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Plant a seed

カナダは移民の国です。移民対策に寛容で「多様性は国の力」と公言するカナダの裏側に、語られて来なかった影のストーリーがあります。過去160年もの間、先住民の子供たちは強制的に寄宿舎に入れさせられ、彼らの文化や権利が迫害を受けた悲しい歴史があります。寄宿舎に送られた子供の数は累計15万人と言われ、何と1996年まで続いたのです。今年の5月、BC州にあった先住民寄宿学校の跡地で215人の子供の遺骨が発見されたニュースが報道された時、カナダ人の誰しもに衝撃が走ったのではないでしょうか。
今年の9月30日に新しく出来た祝日「National Day for Truth and Reconciliation」(真実と和解のための日)は、国や州政府が過去の過ちを認め、問題と向き合うために生まれました。負の歴史と向き合い、新しい和解の歴史のスタートを切る1つの種になって行くのではないでしょうか。

そんな記念すべく祝日の翌日、個人的にも記念すべく1日がやって来ました!去年の4月からローカルに着目した支援活動に取り組んで来たオンラインメディア・VOICE。1年半と125件のインタビューを経て募った基金を、未来の種の為に使う日がやって来たのです。

コロナ禍の苦境の中で、VOICEに賛同し寄付をはじめ様々な形で応援してくれた人達の想いをど紡いで行くのがベストか?答えは、とても早い段階から「環境問題と未来の子供達にの為に役立てよう!」と決まっていました。

VOICEの活動を通して、地元で海洋プラスチック問題に取り組んでいるNPO団体のOcean Ambassadors Canada (オーシャン・アンバサダーズ・カナダ)と出会い、彼らが主宰する小中学生を対象にしたOcean Camp(オーシャン・キャンプ)という課外授業に低所得家庭の子供達を招待する事を目標に活動して来ました。先祖代々からの土地を奪われ、自然と共存する文化を忘れてしまった先住民の現状に敏感なOACから、「在学生の100%が先住民の子供や知的障害児であるX’pey Elemetay Schoolの生徒を招待してはどうだろう?」と提案された時も、迷わず賛成しました。

10月1日のこの日は長く続いた秋雨も止み、久しぶりに太陽の日差しが心地よく感じる穏やかな朝からスタートしました。課外事業の開催場所に選んだKitsilano Beach(キツラノビーチ)は、風もなく湖のような静かな海が広がっていました。「子供たちがパドリングするには最高の日だね」とスタッフと話していると、私達がアレンジしたスクールバスから降りてくる15人の子供たちの賑やかな声が聞こえて来ました。車で15分ほどの場所に学校があるにも関わらず、子供たちのほとんどは、バンクーバーの西側にあるキツラノビーチに来た事がありません。海を経験するのが初めての子もいます。朝起きた時には両親が不在で、登校するのに先生が迎えに行く生徒もいるそうです。そんな子供たちにこの日は思いっきり海を楽しんでもらおう。自然と触れ合ってもらおう。スタンドアップパドルを一緒に楽しもう。そう思うと、私自身の胸も高鳴って前日の夜はなかなか寝付けませんでした。

特に人生初のスタンドアップパドル体験をする子供たちは、もう大騒ぎ!水が冷たいだの、ウェットスーツが着心地悪いだの、色々騒いだ後にいざ海の上に出るとその眼差しは真剣。おっかなびっくりで大人しく漕ぎ始めるも、少し落ち着いて来るとわざと海の中に落ちてはしゃいだり、本当に可愛いらしい光景でした。

海辺での海洋生物の観察もまた微笑ましい。

自分が見つけたカニの赤ちゃんに名前までつけてずっ~と大切に手のひらに持っていた女の子もいました。カニの雄雌の分別方法や海洋プラスチックのライフサイクルなど、OACのスタッフの熱心な授業を子供たちと一緒に私まで楽しく勉強させてもらいました。

VOICEに賛同してくれたウェストバンクーバー のカフェ、Anchor(アンカー)のクッキーとブラウニー、そしてビーガンホットチョコレートを提供してくれたZimt Chocolate(ジムト・チョコレート)の差し入れもあって、子供たちのテンションは終始マックス状態に…!

約4時間の課外授業が終わる頃には、大人の方がぐったり疲れましたが、別れ際に1人1人抱きしめてあげたくなる程の愛おしい時間を過ごさせて貰いました。

「学校のクラスの中での表情と違って、みんな生き生きしていたわ。それもそうよね、先住民の子供たちは本来なら自然と共に生きているんだから。」と、学校の先生と交わした会話がとても印象的でした。そして最後に、昨日の「真実と和解のための日」の為に学校で作ったと言うピンバッチをプレゼントしてくれました。何だか素晴らしい勲章を貰ったようなそんな気持ちになり胸が熱くなりました。

15人の子供たちが、この日のことをどれだけ記憶してくれるだろうか。海洋生物とプラスチック問題の話など、すっかり忘れてしまうのかもしれない。パドリングの楽しい思い出だったり、カニや貝を拾ったことだけでも覚えていてくれたら、それで良い。そんな小さな思い出がいつか大きな変化を起こす1つの種となるかもしれないから。未来に向けて小さな種蒔きをさせて貰えただけでも、私にとっては大きな大きな出来事でした。

Land and Sea

どんな時代でも、どんな場所でも、人の心を感動させる普遍的な美しさに私は惹かれます。カナダの大自然は、そんな普遍的な美を、いつもさらりと私の前に繰り広げてきます。

カナダの夏は毎年9月最初の月曜日、Labour Day(レイバー・デイ)の祝日と共に終わりを告げる気がします。この日を過ぎると途端に肌寒さを感じる曇りや雨の日が多くなり、長い冬への扉が少しづつ開き始めるのです。カナダ人は6月~8月の短い夏を謳歌する為に、本当に情熱的に各地方へ駆け巡ります。「夏の間はローカル(地元)のお客とほとんど会わなくなるの。」と、近所の小売店の人が言っていた言葉をふと思い出しました。

7月末までずっと日本に滞在していた私にとって、カナダの夏は数週間しか残っていませんでしたが、1年で最も活動的で美しい季節を逃すまいと、私も残りわずかな夏の日々を精一杯謳歌しました。9月頭にキャンプで訪れたバンクーバー島にあるMiracle Beach(ミラクルビーチ)。ここを拠点とした夏休みは、特に最高の時間となりました。

何キロメートルにも伸びる砂浜に、穏やかでガラスのような海。その優しい海の向こう側には本土沿岸にそびえ立つ氷河を抱いた山々が連なっています。南国のようなサンディービーチと青い海と雪山。シュールにも思えますが、これがカナダ西海岸の典型的な情景です。

