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A Journey of Pilgrimme – part 1

都市の中心からずっと遠く離れた場所。旅をしないと辿り着かないような人里離れた場所にレストランを作りたい。そんな想いで、ガリアノ島にあるFarm-to-Tableレストラン、Pilgrimme(ピルグリム)は誕生しました。2015年にオープンすると瞬く間に同年のカナダの新しいレストランTOP3に輝き、それ以降もベストレストラン100選の常連を貫いています。

ガリアノ島の旅行を決めたのも、Pilgrimmeを訪れてみたかったから。レストランで旅先を決めるなんて今までにない経験です。こんな小さな島でピークシーズンには予約は1ヶ月前に埋まり、カナダ全土から、世界各地から、人々が食べにやって来ます。1年の内オープンするのは約9ヶ月、週4日、毎晩25名限定に振舞われる料理とはどんなものだろうと、ずっと気になって仕方ありませんでした。

Pilgrimmeで食事をして貰うことはガリアノ島を体験して貰うこと」と、語るシェフのJesse McCleerly(ジェス・マックリーリー)は、「スターシェフ」と言う肩書きとは裏腹にゆるやかな川の流れのような佇まい。伝説のレストランNOMAでの見習を経て、カナダで自分のレストランを開く場所を探していた最中に、偶然ガリアノ島と巡り会ったそうです。半年以上置き去りになっていた元フレンチレストランを改装して、森の中にポツンと暖かい灯がともる居場所を作ったのです。

実際、Pilgrimmeの敷地に入ると何だか実家に帰って来たような、心がストンと落ち着く空気が漂っています。長い旅路の先にたどり着く山小屋の中は、モダンでいてどこかノスタルジック。「ただいま~。今日のご飯なに?」なんて会話があっても不思議でない居心地の良さがあります。

徹底的な地産地消のこだわり、環境へのインパクトも配慮しつつ、シェフ自ら海や森に繰り出して、その土地のその時の恵みを採取します。

カヤックを漕いで取った昆布、ビーチに生えている海草、森に生息するキノコや葉や枝も料理に加わり、それでもどうしても島で手に入らない野菜やお酒類を、フェリーに乗って近郊のビクトリアやバンクーバーから仕入れて来るそうです。

Tasting Menuと呼ばれる8コースディナーの品書は、使われた食材がごくシンプルに綴られているだけですが、実際に見て食すと、とっても複雑な素材のコンビネーションプレーに驚くばかり!

特に可愛らしい日替わりのSnacks(スターター)。ローストされたかぼちゃに発酵したローズの花びらとカリカリに焼いたワイルドライスが添えられていて、香り・食感・味ともに絶妙なコンビネーションで最初からノックアウト!スタッフも「まだ新しいメニューで私も食べたことないのよ」と羨ましそうに語ってくれました。

5感で楽しませてくれるメニューは島の風土と季節をテーブルに運んで来てくれます。

料理を引き立てるつけ添えのオイル、発酵も、麹も、全て自家製。焼き上げられた熱々のポテトと古代米のサワードウブレッドのお供はお手製の焦がしタマネギのバター。ホイップクリームのようにふわっふわっで、これだけでお酒が進んでしまう程でした!

一つ一つの調味料や脇役の全てがガリアノ島の「今日」の味を表現しています。

日が経っても、レストランで体感した味を一品ずつ覚えているとはなんて素敵なことでしょう。旅のアルバムの様に、一度食べたら忘れないスペシャルな思い出を作ってくれる、そんな場所です。

(後編へ続く)Photo by YUSHiiN

[IN ENGLISH]

Pilgrimme – A farm-to-table restaurant quietly found its place on Galiano Island in 2015.  A place where their patrons travel far from the city to experience all of what Galiano has to offer from its land and surrounding waters.  It became one of Canada’s top 3 restaurants in its opening year and has continued to rank highly as one of the best restaurants to dine in Canada.

