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Never Ending Summer

カナダの夏が終わりに近づき、秋の気配がもうそこまで来ています。

今年は晴天続きで山火事の煙の被害もほとんどなく、カナディアンサマーらしい夏でした。よくカナダ人は「カナダの夏は最高だから、海外に出かける必要はない」と、言います。この意見に私も100%同感です。私にとってカナダの夏は仕事も遊びも一番忙しい季節です。毎年全速力で駆け抜けるように最高の季節を謳歌します。

夏になると普段見れない大きな自然を見たくなります。今年はバンクーバーから東へ641キロ、車で7時間離れたRevelstokeと言う場所を拠点に、ワイルドフラワーが有名な「Eva Lake and Miller Lake Trail」を歩いて来ました。トレイルと言っても往復で20キロ以上の長距離ハイキングですが、国立公園とあって終始飽きさせない絶景を臨むコースで、最後は名残惜しいほどでした。メドウと呼ばれる高山植物が咲き乱れる場所をいくつも通るトレイルは、楽園のごとくカラフルなお花畑が点在しています。

そして、このトレイルの最終目的地であるアルペンレイク、Eva Lakeに到着すると、ここはまた別の楽園が待っていました。

高くそびえる山々と空を映し出す鏡のような湖。あまりの透明度でニジマスが泳いでいるのがクッキリ見え、コバルトブルーのグラデーションに思わず吸い込まれそうになります。反対側の湖畔には大自然を背景に山小屋がポツンと佇んでいる姿が見え、人間の営みがどれほど小さなものか、とても分かりやすく見えてきます。

別日のハイキングは、Glacier National Parkへ。数あるトレイルの中から、氷河が近くに見えるポイントまで往復9.5kmの「Great Glacier Trail」を選びました。1900年代初頭は数100メートル歩けば氷河に到達したそうですが、現在は長距離を歩かなけれればなりません。ここも国立公園だけあって、最初から緑が深い森を抜け、氷河が溶け出した川沿いを歩いたり、見どころ満載です。

氷河のビューポイントまでの最後の登りは結構しんどいですが、登山の疲れを吹き飛ばすほどの大パノラマが待っていました。360度山々に囲まれ、谷間を吹き抜ける風が熱った体をクールダウンしてくれました。遠くの山脈の合間を通過するハイウェイが白く、鉛筆の細い線のように見えます。次々とビューポイントを目指して登ってくるハイカー達も小さく動く点のようです。カナダの大自然のスケール感は、なかなか言葉ではうまく表現出来ませんが、人間の存在を俯瞰で見れる物差しのようなものにも思えます。

キャンプ拠点地にしていたRevelstoke湖畔にあるMartha Creek Provincial Parkではたくさんの人がテントやキャンピングカーで連日寝泊まりをしていました。

夜更けはシーンと静まり返り、木の揺れる音と湖の水の音、そして対岸にあるのか、遠くから微かに滝の流れる音しか聞こえて来ません。夜中にトイレに起き、真っ暗闇の中ふと夜空を見上げると、頭上に大きな流れ星が流れて行きました。星降る夜は常に頭上にあるはずなのに、自然の中に入らないと気づかされないことが、とても不思議な感覚でした。世界はなんと幻想的なものに包まれているんだろうと思えた瞬間です。

人は常に自然が繰り広げるマジックの中に、気づかずともすっぽり収まっているのでしょう。雄大な自然は、私達の小さな存在の尊さをそっと教えてくれる気がします。あるカナダの大学の研究では、大自然に触れ、自分の存在の小ささを体験した時、脳が何10倍、何100倍と驚くほど活性化されることが明らかになっているそうです。

海へ、森へ、そして山へ…。カナダの夏は今年も私に最高の魔法のような時間をくれたと同時に、小さな自分の生きる世界を新しい眼差しで見せてくれます。

Hollyhock

今年の夏、コルテス島にある待望のHollyhock Retreat Center(ホリホック)を訪れました。コルテス島は遠く離れた場所にあり、フェリーを3回乗り継がなければいけません。バンクーバーを朝イチ6時半のフェリーで出発しても、少し寄り道などしてしまうと半日はかかります。夕方 、最後に乗った3回目のフェリーの上で、いよいよコルテス島!と胸が高鳴り始めた時、幸運にもクジラの群れが泳いでいるのに出くわしました。少し遠くで潮を吹きながら4~5頭群れになっているようでした。すると、1頭が華麗なジャンプを披露してくれて、コルテス島への旅路は夢のような幕開けとなりました。

ホリホックの立地も本当に美しく夢のような場所です。カナダでは珍しく、目の前には白い砂浜と遠浅の青い海が広がっていて、その周りを静かな大樹の森が囲っています。果樹園には鳥が集い、辺りを鹿が散歩していたり、パラダイスと言う言葉がぴったりです。

さすが「癒しのリゾート」または、「スピリチュアルリトリート」と言う名で知られるホリホックと思いきや、実は世界的にも評判の高い学びの場所でもあります。1982年の創設から40年間、世界中から人々がやって来て、個人の成長とより良い社会にして行くための意義あるプログラムを開催している歴史あるリトリートセンターなのです。

ホリホックの広大な敷地の中で特に魅了されたのは、メインロッジの裏にあるオーガニックガーデンでした。美しい花々と大きく力強い野菜に華やかに埋め尽くされたガーデンの前で、足を止めない人はいないでしょう。

ホリホックで提供される1日3回の食事の主は、このガーデンから提供されます。

夏はホリホック名物、浜辺でのオイスターBBQもあり、高級レストラン並みに美味しいと評判の料理を島の人達も時折食べに来るそうです。

コルテス島に滞在期間中、私はこのホリホックのガーデンで毎朝ボランティアをしていました。「ガーデン作業は朝の7時からね」と言われたので、毎日早起きをして、朝の2-3時間をここで費やしました。主な仕事は草取りですが、この作業が思いの外、旅の一番の思い出として残っています。まだ誰も居ない静寂なガーデンで、鳥の鳴き声、朝露に濡れる花々を飛び交う忙しい蜂の羽の音、そして何よりフレッシュな空気に包まれて、草むしりという単純な作業がとても瞑想的に感じました。

ホリホックの敷地の外にも美しい手つかずの自然が広がっています。特にこの島の水の美しさは抜群で、海でも湖でも、南国を思わせる透明度と水色のグラーデションが眩しいほどでした。

ある晩、ナイトカヤックのツアーに参加したのですが、この日は鏡のような静かな海へと漕いで行きました。

日没後、段々と暗くなっても海の底が見える程透き通っていて、海底に沈んでいる貝やらヒトデやらがくっきり見えます。こんなに美しく豊かな海が存在することに、何だかとても心を和ませてくれました。

