タグ: 夏

Summer Abundance

生命の豊かさを感じる季節。それがバンクーバーの夏です。

7月中旬から8月初めまで本格的な夏を迎えたバンクーバーでは、花々が咲き乱れ、様々な種類のフルーツや野菜が収穫され、彩り濃くキラキラ輝く時期です。職業柄、カラフルな色彩に心惹かれるので、特に夏に咲く花の種類と鮮やかさには驚きます。初めて出会う花も多く、花の名前が写真で分かる携帯アプリを入れた程でした。

農作物も一気に賑やかになります。夏の間は出来るだけファーマーズマーケットで新鮮でお手頃な野菜を調達する様にしています。毎週土曜日にアボッツフォードからやって来る家族経営の小さなオーガニックファーム, Close to Home Organics がお気に入り。マーケットが始まる10時前に毎度長蛇の列になる人気店で、朝一で買い出しに行きます。

ちょっと変わったお野菜も並び、詳しく調理法も教えてくれるオーナーの丁寧な人柄がとても素敵。顔馴染みの常連さんには「See you next week!」と挨拶を交わし、そんなコミュニケーションが取れるファーマーズマーケットが大好きです。

マーケットだけでなく、自分の手で夏の恵みを得ることも出来ます。夏はベーリーシーズン。ストロベリーに始まり、ラズベリー、ブルーベリー、ブラックベリーとどんどんピークを迎えます。

今年初めて行ったブルーベリーピッキングは、自分が獲った分だけのブルーベリーの量り売りをしてくれます!カゴ一杯に摘んだ3ポンド程(約1.4kg)のブルーベリーが何と7ドル程!青空の下、広大なブルーベリーファームでのピッキングは何ともメディテーションに近い心地よさを体験させてくれました。

大量に持ち帰ったブルーベリーはやはりフレッシュで頂くのが最高ですが、残りはタルトにしたりマフィンにしたり。手積みした可愛らしいブルーベリーだけに、どう美味しく頂こうかと料理の時間も一層楽しくなります。

家のバルコニーで細々とやっている家庭菜園では、今年はきゅうりとミニトマト、レッドチリペッパーの収穫に成功しました。

特に真っ先に実った野菜を1粒手にする時の達成感と、「大きくなってくれてありがとう~~♡」と思わず口にしてしまう愛おしさはたまりません。不揃いなれどそれも個性と、愛着が湧きます。

ご近所さんから頂いた豊作のお裾分けも食卓を賑やかにしてくれます。

街の歩道には通行人が誰でも自由につまみ食い出来るベジタブルガーデンが設置され、ガーデニングを誰でも気軽に楽しんで貰おうと粋な試みも。If you are hungry, take a bite!」(お腹減ってたら、一口どうぞ!)と言うメッセージが微笑ましい。

レストランやカフェでも自家菜園で採れた野菜を提供するお店も多く、とにかく生命感に溢れる夏のバンクーバー。

真夏の太陽と共にやって来る沢山のカラフルな命は、一瞬で過ぎ去る短い夏だからこそ、より鮮やかにエネルギッシュに見えるのかもしれません。

来年の夏は、人にお裾分けできるくらい収穫出来る腕前になりたい、と夢膨らませています。

 

Powwow at Capilano Reserve

カナダの歴史は先住民なしには語れません。開拓時代からずっと社会的、経済的問題を背負う事になってしまった彼らは1万年も前からこの土地で独特の文化を育んでいました。2016年の統計によるとカナダの先住民は人口の約4.9%(1,673,780人)を占め、BC州だけでも約20万人が暮らし、198の違う部族、30の違う言語が存在します。

先住民という言葉は、最初は「Native Indian」(ネイティブ インディアン) から始まり、「First Nations」(ファーストネーションズ)と言う名称に変わりますが、Metis(メティス)と呼ばれる先住民とヨーロッパ移民の両方を祖先に持つ人々と、Inuit(イヌイット)と呼ばれる北極地方の人々はこれに含まれません。この3部族をまとめた「Aboriginal Peoples」(アボリジナル ピープルズ)という名称がより正しくなったかと思うと、その呼び方は嫌だ!という一部の部族に配慮して、現在正式には「Indigeneous People of Canada」(インディジナス ピープル オブ カナダ)という呼び方が主流です。彼らを表現する言葉一つをとっても、先住民とカナダの歴史はかなり複雑なのです。

影なる歴史はありますが、彼らの独特の文化と伝統はとても魅力的で興味深いです。

ノースバンクーバーにある先住民居住地区で毎年恒例の「Squamish Nation Youth Powwow」(スコーミッシュ ネーション ユース パウワウ)と言うお祭りがあり、今年で32回目になるイベントに行って来ました。Powwowとは踊りの祭り・集会を意味します。会場で踊り、歌い、語り合い、伝統食や工芸品が並び、とても賑やかなイベントです。場所によっては数時間で終わるものもあれば何日間も続くものもあるそうで、スコーミッシュ ネーションのPowwow3日間と比較的大きなお祭り。

日本の盆踊り感覚と言ったら語弊があるかもしれませんが、炎天下の中、みんな色とりどりの衣装を纏い踊り続け、今年のダンスチャンピョンを選びます。頭に狼を被ったり、三つ編みからイタチがぶら下がっていたり、大きな羽根や賑やかに鳴り響く鈴を全身に纏い、まるで美しいファッションショーの中にいる様でした。特に、後ろ姿が勇ましく美しい!