朝の引き潮時には、沢山の海の生き物が顔を出します。特にびっくりしたのは、シーアスパラガス(厚岸草)の群生。海水で育つ為、かなりしょっぱいですが、私はこの塩気が大好きで生でポリポリ食べてしまいます。

引き潮の時間にしか姿を見せない自然のアート、砂紋も惚れ惚れする美しさでした。その場に足跡を残してしまったら申し訳ない程、完璧で繊細なグラフィカルアートです。夜は天の河がくっきり見える満天の星空を上に、満ちてくる波の音を聞きながら過ごしました。ミラクルビーチは1日に何通りもの違う美しさを見せてくれる場所です。

ミラクルビーチから車で30分ほど北上したCampbell River(キャンベルリーバー)と呼ばれる小さな町は、「サーモンキャピタル」と呼ばれるサーモン釣りのメッカです。9月頭と言うのに、既に沢山の釣り人で川は賑わっていました。そこからフェリー に乗ること10分。人口4,000人ほどの静かな島、Quadra Island(クアドラ島)にあっという間に到着します。船旅でたった10分の距離だけど、ここでは全く違う時間の流れと、抜群の透明度を誇る海が待っています。

海が豊かだと、生き物も豊か。ビーチ沿いには、生牡蠣やアサリがザクザク!!海岸を埋め尽くすように生息している海藻も青々しく輝いていて、とっても美味しそう!この日の夜、海の恵みで作ったアサリのビール蒸し、焼き牡蠣、海藻ラーメンは絶品でした。

クアドラ島には、カナダ最北端のワイナリーもあります。なんと偶然にもオーナー夫人が日系カナダ人の方で、オーガニックの葡萄で丁寧な優しいワイン作りをしています。地消地産の文化が根付くクアドラ島のシンプルな営みはとても贅沢に感じます。

美しさは海だけではありません。バンクーバー島の中部を占めるStrathcona Provincial Park (ストラスコーナ州立公園)は1911年に設立したBC州で最も古い州立公園です。むか~し昔、私の中学時代、バンクーバー現地校でここに修学旅行・野外研修で訪れたのを覚えています。2,458km2と言う広大な公園は、2,416km2と言う神奈川県面積と比較するとどれだけ広いか少し想像出来るでしょうか。そんなストラスコーナ州立公園は、まさにアウトドアのメッカ。ハイキング、カヌー、カヤック、釣り、ロッククライミング、スキー、と様々なアウトドアスポーツを楽しめます。

とにかく広いので、1日に1箇所と決めて行動するのが精一杯。とある1日、公園内にあるヘレン・マッケンジー湖とバトル湖を周遊する約10kmのトレイルをハイキングしました。Paradise Meadows(パラダイスメドウ)とも呼ばれるこのトレイルは、息を飲むほどの美しさで今回の旅のハイライトとなりました。

ちょうど夏から秋に移り変わるアルペン・ツンドラの紅葉時期で、その名の通りパラダイスの美しさです。大地を埋め尽くす草木の紅葉は満開の花畑のように、秋色のじゅうたんのように、鮮やかに辺り一面を染め上げていました。

沢山の小さな実をつけた山のブルーベリーや、甘~いハックルベリーなど、北の山の恵みも沢山楽しめました。それをご馳走に飛び交う野鳥達。以前からツンドラの紅葉を見たかった私は、パラダイスメドウのハイキングはちょっと別格で、終始足を止めては夢心地の気分に浸っていました。半日のハイキングが終わる頃にはちょっと寂しくなってしまうほど。。。

出口付近で子連れの家族がどのトレイルを進もうか迷っている様子だったので、思わず「このトレイルに行って!本当に最高だから!」と送り出しました。ストラスコーナ州立公園を再訪する時は、また必ず歩きたいトレイルです。

どんな時代でも、どんな場所でも、どんな人にも、自然はその美しさを惜しみなく披露し、人の心を充電してくれます。混沌とした世の中でも、海や山はただそこにあるだけで、全ての人に大きな喜びと感動を与えてくれます。その自然の一部になった時、人がどんなに小さく尊い存在かも気づかせてくれるのです。自然にしか成せない美の技に感服すると同時に、カナダの短い夏は、私にまた素晴らしい思い出をひとつ増やしてくれました。

Climate Change is Real

生まれて初めて山が燃える姿を見た瞬間、何とも言えない虚しさと共に足がすくむ思いをしました。

BC州ではこの夏、4月から7月にかけて起きた山火事は累計1,168件にも上り、約3.4万ヘクタールの大地が燃えました。9月に入った今日でも、未だ223箇所で山が燃え続けています。あまりにも広大な数字でいまいちピンと来ませんが、8月にカナダに戻った数日後にも何百キロと離れた山火事の煙がバンクーバー にも影響を及ぼしました。その日、バンクーバーは「世界一最悪の大気汚染の場所」としてランキングされてしまったのです。

山火事の煙で太陽が隠れ空が霞んでも、きな臭い匂いが街中を包んでも、実際に山が燃えている現場でオレンジ色に燃える炎を目撃するのとでは、ハッと目が覚める様な意識の違いがありました。

観測史上ワースト3に入る今回の山火事の最中、私と夫は仕事も兼ねて山火事が多発しているBC州の内陸にあるオカナガンに行くことになっていました。オカナガンはワインの産地として有名で、カナダの中でも最も乾燥している地域です。ギリギリまでニュースを注意深くチェックしながら、慎重に旅の準備を整え向かった結果、いつものワーケーション(仕事とバケーションを合わせた旅)とは違う、深い意味ある旅になりました。

山火事は今世界が直面する大きな環境問題のごく一部に過ぎません。そして、山火事の多発する現地に住む人々の中でも様々な意見が飛び交います。「山は燃えるもの」と言う人や「良い年も悪い年もある」と言う人がいれば、若い世代の中には気候変動に対して「早くアクションを起こさなければ20~30年後に農業が出来なくなる」と危惧する声も。毎日メディアで大きく取り上げられることで、風評被害だと言う声も聞きました。同じオカナガンでも風向きによって煙の方向が変わったり、激しく燃えている地区もあればそうでない地区もあるので、夏の観光シーズン中に旅行者がコロナ禍に加えて激減してしまい、肩を落とすワイナリーも多々存在します。
「葡萄のことばかり煙の影響があると取り上げられて…。果物や他の農作物だって同じなのに、なぜメディアはワイナリーに対して厳しいのか。」と少し苛立ちを感じる声も。