そしてもう一つ心を和ませてくれたのが、海でも湖でもヌードで泳ぐ人がいたこと!「こんな綺麗な水、全身で感じずにはいられないよね」と言わんばかりに、皆が思い思いに自然と触れ合っている姿が興味深かったです。

ホリホックのCEOを務めるピーター・リンチさんとお話をした際に、「私たちの基本的な信念のひとつは、土地とのつながりを取り戻すことです。」と、語っていたのがとても印象に残っています。ホリホックは、あらゆる社会のノイズから離れ、非日常的な時間を過ごすことが出来る理想的な環境です。自分という人間と改めて「つながる」時間を与えてくれると同時に、コルテス島の楽園のような自然をさまざまなアクティビティーを通して体験することで、自然との「つながり」そして、一体感を感じさせてくれます。「この美しい自然をどう継承していけるだろうか?」「人と自然はどう共生していけるだろうか?」。ホリホックで時間を過ごした人なら、ふとそんな想いが頭の中に湧いてくるのでないでしょうか。ほかのどんな島でもない、素朴な自然が残っているコルテス島にあるからこそ、ホリホックが最高の学びの場所として成立するのではないでしょうか。「自然は偉大なる教科書」と言うように、ただそこにいるだけで学んだり考えるきっかけをくれるホリホックとコルテス島は、一心同体のような気がしてなりません。

そしてマジックのように始まった今回の旅は、マジックなしでは終わりませんでした。なんと、帰る日のフェリーが1日止まってしまったのです。余儀なく延泊を強いられたその日は、年に一度、島中が集いお祝いするコルテス島記念日!長らく夢見たこの島は最後の最後まで、時間を忘れて過ごしていきなさいと言わんばかりに、その魅力を私に見せつけてくれました。

 ホリホックの詳しいインタビューはこちらから⏩https://www.yushiin.com/ja/hollyhockretreatcenter

 

One Canadian Summer

7月1日はCanada Dayで、毎年この日を過ぎると本格的な夏が来たなと感じます。そしてキャンプシーズンも到来。早速バンクーバー島の海岸沿いにキャンプに行って来ました。すでに初夏の陽射しがジリジリと暑く感じる季節ですが、カナダの海は夏でも泳げない程冷たいのです。しかも、太平洋側の海岸は風も強く、朝晩の体感温度は10度並み?と思えるほど。着込んではいたけれど、流石にダウンジャケットを忘れてしまった私にはかなり堪える寒さでした。

そんな中でもやはりキャンプは最高です!夜は砂浜に打ち上げる波の音色と風を子守唄に。朝は決まって5時半頃から始まる小鳥のオーケストラを目覚ましに。大自然の中で過ごす非日常的な時間はやはり特別です。そして、ここ数年の旅の大きな目的の一つは、workation(ワーケーション)。旅先でローカル&サステイナブルなビジネスを取材しては、VOICEと言う記事にしています。今回も3件の島のビジネスを取材させていただきました。旅先でその土地に住む人々と繋がり、彼らのライフストーリーを聞くことで、その場所の風景が少し違って見えてきたりして、より一層印象深い旅の時間にしてくれます。時々、純粋なバケーションだけを楽しみたいと思うこともありますが、今はこのワーケーションスタイルが気に入っています。

そして今回の旅をよりスペシャルにしてくれたのは、久しぶりの友人との再会でもありました。旅先で何年振りの再会を果たすことは、男女問わず、どこかロマンチックでドラマチックな心情にさせられます。

最近、”Four thousand weeks – time management for mortals” ~「4000週間 – 限りある時間の使い方」と言うキャッチーな題名の本を読みました。4000週間とは、仮に人の寿命が80歳とした時に過ごす週の数です。4000と言う数分で容易に数え切れそうな数字に、人生の短さを感じられずにはいられません。すでに人生後半戦の自分が今後過ごせるであろう夏の季節の数を考えると、毎年当たり前のように来る夏がとても愛おしく尊く感じます。ひとつひとつの季節、そして、与えられた時間を出来るだけ丁寧に生きること。この本をきっかけに、自分の限りある時間の過ごし方をとても意識するようになりました

私の場合、自然と大切な人たちと繋がっていれば十分に幸せを感じます。特にキャンピングは単に外で寝泊まりしているだけなのに、最高の時間を過ごした気分になります。掘り下げていくと、人の幸せとは極端にシンプルなものなのかも知れません。幕開けたと思ったら、あっという間に終わってしまう短いカナディアンサマーだからこそ、ひと夏の一日一日を謳歌したいと思います。

Noiseless World

バンクーバーの短い夏も終わりに近づき、少しづつ秋の空気を感じる季節になりました。今年は6月まで冷夏で、本格的な暑さが到来したのは7月と8月の2ヶ月間。駆け足の夏となりました。
夏の我が家はよくキャンプに出掛けます。カナダはもちろん、BC州だけでも半端なく広いので、キャンプの目的地まで何回もフェリーを乗り継いだり、ハイウェイを5時間以上走り続けたりと、その過程も「旅」となります。そして回数を重ねるごとに、キャンプ地もさらに遠くへ遠くへと行きたくなります。

キャンプで過ごす時間は、私を「今」という時間にフォーカスさせてくれます。目の前に流れている一瞬、一瞬の「今」をただひたすら楽しむことを教えてくれるのです。特に予定は決めず、朝起きて晴れていれば、ハイキングへ行ってもよし。水辺が近ければ、海や湖で泳ぐのもよし。雨が降ったらテントの中で読書をする。お腹が減ったらご飯を食べて、暗くなったら火を囲み、夜空を鑑賞する。なんの華やかな行事はないけれど、のらりくらりと刻まれるシンプルな時間が、「今」と言う最高のギフトとなります。

携帯が繋がらなければ、更によし!ネット上に溢れんばかりに湧き上がってくる情報のノイズからしばし離れる時間も、また大切です。デジタルデトックスは、頭と心と体を休ませる最高の充電期間となり、自分だけと向き合う機会を与えてくれます。

ノイズは情報だけではありません。私たちはさまざまな「音」と共に暮らしています。近所を行き交う車や人々の会話、部屋の中の機械音、風の音、雨の音、動物や虫の鳴き声など、ノイズなしの世界はあり得ないと言っても過言ではありません。今回のキャンプで一番思い出深かったのは、「無音の世界」を体感したことです。真夜中にテントの中でふと目が覚めた時、何かいつもとは違う気配に気づきました。それは、水辺の音も、風の音も、全ての生きものが寝静まり、完全にノイズが消えた瞬間でした。1ミリの音さえ聞こえないという状況は、いくら自然の中でもなかなかないものです。色々な環境が奇跡的に、タイミング良く重なり合わないとノイズレスな瞬間は存在しません。自分の息も止めんばかりに寝袋の中で完璧な静寂な時を聞き入っていると、何か大きな「気配」を感じざるには得られませんでした。その時空は長く広く永遠に伸びている気がして、「宇宙とはこんな場所かな?」と思わず考えると同時に、音なき世界のパワフルさを感じました。言葉を並べてよく喋るよりも、たった一つのうなずきや微笑がパワフルなメッセージを持つように、何かを語りかけてくる印象さえ持ちます。


