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Circle of Life 2019 – Fall in Cheakamus

バンクーバーから海岸沿いを70km以上北上した場所に、Cheakamus Center (チェカムスセンター)はあります。昔は先住民であるSquamish Nation(スコーミッシュ族)が暮らした土地で、165ヘクタールもの広大な自然をノースバンクーバー教育委員会が所有し、子供から大人まで参加できる様々な自然&生態系教育プログラムを提供している貴重な場所です。

チェカムスは「行く」より「呼ばれる」と言った方が何だかしっくり来ます。実際、チェカムスの森は普通の森とはちょっと違って精霊が宿っている、そんな雰囲気が漂っています。

太古のままの原生林は根元から枝の先までびっしり苔に蒸され、

ふかふかな絨毯の様な柔らかい土とサーモンが遡上してくる清流があり、秘密の基地みたいな森全体が何か語りかけてくる、そんな魅力があるのです。

10月初め、2年に1度遡上してくるピンクサーモンがチェカムス川を賑わせている季節に、スコーミッシュ族のメディスンマン、Henry Williams(ヘンリー・ウィリアムズ)さんから12,000年以上も前から伝わる薬草について学ぶワークショップがありました。Devil`s Club(デビルズクラブ)と呼ばれるその薬草は、名前の通り強い毒性を持ち、釘の様なトゲで枝全体が覆われています。

そんな危険な外皮を剥ぐと、青々しい香りと共に鮮やかな緑色をした内皮が顔を出します。

何故かこの青い皮だけに様々な効能があるそうで、お茶、ティンクチャー、バーム等にして、主に痛みを伴う病気や怪我、そして炎症などに効果があるそうです。北米ではアラスカ人参とも知られています。

現代社会に生きて来たヘンリーさん。奥さんの持病がきっかけで、忘れかけていた先祖の知恵が詰まった薬草療法の道に再び戻って来たそうです。森からの恩恵は偉大である。そんな語らいの中で、「デビルズクラブはマザー(母体)を残して刈って下さいね。また成長させないといけないからね。」と教えるヘンリーさんの柔らかい言葉に、先住民と自然界はお互いを敬い、とてもバランスのとれた関係性であることを垣間見ることが出来ました。

次にチェカムスに呼ばれたのは、1ヶ月後。森とサーモンについて学びに行きました。

前回のピンクサーモンに代わりシロサケが川に帰って来ていて、それを狙って西海岸中の白頭鷲がこの周辺に大集合!いつもは「見れてラッキー!」な鷲が、頭上を見渡すとあちこち優雅に秋空を仰ぐ姿がありました。

「わぁ!サーモンの匂いがする~!」と、一緒に参加していた地元の小学生くらいの女の子。森の中で学習しているとサーモンの香りが自然と分かるんだな、と感心してしまいました。チェカムスの森は10月から1月までの間、サーモンの香りが漂います。それは産卵を終えたサーモンや餌として食べられたサーモンの死骸が川岸に打ち上げられているからです。

死骸と言うより綺麗に食べられたサーモンは、まるで化石みたいに骨だけになっています。何て無駄なく食べるのだろう!!と思わず感動する程。

更に、この時期に転がっている骨のほとんどは先月勢い良く泳いでいたピンクサーモンと聞いてびっくり!死を迎えた跡のすぐ横で、別の命の群れが続き懸命に泳いでいる。。。生と死をチェカムス川の岸辺でリアルに見せつけられました。

でも悲しい死ではありません。サーモンの残骸は、川や海の栄養分となります。サーモンを食べた鳥や動物のフンは、森を豊かにします。白頭鷲は高い木の枝で優雅に食事をするのがお好みらしく、木の上でサーモンを食い尽くした後、ポトンと下に落とす事で土を育てます。

こうして川や海、そして森へと散らばったサーモンは自然界を豊かにしながら命のバトンを繋いで行くのだ。。。もちろんその昔、先住民もサーモンのお陰で冬が越せたそうです。生命の輪がリアルタイムで繰り広げられるチェカムスの森は、人間が忘れかけている大事なレッスンを教えてくれます。

自然の営みを今後もずっと紡いで行く為に、人間は何が出来るだろう?そんな問いかけをチェカムスの森は私達にそっと提示しているのかも知れません。都市に帰れば、車が走り、ネオンが瞬き、デジタル社会の真っ只中にいる生活だけど、ほんの少し足を伸ばしたその先には太古のリズムが昔から変わることなく繰り返されている。自然界では当たり前の生命の輪を目の当たりにすると、何故か背筋がシャンとする。その感覚を再確認するのがとても大切な気がして、またチェカムスの森に呼ばれたいと思うのです。

Photo by YUSHiiN

Island Way of Life

1年に1島、島を巡る。そんな目標が出来たのは、ブリティッシュコロンビア州だけでガルフ諸島と呼ばれる島々が実に200以上もあるからです。バンクーバーから比較的アクセスしやすいサザンガルフ諸島だけでも7島あり、それぞれ独特の島文化が根付いています。

島に生きるとは?最近訪れたガリアノ島に魅了され、よくそんな事を考えます。ガリアノ島はサザンガルフ諸島の1つで、全長27.5km、幅は一番広い場所で6kmと細く長い形をした島。人口1,000人程が暮らしています。

この島には私達が日常的に目にするコマーシャルなモノは一切存在しません。ガソリンスタンド1件、グロッサリーストア3件、ATM3件、カフェもレストランも全ての商業施設は個人経営。もちろんスタバもマクドナルドもありません。病院もなく、ヘルスケアセンターと言われる簡易的なものがあるだけ。医者にかかる事になったら近くのバンクーバー島までエアバスで搬送されるそうです。

夏の観光シーズンの賑わいも消え、秋は静かに冬に向けての準備期間。お店も冬季閉店する場所もあります。

ランチタイムの11:30-2:00しかオープンしない(しかも週4日、たまに急用で休業)ローカルに大人気のFlying Black Dog。外に可愛いイートインスペースが設置してあり、こちらのバイソンバーガーは絶品!なのですが、こちらもそろそろシーズンクローズです。

最近の旅のテーマは「何もしない」こと。ガリアノ島は自然以外本当に何もないので、強制的にゆっくりさせられます。メインロードは縦に1本、信号のない道が走っているだけ。日中でも対向車に出会すことは滅多にありません。出会うのは鹿くらいで、地図がなくても大抵の場所に辿り着けます。

商業的な要素はゼロですが、ガリアノ島は美しく魅力溢れた海に囲まれています。

小さいにも関わらず島全体で73箇所もの公共ビーチアクセスがあり、この数は他のサザンガルフ諸島の島々に比べると驚異的な数!

