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Circle of Life 2019 – Fall in Cheakamus

バンクーバーから海岸沿いを70km以上北上した場所に、Cheakamus Center (チェカムスセンター)はあります。昔は先住民であるSquamish Nation(スコーミッシュ族)が暮らした土地で、165ヘクタールもの広大な自然をノースバンクーバー教育委員会が所有し、子供から大人まで参加できる様々な自然&生態系教育プログラムを提供している貴重な場所です。

チェカムスは「行く」より「呼ばれる」と言った方が何だかしっくり来ます。実際、チェカムスの森は普通の森とはちょっと違って精霊が宿っている、そんな雰囲気が漂っています。

太古のままの原生林は根元から枝の先までびっしり苔に蒸され、

ふかふかな絨毯の様な柔らかい土とサーモンが遡上してくる清流があり、秘密の基地みたいな森全体が何か語りかけてくる、そんな魅力があるのです。

10月初め、2年に1度遡上してくるピンクサーモンがチェカムス川を賑わせている季節に、スコーミッシュ族のメディスンマン、Henry Williams(ヘンリー・ウィリアムズ)さんから12,000年以上も前から伝わる薬草について学ぶワークショップがありました。Devil`s Club(デビルズクラブ)と呼ばれるその薬草は、名前の通り強い毒性を持ち、釘の様なトゲで枝全体が覆われています。

そんな危険な外皮を剥ぐと、青々しい香りと共に鮮やかな緑色をした内皮が顔を出します。

何故かこの青い皮だけに様々な効能があるそうで、お茶、ティンクチャー、バーム等にして、主に痛みを伴う病気や怪我、そして炎症などに効果があるそうです。北米ではアラスカ人参とも知られています。

現代社会に生きて来たヘンリーさん。奥さんの持病がきっかけで、忘れかけていた先祖の知恵が詰まった薬草療法の道に再び戻って来たそうです。森からの恩恵は偉大である。そんな語らいの中で、「デビルズクラブはマザー(母体)を残して刈って下さいね。また成長させないといけないからね。」と教えるヘンリーさんの柔らかい言葉に、先住民と自然界はお互いを敬い、とてもバランスのとれた関係性であることを垣間見ることが出来ました。

次にチェカムスに呼ばれたのは、1ヶ月後。森とサーモンについて学びに行きました。

前回のピンクサーモンに代わりシロサケが川に帰って来ていて、それを狙って西海岸中の白頭鷲がこの周辺に大集合!いつもは「見れてラッキー!」な鷲が、頭上を見渡すとあちこち優雅に秋空を仰ぐ姿がありました。

「わぁ!サーモンの匂いがする~!」と、一緒に参加していた地元の小学生くらいの女の子。森の中で学習しているとサーモンの香りが自然と分かるんだな、と感心してしまいました。チェカムスの森は10月から1月までの間、サーモンの香りが漂います。それは産卵を終えたサーモンや餌として食べられたサーモンの死骸が川岸に打ち上げられているからです。

死骸と言うより綺麗に食べられたサーモンは、まるで化石みたいに骨だけになっています。何て無駄なく食べるのだろう!!と思わず感動する程。

更に、この時期に転がっている骨のほとんどは先月勢い良く泳いでいたピンクサーモンと聞いてびっくり!死を迎えた跡のすぐ横で、別の命の群れが続き懸命に泳いでいる。。。生と死をチェカムス川の岸辺でリアルに見せつけられました。

でも悲しい死ではありません。サーモンの残骸は、川や海の栄養分となります。サーモンを食べた鳥や動物のフンは、森を豊かにします。白頭鷲は高い木の枝で優雅に食事をするのがお好みらしく、木の上でサーモンを食い尽くした後、ポトンと下に落とす事で土を育てます。