自分自身も日常の中で繰り広げられるノイズの一部だと意識することで、少しでも心地よい音色を奏でたいものです。キャンピングは非日常的な体験から、日常を振り返る素晴らしい機会を毎回与えてくれます。また来年も遠くへ遠くへ、何もない場所へとキャンピングに行くでしょう。
そこには「今」という一瞬を生きる喜びが待っているから…。

Land and Sea

どんな時代でも、どんな場所でも、人の心を感動させる普遍的な美しさに私は惹かれます。カナダの大自然は、そんな普遍的な美を、いつもさらりと私の前に繰り広げてきます。

カナダの夏は毎年9月最初の月曜日、Labour Day(レイバー・デイ)の祝日と共に終わりを告げる気がします。この日を過ぎると途端に肌寒さを感じる曇りや雨の日が多くなり、長い冬への扉が少しづつ開き始めるのです。カナダ人は6月~8月の短い夏を謳歌する為に、本当に情熱的に各地方へ駆け巡ります。「夏の間はローカル(地元)のお客とほとんど会わなくなるの。」と、近所の小売店の人が言っていた言葉をふと思い出しました。

7月末までずっと日本に滞在していた私にとって、カナダの夏は数週間しか残っていませんでしたが、1年で最も活動的で美しい季節を逃すまいと、私も残りわずかな夏の日々を精一杯謳歌しました。9月頭にキャンプで訪れたバンクーバー島にあるMiracle Beach(ミラクルビーチ)。ここを拠点とした夏休みは、特に最高の時間となりました。

何キロメートルにも伸びる砂浜に、穏やかでガラスのような海。その優しい海の向こう側には本土沿岸にそびえ立つ氷河を抱いた山々が連なっています。南国のようなサンディービーチと青い海と雪山。シュールにも思えますが、これがカナダ西海岸の典型的な情景です。

朝の引き潮時には、沢山の海の生き物が顔を出します。特にびっくりしたのは、シーアスパラガス(厚岸草)の群生。海水で育つ為、かなりしょっぱいですが、私はこの塩気が大好きで生でポリポリ食べてしまいます。

引き潮の時間にしか姿を見せない自然のアート、砂紋も惚れ惚れする美しさでした。その場に足跡を残してしまったら申し訳ない程、完璧で繊細なグラフィカルアートです。夜は天の河がくっきり見える満天の星空を上に、満ちてくる波の音を聞きながら過ごしました。ミラクルビーチは1日に何通りもの違う美しさを見せてくれる場所です。

ミラクルビーチから車で30分ほど北上したCampbell River(キャンベルリーバー)と呼ばれる小さな町は、「サーモンキャピタル」と呼ばれるサーモン釣りのメッカです。9月頭と言うのに、既に沢山の釣り人で川は賑わっていました。そこからフェリー に乗ること10分。人口4,000人ほどの静かな島、Quadra Island(クアドラ島)にあっという間に到着します。船旅でたった10分の距離だけど、ここでは全く違う時間の流れと、抜群の透明度を誇る海が待っています。

海が豊かだと、生き物も豊か。ビーチ沿いには、生牡蠣やアサリがザクザク!!海岸を埋め尽くすように生息している海藻も青々しく輝いていて、とっても美味しそう!この日の夜、海の恵みで作ったアサリのビール蒸し、焼き牡蠣、海藻ラーメンは絶品でした。

クアドラ島には、カナダ最北端のワイナリーもあります。なんと偶然にもオーナー夫人が日系カナダ人の方で、オーガニックの葡萄で丁寧な優しいワイン作りをしています。地消地産の文化が根付くクアドラ島のシンプルな営みはとても贅沢に感じます。

美しさは海だけではありません。バンクーバー島の中部を占めるStrathcona Provincial Park (ストラスコーナ州立公園)は1911年に設立したBC州で最も古い州立公園です。むか~し昔、私の中学時代、バンクーバー現地校でここに修学旅行・野外研修で訪れたのを覚えています。2,458km2と言う広大な公園は、2,416km2と言う神奈川県面積と比較するとどれだけ広いか少し想像出来るでしょうか。そんなストラスコーナ州立公園は、まさにアウトドアのメッカ。ハイキング、カヌー、カヤック、釣り、ロッククライミング、スキー、と様々なアウトドアスポーツを楽しめます。

とにかく広いので、1日に1箇所と決めて行動するのが精一杯。とある1日、公園内にあるヘレン・マッケンジー湖とバトル湖を周遊する約10kmのトレイルをハイキングしました。Paradise Meadows(パラダイスメドウ)とも呼ばれるこのトレイルは、息を飲むほどの美しさで今回の旅のハイライトとなりました。

ちょうど夏から秋に移り変わるアルペン・ツンドラの紅葉時期で、その名の通りパラダイスの美しさです。大地を埋め尽くす草木の紅葉は満開の花畑のように、秋色のじゅうたんのように、鮮やかに辺り一面を染め上げていました。

沢山の小さな実をつけた山のブルーベリーや、甘~いハックルベリーなど、北の山の恵みも沢山楽しめました。それをご馳走に飛び交う野鳥達。以前からツンドラの紅葉を見たかった私は、パラダイスメドウのハイキングはちょっと別格で、終始足を止めては夢心地の気分に浸っていました。半日のハイキングが終わる頃にはちょっと寂しくなってしまうほど。。。

出口付近で子連れの家族がどのトレイルを進もうか迷っている様子だったので、思わず「このトレイルに行って!本当に最高だから!」と送り出しました。ストラスコーナ州立公園を再訪する時は、また必ず歩きたいトレイルです。

どんな時代でも、どんな場所でも、どんな人にも、自然はその美しさを惜しみなく披露し、人の心を充電してくれます。混沌とした世の中でも、海や山はただそこにあるだけで、全ての人に大きな喜びと感動を与えてくれます。その自然の一部になった時、人がどんなに小さく尊い存在かも気づかせてくれるのです。自然にしか成せない美の技に感服すると同時に、カナダの短い夏は、私にまた素晴らしい思い出をひとつ増やしてくれました。

Climate Change is Real

生まれて初めて山が燃える姿を見た瞬間、何とも言えない虚しさと共に足がすくむ思いをしました。

BC州ではこの夏、4月から7月にかけて起きた山火事は累計1,168件にも上り、約3.4万ヘクタールの大地が燃えました。9月に入った今日でも、未だ223箇所で山が燃え続けています。あまりにも広大な数字でいまいちピンと来ませんが、8月にカナダに戻った数日後にも何百キロと離れた山火事の煙がバンクーバー にも影響を及ぼしました。その日、バンクーバーは「世界一最悪の大気汚染の場所」としてランキングされてしまったのです。

