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Spring Forward

本日は、春分の日。

それより先に、カナダでは3月13日に待ちに待ったサマータイムが始まりました。
「Spring Forward, Fall Back」という言葉を覚えてからは、時計の針を春は前に進ませ、秋は後ろに戻すという行為を、間違える事なく行えています。1時間、時間が前に進むと午後の日照時間が長くなり、これだけで気分も上がります。

カナダのコロナ関連の規則緩和も徐々に進み始めました。3月11日からは、公共の屋内でのマスク着用義務は不要になり、4月8日からはBC州内、ほぼ全ての場面でのワクチン接種証明の提示は不要になります。次々と規制緩和を打ち出す州政府に対して、連邦政府はまだまだ対応が遅いですが、カナダの厳しいコロナ関連規制の終わりが少しづつ見え始めて来ました。

見えない敵コロナと戦い始めて丸2年。先日、偶然目にした記事に興味深い調査結果が載っていました。今年3月初めに、18歳以上の2,550人のカナダ人に聞き取り調査をしたところ、5人中4人は、この2年間を経て「人々の間に距離が広がった」、「パンデミックは人々の中の嫌な部分を引き出した」という感想を持っているそうです。そして、60%の人が「カナダ人全体の思いやり」の姿勢が減ったと回答していました。80%以上の人が「人生で一番大切なものは何か気づかされた」と前向きな回答をしているのに対して、そこから何か新しい行動を起こした人は半数以下、そして、この2年間で「人生が暗転した」と答えた人は47%もいたそうです。

パンデミックのような前例のない危機を前に、世界中が右往左往して、社会・家族・友人の間でも見えない「距離」が生まれたことは間違いありません。ただ、少なからず2年前のパンデミック発生時は、皆がもっと団結し、お互いを思いやり、分け隔てなく感謝し合い、前を向いて進もうとしていたのではないかと思います。私が読んだ調査結果が2年前に行われていたら、人々の回答はちょっと違っていたかも知れません。

「人生で一番大切なものは何か気づかされた」人が大半であるのなら、今、もっと幸せを感じていても良いのではないだろか?そんな矛盾を感じさせた今回の記事。

明るい春に向かって、少しでも気持ちが前向きに前進できるように、2年前を少し振り返ってみるのも良いのではないでしょうか。私は沢山の笑顔、「THANK YOU」という感謝の言葉、そして何よりローカル支援が思い出されます。距離は2m離れていたけど、心は近かったあの頃。
日常生活では、今まで以上に手作りのものを増やし、缶詰作業、ガーデニングなど…興味あることはとことん学んで、それが今、自然と自分のライフスタイルの一部になっています。

あなたが思い出すパンデミックの気づきは何でしたか?

Hope and Cheer

柔らかい日差しが半年ぶりに戻って来て、春の訪れを感じる季節になりました。バンクーバーで春を感じる最初のサインは、クロッカスの群衆とスノードロップでしょう。クロッカスの花言葉は「青春の喜び」「元気」、そしてスノードロップの花言葉は「希望」「慰め」。どちらも春めいてくる時間の中で、心が浮き立ってくるようなそんな響きがします。

カナダの春は、生命力の強さを教えてくれます。まだ背後の山々には雪景色が広がり、ピンと張り詰めた冷たい空気が吹く中で、新しい命が芽吹く瞬間が私は大好きです。

特にクロッカスの群生はお見事。誰かが袋一杯の種を溢してしまったかと思うほど、木の根元や日当たりの良い芝生の上にお花畑のように咲き乱れます。一斉に太陽の方向を向いて、小ぶりで鮮やかな花を咲かせる力強いクロッカスの姿が、長い冬の終わりと共にやって来る春の時間を知らせてくれます。

クロッカスに続いて、霜や凍結にも負けずに勢いよく芽吹いて来る命はこの頃どんどん加速します。家の外のプランターに忘れたように植えてあったチューリップの球根がニョキニョキ芽を出始めました。