その理由はガリアノ島の自然は皆で共有するものとして島全体で守っているからだそうです。

特にガリアノ島が面している海は、クジラやシャチが頻繁に行き交うActive Pass(アクティブパス)と言う貴重な海峡があることでも有名です。

私もハイキングで登ったMt. Galiano(マウントガリアノ)の頂上から広大なブルーの海原を悠々と泳ぐクジラの姿をキャッチしました。そんな光景が当たり前のように飛び込んでくる島の世界観が余りにファンタジーで、しばらく興奮が冷めませんでした!

美しい自然は個人レベルでもシェアします。近隣の人達に楽しんでもらえるよう開放している個人所有地もあります。「Talking Trees」と名付けられたトレイルは、80歳になるお婆さんが所有する壮大な土地の中にあってローカルは誰でも自由に歩けます。10分ほど行くと美しい眺めの海岸に出てとても気持ち良い場所です。

週末に開かれる可愛らしいサタデーマーケットは10店ほどのお店が集まり、それぞれの物語が詰まった商品が沢山並んでいました。人気が集中している老夫婦が作るベーカリーは朝イチに並ばないと直ぐに売切れてしまいます。

丹精込めて収穫されたオーガニック野菜や、環境と体に優しいソイキャンドル等、みんなゆっくり会話を楽しみながら作業するのでお店ごとに話し込んでいると結構な時間が経ってしまいます。

島人はほとんどの人が知り合いで、名前を言うと「ハイハイ!〇〇さんね!」と分かってしまう程。

滞在先のキャビンは、更に人里離れたノイズレスな環境へ。

ゲートを越えて一山登ったその先は、オーナーのメインハウスとキャビン以外文明の気配は消え、羊と朝食の卵を産んでくれる鶏のみ!去年の冬は大雪で山から降りれず4週間も自宅から出られなかったそうです。

キャビンから続く幾つものトレイルを気の向くままに散策したり、

夕日を眺めながら大好きなワインを楽しんだり、

夜は風の奏でる音に耳をすまし、暖かく燃えるシダーウッドの香りに癒されたり。人工的な音を遮断して流れ行く時間はとてもシンプルで最高の贅沢に感じます。

島の生活は不便であり、想像以上の困難も沢山あるはず。でもそこにはお金やモノでは代え難い、自分らしい幸せがあるのではないでしょうか。

島と言う限られたスペースと資源の中だからこそ、人はよりクリエイティブに、そして助け合いと分かち合い豊かな精神を持って生きられるのかもしれません。そんな精神がこの地球に住む11人が育めたら何て素敵だろう。

眺めの良い丘で大型フェリーが行き交うのを見て、ガリアノ島の人達は便利さを恋しく、都会を恋しく想うだろうか?答えはきっと決まっているでしょう。

My hidden gems

人に教えたくない秘密の場所があるとしたら、それは間違いなくSunshine Coast(サンシャインコースト)でしょう。

夏の終わりに都市から遠く離れた静かな場所に行きたくなって、サンシャインコーストへキャンプに行って来ました。サンシャインコーストは半島ですが大陸と通じている道路がなく、交通手段はフェリーか飛行機のみ。半島の南部と北部さえも海で隔てられ、こちらもフェリーで移動します。

バンクーバーからまずフェリーでサンシャインコースト南部にあるLangdale(ラングデール)と言う港に行き、そこから車で北上すること1時間20分。更に別のフェリーに乗り継ぎ、サンシャインコースト北部のSaltery Bay(ソルタリーベイ)が今回の目的地。同じBC州内ですが、バンクーバーから実に4時間も掛かります。

そんな不便で陸の孤島のサンシャインコーストの魅力は北部から始まると言って良いほど、想像以上のパラダイスが待っていました。

キャンプ地はもちろん圏外。何か特別な観光ものがある訳ではないけれど、ため息が出るほどの美しい海とビーチ、そして陸には山々に包囲された無数の湖が点在していて、壮大な自然のアドベンチャーランドです。

今回のテーマは「何も計画しないこと」。気の向くままにドライブして、目の前に飛び込んでくる景色を楽しみ、偶然見つけたビーチを散歩したり、キャンプ場の海辺でゆっくりピクニックを楽しんだり。

私はサンシャインコーストを「北のハワイ」と勝手に呼んでいますが、この地域の海は透明度抜群で、海水もぬるめ。鮮やかなエメラルグリーンやトルコブルーに輝く海に飛び込まずにはいられません。

海辺には、何十回も繰り返し素潜りの練習をしている頬笑ましい親子がいたり、読書をしている人や、近隣からカヤックでやって来てお昼寝してたり、それぞれが思い思いに夏の1日を過ごしています。

サルタリーベイから車で34km程北上すると、Powell River(パウエルリバー)と呼ばれる古き良き可愛らしい田舎町があります。田舎町と言っても19世紀には豊かな森林源を生かしたパルプ産業が栄え、世界的に紙の生産を支える産業都市として成長を遂げていた時代も。豊かな海洋生物が生息する海では時折イルカやクジラが目撃されるそう。