こうして川や海、そして森へと散らばったサーモンは自然界を豊かにしながら命のバトンを繋いで行くのだ。。。もちろんその昔、先住民もサーモンのお陰で冬が越せたそうです。生命の輪がリアルタイムで繰り広げられるチェカムスの森は、人間が忘れかけている大事なレッスンを教えてくれます。

自然の営みを今後もずっと紡いで行く為に、人間は何が出来るだろう?そんな問いかけをチェカムスの森は私達にそっと提示しているのかも知れません。都市に帰れば、車が走り、ネオンが瞬き、デジタル社会の真っ只中にいる生活だけど、ほんの少し足を伸ばしたその先には太古のリズムが昔から変わることなく繰り返されている。自然界では当たり前の生命の輪を目の当たりにすると、何故か背筋がシャンとする。その感覚を再確認するのがとても大切な気がして、またチェカムスの森に呼ばれたいと思うのです。

Photo by YUSHiiN

A circle of life

食欲の秋。芸術の秋。スポーツの秋。と、秋には様々な形容詞が似合いますが、カナダの秋をひと言で例えるなら、やはり「恵みの秋」ではないでしょうか。

2018年はサーモン遡上の「Dominant Run」と呼ばれ、4年に1度の産卵のピークイヤーです。BC州にはサーモンが帰ってくる川が約2000本あると言われ、いつか見てみたいと思いつつも日々の色々に追われてなかなか遠出できず、時は既に11月。。。

もう遅いだろうと思いつつ11月も第2週になったある日、家から車で10分程で最も気軽にサーモンを見学できるCapilano Salmon Hatchery(キャピラノ・サーモンハッチェリー) と呼ばれる人口孵化場にトレイル歩きがてら寄ってみることに。すると驚くことに、ガラス越しではあるけれどSalmon Ladder(魚梯)を懸命に昇るサーモンの姿がまだありました!

ここに帰ってくるサーモン達は孵化場で産まれたサーモンです。サーモンは自分の生まれた川の匂いや体内の磁気コンパスなどの仕組みを巧みに使い、産卵期に必ず故郷に帰ってきます。偶然学習用に斬られたサーモンを運んでいる所に遭遇し見せてもらうと、お腹からギッシリ詰まったオレンジ色の宝石の様な卵が溢れ出し、何かとても神聖で、長い旅路の末にこんな姿になってしまったのかとやるせない思いにもなります。けれど、サーモンを食卓で美味しく頂いている日常とも重なり、いつも当たり前に頂く「食」への感謝の気持ちも一層に湧いてきます。

サーモンは自分の運命がどうなろうと、途中で釣り上げられたり、動物や鳥の餌になったり、故郷が孵化場であれ自然の川床であれ、ただただ産卵をするために命を張って必死に帰って来る。とても神秘的な行動と同時に、自分達の決められたライフサイクルにとても忠実な生き物ではないでしょうか。

サーモンには「海の顔」と「産卵期の顔」があり、遡上をする時になるとギョッとする程顔が別モノに変わります。険しい川上りをするための自然の適応術だけど、そこには「よしっ!!行くぞっっ!!」と最後の命を燃やすサーモンの意気込みが伝わってくる様です。私も沢山の顔に触れる仕事の中で「その人の生き様や内面が顔にでる」と常々感じますが、サーモンの産卵期の顔はそれを象徴している気がします。

孵化場のサーモンを見学出来ただけでも十分満足していたら、その後に奇跡的な巡り合わせが待ていました。孵化場を後にし、川沿いのトレイルを歩きながら下っていた時でした。ふと渡りかけた橋から川を覗いてみると、なんと自分の足元の真下に5匹ほどのサーモンの群がゆらゆらと流れに逆らいながら停滞していました。天然のサーモンの遡上です!少しの間興奮しながら眺めていると、ひときわ体の大きい雌が、砂を撫でる様に何か居心地悪そうに体を横に動かしているのです。体勢をまた整え近くにいた雄が並んだと思ったその瞬間、その周りで泳いだいた他の雌も含めて我先にと言わんばかりにいっせいに放精したのです!!(動画の一番最後のシーン)