個人的な経験から言うと、私が幼少期カナダに住んでいた80年代後半〜90年代当時、山火事の煙がバンクーバーにまで影響があった事は一度もありませんでした。山が燃えるのは自然のサイクルの一部であっても、その状況は刻々と悪化している事に間違いありません。

ハイウェイの両脇で黒く焼き焦げた木々が辛うじて立っている光景を目にしました。地面を這うように燻るオレンジ色の炎が揺れ動いていました。オカナガンでは珍しく、クマや野生羊や鹿が沿道に姿を表していました。きっと炎で山を追われて迷い込んで来たのだろう、そう思うと胸がズンと重くなります。頭上には絶え間なく消火活動に努めるヘリコプターが往来していて、いつもの夏とは違う「賑わい」を体験した感じです。

そんな一味違うオカナガンから戻って来て、自分の中で決めたことが幾つかあります。

①家では牛肉を食べない。もともとほとんど食べませんが、徹底しようと決意。畜産全体が排出するメタンガス排出量の80%は牛肉生産によるものです。

②ゴミを出さない。リサイクルやリユーズ(再利用)する事で、家庭内のゴミは1週間で手のひらサイズ程度に抑えられる事が出来ます。

③食品用ラップフィルムを使用しない。前から気になっていたサランラップなど、プラスチックゴミ削減の為、この機会におさらばする事にしました。

④衣類は天然素地のものを選ぶ。海洋プラスチック問題の大きな一因は、私達が纏う衣類からです。化学繊維ものはなるべく買わずに、肌にも環境にも優しいリネン、シルク、オーガニックコットを中心に選んでいます。

⑤買い物にはエコバックを。食材の買い物だけでなく、日用品にも必ずマイバックを持参。カフェや仕事現場には、マイボトルを。リサイクル用品だって再生するのにエネルギー消耗するのでなるべくリサイクル用品の数も減らせるように心掛けています。

まずは自分が始められる小さな行動の変化から環境問題にもっと取り組もう。そう再確認させてくれた今回の旅でした。

最近目に留まった言葉で、私の原動力になっている言葉は「You must be the change you want to see in the world.」(あなたが見たいと思う世界の変化にあなた自身がなりなさい。)
私は100年後も200年後も美しい世界を見たいから、今自分が生かされている時間の中でどれだけ自分の周りを汚さずに立ち去れるか、楽しみながら頑張っていこうと思います。ひとりひとりの小さな行いが、この大きな地球をきっと綺麗にお掃除してくれる事を信じて…。

Smell the flowers

4月の中旬から日本に一時帰国中の私に、バンクーバーの家のバルコニーから花便りが届きました。出発直前に撒いたスイートピー(さやえんどう)が元気よく開花している様です。花の後はちゃんと実をつけてくれるだろうか。。。写真を見ながらそんな事を思いつつ、この夏、我が家の小さなバルコニーガーデンの成長が見れずにちょっと寂しい気持ちになりました。

バンクーバーでは、春から夏にかけてそこら中に花が咲き乱れ、通りを歩いているだけでもふんわりと甘い香りが漂い、何とも夢心地な気分になります。特に夏に咲くワイルドローズの香りは格別です。

その反面、東京にいる時間は自然を身近に感じることが極端に少なくなります。都会の時間の流れが早すぎるのか、それとも眠らない都市のノイズの影響か、この2ヶ月ほどジャーナルに書く言葉がなかなか湧いて来ませんでした。身の回りの環境が人に与える影響は、自分の想像以上に大きいものではないかとつくづく思います。

都会のど真ん中で、それでも私は自然を探しているのでしょう。最近、何気なく道端や住宅地の片隅に咲いている花を目にする度に、可愛くて思わず足を止めてしまいます。

名前の知らない花に遭遇すると「あら、あなたのお名前なんて言うの?」と、つい心の中で尋ねてみたり…。

そして、決して理想的な環境でなくともカラフルに、可憐に、そして逞しく咲く花の姿にちょっと元気をもらったりします。

美しい花や小さな自然の営みを目にすると、またふわっと頭の中に言葉が浮かんで来て面白いものです。普段カナダではごく自然にジャーナルを書いていますが、私の語る言葉は単純にカナダの美しい情景にいざなわれているものなのかもしれません。

忙しく走り回る東京で自分の言葉を見つめる時間はなかなか無いですが、どんな忙しい日常でも、 ちょっと足を止めて花と会話をする時間を大切にしたいなと思います。

最後に、スイートピーの花言葉は花の色によって異なる様ですが、一番響く言葉は「ほのかな喜び」。私と花の時間にぴったりと合う言葉です。

Hope and Cheer

柔らかい日差しが半年ぶりに戻って来て、春の訪れを感じる季節になりました。バンクーバーで春を感じる最初のサインは、クロッカスの群衆とスノードロップでしょう。クロッカスの花言葉は「青春の喜び」「元気」、そしてスノードロップの花言葉は「希望」「慰め」。どちらも春めいてくる時間の中で、心が浮き立ってくるようなそんな響きがします。

カナダの春は、生命力の強さを教えてくれます。まだ背後の山々には雪景色が広がり、ピンと張り詰めた冷たい空気が吹く中で、新しい命が芽吹く瞬間が私は大好きです。

特にクロッカスの群生はお見事。誰かが袋一杯の種を溢してしまったかと思うほど、木の根元や日当たりの良い芝生の上にお花畑のように咲き乱れます。一斉に太陽の方向を向いて、小ぶりで鮮やかな花を咲かせる力強いクロッカスの姿が、長い冬の終わりと共にやって来る春の時間を知らせてくれます。

クロッカスに続いて、霜や凍結にも負けずに勢いよく芽吹いて来る命はこの頃どんどん加速します。家の外のプランターに忘れたように植えてあったチューリップの球根がニョキニョキ芽を出始めました。

冬に植え付けたガーリックの芽も日々元気に伸びて行きます。今年の夏は初めて自らガーリックの収穫が出来るかな、と今からわくわくしています。

芽吹くのは種や球根だけではありません。黄色い枝を茂らせるサボテンのような形をした不思議な樹木が近所の公園に存在するのですが、毎年冬も終盤になると根元の大きな幹だけを残して市の役員が容赦なく剪定します。今年は偶然その剪定日に遭遇して、公園に大量に切り落とされた黄色い枝が無作法に放置されていました。しばらく観察していると、おばさんがいそいそとやって来て枝を拾い始めました。思わず、「その枝どうするんですか?」と尋ねてみると、「この枝は強くて丈夫で、ガーデニングに使うの。トマトや胡瓜などの支柱に最適よ。しかも、土に差し込んで置くと可愛らしい緑の葉っぱが芽吹くのよ!」と詳しく教えてくれました。市の方も、近隣の住人がガーデニング等にこの枝を再利用するのを知っているそうで、切り落とした枝を「ご自由にどうぞ」と言わんばかりに放置しています。おばさんと立ち話をしている最中に、どこから噂を聞きつけたか、人々が続々やって来て枝を拾い始めていました。