ローカルに勧められたPowell Lake(パウエルレーク)の湖畔に小さなビーチがあり、周りの針葉樹がそのまま溶け込んだようなモスグリーンの湖水の中でのんびりと泳いで、本当に気持ち良い場所でした。

ひと泳ぎしたら半島北部の最終地点、Lund(ランド)へ。ここはサンシャインコーストを一線で繋ぐ約156kmのハイウェイ101が終わる所です。ランドから内陸に10分ドライブするとOkeover Arm Provinciual Park(オケオーバー・アーム州立公園)があります。

長い入り江に面したこの州立公園は、カヤックやヨットマンにとって憧れの場所、「この世の天国」とも呼ばれる壮大なフィヨルド地帯に広がるBC州最大の州立マリンパーク、Desolation Sound Marine Provincial Park(ディソレーション・サウンド・マリーン州立公園)の入り口でもあります。

引潮の浜辺で、ローカルのグループがしゃがみこんで一生懸命に砂を掘っているので尋ねてみると、なんとオイスターとアサリが獲れると!バケツ一杯に入った大量の貝を誇らしげに見せてくれました。

試しに手でちょっと掘ってみると、XLサイズのアサリがゴロゴロ出てくる、出てくる!!何十年ぶりの潮干狩りを思いもよらず一緒に楽しませてもらいました。(注:海や川で海産物を獲るにはBC州のフィッシングライセンスが必要です。)

この日の夜の食卓に並んだのは、もちろん、掘ったアサリのビール蒸しと帰り道に地元の漁師ファミリーから購入した見事なハリバット(大鮃)のステーキ!!その日の恵みをその日に頂く贅沢なご馳走に大満足。

豪華ディナーの後は、お決まりマジックアワーの時間帯。まだ日も長く午後8時半過ぎが日没です。自然が染め上げる空のファンタジーは飽きる事がありません。

そして、この日は丁度満月の前夜。薄暗くなって来た夜空に浮かび上がる山のシルエットから太陽のように輝きながら、神々しく昇って来る月を見た瞬間、何事かとびっくりしてしまいました。鏡の如く静止した海面にムーンロードが照らされ、その光景があまりにも幻想的で平和で、違う時空に迷い込んだかのような、心から感動した夜でした。

食べて、泳いで、寝て、歩いて。。。何も特別なことをしないシンプルな時間こそが最高に贅沢な時間なのだと、サンシャインコーストは教えてくれます。いつもここに来ると魔法のような美しい世界が待っています。

それは、道に迷って偶然たどり着いた景色が一番のお気に入りとなるような、そんなささやかなプレゼントを与えてくれる秘密の楽園なのです。

O Canada!

71日はカナダの152周年建国記念日でした。2679歳の日本に比べると産まれたての赤ん坊の様な国ですが、愛国心は熱い熱い。この日は大勢の国民がカナダカラーの赤と白を纏い、至る所でパレードやお祝い行事が繰り広げられます。

地元新聞紙もCanada Dayに因んで、カナダトレビアクイズの特別ページを用意したり。カナダは10の州(Province)3の領土(Territory)から成り、国内では3つの時差が存在します。「O Canada」は正式には1980年に国歌となり、カナダを象徴する動物はビーバー!(クマではない!)などなど、面白いトレビアでカナダの知識を深めてくれます。

カナダ⇄日本のデュアルライフを始めてようやく2年目になろうとしていますが、今回初めて現地で過ごすCanada Day。この記念すべき日に、友人が指揮するローカルバンドの演奏を聴きに、Sunshine Coast にて過ごしてきました。Sunshine Coastは実は島ではなく半島です。切り立った険しい山々の先にある為、交通手段がフェリーか飛行機でしかなく、のどかな美しい自然が残っている私にとって特別で大好きな場所の1つです。

前夜にフェリーに乗り込み、わずか40分で到着してしまうSunshine Coastですが、バンクーバー本土とは全く別の世界に誘われる、そんな景色が待っています。

Canada Day当日は、Sunshine Coastの一番大きな街、Sechelt(シーシェルト)で盛大なパレードが行われます。大きいといっても人口1万人強のとても可愛らしいコミュニティーです。先住民の言葉で「2つの海に囲まれた場所」と言う名の如く、シーシェルトのダウンタウン?エリアは両端をジョージア海峡とシーシェルト海峡に囲まれていて、端から端まで徒歩でも行けるほど。

カナダ人の朝は早い!9:30amから友人率いるバンド演奏が始まり、街の人達と一緒に一気にお祭りムードに!道沿いには街中、と言うか半島中の人が集まったんじゃないかと思う程大賑わい。特に「O Canada」の演奏では、座っている観客も立ち歌い始めたのが印象的でした。

そしてバンド演奏後は、何か合図がある訳でもなく突然パレードがスタートします。笑

クラシックカーの大名行列は、毎年恒例のお決まりらしい。

その他にもSunshine Coastで活動している沢山のコミュニティーグループが2時間ほど掛けて、思い思いにパレードしていき、通りすがる度に沿道の子供達にお菓子やらグッズを配りまくります。

子供達にとっては誕生日とハローウィーンが一気に来た感じ。カナダは子供と老人を大事にするのはもちろん、社会的弱者や動物にとても思いやり深い支援と愛を注ぎます。何だかこのパレードでは、ほのぼのとその心温かい精神が垣間見れた気がしました。

パレードがまた何気な~く終わると(最終グループは地元の消防隊でした)、午後はゆっくりとSunshine Coastの美しい自然を満喫。

Sargeant Bay Provincial Parkでのビーチタイムでは、カナダで初の海水浴にチャレンジ!北緯が高いだけに夏でも忍耐がいる冷たい海水ですが、この日は炎天下だったこともあり(数分)楽しむことが出来ました。

お次は、大好きな針葉樹が香るトレイルへ。

Soames Hill Parkは、片道30分程でサンシャインコーストとお隣のBowen Island(ボーエン島)と遥か地平線上にはバンクーバー島まで眺められる絶景ポイントがあります。

運動した後は喉ごしらえ!と言うことで、道の途中で偶然見つけたクラフトブリューワリーにお邪魔して、 Canada Dayに乾杯~~!