工芸品のショップが立ち並び、お祭りの目玉の伝統サーモンステーキが振る舞われます。

詳しいルールはわかりませんが、大きな広場に円形になってダンススーペースがあり、基本MCが仕切っているけど自分の好きな歌になったら中央に出て来て好きに踊る、みたいな自由さが新鮮。中には神聖な歌や踊りもあり、その最中は写真・動画撮影は硬く禁じられます。彼らの守るべきもの、継承すべきものは余りにも大きく、儚く、そんな一面を垣間見た感じがします。

Powwowは部族の若い世代の為の文化交流の場としても大切な役割を担っているそう。

華やかな衣装と踊りに見入っているといつもとは違う世界にタイムスリップした感覚になります。ふと長老が「ホットドッグとアイスティー買って来て~!」と家族に叫んでいる声で、現代社会に引き戻され、彼らも皆同じ時代を生きているのだと気づかされます。

ちなみに、Squamish Nation1人、Joe  Capilano(1895-1910)は先住民の権利と伝統を守るために戦った先代リーダーで、この様な集いの場でよく語られる名前です。気がつけば、Capilano River, Capilano Road, Capilano Mountain, Capilano Lake…とバンクーバー市民が普段から親しみある地名、憩いの場所はスコーミッシュ ネーション の偉大なリーダーの名が由来だと、一体どれほどの人が知っているでしょう?

彼のまたの名はJoe Mathias。今回のPowwowの会場となったのも100 Mathias Roadでした。

当たり前の様に付いている街の名称を辿っていくと歴史的背景が見えてくる。そんな小さな知識を得るだけで、この土地で生活を共にする先住民との小さな架け橋になるのではないでしょうか。

Beach Camping

夏至も過ぎてバンクーバーにも本格的なサマータイムがやって来ました。そして、待望のキャンプシーズン到来!

今年の初キャンプは自宅から車で40分程のPorteau Cove Provincial Parkへ。ここはHowe Sound(ハウサウンド)と言う海峡に面した絶景のビーチキャンプが楽しめて絶大な人気があるキャンプ場です。予約が取れたら超ラッキー!予約受付開始の4ヶ月前に問い合せても、既に埋まっているほどの激戦地なのです。

都市のすぐ背後に素晴らしい大自然が鎮座していて、海も山も楽しめる。この都市と自然の距離感がバンクーバーの最大の魅力です。

大自然の中でのキャンプは、気づけば私の中で最高に贅沢なホビーになっています。一箇所にとどまり、ただ刻々と流れゆくものを眺める時間ほど特別な過ごし方はありません。同じ場所でも朝・昼・晩と全く違った表情を魅せてくれる自然のシアターを見ている時間がとにかく大好きで、ゆっくり読書でもしようと持参した本さえ開くことはまだありません。笑

今回は初のビーチキャンプだったので、その楽しさは更に新鮮でした。目の前の海と空のパノラマパラダイスにかぶりつき放題!なのですから。

朝は静寂な時間。いきものの活動が始まる前の鏡のごとく静かな時間です。そんな何の気配も感じないフレッシュな景色を目撃するのは、ちょっぴり得した気分になります。

昼は眩しく賑やかな時間。風も波もエネルギッシュに動く時です。

テントを張り始めたのは昼の1時過ぎでしたが、暴風と言わんばかりの強い風。作業にどっぷり2時間弱も掛かり、万が一の雨用に持ってきたタープを風よけにしなければテントが吹っ飛ばされる勢いに圧倒!!

夕暮れ時は1番儚く、惚れ惚れする時刻。

私が一番好きな時間帯です。

日中遊んでいた海鳥たちが巣に帰る準備を始め、空のキャンバスでは毎分変わっていく色の芸術がゆっくりと繰り広げられます。気がつけば嘘の様に風が止み、潮も満ち、白い星がうっすらとチラつき始め、キャンプ場の彼方此方でパチパチとキャンプファイヤーの音が。薪の音と炎の灯だけを残して、辺り一面黒のカーテンに包まれ始めると夜になります。

そんな時を繰り返し過ごしていくと自分も自然の日課の一部に溶け込んでいるようで、大きなゆりかごの中のいきものの存在の小ささと尊さを感じます。

キャンプ場に立つテントも人間も本当に小さな小さな点の存在。

都心では気づかない、言葉でも表現しずらいそのスケール感を体感することはとても大事なライフレッスンではないでしょうか。キャンプを通して知るカナダの壮大なビューティー(美)にいつも胸一杯になり、また、この夏はあと何回行けるだろうと数えずにはいられません。