山火事の煙で太陽が隠れ空が霞んでも、きな臭い匂いが街中を包んでも、実際に山が燃えている現場でオレンジ色に燃える炎を目撃するのとでは、ハッと目が覚める様な意識の違いがありました。

観測史上ワースト3に入る今回の山火事の最中、私と夫は仕事も兼ねて山火事が多発しているBC州の内陸にあるオカナガンに行くことになっていました。オカナガンはワインの産地として有名で、カナダの中でも最も乾燥している地域です。ギリギリまでニュースを注意深くチェックしながら、慎重に旅の準備を整え向かった結果、いつものワーケーション(仕事とバケーションを合わせた旅)とは違う、深い意味ある旅になりました。

山火事は今世界が直面する大きな環境問題のごく一部に過ぎません。そして、山火事の多発する現地に住む人々の中でも様々な意見が飛び交います。「山は燃えるもの」と言う人や「良い年も悪い年もある」と言う人がいれば、若い世代の中には気候変動に対して「早くアクションを起こさなければ20~30年後に農業が出来なくなる」と危惧する声も。毎日メディアで大きく取り上げられることで、風評被害だと言う声も聞きました。同じオカナガンでも風向きによって煙の方向が変わったり、激しく燃えている地区もあればそうでない地区もあるので、夏の観光シーズン中に旅行者がコロナ禍に加えて激減してしまい、肩を落とすワイナリーも多々存在します。
「葡萄のことばかり煙の影響があると取り上げられて…。果物や他の農作物だって同じなのに、なぜメディアはワイナリーに対して厳しいのか。」と少し苛立ちを感じる声も。

個人的な経験から言うと、私が幼少期カナダに住んでいた80年代後半〜90年代当時、山火事の煙がバンクーバーにまで影響があった事は一度もありませんでした。山が燃えるのは自然のサイクルの一部であっても、その状況は刻々と悪化している事に間違いありません。

ハイウェイの両脇で黒く焼き焦げた木々が辛うじて立っている光景を目にしました。地面を這うように燻るオレンジ色の炎が揺れ動いていました。オカナガンでは珍しく、クマや野生羊や鹿が沿道に姿を表していました。きっと炎で山を追われて迷い込んで来たのだろう、そう思うと胸がズンと重くなります。頭上には絶え間なく消火活動に努めるヘリコプターが往来していて、いつもの夏とは違う「賑わい」を体験した感じです。

そんな一味違うオカナガンから戻って来て、自分の中で決めたことが幾つかあります。

①家では牛肉を食べない。もともとほとんど食べませんが、徹底しようと決意。畜産全体が排出するメタンガス排出量の80%は牛肉生産によるものです。

②ゴミを出さない。リサイクルやリユーズ(再利用)する事で、家庭内のゴミは1週間で手のひらサイズ程度に抑えられる事が出来ます。

③食品用ラップフィルムを使用しない。前から気になっていたサランラップなど、プラスチックゴミ削減の為、この機会におさらばする事にしました。

④衣類は天然素地のものを選ぶ。海洋プラスチック問題の大きな一因は、私達が纏う衣類からです。化学繊維ものはなるべく買わずに、肌にも環境にも優しいリネン、シルク、オーガニックコットを中心に選んでいます。

⑤買い物にはエコバックを。食材の買い物だけでなく、日用品にも必ずマイバックを持参。カフェや仕事現場には、マイボトルを。リサイクル用品だって再生するのにエネルギー消耗するのでなるべくリサイクル用品の数も減らせるように心掛けています。

まずは自分が始められる小さな行動の変化から環境問題にもっと取り組もう。そう再確認させてくれた今回の旅でした。

最近目に留まった言葉で、私の原動力になっている言葉は「You must be the change you want to see in the world.」(あなたが見たいと思う世界の変化にあなた自身がなりなさい。)
私は100年後も200年後も美しい世界を見たいから、今自分が生かされている時間の中でどれだけ自分の周りを汚さずに立ち去れるか、楽しみながら頑張っていこうと思います。ひとりひとりの小さな行いが、この大きな地球をきっと綺麗にお掃除してくれる事を信じて…。

Summer of 2020

秋分の日が過ぎ雨が降り始めると、バンクーバーの冬はもうすぐそこまで来ています。今年の夏は海外渡航や国内移動に厳しい規制があったにも関わらず、「最高の夏だった!」と言う声をよく聞きます。私もその1人です。

国外に出られない分、自分のいる場所を思いっきり満喫した夏でした。前年よりもっとキャンプに出かけ、山を歩き、湖や海で過ごしました。ずっと行きたかったワインカントリー・オカナガンにも旅する事が出来ました。

短い夏を活動的に動き回りましたが、それでもブリティッシュコロンビア州内のごくほんの一部。カナダがどれだけスケールの大きい国土なのか、同時に思い知らされた年です。

旅もそうですが、今年の夏は私の中でハイライトとなるイベントが2つありました。1つは、ローカルサポートプロジェクトVOICEを通じて知り合った、Ocean Ambassadors Canada (オーシャン・アンバサダーズ・カナダ/ 以下OACの創設者アリソンとの出会い。OACはプロジェクトVOICEが継続的に寄付をしている非営利団体で、海洋汚染問題に積極的に取り組んでいます。「海を好きになってもらう事で、海洋汚染問題に興味を持ってもらう事」を目的とし、地元の小学生を対象にスタンドアップパドルを教えて、海で楽しく遊びながら海洋プラスチックの問題や危機に直面している海洋生物について教え、変化を起こす行動を呼びかけています。

夏の終わり、アリソンが人生初スタッドアップパドルに誘ってくれました。水際で海を見るのと、パドリングで沖まで漕いで観察するのとでは景色がまるで違います。自分の真下でアザラシが小魚を追っている姿や、クラゲの大群がふわふわと波に揺られながら浮遊していたり。目の前の海の中で繰り広げられる別世界に魅了され、OACの思惑通り海洋汚染についてもっと勉強しようと思うようになりました。

海の中で何が起こっているのかは地上と違って、自分の目で確かめる事は難しい。ですが、マリンスポーツを通じてとてもわかり易く、より親身に海洋汚染問題を考えるきっかけを作ってくれます。「海」と言う共通の好きなものを通じて、アリソンと彼女の活動に出会えた事は、私の夏をより有意義なものにしてくれました。

2つめのハイライトは、The North Shore News(ノースショア・ニュース)を通しての出会い。The North Shore Newsとは私が今住んでいる地元新聞社で、1969年創業以来コミュニティーに密着したネタを取り上げている新聞です。新聞と言うものが主流でなくなり、オンラインに移行するも今は毎週水曜日、1回だけ新聞が発行されています。以前から私はこのThe North Shore Newsの愛読者で、彼らから「ローカルコミュニティーを支援しているプロジェクトVOICEを取材したい。」と連絡が来たときは、もう大喜び!!そして、流石に情報網が広いよね、と感心しました(笑)。