最近のカナダ西海岸はクラフトビール大ブームが起きていて、地域ごとにお洒落なブリューワリーを発見するのも旅の楽しみのひとつ。ここ、Persephone Brewing Companyは、ビールの他にファームもやってたりホップまで育てちゃっている素敵なブリューワリー。

1日の最後はSunshine Coastで開発が急速に進んでいる街、Gibsons(ギブソンズ)へ。ここもまた可愛らしい港町で、カナダのTVドラマ「The Beachcombers」(ビーチコーマーズ)のロケ地になった地元ではちょっと有名な場所です。

港には無数のヨットと個性豊かなボートハウスがぎっしりと並んでいます。

海に浮かぶヨットはなんともロマンを誘いますね。いつかこんなヨットでアイランドホッピングしてみたいなぁ~、と夢見ているとピンク色に染待っていく空にあっという間に過ぎた楽しい1日の終わりを知らされます。

音楽→人→海→山→ビール→空、と大好きなカナダのエッセンスの全てがぎゅっと詰まったCanada Day。カナダは移民の国だからこそ、多種多様な背景を持つ11人がみんなで良い国にして行こうと、そんな明るい志を持って生活している気がします。

また新しい1年、カナダという国をもっと知りたくなるそんな1日でした。

Beach Camping

夏至も過ぎてバンクーバーにも本格的なサマータイムがやって来ました。そして、待望のキャンプシーズン到来!

今年の初キャンプは自宅から車で40分程のPorteau Cove Provincial Parkへ。ここはHowe Sound(ハウサウンド)と言う海峡に面した絶景のビーチキャンプが楽しめて絶大な人気があるキャンプ場です。予約が取れたら超ラッキー!予約受付開始の4ヶ月前に問い合せても、既に埋まっているほどの激戦地なのです。

都市のすぐ背後に素晴らしい大自然が鎮座していて、海も山も楽しめる。この都市と自然の距離感がバンクーバーの最大の魅力です。

大自然の中でのキャンプは、気づけば私の中で最高に贅沢なホビーになっています。一箇所にとどまり、ただ刻々と流れゆくものを眺める時間ほど特別な過ごし方はありません。同じ場所でも朝・昼・晩と全く違った表情を魅せてくれる自然のシアターを見ている時間がとにかく大好きで、ゆっくり読書でもしようと持参した本さえ開くことはまだありません。笑

今回は初のビーチキャンプだったので、その楽しさは更に新鮮でした。目の前の海と空のパノラマパラダイスにかぶりつき放題!なのですから。

朝は静寂な時間。いきものの活動が始まる前の鏡のごとく静かな時間です。そんな何の気配も感じないフレッシュな景色を目撃するのは、ちょっぴり得した気分になります。

昼は眩しく賑やかな時間。風も波もエネルギッシュに動く時です。

テントを張り始めたのは昼の1時過ぎでしたが、暴風と言わんばかりの強い風。作業にどっぷり2時間弱も掛かり、万が一の雨用に持ってきたタープを風よけにしなければテントが吹っ飛ばされる勢いに圧倒!!

夕暮れ時は1番儚く、惚れ惚れする時刻。

私が一番好きな時間帯です。

日中遊んでいた海鳥たちが巣に帰る準備を始め、空のキャンバスでは毎分変わっていく色の芸術がゆっくりと繰り広げられます。気がつけば嘘の様に風が止み、潮も満ち、白い星がうっすらとチラつき始め、キャンプ場の彼方此方でパチパチとキャンプファイヤーの音が。薪の音と炎の灯だけを残して、辺り一面黒のカーテンに包まれ始めると夜になります。

そんな時を繰り返し過ごしていくと自分も自然の日課の一部に溶け込んでいるようで、大きなゆりかごの中のいきものの存在の小ささと尊さを感じます。

キャンプ場に立つテントも人間も本当に小さな小さな点の存在。

都心では気づかない、言葉でも表現しずらいそのスケール感を体感することはとても大事なライフレッスンではないでしょうか。キャンプを通して知るカナダの壮大なビューティー(美)にいつも胸一杯になり、また、この夏はあと何回行けるだろうと数えずにはいられません。

The Making of Wild Hill

ソトコト」4月号にて、バンクーバー島にあるオーガニック・スキンケアブランド、「Wild Hill Botanicals」を紹介しています。ローカルコミュニティーとサスティナビリティを高く意識しながら、自分たちの住む土地と向き合い、その恵みを丁寧に詰め込んだとても愛らしいブランドです。

沢山のオーガニックと名乗るブランドが出回る今、その土地でしか出来ないモノつくりと時間をかける手作業の大切さをしっかりと打ち出した、希少なローカルブランドです。

『「Wild Hill Botanicals(ワイルド・ヒル・ボタニカルズ)は、カナダのバンクーバー島南西部にある海辺のリゾートタウン、スークの更に奥地の森の中に、ひっそり佇むオーガニック・スキンケアブランド。営むのは、長年アメリカに住んでいたカップルだが、夫がサーフィン好きという理由でここを移住先に選んだそう。

スークは海と山の豊かな自然に恵まれ、フードカルチャーも盛ん。世界的にも有名なホテル「Sooke Harbour House」のレストランを目指して、食事だけのために訪れる人も多いという。近年では、「Wild Mountain」というスローフード&地消地産をコンセプトにしたローカルレストランも密かに話題を呼んでいる。