私も真似して数本持ち帰り水挿ししておくと、数週間後に緑色の小さな葉っぱがあちらこちらから顔を出し始めて、とっても可愛い!今ではちょっとした室内のミニオアシスになっています。

とある海岸沿いに生息していたローズマリーの生命力も強いです。ちょっと摘んで持ち帰り生けておくと、可愛らしいラベンダー色の花を咲かせてくれました。ローズマリーは簡単に挿木も出来て比較的簡単に増やすことが出来ます。

一見止まった景色の中に、新しい小さなパワーが宿っている。生命とは短く、はかなく、けれど強く根性あるものなのではないでしょうか。「希望」と「元気」と言う言葉がぴったりの春になって欲しいと今年はより一層強く思います。

A walk in the woods

「森へ歩きに行かない?」そんな友人からのお誘いが最近増えました。何て粋でカナダらしいお誘いだろうと常々思います。コロナウィルス感染拡大防止の為、家族以外となかなか外出や外食が出来ない中、唯一カナダの美しい自然は厳しい現状を忘れられる憩いの場を私達に提供してくれます

冬は太陽の顔を忘れる程、毎日雨が降り続くバンクーバーですが、カナダ人は傘もささずに平気で雨の中を歩いたりジョギングしたりします。私は流石に雨の中は歩きたくないと長らく思っていましたが、最近小雨程度ならありかもと、冬の雨の森を歩くのも好きになって来ました。

冷たい雨に濡れた針葉樹と苔蒸した香り、樹々の合間を幻想的に揺れる霧のカーテン、そしてあちらこちらから溢れた小川がトレイルにまで流れ込み、足元でチョロチョロと可愛らしい音をBGMに聴きながら歩くのは何とも清らかな気持ちにさせてくれます。

面白い事に、カナダ人はハイキング中終始お喋りが止まりません。しかもカフェで話す様な本気のお喋りがほぼ休みなく続くのです。これはコロナに始まった習慣ではなく、一緒に歩く相手が家族、恋人、友人、誰であろうと大抵皆ぺちゃくちゃお喋りをしながら歩いている姿が以前から印象的でした。「何をそんなに熱心に話してるんだろうか?」黙々と静寂なトレイルを歩くのが好きな私の素朴な疑問の1つでした。

最近、その疑問が何となく明らかになってきました。カナダ人の友人とハイキングに行く時、歩き始め前半は決まってお互いの近況報告会から始まります。ここ最近何していただの、どんな出来事があっただの、そんな会話を木の根っこを避けながら、雨でぬかったトレイルを登ったり下ったり結構なスピードで進みながら、話し続けます。一通りお互いのアップデートが終わると、お次は大抵自分達が気になっている自治問題の話題へ移行します。実は、私はここのトークが結構好きです。違う人種や文化背景を持つ人が、世の中の情勢やカナダで起きている社会問題をどう捉えているのか、違う角度からの意見は毎回とても興味深いです。ちょっと重いトピックでも、身体を動かしながら、周りの美しい景色も手助けしてか、「この問題についてはどう言う意見?」なんて、さらっと意見交換出来たりするのです。ハイキングも終盤に入ると、話題もその場その場で適当に移りますが、とにかくお喋りはノンストップ。このトレイルでこのスポットが一番お気に入りだとか、急に謎謎やお互いの質問コーナーが始まったり。そんな感じで数時間喋りっぱなしのハイキングが続きます。

ちょっと静かに森の声も聞きたくない?とふと思っていると、「今の音聞こえた?あれはリスの鳴き声ね」とか「ちょっと止まってみて!静かよね~~」なんてちゃっかり自然にも耳を澄ませていたりもするから可笑しくなります。

カフェで会ったり、街に繰り出すよりも、私は森の中で友人と会う時間がどんどん好きになって来ました。美しい自然と冬の澄み切った空気の中では、自然と伸び伸びと会話も弾みます。すれ違う人も皆笑顔で挨拶を交わします。「森へ歩きに行く」は、とてもカナダらしい社交場なのではないでしょうか。濡れた森を歩く度に心が晴れあがります。そして何より、森でお喋りをする度にまた一つ友人の事が深く知り合える、そんな素敵な交流の時間が流れています。

Fall Affair

111日、カナダでは冬時間に時計を1時間戻します。夏時間と冬時間。いつもどっちに時計の針を動かすか覚えられなくて、友人から「Fall Back, Spring Forward」(秋は戻して、春は前に飛ぶ)と、とっても自分の気持ちにシンクロする言葉を教えて貰い、これからは馴染めそうです。

今年のバンクーバーの秋はなかったに等しい位、あっと言う間に過ぎ去り、秋と冬が同時に到来したような寒い季節が足早にやって来ました。寒暖の差が激しかった分、紅葉は鮮やかに美しく、短い期間でしたが十分に楽しむことが出来ました。

カナダの東は「メープル街道」と言われるほど、街を真っ赤に染めあげる赤い紅葉で有名ですが、バンクーバーがある西側は赤と言うより黄金色の眩しい色が目立ちます。私はそんなオレンジや黄金色に輝く温もりのある秋の色も大好きです。

山間や苔むす森の中の秋化粧は、深いトルコブルーの湖面や苔の緑とのコントラストで一層鮮やかに映え、ずっと佇んでしまう程私の目を楽しませてくれます。

そして、秋と言えば「食欲の秋」!!今年の秋は、ご近所さんから頂いた、大量のリンゴでアップルソースやアップルバターを沢山漬け込む作業からスタート。1週間ほどリンゴ漬けになり、様々なレシピのリンゴを食べました。人生初の缶詰作業もトライして、この冬は美味しいリンゴを長く楽しめそうです。

10月~11月にかけては、初の松茸狩り!松茸狩りは、プロの職業としている人も多く、過剰な採取を避ける為、地元の人でさえそう簡単に松茸が生息している場所を知る事は出来ません。幸運にも今年はご縁が重なり、松茸狩りを何回か楽しむ機会がありました。やはり、自分の足で山に入り、松茸を探し手で掘る作業は最高の秋のイベントです。

土瓶蒸し、松茸ご飯、松茸のすき焼きと、日本の松茸に負けない位、風味豊かな松茸を堪能しました。

サーモンの国カナダでは、サーモンの遡上が秋の風物詩でもあります。川沿いを歩いていると、この時期必ず誰かしらサーモン釣りをしている光景に出会います。

カナダ人は筋子に興味が無い人も多く、釣った鮭の筋子を川に放流している事もあります。偶然川辺で見つけた筋子。。。「おいしそう!」と思わず持って帰りたかったけど、流石に鮮度が不明だったので断念しました。

ワイルドは諦めて、今年は新鮮な筋子を購入して初のイクラの醤油漬けを作ってみました!以前から作ってみたかったお手製のイクラ作りに大興奮!!