冬に植え付けたガーリックの芽も日々元気に伸びて行きます。今年の夏は初めて自らガーリックの収穫が出来るかな、と今からわくわくしています。

芽吹くのは種や球根だけではありません。黄色い枝を茂らせるサボテンのような形をした不思議な樹木が近所の公園に存在するのですが、毎年冬も終盤になると根元の大きな幹だけを残して市の役員が容赦なく剪定します。今年は偶然その剪定日に遭遇して、公園に大量に切り落とされた黄色い枝が無作法に放置されていました。しばらく観察していると、おばさんがいそいそとやって来て枝を拾い始めました。思わず、「その枝どうするんですか?」と尋ねてみると、「この枝は強くて丈夫で、ガーデニングに使うの。トマトや胡瓜などの支柱に最適よ。しかも、土に差し込んで置くと可愛らしい緑の葉っぱが芽吹くのよ!」と詳しく教えてくれました。市の方も、近隣の住人がガーデニング等にこの枝を再利用するのを知っているそうで、切り落とした枝を「ご自由にどうぞ」と言わんばかりに放置しています。おばさんと立ち話をしている最中に、どこから噂を聞きつけたか、人々が続々やって来て枝を拾い始めていました。

私も真似して数本持ち帰り水挿ししておくと、数週間後に緑色の小さな葉っぱがあちらこちらから顔を出し始めて、とっても可愛い!今ではちょっとした室内のミニオアシスになっています。

とある海岸沿いに生息していたローズマリーの生命力も強いです。ちょっと摘んで持ち帰り生けておくと、可愛らしいラベンダー色の花を咲かせてくれました。ローズマリーは簡単に挿木も出来て比較的簡単に増やすことが出来ます。

一見止まった景色の中に、新しい小さなパワーが宿っている。生命とは短く、はかなく、けれど強く根性あるものなのではないでしょうか。「希望」と「元気」と言う言葉がぴったりの春になって欲しいと今年はより一層強く思います。

Be a Good Noise

世界の困惑をよそに、バンクーバーでも桜が咲き始めました。自然は人間の活動や心情に関係なく、忠実に1年のサイクルを営んでいます。

去年同じ頃にバンクーバーで眺める桜のジャーナルを書きましたが、その時と今の状況がこんな変化を遂げるとは、誰が予想したでしょう。人生は何が起きるか分からない「ま坂」がありますが、自分を取り巻くこの世界もまたサプライズの連続であることを思い知らされます。

そんな困惑状況の中で、良い情報、悪い情報、偽りの情報と、とても沢山のノイズ(音)に囲まれて生活している人も多いと思いますが、私は最近とてもカナダらしいノイズを耳にします。

バンクーバーでも今、「STAY HOME」が基本ルール。コロナウィルス感染拡大の阻止対策として、市民は在宅を強いられています。その影響で走る車が減ったからか、毎朝小鳥の鳴き声がとても活発に、より鮮明に聞こえるようになりました。鳥達はいつも通りの行いでも、きっと今までは、忙しく行き交う通勤の車のノイズでかき消されていたのでしょう。空が薄っすらと明るくなると同時に、鳥達の賑やかな挨拶が、まるでアウトドアでキャンプしているかのように聞こえて来ます。この自然の目覚ましがとても心地良く、最近はよりスッキリと起きられます。

7時になると、今度は違うノイズが聞こえて来ます。それは現在、医療の最前線で絶え間ない闘いを強いられている医療従事者達に向けて、バンクーバー市民が敬意を表すノイズです。7時ジャストになると、多くの住人が自宅のバルコニーから顔を出し、鍋を叩いたり、笛を吹いたり、拍手をしたりと、勇敢な医療従事者達を称えます。毎晩7時に病院のシフトチェンジがあるそうで、このタイミングでエールを送るのです。初めてこのノイズを聞いた時は、近所で何の騒ぎだろう?と不思議に思っていましたが、日に日に増すこの敬意のノイズに、今は私も毎晩楽しみに参加させてもらっています。