何回かメールでやりとりをし、電話インタビューを受けている最中にふと気がついたのです。やりとりをしている記者の名前が何か聞き覚えがあるなぁ〜、と。すぐに電話後、新聞を探ってみるとやはり!!!The North Shore Newsで私が一番大好きな記事を書いているアンディーさんが担当者だったのです! アンディーさんは元はスポーツ記者ですが、The North Shore Newsでは「Laugh All You Want」と言うコメディータッチのコラムを書いています。社会的問題を独特のユーモアセンスで面白おかしく書いている文章が私はとても大好きなのです。

そんな敬愛するアンディーさんに記事を書いてもらえるなんて、人の巡り合わせとは何とも不思議です。ちゃっかりお茶の約束までして、つい先日直接お会いする事が出来ました。

この夏を振り返ると、そんな素敵な巡り合わせが多々ありました。限られた行動範囲で向かった美しい場所、出会った美しい人々、共有した有意義な時間…。とても身近なところで、人生の広がりを感じさせてくれた夏。パンデミックで強いられた特別な時間は、最高の夏を届けてくれました。

Wine Country Okanagan

カナダは実はワインの国です。大半が自国消費されるので、ほとんど輸出される事はありませんが、テロワール(風土と土地の個性)を重視したクオリティーの高いワインが数多く生産されています。その為、環境やサステイナビリティーに配慮したワイン作りが主流になってるワイナリーが多いのも特徴です。

BC州は、3702019年度統計)ものワイナリーが存在し、年間100万人以上の観光客で賑わいます。その中でも、オカナガンは「世界一美しいワインの産地」と呼ばれ、カナダワインの代表産地。南北に長くのびるオカナガン湖を中心に、ケローナから南はサマーランド、ペンティンクトン、ナラマタ、最南のオソユースとシミルカミーン渓谷まで、沢山のワイナリーが点在しています。

毎年大勢の観光客で賑わうオカナガンですが、コロナの影響とワイナリーの現状を、ローカルサポート「VOICE」の一環で取材して来ました。バンクーバーの日本語情報誌、「ふれいざー」9月号に投稿させて頂いた記事を織り交ぜながら、オカナガンの魅力をご紹介します。

オカナガン渓谷に隣接するシミルカミーン渓谷は、急斜面の山に囲まれた細長い渓谷です。風が絶え間なく吹くため害虫から守られ、農薬等の散布をあまり必要としない特徴もあります。「カナダのオーガニックキャピタル」として知られるほどオーガニック農法が盛んな地域でもあります。

ここシミルカミーン渓谷でナチュラルワインに力を注ぐ家族経営のワイナリー、Orofino –オロフィノ」。オーナー夫妻は元教師と元看護婦という異業種出身。2001年にサスカチュワン州から引っ越して来た時は、トラクターに座った事もない農業未経験者でしたが、今はシミルカミーン渓谷を代表するオーガニックワイナリーです。

サステイナビリティーにも拘り、わら式の屋内で温度管理は自然に任せ、じっくりとワインを自然発酵させて行きます。ワイナリーの電力も太陽光発電で補い優しい温もりを感じます。元看護師の奥様は元看護師なので、テイスティングルームの安全&衛生管理が徹底されていて、安心した時間を過ごさせてくれる配慮も流石。

「ワインキャピタル」と呼ばれるオカナガン渓谷の南に位置するオリバーは、BC州の約半分の葡萄畑があり、ここだけで40以上ものワイナリーが営まれています。パンデミックの真っ只中でも、新しいワイナリーが幾つか誕生していました。

French Door-フレンチドア」は今年6月にオープンしたウェスト・バンクーバー出身の家族が経営する可愛らしいワイナリー。フレンチシック漂う白を基調にしたテイスティングルームはフランスの田舎のファームハウスのイメージ。もちろん葡萄は全てオーガニック&自然発酵のワインです。プロヴァンススタイルのロゼが人気で、なんと今年は生産したワインが7月末には全て完売という好調スタート!これからが楽しみなワイナリーです。

Phantom Creek –ファントムクリーク」も同じくオリバーに6月に誕生したばかりの新星ワイナリー。オーガニック&バイオダイナミック農法のこだわりと世界有数の最先端の施設で作られるワインは「最高峰」という名が相応しく、今現在はワイナリーかオンラインオーダーのみ、ここのワインを飲む事が出来ます。

ゲートを抜けて小高い丘に向かってドライブしていくと、別世界のような美しい光景が待っています。美術館のように美しい施設、絶景に溶け込んだモダンなパティオ訪問の際は、ワイナリーツアーとテイスティングを必ずセットに予約して欲しい!CEOのシリー氏は、カルフォルニアとチリの有数なワイナリー経験の持ち主。ファントムクリークのワインを世界レベルのワインにすると張り切っています。

場所を移動して、お次はウエスト・ケローナへ。1859年、ここケローナで最初のブドウの苗が植えられたのがオカナガンワインの始まりと言われています。

Kalala Oragnic –カララ・オーガニック」のオーナーのカーネイルさんはインドのパンジャーブ出身でシーク教徒。「お酒を飲まないワインメーカー」として知られていますが、彼の作るワインは数々の賞を受賞しています。

カララは「奇跡の場所」という意味。コロナの影響で5月・6月とワイナリーを閉じていた際、支えてくれた人々に感謝を込めて、夏の間BC州内1ケース以上から送料無料キャンペーンを実施中。毎年限定でリリースされるオーガニックアイスワインも絶品です。

サマーランドは、オカナガン湖の南西に位置するなだらかな葡萄畑と青々とした湖が望めるとても美しい場所です。

ワイン作り8世代目の歴史あるドイツ系家族がサマーランドに移住を決めたのは2003年。8th Generation・エイスジェネレーション」は、今ではこの地域を代表する実力派ワイナリーです。もちろんお得意はリースリング!種類も豊富!スパークリングロゼには自家製炭酸を注入していると言うこだわりも。古い農家を改築したウッディーなテイスティングルームの中は、家族の歴代写真やローカルアーティストの作品が飾られ、友人宅に招待されたような居心地良い雰囲気が漂います。家族総勢でワイン作りに勤しむ姿勢にもほっこりさせられます。

Sage Hill・セージヒル」はサマーランドの外れにある、静かな道の行き止まりにあるワイナリー。周りはラベンダーの花が咲き乱れ、すぐ目の前にはオカナガン湖が広がり素敵な時間が流れています。