手作りのイクラは、市販のものとは比べ物にならない程、ぷりっぷりで透明感あるオレンジ色の宝石の様。贅沢に出し汁と醤油、そして日本酒で漬け込んで、最高の珍味となります。

何だか今年の秋は「人生初」イベントが盛り沢山で、あっという間に過ぎ去りました。明日には終わってしまうかもしれない秋をどれだけ充実させたかで、長い冬を前向きに乗り越える心の準備が整います。

カナダの秋は、いつも私にお金では買えない素晴らしい恵みと贅沢なひとときが存在することを静かに教えてくれます。

Summer of 2020

秋分の日が過ぎ雨が降り始めると、バンクーバーの冬はもうすぐそこまで来ています。今年の夏は海外渡航や国内移動に厳しい規制があったにも関わらず、「最高の夏だった!」と言う声をよく聞きます。私もその1人です。

国外に出られない分、自分のいる場所を思いっきり満喫した夏でした。前年よりもっとキャンプに出かけ、山を歩き、湖や海で過ごしました。ずっと行きたかったワインカントリー・オカナガンにも旅する事が出来ました。

短い夏を活動的に動き回りましたが、それでもブリティッシュコロンビア州内のごくほんの一部。カナダがどれだけスケールの大きい国土なのか、同時に思い知らされた年です。

旅もそうですが、今年の夏は私の中でハイライトとなるイベントが2つありました。1つは、ローカルサポートプロジェクトVOICEを通じて知り合った、Ocean Ambassadors Canada (オーシャン・アンバサダーズ・カナダ/ 以下OACの創設者アリソンとの出会い。OACはプロジェクトVOICEが継続的に寄付をしている非営利団体で、海洋汚染問題に積極的に取り組んでいます。「海を好きになってもらう事で、海洋汚染問題に興味を持ってもらう事」を目的とし、地元の小学生を対象にスタンドアップパドルを教えて、海で楽しく遊びながら海洋プラスチックの問題や危機に直面している海洋生物について教え、変化を起こす行動を呼びかけています。

夏の終わり、アリソンが人生初スタッドアップパドルに誘ってくれました。水際で海を見るのと、パドリングで沖まで漕いで観察するのとでは景色がまるで違います。自分の真下でアザラシが小魚を追っている姿や、クラゲの大群がふわふわと波に揺られながら浮遊していたり。目の前の海の中で繰り広げられる別世界に魅了され、OACの思惑通り海洋汚染についてもっと勉強しようと思うようになりました。

海の中で何が起こっているのかは地上と違って、自分の目で確かめる事は難しい。ですが、マリンスポーツを通じてとてもわかり易く、より親身に海洋汚染問題を考えるきっかけを作ってくれます。「海」と言う共通の好きなものを通じて、アリソンと彼女の活動に出会えた事は、私の夏をより有意義なものにしてくれました。

2つめのハイライトは、The North Shore News(ノースショア・ニュース)を通しての出会い。The North Shore Newsとは私が今住んでいる地元新聞社で、1969年創業以来コミュニティーに密着したネタを取り上げている新聞です。新聞と言うものが主流でなくなり、オンラインに移行するも今は毎週水曜日、1回だけ新聞が発行されています。以前から私はこのThe North Shore Newsの愛読者で、彼らから「ローカルコミュニティーを支援しているプロジェクトVOICEを取材したい。」と連絡が来たときは、もう大喜び!!そして、流石に情報網が広いよね、と感心しました(笑)。

何回かメールでやりとりをし、電話インタビューを受けている最中にふと気がついたのです。やりとりをしている記者の名前が何か聞き覚えがあるなぁ〜、と。すぐに電話後、新聞を探ってみるとやはり!!!The North Shore Newsで私が一番大好きな記事を書いているアンディーさんが担当者だったのです! アンディーさんは元はスポーツ記者ですが、The North Shore Newsでは「Laugh All You Want」と言うコメディータッチのコラムを書いています。社会的問題を独特のユーモアセンスで面白おかしく書いている文章が私はとても大好きなのです。

そんな敬愛するアンディーさんに記事を書いてもらえるなんて、人の巡り合わせとは何とも不思議です。ちゃっかりお茶の約束までして、つい先日直接お会いする事が出来ました。

この夏を振り返ると、そんな素敵な巡り合わせが多々ありました。限られた行動範囲で向かった美しい場所、出会った美しい人々、共有した有意義な時間…。とても身近なところで、人生の広がりを感じさせてくれた夏。パンデミックで強いられた特別な時間は、最高の夏を届けてくれました。

Under the Stars

降り注ぐような満天の星空を、キャンプで訪れた Kentucky Alleyne Provincial Park (ケンタッキー・アレイン州立公園)で見ました。沢山の流れ星と七色に発光するカラフルな星達。この世のものとは思えないほど幻想的で静寂な光景に時間を忘れ、ただ空を見上げて夜を過ごしていました。

ケンタッキー・アレイン州立公園はケンタッキー湖とアレイン湖から成る州立公園で、バンクーバーから内陸へ車で3時間ほどの場所にあります。公園のゲートから更に6km程行くとそこには2つの湖の他には何もない絶景キャンプ場が待っています。

湖の底に沈殿した火山灰が太陽の光が射すことで、水面を鮮やかなトルコブルーとグリーンに輝かせます。水辺には花が咲き乱れ「パラダイス」という言葉がぴったりの場所です。

柔らかい陽が当たる早朝の湖は抜群の透明度。数メートル先までガラスのように澄んでいて、思わずボーッと見入ってしまう程。静止した湖の対岸のどこからか、毎朝狼の遠吠えが響き渡って来るのが日課です。

真昼の太陽は湖全体をまるで絵具を垂らしたかのように、鮮やかなグラデーションへ変化させ、、、

その中をゆらゆらと魚が泳ぎ、時折ポチャンと水面を飛び跳ねる音が聞こえます。何だか北国の湖と言うよりも南国のリゾートに来ているような感覚にさえなります。

魅力的なトロピカルカラーとは裏腹に、水は冷たいですが泳がない訳にはいきません!遠浅な湖をちょっと沖まで泳ぎミルキーブルーの水に包まれると、もう冷たさなど忘れて何とも心地よい気分。