I wanted to make my way to Pilgrimme so I carefully planned my travel to Galiano Island with the secluded destination in sight.  It was genuinely a unique experience to have this restaurant as the reason for my travel.  The restaurant operates 9 months out of the year.  Reservations have to be made at least a month in advance during the peak season as people from all over Canada and around the world come to taste the culinary magic.  Only 25 lucky patrons get to dine on each of the 4 nights per week during the open months.

I had the pleasure to meet the owner and chef.  “To eat at Pilgrimme is to experience what Galiano Island is,” says chef Jesse McCleerly, whose presence is like a gentle flowing river.  His demeanor was a beautiful contrast to what I would have expected from his title of Canada’s “star chef”.  After an apprenticeship at the legendary NOMA restaurant in Denmark, McCleerly jumped on the chance of a vacant property on Galiano Island.  He transformed the former French restaurant into a warm and inviting place where people can come to be nourished by the surrounding landscape.  Pilgrimme stood softly lit in the evening forest; the glow from the restaurant enticed the way for its visitors.

When I arrived at Pilgrimme, there was a feeling of calm in the air as if I had come back home after a little journey. I basked in a nostalgic feeling when I stepped foot in the forest cabin. The place was so inviting that I found myself wanting to say “I am home!  What’s for dinner tonight?”

McCleerly’s thoughtful menu paid close attention to local ingredients with dedication to sustainable environmental practices.  Menu items were dotted with blessings of the season’s abundance, including items that were foraged by McCleerly, himself: seaweed collected from the island’s beaches, kelp picked while on a kayak out in the ocean, mushrooms, leaves and branches harvested from the old growth forest.  Other ingredients and alcohol that aren’t available on the island are purchased during his weekly ferry outings to nearby Victoria and Vancouver.

I enjoyed the eight course tasting menu.  Each course had a simple list of ingredients with a short description.  I was surprised and amazed by the combination of complex flavours and textures offered by each dish.  The winter squash with fermented rose petals and roasted wild rice puffs was particularly amusing as a starter.  I can still remember the exquisite aroma and texture that set up the beginning of my dining experience.  Menu items listed with deceptively “simple” ingredients like the potato and heritage grain sourdough with fresh butter and burnt onion were full of flavour and heartiness.  This particular dish, with a white wine pairing, left a lasting smile of tranquility for the rest of the evening.  The tasting menu entertained all my five senses, or shall I say, the Island did.  All of what the season had to offer from the island was on the table in front of me.  McCleerly’s time consuming work of making infused oils, fermenting ingredients and crafting koji created the depth and complexity in all of the offerings.  Every single detail expressed the taste of what was Galliano’s “today”.

I look back to this experience at Pilgrimme with fondness.  Every dish encapsulated Galliano Island in the form of an edible curiosity.  In many ways it was an unrepeatable experience.  All the moving parts came together and culminated on to my table that one evening: the island, the ingredients, the chef, the farmers, the staff and the slice of time.  I will never forget how utterly fortunate I was to experience Pilgrimme. (Continued in part 2)

English Translation by Anna Sano

Sustainable Dining – part 2

「ソトコト」1月号に、バンクーバーのサステイナブルレストラン、『Forage』の後編を執筆させて頂きました。クリスマスや年末年始のスペシャルなイベントに、または大切な人や大好きな仲間と集う日常に、地元人だけでなくバンクーバーを初めて訪れる方にも、是非『Forage』の心温まる食とストーリーを経験してもらいたいです。

『Forage』では、レストランの内装にも徹底した地元愛とサステイナビリティーを追求している。店内の床や天井には地元産または市森林管理協議会認証の木材を利用し、壁には環境に優しい植物油インキで染められた100パーセント・ウールのフエルトが貼られ、落ち着いた温かい空間を演出するだけでなく、すべて土に還る優しい素材に囲まながらの食事を楽しめる工夫がされている。

「地消地産の大きな利点は、生産者とほぼ毎日顔を合わせることにより、お互いの関係をより親密でクリエイティブにできること」と話すシェフ、ウェルバート。彼は地元旅行誌で、2018年のバンクーバーでトップシェフ5人の1人にも選ばれている。

「なぜここで口にするトマトが普段スーパーで買うトマトより何倍もおいしく感じるのか」。『Forage』は、その背景となるストーリーについて、生産者の変わりに、レストランを通して社会とコネクトさせるといった大切な役割を担っているという。