「Wild Hill Botanicals」の原点も、池や畑がある広大な敷地にアヒルを飼育し、その卵を売っていた「Wild Hill Farm」という農家だった。ファームで育ったハーブで芳香蒸留水をつくり始めたのをきっかけに、本格的なスキンケアブランドへと成長していった。バイオダイナミック農法に基づいて育てたハーブは、色も香りも格段に華やか。それから蒸留される芳香蒸留水は、エッセンシャルオイルよりも刺激が少なく、アロマセラピー効果も大きい。

そのほかの原料も、サスティナビリティを意識しながら、極力この土地の恵みを取り入れている。海で採れる海藻はマスクに、森の薬用キノコ・カワラタケはスクラブに、近隣に豊富に生息する抗菌作用が高い花・ファイアウィードは化粧水にと、商品の蓋を開けるとスークの香りと景色がそのまま飛び出してくるかのよう。

シェフのごとく、ローカルに根付いた素材をメニューとして、スークならではの愛らしいスキンケア商品が「Wild Hill Botanicals」から生まれている。』

写真:佐藤裕信

 

The winter wonder trail

トレイル好きな私は冬でもやはり山に入りたくなり、近所の裏庭(山)でスノーシューに初挑戦!家から車で30分程のMt. Seymour(マウントシーモア)は、標高1,449mでスキー場やハイキングコースも沢山あります。

今年のバンクーバーの冬は稀にみる晴天続き。あまり雨や雪に恵まれていませんが、Mt. Seymourのスキー場まで登るとそこには白銀の世界が待っていました!遠くにはアメリカのMt.Baker(マウントベーカー)が見える絶景ポイントからスノーシュースタート!

夏に歩くトレイルは木の根っこや起伏が激しい箇所がゴロゴロあるけれど、冬は全て雪の中。湖や川面も全て氷で覆われています。夏場より歩きやすいと思うほど、登り下りはあるものの緩やかな雪道にサクサクと響くスノーシューの足音が何とも心地良い!

白の世界は静寂でピンと張り詰めた緊張感みたいなものがあって、ちょっとの音や小動物の足跡まで敏感にキャッチできる無地のキャンパス。深い森に差し込んでくる冬の太陽の光が、キラキラと真っ白な表面を照らして宝石の様に眩く輝かせます。それを眺めるだけでとても清らかな気分になれる雪マジック。

白という色は何て無限大の色なのでしょう。白を見ているだけで頭も気持ちもスッキリ洗われていきます。澄みきったカナディアンブルーの晴天の空と重なれば最高の色のコントラスト!トレイルの道中、大自然が見せてくれる自然のギャラリーに心奪われるばかりです。

往復約5kmのDog Mountain Trail (ドッグマウンテントレイル)の頂きは、バンクーバーとその背後の山々が望める絶景ポイント!ここまで登って来るともう汗だく。

午前中仕事をして、午後からサクッとスノーシューに出掛け自然の世界に溶け込むことが気軽に出来てしまう日常。海あり山ありのバンクーバってやっぱり素敵な街だなぁと、しみじみ感動してしまいます。

冬のトレイルの美しさと楽しさを教えてくれてありがとう!と、また一つ私の中のカナディアンビューティーが増えました。

Homecoming

新しい年を迎えてすでに25日目。早くも最初の1ヶ月が終わろうとしています。年末年始は仕事で日本に長期滞在していて、第2のホームグラウンドのバンクーバーに約1ヶ月半ぶりに戻ってきました。

久しぶりにバンクーバーの空気を思いっきり吸い込み、カナディアンブルーの空と水、深い緑の針葉樹、そして薄っすら雪化粧をした山々に囲まれると、本当に心が洗われます。美しい場所に住まわせてもらっているなぁ~と、改めて感動する日々の再スタートです。

東京とバンクーバーを行き来していると見える景色も時間のスピードもあまりに違い、まるで時差のように慣れるまで少々時間を要することもあります。コンクリートジャングルの東京は人・モノ・情報が渦巻いていて、日々圧倒されながらも世の中で起こっている最先端を一気に吸収できる場所です。

情報過多になったり、人工的な色が多過ぎてちょっと疲れますが、一歩地方に飛び立つと日本の長閑な美しい自然が広がりホッとする自分がいたり。

バンクーバーは人やモノが少ない分、自然の恵みが沢山あります。家から15分程のトレイルを歩くと、そこは人間がとてもちっぽけな存在で様々な生命と共存していることを教えてくれる場所です。

キツツキがせっせと木を蝕んでいる光景を目にしたときは、「おかえり!」と言われているようで微笑ましくなったと同時に、「この木そろそろ倒れない?」と不安になるほど小さな鳥の威力にびっくりさせられました。カナダの自然はいつも驚きに満ちています。

2019年、カナダはUS NEWS&WORLD REPORTから「世界最高の生活水準」の国でトップに表彰されました。日本は13位。反対に、同じレポートで「世界最高の国」部門では日本がスイスに続いて2位。カナダは3位でした。

どちらの国が良い悪いではなく、東京とバンクーバーと、ある意味正反対の2都市で時間を過ごし仕事出来ることで常に新しい視野とバランスを学んでいます。今までにない面白いスパイスを人生に加えてもらいながら。

互いの場所の良いところを持ち運んでそれを共有していける自分になれるよう、しなやかな心と頭を持って日々楽しみたいです。どこにいても自分らしく、2箇所のホームグラウンドがあることで見えるものを大切にしながら、ボーダレスなクリエイターでありたいです。

今年最初の満月は、SUPER BLOOD WOLF MOONでした。この名の由来は、①満月が地球に接近して大きく見える(SUPER-MOON)、②皆既月食により月が赤く照らされる(BLOOD- MOON)、③1年最初の満月(WOLF-MOON)、が重なることだそうで、私もバンクーバーでタイムリーに観測できました。

次に北米で観測できるのは2037年頃だそうで、その時の自分はどう在るのか想いを馳せながら、今年もカナディアンビューティーを綴って行きたいと思います。

*写真撮るのが遅過ぎて(笑)、SUPER BLOOD WOLF MOONの赤い月光は眼にしっかり焼き付けました!