汲み取り式のトイレと水場しかキャンプ場にはありませんが、大自然の中にいる時間は自分を心から満たしてくれます。真の豊かさとは、モノや便利さに依存する事ではなく、身軽になって初めて見えてくるものとキャンプに来る度に確信するのです。

今年の夏は沢山の制限が敷かれ、会いたくても会えない人、行きたくても行けない場所も多いですが、最高のパラダイスは実は直ぐそばにあるという事をカナダの夏は気づかせてくれます。

タイトル写真 by YUSHiiN

Potato Diary

「直心是道場」(じきしんこれどうじょう)と言う禅語を本で読んだことがあります。「大切なことは環境を整えることではなく、志を持つこと」と言う意味ですが、その言葉を胸に、今年の夏は自宅のバルコニーで小さな家庭菜園に励みました。

家庭菜園には庭が必要。庭でなくてもせめてコミュニティーガーデンでやってみたい。バルコニーでは難しい。毎年いろいろな思いがありましたが、今年は思いつく野菜を自由に育ててみる事にしました。

市販で購入したオーガニックのジャガイモに芽を生やしてしまったことがきっかけで、ジャガイモ栽培を試みる事に。いざ、ジャガイモ栽培といってもすぐに出来る訳ではありません。種芋から育てるには時間とケアが必要です。芽が生えたジャガイモを日当たりの良い室内に2週間ほど置いて、さらに芽を成長させます。十分な大きさに育ったら、ジャガイモを半分に切り、発芽した芽が両方に2つずつ残っていることがポイント。切り口を炭でカバーし、更に2日ほど日光に当て乾燥させると種芋の出来上がり。

3週間の種芋製作後、54日に植え付け。ジャガイモは深さと大量の土が必要なので、バルコニーでも身軽に出来るようポリ素材の鉢を使用しました。しかもこの鉢は脇にジッパーで開閉できる「窓」が付いているので、土の中のジャガイモの成長を確認する事が出来てとっても便利!土は鉢一杯に入れるのではなく、最初は1/3程度でOK!その中に種芋を優しく植え付けます。

 

5月と言ってもここはバンクーバー 。冷え込む日もありましたが、10日程でなんとも可愛らしい青い芽が顔を出してくれました!

芽が出たら後は放置プレーでも、たくましく育ってくれるのがジャガイモくん。4日後にはグングン元気な姿に成長していました。

芽が15~20cmの高さになったら、「Mounting」と言う土を盛る作業をします。一番上の葉だけが見えるくらいまで土を被せ、ジャガイモの成長を促していきます。この作業を2回ほど繰り返したら、うちの鉢はもう一杯になってしまいました。

成長中のジャガイモはバルコニーに小さな緑のオアシスを作ってくれて、何とも気持ち良い~~。このままずっと緑でいて欲しいと思ったほど。お水は土の中に指を深く入れて、乾燥していればあげる程度でOK

収穫は120日後~様子を見て行いますが、7月半ばに1週間程留守にしたら何とあんなに青々しかったジャガイモの葉が一気にしな垂れていました。早いけど収穫のサインと判断し、水やりをストップして1週間ほど掛けて茎と葉がカラカラに枯れるのを待ちます。

早くも約90日間で第一弾収穫の日を迎えました。最初は手探りで、土の中にちゃんとジャガイモが育っているか、幾つあるかとドキドキしながら掘っていくとゴロッとした手探りが!しかも何個も!思わず歓喜の声を上げてしまった嬉しい瞬間でした!

この鉢からは大小のジャガイモ計15個収穫しました。

もう愛おし過ぎて永久保存したい位でしたが、食べられるために彼らも立派に成長してくれたのでありがたく頂きます。我が子の写真撮影を済ませて、ホヤホヤの新ジャガを頂きました。ジャガイモが華となるメニューを考えるのもまた楽しいものです。

2弾収穫日はその1週間後。こちらは小粒も多かったけど、大中合わせて20個ほど収穫しました!

驚いたのは親となった種芋が薄皮1枚のぺらぺらの姿になっていた事。栄養分を全て注いでくれた証拠です。ちなみにもう一つの鉢では跡形もなく土となり消えていました。

ジャガイモ栽培は何か一つの命のライフサイクルを短時間で目撃した気がして、ちょっと胸が熱くなりました。命を育てるとは本当に学び多いものですね。

やりたい事全てのものは、志があれば今その場でクリエイトすることが出来る。場所に囚われず今いる場所で、あるもので、何が出来るのか。クリエイティブな家庭菜園はまだまだ続きます。

Go Camping!

7月も半ば過ぎようやくバンクーバーにも遅い夏がやって来ました。今年は新型コロナウィルスの影響で必要不可欠な海外渡航以外は奨励されていませんが、ローカルを楽しむのはOK! BC州立公園運営のキャンプサイトが予約を再開した525日の朝7時には、5万人以上のアウトドア好きカナダ人が殺到してシステムがクラッシュした程でした。

私も7月に入り、オカナガンへキャンプに行って来ました。オカナガンはBC州最大のワインの聖地。同じ州内でもバンクーバーから高速に乗りノンストップで4時間は掛かります。キャンプしながらワイナリー巡り、と言う少し早めの夏休みを満喫して来ました。

毎年夏の恒例となったキャンピング。今回の旅の前半はオカナガン地域の南端、カナダとアメリカの国境にあるOsoyoos(オソイヨーズ)にあるオソイヨーズ湖のど真ん中に突き出ている半島、Haynes Point(ヘインズ・ポイント)州立公園のキャンプサイトを利用しました。38ヘクタール程の小さくて細長い州立公園ですが、その人気はNo.1! 毎年キャンプサイトの予約が始まる4ヶ月前には秒殺で埋まる人気の場所なのです。

ここは鳥の生殖地でもあって、終日沢山の可愛らしい鳥が飛び交い、彼らの鳴き声がノンストップBGMのように聞こえて来ます。Burrowing Owl (アナフクロウ)の会話するような掛け声も初めて聞きました。

朝は鳥の声で目覚め、柔らかい朝日を湖畔で浴びて…

地消地産のフルーツを朝食にとり、

日中はワイナリー巡り。

オレンジやマゼンタに染まる岩山を眺めたあと…

火を起こしてキャンプファイヤーの前でゆっくりと夕飯の準備をしながら、オカナガンワインで乾杯!!満点の星を仰ぎながら寝る静かな夜は本当に贅沢の一言です。

しかし!キャンプなので優雅なシーンだけではありません。特にへインズ・ポイントは湖と谷間の真ん中に位置している為、夜になると突風が吹き荒れる事がしばしばあります。ある日の夜は時速92km強の風が一時的に吹き、テントが飛ばされるか壊れるか不安で、夕飯どころではありませんでした。そして、鳥達もびっくりしたのか翌朝は至る所糞だらけ

