでいてどこかノスタルジック。「ただいま~。今日のご飯なに?」なんて会話があっても不思議でない居心地の良さがあります。

徹底的な地産地消のこだわり、環境へのインパクトも配慮しつつ、シェフ自ら海や森に繰り出して、その土地のその時の恵みを採取します。

カヤックを漕いで取った昆布、ビーチに生えている海草、森に生息するキノコや葉や枝も料理に加わり、それでもどうしても島で手に入らない野菜やお酒類を、フェリーに乗って近郊のビクトリアやバンクーバーから仕入れて来るそうです。

Tasting Menuと呼ばれる8コースディナーの品書は、使われた食材がごくシンプルに綴られているだけですが、実際に見て食すと、とっても複雑な素材のコンビネーションプレーに驚くばかり!

特に可愛らしい日替わりのSnacks(スターター)。ローストされたかぼちゃに発酵したローズの花びらとカリカリに焼いたワイルドライスが添えられていて、香り・食感・味ともに絶妙なコンビネーションで最初からノックアウト!スタッフも「まだ新しいメニューで私も食べたことないのよ」と羨ましそうに語ってくれました。

5感で楽しませてくれるメニューは島の風土と季節をテーブルに運んで来てくれます。

料理を引き立てるつけ添えのオイル、発酵も、麹も、全て自家製。焼き上げられた熱々のポテトと古代米のサワードウブレッドのお供はお手製の焦がしタマネギのバター。ホイップクリームのようにふわっふわっで、これだけでお酒が進んでしまう程でした!

一つ一つの調味料や脇役の全てがガリアノ島の「今日」の味を表現しています。

日が経っても、レストランで体感した味を一品ずつ覚えているとはなんて素敵なことでしょう。旅のアルバムの様に、一度食べたら忘れないスペシャルな思い出を作ってくれる、そんな場所です。

(後編へ続く)

Photo by YUSHiiN

Island Way of Life

1年に1島、島を巡る。そんな目標が出来たのは、ブリティッシュコロンビア州だけでガルフ諸島と呼ばれる島々が実に200以上もあるからです。バンクーバーから比較的アクセスしやすいサザンガルフ諸島だけでも7島あり、それぞれ独特の島文化が根付いています。

島に生きるとは?最近訪れたガリアノ島に魅了され、よくそんな事を考えます。ガリアノ島はサザンガルフ諸島の1つで、全長27.5km、幅は一番広い場所で6kmと細く長い形をした島。人口1,000人程が暮らしています。

この島には私達が日常的に目にするコマーシャルなモノは一切存在しません。ガソリンスタンド1件、グロッサリーストア3件、ATM3件、カフェもレストランも全ての商業施設は個人経営。もちろんスタバもマクドナルドもありません。病院もなく、ヘルスケアセンターと言われる簡易的なものがあるだけ。医者にかかる事になったら近くのバンクーバー島までエアバスで搬送されるそうです。

夏の観光シーズンの賑わいも消え、秋は静かに冬に向けての準備期間。お店も冬季閉店する場所もあります。

ランチタイムの11:30-2:00しかオープンしない(しかも週4日、たまに急用で休業)ローカルに大人気のFlying Black Dog。外に可愛いイートインスペースが設置してあり、こちらのバイソンバーガーは絶品!なのですが、こちらもそろそろシーズンクローズです。

最近の旅のテーマは「何もしない」こと。ガリアノ島は自然以外本当に何もないので、強制的にゆっくりさせられます。メインロードは縦に1本、信号のない道が走っているだけ。日中でも対向車に出会すことは滅多にありません。出会うのは鹿くらいで、地図がなくても大抵の場所に辿り着けます。

商業的な要素はゼロですが、ガリアノ島は美しく魅力溢れた海に囲まれています。

小さいにも関わらず島全体で73箇所もの公共ビーチアクセスがあり、この数は他のサザンガルフ諸島の島々に比べると驚異的な数!

その理由はガリアノ島の自然は皆で共有するものとして島全体で守っているからだそうです。

特にガリアノ島が面している海は、クジラやシャチが頻繁に行き交うActive Pass(アクティブパス)と言う貴重な海峡があることでも有名です。

私もハイキングで登ったMt. Galiano(マウントガリアノ)の頂上から広大なブルーの海原を悠々と泳ぐクジラの姿をキャッチしました。そんな光景が当たり前のように飛び込んでくる島の世界観が余りにファンタジーで、しばらく興奮が冷めませんでした!

美しい自然は個人レベルでもシェアします。近隣の人達に楽しんでもらえるよう開放している個人所有地もあります。「Talking Trees」と名付けられたトレイルは、80歳になるお婆さんが所有する壮大な土地の中にあってローカルは誰でも自由に歩けます。10分ほど行くと美しい眺めの海岸に出てとても気持ち良い場所です。

週末に開かれる可愛らしいサタデーマーケットは10店ほどのお店が集まり、それぞれの物語が詰まった商品が沢山並んでいました。人気が集中している老夫婦が作るベーカリーは朝イチに並ばないと直ぐに売切れてしまいます。

丹精込めて収穫されたオーガニック野菜や、環境と体に優しいソイキャンドル等、みんなゆっくり会話を楽しみながら作業するのでお店ごとに話し込んでいると結構な時間が経ってしまいます。

島人はほとんどの人が知り合いで、名前を言うと「ハイハイ!〇〇さんね!」と分かってしまう程。

滞在先のキャビンは、更に人里離れたノイズレスな環境へ。

ゲートを越えて一山登ったその先は、オーナーのメインハウスとキャビン以外文明の気配は消え、羊と朝食の卵を産んでくれる鶏のみ!去年の冬は大雪で山から降りれず4週間も自宅から出られなかったそうです。

キャビンから続く幾つものトレイルを気の向くままに散策したり、

夕日を眺めながら大好きなワインを楽しんだり、

夜は風の奏でる音に耳をすまし、暖かく燃えるシダーウッドの香りに癒されたり。人工的な音を遮断して流れ行く時間はとてもシンプルで最高の贅沢に感じます。

島の生活は不便であり、想像以上の困難も沢山あるはず。でもそこにはお金やモノでは代え難い、自分らしい幸せがあるのではないでしょうか。

島と言う限られたスペースと資源の中だからこそ、人はよりクリエイティブに、そして助け合いと分かち合い豊かな精神を持って生きられるのかもしれません。そんな精神がこの地球に住む11人が育めたら何て素敵だろう。

眺めの良い丘で大型フェリーが行き交うのを見て、ガリアノ島の人達は便利さを恋しく、都会を恋しく想うだろうか?答えはきっと決まっているでしょう。