そして今までに増して、「THANK YOU」(ありがとう)の言葉が飛び交っている気がします。コロナウィルスの影響により無料でバス運行をしているドライバー達にも乗客はいつものように「ありがとう」と言って下車します。スーパーのレジ係の人にも「ありがとう」。ゴミ収集車にも「ありがとう」。そして、まだ辛うじてお店を開けることのできるローカルショップに行くと、「こんな状況の中、来店してくれてありがとう」と逆に返されます。不便な生活、不安な心境の中で聞く「ありがとう」は、何か特別な重みを感じます。

どんなノイズを自分の耳に取り込むかによって、自分の気持ちも大きく変わっていくものです。こんな時だからこそ、ポシティブなノイズに耳を傾け、自分も良いノイズを放っていけるように、日々過ごしていきたいです。

 

 

Sakura blooming city

桜は日本の春の風物詩ですが、実はバンクーバーも「Sakuraシティー」と呼べるほど桜の木が多く存在し、実に40,000本もの桜が毎年華やかに春の訪れを知らせてくれます。

今年は早い場所では3月末から、日本とほぼ同じタイミングで開花!!1つだけ違う点は、バンクーバーは広く、同じ市内でも天候が様々なので、今満開を迎えている桜もあれば、まだ蕾の場所もあります。日本よりもずっと長く桜を楽しめるのが、何ともラッキーです。

公園や植物園はもちろん、ダウンタウンや近所の街路樹の至るところに桜があって、気軽にお花見が出来ます。淡いピンクの花と、カナディアンブルーの空、そして新緑の芝生がマッチした時の光景は、ため息が出るほどに美しいです。長かった雨季の冬がようやく終わり、春風に乗って桜の可憐な香りが漂ってくると、太陽の季節だ〜!と心がワクワク踊り出します。

なぜバンクーバーにはこんなに桜が多いのか?

その始まりは1930年代。日本の神戸市と横浜市が、バンクーバーのThe Park Board(公園管理局)に500本の桜をスタンレーパークにある「第一次世界大戦・日系カナダ人戦没者慰霊碑」に寄贈しました。これをきっかけに、市民の桜に対する愛着が芽生え始めたのです。

当時のバンクーバーの街路樹は、ニレ、カエデ、クリ、と比較的大きな樹木を植えるのが習慣でした。しかし、雨の多いバンクーバーでは木々がグングン急成長してしまい、道路に根っこが張り出したり下水管を壊したりと、トラブルの要因となっていました。そんな事から50年代に入ると、巨大樹木の代わりに、サクラ、ウメ、リンゴのような花咲く、比較的小ぶりの樹木に植え変える動きに変わっていったのです。さらに1958年、日本領事館から300本以上の桜がバンクーバーに再び寄贈されました。そんな歴史を経て、90年代初頭にはバンクーバー市内の89,000本ある街路樹のうち、約36%がサクラやウメの木となるまで増えていったのです。

バンクーバーの桜は、ちょっとだけ大陸的?というか花びらが大きい気がしますが、世界中どこでも春の風物詩は人気者です。こちらは公共の場所での飲酒は禁止されているので、日本の様に桜の下で「花見で一杯!」とはいきませんが、ベンチから眺めたり、木の下で読書したりと、皆それぞれ桜タイムを楽しんでいます。

ただやっぱり、日本人の桜に寄せる想いはまた特別な感じがします。

桜は日本人にとって、沢山の歌にも歌われるほど、人生の数々のエピソードと重ね合わさる、そんなスペシャルな存在と思うのです。入学式や入社式、結婚式の様な人生の大きな節目だったり、家族や友人たちと過ごした大切な思い出だったり。桜の花を眺めていると、ふと自分のアルバムを呼び起こしてくれるような、ちょっぴりノスタルジックな気持ちにもなります。

この季節、カナダでより日本を近く感じられる、そんな時間です。