後半に泊まったオカナガン・レイク州立公園のキャンプ場では、乾燥を避けるために自動稼働するスプリンクラーに気がつかず、出掛けている間に干していたバスタオルがぐっしょり濡れると言うハプニングもありました。

キャンピングにはとにかく色々とありますが、美しい自然が目の前にあったらそんなことはどうでも良し!やはりどんな宿泊施設より最高に贅沢な時間を過ごさせてくれます。今年前半は「Stay Home」を経験したからなおさら。自然と一体となって過ごす楽しさと厳しさ、唯一無二の時間を経験させてくれます。

Life in New Normal

まだ緊急事態宣言が敷かれているバンクーバーですが、2ヶ月に及ぶロックダウンは終わり第2ステージに入りました。前代未聞のロックダウンを振り返ったとき、人の数だけ様々な時間の過ごし方があったと思います。そして、私の時間は「駆け抜けた」という言葉が一番しっくり来ます。

2ヶ月間必要不可欠な外出は禁じられていたものの、途中から始動したボランティア活動もあって、忙しくローカルコミュニティーを駆け巡る日々でした。まさか自分がこんなにもローカルの輪に入って行くとは正直思ってもいませんでした。常にバンクーバーを出たり入ったりしていた私に、1つの場所で「根を張る」面白さと奥深さをロックダウン生活は教えてくれました。

今までやろうと思っていたけど手をつけていなかった事柄にも、色々と着手する時間が増えました。

理想の自給自足生活に向かって、去年より多くの野菜の種とハーブを植えてお勉強。バルコニー栽培なれど、工夫をすると大きい野菜もちゃんと作れます。春先に3週間ほどかけてこしらえた種芋も、今ではバルコニーにグリーンオアシスの様にすくすく成長し、命を育てる楽しさを実感しています。

興味が湧いた料理も片っ端からチャレンジ!手間が掛かって苦手なお菓子作り、ボーンブロスやずっとトライしたかった手作りピザを仕込んでみたり。SNSで見た美味しそうなレシピをあれやこれやと試して、ロックダウン生活の前半はほぼキッチンに立って「食」と向き合っていました。

オンラインビューティーの新しい可能性を見出したのもこの時期です。少しでも癒しと自分磨きの時間を必要とする女性のためにオンラインレッスンをトライしてみた結果、現場主義の私の価値観を塗り替えてくれる良いきっかけとなりました。つい先日は、お声を頂き顔面麻痺で悩んでいる男女20名に向けてリンパドレナージュマッサージ ZOOMオンラインレッスンを開催しました。オンライン硬派の私が、まさかこんなレッスンをする日が来るとは数ヶ月前は全く想像していなかった出来事でした。

ロックダウンがなかったら、きっと出会わなかった人や後回しにしていた事が沢山あった事に気づかされます。

私の好きな本の中に、「Life is what happnes to you when you are making other plans」(人生とは、何かを計画している時に起きてしまう別の出来事)と言う印象的な言葉があります。ある意味、自分では全くコントロールが効かない予想外の出来事が、新しい情熱や人生で本当に大切なものを照らし出してくれるものだと改めて感じます。

まだ駆け抜けている途中ですが、この緊急事態のトンネルの先に「元の生活」ではなく、新しい世界、そして新しい自分がいて欲しい。「New Normal=新しい日常」を謳歌できるように、厳しさもあるけれどギフトの様な今の時間を与えられている事に感謝です。

 

Mirror Lake

もし自分の内面を映し出す鏡があるとしたら、それは静止した湖面であって欲しい。ひと吹きの風もなく冬の澄み切った青空と柔らかい光とともに、外の世界と水面に映り込む内側の世界が完璧にシンクロした風景を見る度、そう思います。

私は「ビューティー」を語る際、必ず外側と内側のビューティーを一緒にお話します。若い頃は外観のビューティーにばかり関心が行っていたけれど、歳を重ね様々な経験を積んで来た中で、自分の外側と内側は密接に繋がり、どちらもそれぞれ色濃く反映していくものと感じるようになりました。

高価なクリームや美しいメイクアップで外側だけを整えても、暴飲暴食の生活をしていたり睡眠不足であったりと乱れたライフスタイルを送っていると、必ず「肌」に表れてきます。ストレスや自分の心情が、「顔」に表れてきます。反対に、綺麗なメイクを纏うことで幸せを感じたり、自信に繋がったり、その人の原動力を高めてくれたりもします。「ビューティー」とは、外側と内側が完璧なバランスにあってこそ、最大限に輝きを増すものではないでしょうか。

1ヶ月半ぶりにカナダに戻って来ると、日本にいた自分は外側の意識に偏りがちであった事に気がつきました。新商品や最高峰のスキンケアやメイクに触れる機会や、情報とモノが溢れる社会で刺激的で充実した時間を過ごしていた反面、「独りの時間」や「自分の内面を見つめる時間」が極端に少なくなっていました。生活のスピードが余りにも違うので仕方ないけれど、大好きなこのジャーナルを書く心のゆとりも減ってしまったり。文章を書く際に「言葉は書くものではなく内側から溢れ出てくるもの」と以前聞いたことがありますが、本当にその通りだと思います。自分自身の時間を大切にしてこそ、外に放つ言葉が生まれてくる気がしています。

先日久しぶりに近所の冬のトレイルを歩き、湖面に映る幻想的な景色を眺めていたら、「外も内も美しく生きる」と言う自分の目指す在り方を示してもらっているようでした。もし、私の外側のビューティーが「第一線の都会(日本)にいる自分」であるとしたなら、きっと私の内側のビューティーは「カナダの自然の中で丁寧に生きる自分」が育んでくれているのでしょう。どちらも自分を形成し切っても切り離せないからこそ、その完璧な鏡のようなバランスが自分の「個性」=「トータルビューティー」として輝かせて行けたらと思うのです。

2月のカナダの森では冬の長雨にさらされた苔がキラキラと明るい緑で照らしています。

地表から溢れ出た雨水や雪解け水が、可愛い音色の支流をあちらこちらに作っています。

今年は春の訪れが早いのか、クロッカスが一斉に顔を出し始めました。そろそろ目映い春色のカナディアンビューティーが私の内面をどう彩ってくれるのかと心待ち遠しいです。

Fly High

カナダにいると空を見るのが一段と好きになります。遮るものがない壮大なキャンバスに無限大の可能性を魅せる空の表情は、自分の中に様々な感情と感動を涌き起こしてくれます。