元大工でバーナビー出身のオーナー、リックさんがワインに興味を持ち始めたのはなんと幼少期!祖父が裏庭で穫れた葡萄で手作りワインを生産していた事がきっかけでした。ワインは全てオーガニック&ビーガンワイン。バンクーバーの高級ホテルを始め、数々のFarm-to-Tableのレストランに卸しています。因みに、彼の息子が近年手掛ける「Keenan-キーナン」ワインも人気急上昇中だそう。

最後の訪問地は、オカナガン湖の東側に位置するナラマタ。丘の斜面にびっしりと葡萄畑が連なり、大小様々なワイナリーが肩を寄せ合うように点在しています。その中をすり抜けるように走るナラマタロードをドライブするだけでも楽しい気分になります。

La Frentz –ラ・フレンツ」はナラマタを代表する実力派ワイナリー。オーストラリア系オーナーは、母国オーストラリアとオカナガンで長年の経験を持つベテラン。ここで7年間働くワインメーカーのドミニクさんも同じくオーストラリア出身。

サステイナブル農法で、「美味しい葡萄を育てる事が美味しいワインを作る」と断言。葡萄収穫後はあまり人の手を掛けません。ほぼ全てのワインが無清澄・無濾過で作られているのは、葡萄に絶対的な自信を持つ証です。ポートフォリオとリザーブの2種類のテイスティングが用意されていて、出来れば両方トライ!迷ったらリザーブがおすすめです。

Poplar Grove – ポプラーグロウヴ」は、オカナガンを代表するワイナリーで、男系の一族。初代オーナー・父親トニーさんと4人の息子家族(孫5人も全員男子!)がワイナリーの全ての業務に携わっています。生産されたワインの95%BC州で消費されると言うローカル人気が根強いワイナリーでもあります。敷地内にはレストランもあり、ワインとペアリングしながら食事も楽しめます。コロナ危機で経営難に曝されている飲食業界の支援の為に「レイクビューロゼ」のオンライン売り上げ毎$5BCホスピタリティー基金に寄付しています。でもやはり、ここの看板はピノグリ!作っても作っても足らない程の人気ぶりです!

華やかなイメージのオカナガンですが、今年は色々なチャレンジに直面しました。ワイナリーの応援は、現地へ訪れる事はもちろんですが、家に居ながらにしてサポート出来ます!クラブメンバーに入会したり、直接オンラインオーダーしたり、レストランやバーで意識的にカナダワインを飲んでみたり。

これから秋の収穫を迎えるオカナガン。今年は各テロワールでどんな葡萄が育ち、どんなワインになっていくのか。それぞれのワイナリーの想いが詰まったワインと来年出会えるのが待ち遠しいです。

Photos by YUSHiiN LABO

 

 

Under the Stars

降り注ぐような満天の星空を、キャンプで訪れた Kentucky Alleyne Provincial Park (ケンタッキー・アレイン州立公園)で見ました。沢山の流れ星と七色に発光するカラフルな星達。この世のものとは思えないほど幻想的で静寂な光景に時間を忘れ、ただ空を見上げて夜を過ごしていました。

ケンタッキー・アレイン州立公園はケンタッキー湖とアレイン湖から成る州立公園で、バンクーバーから内陸へ車で3時間ほどの場所にあります。公園のゲートから更に6km程行くとそこには2つの湖の他には何もない絶景キャンプ場が待っています。

湖の底に沈殿した火山灰が太陽の光が射すことで、水面を鮮やかなトルコブルーとグリーンに輝かせます。水辺には花が咲き乱れ「パラダイス」という言葉がぴったりの場所です。

柔らかい陽が当たる早朝の湖は抜群の透明度。数メートル先までガラスのように澄んでいて、思わずボーッと見入ってしまう程。静止した湖の対岸のどこからか、毎朝狼の遠吠えが響き渡って来るのが日課です。

真昼の太陽は湖全体をまるで絵具を垂らしたかのように、鮮やかなグラデーションへ変化させ、、、

その中をゆらゆらと魚が泳ぎ、時折ポチャンと水面を飛び跳ねる音が聞こえます。何だか北国の湖と言うよりも南国のリゾートに来ているような感覚にさえなります。

魅力的なトロピカルカラーとは裏腹に、水は冷たいですが泳がない訳にはいきません!遠浅な湖をちょっと沖まで泳ぎミルキーブルーの水に包まれると、もう冷たさなど忘れて何とも心地よい気分。

汲み取り式のトイレと水場しかキャンプ場にはありませんが、大自然の中にいる時間は自分を心から満たしてくれます。真の豊かさとは、モノや便利さに依存する事ではなく、身軽になって初めて見えてくるものとキャンプに来る度に確信するのです。

今年の夏は沢山の制限が敷かれ、会いたくても会えない人、行きたくても行けない場所も多いですが、最高のパラダイスは実は直ぐそばにあるという事をカナダの夏は気づかせてくれます。

タイトル写真 by YUSHiiN

Go Camping!

7月も半ば過ぎようやくバンクーバーにも遅い夏がやって来ました。今年は新型コロナウィルスの影響で必要不可欠な海外渡航以外は奨励されていませんが、ローカルを楽しむのはOK! BC州立公園運営のキャンプサイトが予約を再開した525日の朝7時には、5万人以上のアウトドア好きカナダ人が殺到してシステムがクラッシュした程でした。

私も7月に入り、オカナガンへキャンプに行って来ました。オカナガンはBC州最大のワインの聖地。同じ州内でもバンクーバーから高速に乗りノンストップで4時間は掛かります。キャンプしながらワイナリー巡り、と言う少し早めの夏休みを満喫して来ました。

毎年夏の恒例となったキャンピング。今回の旅の前半はオカナガン地域の南端、カナダとアメリカの国境にあるOsoyoos(オソイヨーズ)にあるオソイヨーズ湖のど真ん中に突き出ている半島、Haynes Point(ヘインズ・ポイント)州立公園のキャンプサイトを利用しました。38ヘクタール程の小さくて細長い州立公園ですが、その人気はNo.1! 毎年キャンプサイトの予約が始まる4ヶ月前には秒殺で埋まる人気の場所なのです。

ここは鳥の生殖地でもあって、終日沢山の可愛らしい鳥が飛び交い、彼らの鳴き声がノンストップBGMのように聞こえて来ます。Burrowing Owl (アナフクロウ)の会話するような掛け声も初めて聞きました。

朝は鳥の声で目覚め、柔らかい朝日を湖畔で浴びて…

地消地産のフルーツを朝食にとり、

日中はワイナリー巡り。

オレンジやマゼンタに染まる岩山を眺めたあと…

火を起こしてキャンプファイヤーの前でゆっくりと夕飯の準備をしながら、オカナガンワインで乾杯!!満点の星を仰ぎながら寝る静かな夜は本当に贅沢の一言です。

しかし!キャンプなので優雅なシーンだけではありません。特にへインズ・ポイントは湖と谷間の真ん中に位置している為、夜になると突風が吹き荒れる事がしばしばあります。ある日の夜は時速92km強の風が一時的に吹き、テントが飛ばされるか壊れるか不安で、夕飯どころではありませんでした。そして、鳥達もびっくりしたのか翌朝は至る所糞だらけ