Workation in Victoria

旅するように仕事をする。そんなワークスタイルが最近しっくりくる。「Workation」という言葉に聞き覚えがある人も多いのではないかと思うけど、「Work」と「Vacation」の単語を繋げたアメリカ発の言葉で、「仕事とバケーションを一緒にする」という意味。カナダでは少し遠くへ仕事で行く際、フェリーに乗り、レンタカーに乗りとそれだけでも旅なのですが、そんな時は少し滞在日数に余裕を持ってWorkationを心掛けています。

先日も仕事でBC州の州都・ビクトリアに行って来ました。州都と言ってもバンクーバーからBCフェリーで1時間半のバンクーバー島に位置しています。イギリスの植民地だった歴史が色濃く残る街並みと、穏やかな港を囲むように州議事堂やクラシカルな建造物が並ぶとても可愛らしい街です。

私のWorkationスタイルは、限られた時間の中でとにかく新しい土地の気になっているもの全てを試し、見て、感じること。ローカルのクリエイターやアーティストを突撃訪問することもよくあります。

バンクーバー島は気候が温暖でワイナリーやサイダリーも多く、今回オーガニックアップルサイダーを作っている「Sea Cider(シーサイダー)」ファームをまず最初に訪れました。

2007年からスタートしたファームとは言え、オーナーは6代続く農業を営む由緒ある家系。10エーカー程の果樹園の丘に可愛らしいサイダーハウスがあり、ここでは1年を通して15種類以上ものアップルサイダーが販売され、テイスティングも出来ます。

左から、定番の「King&Spies」→秋限定の「Sassamanash」は地元で採れたクランベリーとアップルのマリアージュ→アップルとラムの大人な香りを放つ「Rumrunner」は数々の賞を受賞しています。オーガニックのサイダーはとても優しい味がして危険なくらいスッキリ!今度は夏に戻ってきたいな~と思わせるパティオはハイシーズンには満席に賑わうのだそう。

ずっと口コミで気になっていた中心街から少し離れた「Nourish(ノリッシュ)」ではランチを。

重要文化財に指定されている一軒家を改築して出来たレストランは、友人のダイニングルームに招かれたような自然光が差し込む温かくアットホームな空間。テイクアウトバーも隣接していて、木製の階段を2階へ上がるとPC作業も出来ちゃうようなソファー仕込みのカフェスペースもあります。

ホリスティックなアプローチで、ホールフード、オーガニック、未精製で旬な食材を扱い、グルテンフリーやデイリーフリーのオプションも豊富。エッグベネディクトも、小麦粉の代わりにベイクドスイートポテト、オランデーズソースの代わりにターメリックカシューナッツソースと、とってもクリエイティブでヘルシー!!とにかく美しい食のプレゼンテーションと居心地の良さに完全にノックアウトされました。

もちろん、地元ならではのビューティーリサーチも欠かせません。ビクトリアに唯一のお店を構える「Nezza Naturalsは、父と娘で創業したアロマセラピーを基盤にしたオーガニックナチュラルブランド。フェィス、ボディー、ヘアケア、そして洗剤等のホームプロダクトとかなりの品揃えだけど全てオーガニックで手作りというから驚き!

ベストセラーのオーガニックVitamin C フェイスクリームとオーガニックフットバームを購入し、その晩はもちろんお試しタイム。ユーカリ、ローズマリー、ティートゥリー、メンソールの精油がたっぷり配合されたフットバームは私の頑固でドライなかかとを一晩で良い感じにしっとり保湿してくれました!

仕事の合間の寄り道とも言える時間は、旅を、仕事を、より豊かなものにしてくれます。その土地の空気と人々にコネクトすることで新しいインスピレーションが刺激され、より良い仕事に繋がります。自分が行く先の時間を思いっきり楽しむこと。Workationは誰にでも取り入れられる素敵なワークスタイルではないでしょうか。

 

A circle of life

食欲の秋。芸術の秋。スポーツの秋。と、秋には様々な形容詞が似合いますが、カナダの秋をひと言で例えるなら、やはり「恵みの秋」ではないでしょうか。

2018年はサーモン遡上の「Dominant Run」と呼ばれ、4年に1度の産卵のピークイヤーです。BC州にはサーモンが帰ってくる川が約2000本あると言われ、いつか見てみたいと思いつつも日々の色々に追われてなかなか遠出できず、時は既に11月。。。

もう遅いだろうと思いつつ11月も第2週になったある日、家から車で10分程で最も気軽にサーモンを見学できるCapilano Salmon Hatchery(キャピラノ・サーモンハッチェリー) と呼ばれる人口孵化場にトレイル歩きがてら寄ってみることに。すると驚くことに、ガラス越しではあるけれどSalmon Ladder(魚梯)を懸命に昇るサーモンの姿がまだありました!

ここに帰ってくるサーモン達は孵化場で産まれたサーモンです。サーモンは自分の生まれた川の匂いや体内の磁気コンパスなどの仕組みを巧みに使い、産卵期に必ず故郷に帰ってきます。偶然学習用に斬られたサーモンを運んでいる所に遭遇し見せてもらうと、お腹からギッシリ詰まったオレンジ色の宝石の様な卵が溢れ出し、何かとても神聖で、長い旅路の末にこんな姿になってしまったのかとやるせない思いにもなります。けれど、サーモンを食卓で美味しく頂いている日常とも重なり、いつも当たり前に頂く「食」への感謝の気持ちも一層に湧いてきます。

サーモンは自分の運命がどうなろうと、途中で釣り上げられたり、動物や鳥の餌になったり、故郷が孵化場であれ自然の川床であれ、ただただ産卵をするために命を張って必死に帰って来る。とても神秘的な行動と同時に、自分達の決められたライフサイクルにとても忠実な生き物ではないでしょうか。