特に冬の澄み切った空気に広がる夕暮れ時。どうしたらこんなに美しいグラデーションが、カラーが創造出来るのだろうと、いつもぼーーっと魅入ってしまうのです。

仕事柄、飛行機に乗ることも多く、上空から眺める空の景色も大好きです。大自然の中にいる時と同様に、上空を飛んでいる自分と空とその下の広がりは、いつも人の存在をとても儚く、そしてちっぽけに感じさせます。

通り過ぎる空の下、どんな人や生活が繰り広げられているのだろう。そして、長く遠く伸びた地平線のそのまた先の空の下。そこには何が待っているのか、まだ見ぬ景色にちょっとしたロマンを抱きます。

インターネット上で指先一つ動かせば簡単に情報が手に入る時代。人はあらゆる情報を「知った」つもりになったり、どこへでも「行った」つもりになりやすいのではないでしょうか。でも、真実はやはり自分の目で見て、手で触れて、風を感じ、匂いを嗅いでこそ、その人に語りかけてくる気がします。

新年早々、仕事で初めて中国に行く機会がありました。中国は常に興味がありいつか行ってみたいと思っていた国です。中国系の友人や実際に行ったことのある人、もちろんネット上でも沢山の情報を入手していたので、ある程度の知識は持っていたつもりでしたが、やはり百聞は一見に如かず!!実際に訪れてみると、想像以上のサプライズ、今までの見解や関心を改めてくれる貴重な機会となりました。そして何より現地に住むローカルの人達と直接触れ合い交流することが、一番の「真」の体験となるのだと思います。

その瞬間その場所に居ないと味わえない感覚は、空が描き出す「瞬間の美しさ」と似ていて、自分にとって必要不可欠な肥やしであり、さらに新しい広い視野へと導いてくれます。

そんな5感で感じる体験を大切に、自分自身を育んで行きたい。まだまだ限りなく存在する未知なる世界へと繋げてくれる美しい空の広がりを見ながら、2020年がスタートしました。

 

Circle of Life 2019 – Fall in Cheakamus

バンクーバーから海岸沿いを70km以上北上した場所に、Cheakamus Center (チェカムスセンター)はあります。昔は先住民であるSquamish Nation(スコーミッシュ族)が暮らした土地で、165ヘクタールもの広大な自然をノースバンクーバー教育委員会が所有し、子供から大人まで参加できる様々な自然&生態系教育プログラムを提供している貴重な場所です。

チェカムスは「行く」より「呼ばれる」と言った方が何だかしっくり来ます。実際、チェカムスの森は普通の森とはちょっと違って精霊が宿っている、そんな雰囲気が漂っています。

太古のままの原生林は根元から枝の先までびっしり苔に蒸され、

ふかふかな絨毯の様な柔らかい土とサーモンが遡上してくる清流があり、秘密の基地みたいな森全体が何か語りかけてくる、そんな魅力があるのです。

10月初め、2年に1度遡上してくるピンクサーモンがチェカムス川を賑わせている季節に、スコーミッシュ族のメディスンマン、Henry Williams(ヘンリー・ウィリアムズ)さんから12,000年以上も前から伝わる薬草について学ぶワークショップがありました。Devil`s Club(デビルズクラブ)と呼ばれるその薬草は、名前の通り強い毒性を持ち、釘の様なトゲで枝全体が覆われています。

そんな危険な外皮を剥ぐと、青々しい香りと共に鮮やかな緑色をした内皮が顔を出します。

何故かこの青い皮だけに様々な効能があるそうで、お茶、ティンクチャー、バーム等にして、主に痛みを伴う病気や怪我、そして炎症などに効果があるそうです。北米ではアラスカ人参とも知られています。

現代社会に生きて来たヘンリーさん。奥さんの持病がきっかけで、忘れかけていた先祖の知恵が詰まった薬草療法の道に再び戻って来たそうです。森からの恩恵は偉大である。そんな語らいの中で、「デビルズクラブはマザー(母体)を残して刈って下さいね。また成長させないといけないからね。」と教えるヘンリーさんの柔らかい言葉に、先住民と自然界はお互いを敬い、とてもバランスのとれた関係性であることを垣間見ることが出来ました。

次にチェカムスに呼ばれたのは、1ヶ月後。森とサーモンについて学びに行きました。

前回のピンクサーモンに代わりシロサケが川に帰って来ていて、それを狙って西海岸中の白頭鷲がこの周辺に大集合!いつもは「見れてラッキー!」な鷲が、頭上を見渡すとあちこち優雅に秋空を仰ぐ姿がありました。

「わぁ!サーモンの匂いがする~!」と、一緒に参加していた地元の小学生くらいの女の子。森の中で学習しているとサーモンの香りが自然と分かるんだな、と感心してしまいました。チェカムスの森は10月から1月までの間、サーモンの香りが漂います。それは産卵を終えたサーモンや餌として食べられたサーモンの死骸が川岸に打ち上げられているからです。

死骸と言うより綺麗に食べられたサーモンは、まるで化石みたいに骨だけになっています。何て無駄なく食べるのだろう!!と思わず感動する程。

更に、この時期に転がっている骨のほとんどは先月勢い良く泳いでいたピンクサーモンと聞いてびっくり!死を迎えた跡のすぐ横で、別の命の群れが続き懸命に泳いでいる。。。生と死をチェカムス川の岸辺でリアルに見せつけられました。

でも悲しい死ではありません。サーモンの残骸は、川や海の栄養分となります。サーモンを食べた鳥や動物のフンは、森を豊かにします。白頭鷲は高い木の枝で優雅に食事をするのがお好みらしく、木の上でサーモンを食い尽くした後、ポトンと下に落とす事で土を育てます。

こうして川や海、そして森へと散らばったサーモンは自然界を豊かにしながら命のバトンを繋いで行くのだ。。。もちろんその昔、先住民もサーモンのお陰で冬が越せたそうです。生命の輪がリアルタイムで繰り広げられるチェカムスの森は、人間が忘れかけている大事なレッスンを教えてくれます。

自然の営みを今後もずっと紡いで行く為に、人間は何が出来るだろう?そんな問いかけをチェカムスの森は私達にそっと提示しているのかも知れません。都市に帰れば、車が走り、ネオンが瞬き、デジタル社会の真っ只中にいる生活だけど、ほんの少し足を伸ばしたその先には太古のリズムが昔から変わることなく繰り返されている。自然界では当たり前の生命の輪を目の当たりにすると、何故か背筋がシャンとする。その感覚を再確認するのがとても大切な気がして、またチェカムスの森に呼ばれたいと思うのです。

Photo by YUSHiiN