サーモンの遡上ばかりでなく産卵の瞬間まで遭遇してしまったことに、もう大興奮!!私には感動的な初めての光景ですが、地元人は一緒に下を見ながら「あ、まだ居るね」とか「バンクーバーへようこそ!」なんて、いつもと変わらぬ表情で通り過ぎて行きます。こんな日常的な散歩道の真ん中で。都市と自然の狭間で。自分の歩く足元の下で。大自然の生命のドラマが繰り広げられていることがあまりにシュールで、でも何ともバンクーバーらしいハプニングなのでした。

よく見ると川の脇にはもう産卵が終わったか、別のサーモンが息絶えて横たわっていました。卵を狙う野鳥がジッと川底を睨んでいます。サーモンの死骸は、鳥や熊の食料となり、残りは土に還り森や川の養分となります。死骸によって肥えた土壌は、動植物だけでなく、孵化した稚魚たち、そして巡り巡って人間にも沢山の恵みを与えてくれます。

小さな支流の一角で、自然のエコシステムの一部を垣間見ることが出来た幸運。カナダの秋は何かとても大きな自然のゆりかごの中に私達がいることをそっと学習させてくれます。それを心の中に意識するだけで、毎日の生活がちょっと変化する気がします。生命の恵みに感謝する、そんな秋がカナダの秋です。

Colourful Explosion

バンクーバーは今、紅葉真っ盛り! 夏の突き抜けるような青と眩しい緑の世界も大好きだけど、秋が描くカラーパレットはそれ以上に好きかもしれません。「芸術は爆発だー!」と言わんばかりに、ビビッドに燃える色彩がバンクーバーの街を鮮やかに染め、弾け散ります。

カナダ東の赤一色のメープル街道とは別に、赤・緑・黄色・茶色と様々なカラーが激しく衝突し合いモザイクの様に色を重ね、それはそれは息を飲むほど美しいグラデーションを作ります。秋晴れの日はコスミックブルーの空を画用紙に、より一層グラフィカルに力強く色を放ってきます。

夕暮れ時のゴールデンアワーには太陽の傾いたオレンジ色の光に照らされ、キラキラ輝く黄金世界に。まるでマッチ棒に火が灯された様な鮮やかなオレンジ・黄色・赤のロマンチックでノスタルジーなコンビネーションプレイ。

芝生の青緑と落ち葉のコントラスト。

雨に濡れた落ち葉も粋。何か一枚の絵画の中に足を踏み入れている感覚に落ち入ります。行く先々で思わず足を止め魅入ってしまう自然のギャラリー。

美しいメープルにも種類が様々あって、手のひらサイズのメープルもあれば顔面サイズの特大クラスも!これがメープルの大木から風に舞いながらはらはらと散っては地面を埋め尽くし、落ち葉の海になって行く。

色を操るメイクアップアーティストとして、自然が放出してくる爆発的なカラーには圧倒的な感動を覚えます。言葉では到底表現できようもない美しいカラープレイ。こんな表現をしたい、こんなカラーを再現してみたいとインスピレーションの嵐に襲われるのです。

自然界にしか創造し得ないビューティーの祭典をただただ脱帽し魅入る秋。美しい色を魅せてくれてありがとう、まだ知らない色を教えてくれてありがとう。ため息が出る程のこの眩ゆい瞬間に身を委ね、季節の変わり目を過ごす時間がとてもとても大好きです。

 

Fall Camping

人はなぜキャンプに行くのでしょう。私がキャンプの楽しさを知ったのはここカナダに来てから。

10月になると冬季閉鎖されるキャンプ場も多い為、9月最後の貴重な晴れの週末を利用し、いざ秋キャンピングへ!バンクーバーから車で東へ1時間程のRolley Lake Provincial Parkへ行って来ました。