後半に泊まったオカナガン・レイク州立公園のキャンプ場では、乾燥を避けるために自動稼働するスプリンクラーに気がつかず、出掛けている間に干していたバスタオルがぐっしょり濡れると言うハプニングもありました。

キャンピングにはとにかく色々とありますが、美しい自然が目の前にあったらそんなことはどうでも良し!やはりどんな宿泊施設より最高に贅沢な時間を過ごさせてくれます。今年前半は「Stay Home」を経験したからなおさら。自然と一体となって過ごす楽しさと厳しさ、唯一無二の時間を経験させてくれます。

My hidden gems

人に教えたくない秘密の場所があるとしたら、それは間違いなくSunshine Coast(サンシャインコースト)でしょう。

夏の終わりに都市から遠く離れた静かな場所に行きたくなって、サンシャインコーストへキャンプに行って来ました。サンシャインコーストは半島ですが大陸と通じている道路がなく、交通手段はフェリーか飛行機のみ。半島の南部と北部さえも海で隔てられ、こちらもフェリーで移動します。

バンクーバーからまずフェリーでサンシャインコースト南部にあるLangdale(ラングデール)と言う港に行き、そこから車で北上すること1時間20分。更に別のフェリーに乗り継ぎ、サンシャインコースト北部のSaltery Bay(ソルタリーベイ)が今回の目的地。同じBC州内ですが、バンクーバーから実に4時間も掛かります。

そんな不便で陸の孤島のサンシャインコーストの魅力は北部から始まると言って良いほど、想像以上のパラダイスが待っていました。

キャンプ地はもちろん圏外。何か特別な観光ものがある訳ではないけれど、ため息が出るほどの美しい海とビーチ、そして陸には山々に包囲された無数の湖が点在していて、壮大な自然のアドベンチャーランドです。

今回のテーマは「何も計画しないこと」。気の向くままにドライブして、目の前に飛び込んでくる景色を楽しみ、偶然見つけたビーチを散歩したり、キャンプ場の海辺でゆっくりピクニックを楽しんだり。

私はサンシャインコーストを「北のハワイ」と勝手に呼んでいますが、この地域の海は透明度抜群で、海水もぬるめ。鮮やかなエメラルグリーンやトルコブルーに輝く海に飛び込まずにはいられません。

海辺には、何十回も繰り返し素潜りの練習をしている頬笑ましい親子がいたり、読書をしている人や、近隣からカヤックでやって来てお昼寝してたり、それぞれが思い思いに夏の1日を過ごしています。

サルタリーベイから車で34km程北上すると、Powell River(パウエルリバー)と呼ばれる古き良き可愛らしい田舎町があります。田舎町と言っても19世紀には豊かな森林源を生かしたパルプ産業が栄え、世界的に紙の生産を支える産業都市として成長を遂げていた時代も。豊かな海洋生物が生息する海では時折イルカやクジラが目撃されるそう。

ローカルに勧められたPowell Lake(パウエルレーク)の湖畔に小さなビーチがあり、周りの針葉樹がそのまま溶け込んだようなモスグリーンの湖水の中でのんびりと泳いで、本当に気持ち良い場所でした。

ひと泳ぎしたら半島北部の最終地点、Lund(ランド)へ。ここはサンシャインコーストを一線で繋ぐ約156kmのハイウェイ101が終わる所です。ランドから内陸に10分ドライブするとOkeover Arm Provinciual Park(オケオーバー・アーム州立公園)があります。

長い入り江に面したこの州立公園は、カヤックやヨットマンにとって憧れの場所、「この世の天国」とも呼ばれる壮大なフィヨルド地帯に広がるBC州最大の州立マリンパーク、Desolation Sound Marine Provincial Park(ディソレーション・サウンド・マリーン州立公園)の入り口でもあります。

引潮の浜辺で、ローカルのグループがしゃがみこんで一生懸命に砂を掘っているので尋ねてみると、なんとオイスターとアサリが獲れると!バケツ一杯に入った大量の貝を誇らしげに見せてくれました。

試しに手でちょっと掘ってみると、XLサイズのアサリがゴロゴロ出てくる、出てくる!!何十年ぶりの潮干狩りを思いもよらず一緒に楽しませてもらいました。(注:海や川で海産物を獲るにはBC州のフィッシングライセンスが必要です。)

この日の夜の食卓に並んだのは、もちろん、掘ったアサリのビール蒸しと帰り道に地元の漁師ファミリーから購入した見事なハリバット(大鮃)のステーキ!!その日の恵みをその日に頂く贅沢なご馳走に大満足。

豪華ディナーの後は、お決まりマジックアワーの時間帯。まだ日も長く午後8時半過ぎが日没です。自然が染め上げる空のファンタジーは飽きる事がありません。

そして、この日は丁度満月の前夜。薄暗くなって来た夜空に浮かび上がる山のシルエットから太陽のように輝きながら、神々しく昇って来る月を見た瞬間、何事かとびっくりしてしまいました。鏡の如く静止した海面にムーンロードが照らされ、その光景があまりにも幻想的で平和で、違う時空に迷い込んだかのような、心から感動した夜でした。

食べて、泳いで、寝て、歩いて。。。何も特別なことをしないシンプルな時間こそが最高に贅沢な時間なのだと、サンシャインコーストは教えてくれます。いつもここに来ると魔法のような美しい世界が待っています。

それは、道に迷って偶然たどり着いた景色が一番のお気に入りとなるような、そんなささやかなプレゼントを与えてくれる秘密の楽園なのです。

Beach Camping

夏至も過ぎてバンクーバーにも本格的なサマータイムがやって来ました。そして、待望のキャンプシーズン到来!

今年の初キャンプは自宅から車で40分程のPorteau Cove Provincial Parkへ。ここはHowe Sound(ハウサウンド)と言う海峡に面した絶景のビーチキャンプが楽しめて絶大な人気があるキャンプ場です。予約が取れたら超ラッキー!予約受付開始の4ヶ月前に問い合せても、既に埋まっているほどの激戦地なのです。

都市のすぐ背後に素晴らしい大自然が鎮座していて、海も山も楽しめる。この都市と自然の距離感がバンクーバーの最大の魅力です。

大自然の中でのキャンプは、気づけば私の中で最高に贅沢なホビーになっています。一箇所にとどまり、ただ刻々と流れゆくものを眺める時間ほど特別な過ごし方はありません。同じ場所でも朝・昼・晩と全く違った表情を魅せてくれる自然のシアターを見ている時間がとにかく大好きで、ゆっくり読書でもしようと持参した本さえ開くことはまだありません。笑

今回は初のビーチキャンプだったので、その楽しさは更に新鮮でした。目の前の海と空のパノラマパラダイスにかぶりつき放題!なのですから。

朝は静寂な時間。いきものの活動が始まる前の鏡のごとく静かな時間です。そんな何の気配も感じないフレッシュな景色を目撃するのは、ちょっぴり得した気分になります。

昼は眩しく賑やかな時間。風も波もエネルギッシュに動く時です。

テントを張り始めたのは昼の1時過ぎでしたが、暴風と言わんばかりの強い風。作業にどっぷり2時間弱も掛かり、万が一の雨用に持ってきたタープを風よけにしなければテントが吹っ飛ばされる勢いに圧倒!!