サーモンには「海の顔」と「産卵期の顔」があり、遡上をする時になるとギョッとする程顔が別モノに変わります。険しい川上りをするための自然の適応術だけど、そこには「よしっ!!行くぞっっ!!」と最後の命を燃やすサーモンの意気込みが伝わってくる様です。私も沢山の顔に触れる仕事の中で「その人の生き様や内面が顔にでる」と常々感じますが、サーモンの産卵期の顔はそれを象徴している気がします。

孵化場のサーモンを見学出来ただけでも十分満足していたら、その後に奇跡的な巡り合わせが待ていました。孵化場を後にし、川沿いのトレイルを歩きながら下っていた時でした。ふと渡りかけた橋から川を覗いてみると、なんと自分の足元の真下に5匹ほどのサーモンの群がゆらゆらと流れに逆らいながら停滞していました。天然のサーモンの遡上です!少しの間興奮しながら眺めていると、ひときわ体の大きい雌が、砂を撫でる様に何か居心地悪そうに体を横に動かしているのです。体勢をまた整え近くにいた雄が並んだと思ったその瞬間、その周りで泳いだいた他の雌も含めて我先にと言わんばかりにいっせいに放精したのです!!(動画の一番最後のシーン)

サーモンの遡上ばかりでなく産卵の瞬間まで遭遇してしまったことに、もう大興奮!!私には感動的な初めての光景ですが、地元人は一緒に下を見ながら「あ、まだ居るね」とか「バンクーバーへようこそ!」なんて、いつもと変わらぬ表情で通り過ぎて行きます。こんな日常的な散歩道の真ん中で。都市と自然の狭間で。自分の歩く足元の下で。大自然の生命のドラマが繰り広げられていることがあまりにシュールで、でも何ともバンクーバーらしいハプニングなのでした。

よく見ると川の脇にはもう産卵が終わったか、別のサーモンが息絶えて横たわっていました。卵を狙う野鳥がジッと川底を睨んでいます。サーモンの死骸は、鳥や熊の食料となり、残りは土に還り森や川の養分となります。死骸によって肥えた土壌は、動植物だけでなく、孵化した稚魚たち、そして巡り巡って人間にも沢山の恵みを与えてくれます。

小さな支流の一角で、自然のエコシステムの一部を垣間見ることが出来た幸運。カナダの秋は何かとても大きな自然のゆりかごの中に私達がいることをそっと学習させてくれます。それを心の中に意識するだけで、毎日の生活がちょっと変化する気がします。生命の恵みに感謝する、そんな秋がカナダの秋です。

Colourful Explosion

バンクーバーは今、紅葉真っ盛り! 夏の突き抜けるような青と眩しい緑の世界も大好きだけど、秋が描くカラーパレットはそれ以上に好きかもしれません。「芸術は爆発だー!」と言わんばかりに、ビビッドに燃える色彩がバンクーバーの街を鮮やかに染め、弾け散ります。

カナダ東の赤一色のメープル街道とは別に、赤・緑・黄色・茶色と様々なカラーが激しく衝突し合いモザイクの様に色を重ね、それはそれは息を飲むほど美しいグラデーションを作ります。秋晴れの日はコスミックブルーの空を画用紙に、より一層グラフィカルに力強く色を放ってきます。

夕暮れ時のゴールデンアワーには太陽の傾いたオレンジ色の光に照らされ、キラキラ輝く黄金世界に。まるでマッチ棒に火が灯された様な鮮やかなオレンジ・黄色・赤のロマンチックでノスタルジーなコンビネーションプレイ。

芝生の青緑と落ち葉のコントラスト。

雨に濡れた落ち葉も粋。何か一枚の絵画の中に足を踏み入れている感覚に落ち入ります。行く先々で思わず足を止め魅入ってしまう自然のギャラリー。

美しいメープルにも種類が様々あって、手のひらサイズのメープルもあれば顔面サイズの特大クラスも!これがメープルの大木から風に舞いながらはらはらと散っては地面を埋め尽くし、落ち葉の海になって行く。

色を操るメイクアップアーティストとして、自然が放出してくる爆発的なカラーには圧倒的な感動を覚えます。言葉では到底表現できようもない美しいカラープレイ。こんな表現をしたい、こんなカラーを再現してみたいとインスピレーションの嵐に襲われるのです。

自然界にしか創造し得ないビューティーの祭典をただただ脱帽し魅入る秋。美しい色を魅せてくれてありがとう、まだ知らない色を教えてくれてありがとう。ため息が出る程のこの眩ゆい瞬間に身を委ね、季節の変わり目を過ごす時間がとてもとても大好きです。

 

Fall Camping

人はなぜキャンプに行くのでしょう。私がキャンプの楽しさを知ったのはここカナダに来てから。

10月になると冬季閉鎖されるキャンプ場も多い為、9月最後の貴重な晴れの週末を利用し、いざ秋キャンピングへ!バンクーバーから車で東へ1時間程のRolley Lake Provincial Parkへ行って来ました。

カナダではProvincial Park(州立公園)が管理するキャンプ場が数多く点在し、夏のハイシーズンともなれば毎日予約で一杯になります。キャンプ場によっては水洗トイレ、シャワー、ファイアーピットがあったりと施設も充実してますが、デジタルデトックスも兼ねて敢えてWIFIが飛んでいない場所を選んで出掛けます。1$35程で泊まれるキャンプ場がほとんどで、車ごと自分のスポットに停泊でき気軽にキャンピングが楽しめちゃう。気軽と言っても州立公園の中。大自然の中でお隣のキャンパーとも距離感&プライベート感も確保されていて開放感は抜群!9月に入ると予約なしで入れるキャンプ場も多く、早い者勝ちでスポットゲットというのもカナダらしい。