持続可能な食をテーマとしたコミュニティー活動にも積極的だ。レストランで提供する水の売り上げは、1969年から活動しているチェカムスセンターという地元の環境教育センターに寄付され、毎年600~700人の子どもたちを対象とした生態系を意識した野外教育実習に役立てられている。また地元の小学生向けには、自ら栽培したものを調理する楽しさを知ってもらう食育プログラムをボランティアで取り組んでいる。

「『Forage』が今やっていることは、すべて未来の子どもたちのため。彼らに何を残せるのかを一番のテーマとして取り組んでいます」と、真剣な眼差しで語るシェフ。フォレッジで一皿だけオーダーするとしたら何をお薦めするか聞いてみると、「やっぱりバイソンかな」と答えた直後に、「いや、バイソンの付け合せのローズマリーポテト!ポテトは誰でも気軽に食べられて、何よりシンプルでおいしい。心を温める料理だね。」と微笑んだ。この言葉に『Forage』の優しい真髄が見えた気がする。

写真: 佐藤裕信 ・ David Nunuk (チャカムスセンター)

 

 

Sustainable Dining- part 1

「We are what we eat」=「あなたが食べたものがあなた自身である」の言葉を常に意識しながら健康的な食習慣を心掛けていますが、その代名詞とも言えるレストランがここバンクーバーにある。

地消地産と食のサステイナビリティーにとことんこだわり、地球の未来をも見据えた素晴らしいレストラン「Forage」。地元バンクーバーの新鮮で旬な食材を丸ごと楽しめるだけでなく、食について、環境について、考えさせてくれる貴重な場所でもある。

「スローライフ」、「ソーシャル」、「ローカル」などをキーテーマに掲げる日本のソーシャル・エコマガジン「ソトコト」12月号にてForageを特集させて頂きました。その記事(前編)をJOURNALでもご紹介したいと思います。

『バンクーバーの中心、観光客で最も賑わうロブソン通りにあるリステル・ホテル内に6年前にオープンしたレストラン、「Forage(フォレッジ)」。ここは観光客だけでなく地元人からこよなく愛され、サステイナビリティーと地消地産のコンセプトで自然の滋味あふれるバンクーバー料理を提供してくれる。

フォレッジとは「自分で採取したものを食べる」と言う意味。その言葉通りシェフのウェルバート・チョイが自ら仕入れる食材へのこだわりが旬毎頻繁に変わるメニューにしっかり反映されている。大地の恵み(肉)、海の恵み(魚)、水と太陽の恵み(野菜)と題するメニューリストにはバンクーバーの食のロードマップが凝縮されている。オーガニック認証の有無に拘らず、地球に優しく持続可能な農法を営む農家と採食家(Forager)の収穫、そしてバンクーバー水族館発足の「オーシャンワイズ」という生態系に配慮した漁法をもとに漁獲された、生命溢れる地元各地から集まった食材は美しい料理となって形を変える。

二酸化炭素排出量が多い牛肉は使わず、代わりに野生に近い状態で獲れる脂肪分も低く健康的なバイソン肉を扱う。キッチンでは一頭買いした豚からハムやプロシュート作りも行い、骨はスープにするなど時間も手間も掛かるが食材を無駄なく頂くホールフードの意識も高い。果物も輸入物は一切扱わず、地元で収穫される新鮮で旬なものからデザートが作られる。ワインもビールも全て地元産。近年では地元の酒造所とコラボレーションしたオリジナルウィスキーも作っている。

生産者からキッチンへ、キッチンからお客様へと繋ぐエクスペディター(Expediter)と呼ばれる担当者が一品一品丁寧に生産者の顔が見える料理と食の深い知識をテーブルに提供し、ダイニング時間を一層盛り上げてくれる。そんなこだわりは内装にも……』

後編は「ソトコト」1月号へと続きます。Forageのコミュニティー活動や環境への取り組み、シェフ・ウェルバートとの食についての会話も綴らせて頂きます。

お楽しみに!

写真:佐藤裕信