夕暮れ時は1番儚く、惚れ惚れする時刻。

私が一番好きな時間帯です。

日中遊んでいた海鳥たちが巣に帰る準備を始め、空のキャンバスでは毎分変わっていく色の芸術がゆっくりと繰り広げられます。気がつけば嘘の様に風が止み、潮も満ち、白い星がうっすらとチラつき始め、キャンプ場の彼方此方でパチパチとキャンプファイヤーの音が。薪の音と炎の灯だけを残して、辺り一面黒のカーテンに包まれ始めると夜になります。

そんな時を繰り返し過ごしていくと自分も自然の日課の一部に溶け込んでいるようで、大きなゆりかごの中のいきものの存在の小ささと尊さを感じます。

キャンプ場に立つテントも人間も本当に小さな小さな点の存在。

都心では気づかない、言葉でも表現しずらいそのスケール感を体感することはとても大事なライフレッスンではないでしょうか。キャンプを通して知るカナダの壮大なビューティー(美)にいつも胸一杯になり、また、この夏はあと何回行けるだろうと数えずにはいられません。

Magic of Salt Spring Island

「スピリチュアルアイランド」「オーガニックアイランド」「ヒーリングの島」 などの名称で知られるSalt Spring Island(ソルトスプリング島)へ、短い夏休みを楽しんできました!

カナダ本土に位置するバンクーバーとバンクーバー島の間にはジョージア海峡が横たわり実に200以上の島が点在しています。ガルフ諸島と呼ばれるその島々は各島独自のカルチャーを育み、その中で最も大きくポピュラーなのがソルトスプリング島!ここには多くのアーティストやユニークなライフスタイルを追求している人々が移住していてカナダの中でも「自分らしい生き方」の最先端を行っている島でもあります。

バンクーバー からフェリーで1時間半ほどのソルトスプリング島の人口は約1万人。そこに年間40〜50万人の観光客が訪れる人気ぶりで、特に4月~10月末の期間限定・島の代名詞とも言えるSaturday Farmers Marketの時期は活気に満ち溢れています。140以上のローカルの農産物、アート、クラフト、諸々。。。「make it,  bake it, or produce it」(=作るか、焼くか、育てるか)して作ったものを自分自身で売る!というシンプルでユニークなルールに乗っ取って出店しているのがソルトスプリング島独特のマーケットを演出している。

味見をさせてもらいながら選ぶ農産物やワインはもちろんほぼ全てオーガニック!アーティストと直に話しながら買い物していると、ついつい長居してしまう。毎回チェックするお気に入りの手作り石鹸、Kama Soapのおじちゃんもソープ作りについて長らく熱弁。(https://kamasoap.com)

マーケット散策後はワイナリー&サイダリー巡り。ソルトスプリング島では350種類以上ものリンゴが栽培されていて島のリンゴで作られるアップルサイダーの酒造所、SALT SPRING WILD CIDER (saltspringwildcider.com)は10種類のサイダー飲み比べが出来ちゃう個人的にも超お気に入りのサイダリー。広大な果樹園を眺めながらのピクニックは最高~~。島のものはほとんどが地産地消で外に出回らないので、ここでストック買い!(笑)

他にもブリューワリー、コーヒーショップやベーカリー、チーズ屋さんとホッピングしながら食べ歩きも楽しい。旅先ではキッチン付きのAirbnbを必ず利用する様にしているので、マーケットやワイナリー巡りで買い物したローカル食材で作る料理は旅中の最高のご馳走♡ 

ある日の朝食メニューは、ローカルのパン、コーヒー、チーズにフルーツ、オーナーさんのホームメイドグラノラ&ヨーグルトとお裾分けいただいた有精卵の目玉焼き。その土地の恵みを頂きライフスタイルを楽しみながら旅をする事を心がけると、また違うアングルでその土地のことがぐっと深く理解できる。

ソルトスプリング島の過ごし方は他にもたくさん!!アーティストがたくさん住む島なのでスタジオツアーをしてみたり、ハイキングやウォータースポーツなどのアクティビティも盛ん。ドライブしているとマウンテンバイカーや車にカヌーを積んで走っている光景によく遭遇。みんな各々の楽しみ方で島での時間を満喫しています。

今年の夏にハマったレイクスイミングも!!島には大小数々の湖があるのでドライブしながら「あ!ここ泳ぎたい!」と思ったら車を止めてジャンプイ~ン!今回初めて行った島の南東にあるStowell Lakeは落ち着いた雰囲気で泳ぎやすい湖だったなぁ~。淡水なので肌にサラサラと優しく撫でつけてくる水の感覚が本当~~っに心地よい!写真中央、ネッシーの様に顔を上げて必死に泳いでいるのが私。。笑

そして今回の旅のハイライトは何と言ってもローカルの人に教えてもらった島の南部にある3本の御神木に会いに行ったこと。御神木はWen, Na, Necと言うトレイルの中にあり、別名Tsawout First Nation Trailと呼ばれていて先住民が管理する保護地区にあるとても神聖な場所。ここは呼ばれた人しか行けないみたいで、トレイルで迷って御神木に辿り着けなかったり、天候が急変して引き返されたりと言ったストーリーがあるらしい。犬も立ち入り禁止のトレイルです。

このトレイルが存在する島の南部の地盤はミルキークオーツで形成されているので「気」がもめちゃくちゃ良い場所。人影ない静かなビーチをいくつか後にすると急に現れた御神木。ここの領域だけさらに空気がパキッと変化するのを感じるほど何か言葉では表現出来ない神秘的な空間だった。来客を待っていたかの如く「いらっしゃい」と太く力強い幹が両手を広げる様に左右にゆったりと伸び、ほぼ同じ間隔で3本並行に立っている。母なる大地の神秘さと何か懐かしい温もりと安堵感を覚えると同時に、ソルトスプリント島の中で一番大好きな場所になった。

きっと人との出会い&会話がなかったらここには来なかっただろうと思うと、不思議な巡り合わせと旅する面白さを改めて体験。旅は常に新しい景色を見せてくれる。素敵な物語を教えてくれる。スピリチュアルアイランドと呼ばれるに相応しい、ソルトスプリング島で最高の癒しの時間でした。