美しい大自然の中に溶け込むように設営されているキャンプ場に向かう途中、海原のように広がる鬱蒼とした針葉樹の中から幾つもの細いキャンプファイアーの煙がもくもく立ち上がっている光景を見る度に、人間の営みはこの地球上で小さな点にすぎないと思いが巡ります。同時に何か愛おしく、微笑んでしまう。

暗くなる前にテントを組み、寝床を整え、火種になりそうな松ぼっくりや小枝を周辺から拾って来て身支度完了。あとは自由気ままにトレイルを歩いたり水辺でゆっくり過ごしたり。ゆらりとした時間の流れを気の向くままに過ごすのは何より贅沢なリラクゼーション。Lake周辺は美しい自然の宝庫。秋らしく食べられそうな?きのこ群も彼方此方に生息していました。

夕日が山に沈んだらファイアーピットでディナーの支度に取り掛かります。コンロやグリルもあるけれどキャンプファイアーでじっくり調理するのがとにかく楽しい。カットした野菜をオリーブオイルで焼くだけで魔法をかけた様に格別な美味しさになるのはなぜだろう?

料理だけでなく、夜の闇を明るく暖かく照らしてくれるのもキャンプファイアー。パチパチと心地よく弾ける薪のBGMとシダーウッドの焦げる香りに包まれながら、人間の文明は火を起こし操ることから始まったんだよね、なんて普段考えない様な事に想いを巡らせながらぼ~っと見入ってしまう。

設営地を少し離れるとそこは一寸先もが漆黒の闇。日常では出会わないちょっと怖さを覚える暗黒世界に包まれる時、月の明るさや頭上に瞬く無数の星達の存在に美しさだけでなく、安堵感を覚えありがたく感じたりもする。その暗い静けさの中で物音がするとこの土地には人間だけでなく他の何か生き物が共存し、私達が「お邪魔してます」というある種の緊張感も芽生えてくる。Bear Area (熊地区)という看板があればなおさら。身の回りの匂いのするものや食やゴミの扱いには十分に気をつけないと大惨事になり兼ねない。

実はキャンピング中で私の一番好きな瞬間は夜明けにやって来る。静かな夜の終わりにいつ気づいたか、どこからともなく1匹の鳥がピピピッと鳴き声をあげるとそれにつられて一斉に森中の鳥が元気にモーニングソングを歌い始める。一体何10種類の鳥が住んでいるのだろうと驚くほど、多種多様な鳴き声が可愛らしいハーモニーを奏でる。この自然のシンフォニーとも言える音色をテントの寝袋の中で初めて聴いた時、「キャンプって素晴らしい!」と大きな感動を覚えた。

キャンピングは都会で不自由なく暮らす日常から抜け出し、ある意味私達をごくシンプルな原点に立ち返らせてくれる。まだほんのビギナーで何も語れはしないけど、そのアナログさと一瞬なれど自然の生態系の中にお邪魔して一緒に「営む」非日常的な体験に究極のキャンプの楽しさがある気がする。来年はどこにテントを張りに行こうと今からワクワク待ち遠しい。

Nature Colour Palette

バンクーバーは只今夏真っ盛り!例年に比べて記録的な熱波が続いています。(と言っても30度位)

私はカナダの自然から無限大のカラーのインスピレーションを貰うけど、特に夏のカラーは息を呑むほど美しい!!夏空は宇宙に吸い込まれていくかのような真っ青なコスミックブルー!手を仰げば宇宙に届きそう~~~なくらい空気が澄んでいる。フェリーで約1時間半離れたバンクーバー島にある Sproat Lakeで見たブルーは代表的な素晴らしさ。真っ青な天空を鏡のように映しだすとても静かな湖は、まるで水面下にある違う世界に誘うような幻想的な透明度と美しさ。。。

   

キャンプナイトに見た人工的な光のない暗黒のミッドナイトブルースカイは、真の闇の暗さと空の灯台とも言える月光の明るさを教えてくれる。バンクーバーから車で約2時間半の場所にあるJoffre Lakes Provincial Parkのトルコブルーの湖は、私の大好きなカナディアンブルー。絵の具でも流し込んだんじゃないの??と思えるほど、カナダの水はとにかく真っ青!!鮮やか過ぎる青さの理由は雪山にあり。カナダの大半の湖や川は氷河の雪解け水から作られているので、氷河が削った岩の成分からこの美しいブルーやグリーンのハーモニーを奏でているのです。

氷河湖だけに氷水のような冷たさだけど、美しさのあまり飛び込まずにはいられない!!気合いを入れてトルコブルーの世界に身を委ねると地球と一体化し身が清めらていく感じになる。

夏は眩しいグリーンカラーの季節でもある。トレイルを歩けばキラキラ眩しく輝くイエローグリーンの草原や幾層にも形成された奥深いグリーンバリエーションの渓谷。深呼吸するだけで目と心のメディテーション!

海にも緑は存在します。以前バンクーバー島のSookeのビーチを歩いていたら絨毯のようにびっしりと青緑の海藻群。波打ち際からまるで海に溶け込んでいくように生息しているグリーンの大群はまるで丁寧に織られた綺麗な織物のよう。因みに、大きめの海苔をピックしておにぎりに巻きつけて食べたら意外に美味しかった!!笑

サマータイムは日没が21時頃で、夕陽を眺めるには8時過ぎまで待っていないとなかなか沈んでくれない太陽。ぼ~~っと空のグラデーションの変化を追っていると、ゆったりとした地球の動き、天体の動きを心身で感じます。

太陽の周りに虹色の輪が現れる「HALO」=アロもよく見る天空ショーのひとつ。これは薄い雲が太陽にかかり雲の中の氷の粒が太陽の光に屈折してできる現象。天気予報的には「下り坂」のサインらしいけど、見るたびにラッキ~!と喜んでしまう。笑

大自然のカラーパレットは雄大で力強く、そして繊細で儚い。その圧倒的な自然にしか成せない色彩にいつも心を奪われる。カナダの夏はまだまだ私の知らない色を沢山魅せてくれます。