カナダではProvincial Park(州立公園)が管理するキャンプ場が数多く点在し、夏のハイシーズンともなれば毎日予約で一杯になります。キャンプ場によっては水洗トイレ、シャワー、ファイアーピットがあったりと施設も充実してますが、デジタルデトックスも兼ねて敢えてWIFIが飛んでいない場所を選んで出掛けます。1$35程で泊まれるキャンプ場がほとんどで、車ごと自分のスポットに停泊でき気軽にキャンピングが楽しめちゃう。気軽と言っても州立公園の中。大自然の中でお隣のキャンパーとも距離感&プライベート感も確保されていて開放感は抜群!9月に入ると予約なしで入れるキャンプ場も多く、早い者勝ちでスポットゲットというのもカナダらしい。

美しい大自然の中に溶け込むように設営されているキャンプ場に向かう途中、海原のように広がる鬱蒼とした針葉樹の中から幾つもの細いキャンプファイアーの煙がもくもく立ち上がっている光景を見る度に、人間の営みはこの地球上で小さな点にすぎないと思いが巡ります。同時に何か愛おしく、微笑んでしまう。

暗くなる前にテントを組み、寝床を整え、火種になりそうな松ぼっくりや小枝を周辺から拾って来て身支度完了。あとは自由気ままにトレイルを歩いたり水辺でゆっくり過ごしたり。ゆらりとした時間の流れを気の向くままに過ごすのは何より贅沢なリラクゼーション。Lake周辺は美しい自然の宝庫。秋らしく食べられそうな?きのこ群も彼方此方に生息していました。

夕日が山に沈んだらファイアーピットでディナーの支度に取り掛かります。コンロやグリルもあるけれどキャンプファイアーでじっくり調理するのがとにかく楽しい。カットした野菜をオリーブオイルで焼くだけで魔法をかけた様に格別な美味しさになるのはなぜだろう?

料理だけでなく、夜の闇を明るく暖かく照らしてくれるのもキャンプファイアー。パチパチと心地よく弾ける薪のBGMとシダーウッドの焦げる香りに包まれながら、人間の文明は火を起こし操ることから始まったんだよね、なんて普段考えない様な事に想いを巡らせながらぼ~っと見入ってしまう。

設営地を少し離れるとそこは一寸先もが漆黒の闇。日常では出会わないちょっと怖さを覚える暗黒世界に包まれる時、月の明るさや頭上に瞬く無数の星達の存在に美しさだけでなく、安堵感を覚えありがたく感じたりもする。その暗い静けさの中で物音がするとこの土地には人間だけでなく他の何か生き物が共存し、私達が「お邪魔してます」というある種の緊張感も芽生えてくる。Bear Area (熊地区)という看板があればなおさら。身の回りの匂いのするものや食やゴミの扱いには十分に気をつけないと大惨事になり兼ねない。

実はキャンピング中で私の一番好きな瞬間は夜明けにやって来る。静かな夜の終わりにいつ気づいたか、どこからともなく1匹の鳥がピピピッと鳴き声をあげるとそれにつられて一斉に森中の鳥が元気にモーニングソングを歌い始める。一体何10種類の鳥が住んでいるのだろうと驚くほど、多種多様な鳴き声が可愛らしいハーモニーを奏でる。この自然のシンフォニーとも言える音色をテントの寝袋の中で初めて聴いた時、「キャンプって素晴らしい!」と大きな感動を覚えた。

キャンピングは都会で不自由なく暮らす日常から抜け出し、ある意味私達をごくシンプルな原点に立ち返らせてくれる。まだほんのビギナーで何も語れはしないけど、そのアナログさと一瞬なれど自然の生態系の中にお邪魔して一緒に「営む」非日常的な体験に究極のキャンプの楽しさがある気がする。来年はどこにテントを張りに行こうと今からワクワク待ち遠しい。