月別: 2021年3月

Finding Beauty

メイクアップアーティストという仕事は、一般的に華やかに思われがちですが、私は縁の下の力持ち的職業だと思っています。メイクを施す相手が誰であれ個人の魅力を最大限に引き出して、美しく輝かせるお手伝いをすること。外見だけでなく内面からも滲み出てくる美しさ、その場の空気や、仕草、会話から感じ取ったものを一緒にキャッチしながら総体的な美を創り出せた時、喜びに近い達成感があります。華やかな面を陰ながらサポートする、そんな仕事に情熱を抱きます。

コロナ禍で発足したローカルサポートVOICEにも、最近それに似た情熱や喜びを感じています。昨年3月20日にBC州全てのレストラン営業の閉鎖が発表され、5月6日の規制緩和まで約1ヶ月半続いたロックダウン。誰も経験したことのない厳しい状況下で、自分達のクリエティビティーをどう活かせるのか?そんな1つの問いからVOICEは始まりました。カメラマンの夫が写真を撮り、私が取材し記事を書く。以前から執筆は好きでオンライン・ジャーナルや雑誌などの執筆活動は多少していましたが、日本語と英語で書くのは大違い!母国語でない英文で長文を書き下ろす事は、今でも大変な労力と時間が掛かる作業です。しかもネイティブのカナダ人が読むのだから、更なるプレッシャーが掛かります。でも、道具がメイクであれ言葉であれ、個人を掘り下げてその人の美しい部分を引き出す作業は、とてもやりがいがあります。

試行錯誤を繰り返し、ご縁がご縁を繋ぎ、VOICEはこの1年で100人以上のローカルビジネスを取材して来ました。そして、今年からSNSだけでなく、オンラインメディアとして新しいスタートを切りました。VOICEは、食レポの様にどのメニューが美味しいとか、レストランや商品の味のうんちくはあまり語りません。それよりも、オーナーや生産者自らが歩んで来たそれぞれの旅路を私達のレンズを通しながらVOICE(声)としてお届けしています。企業したきっかけや何を大切に生きているのか、食や社会への今後のビジョンなど、メニューや商品には書かれていないけれど、大きな軸となっている裏の素顔と情熱に光を当てるよう努めています。

 

仲間も増え、友情も沢山芽生えました。私は紅茶が大好きで、地元のJusTea(ジャスティー)を取材した時は、前日からワクワクが止まりませんでした。ジャスティーは、父と息子のポールが始めたソーシャル・ビジネス(社会的企業)で、ケニアに自社紅茶農園を持ち茶葉を栽培し、直輸入する事でケニア人農家の経済的自立と地位向上を目指しています。ケニアは世界一の紅茶の生産国ですが、それを知る人はあまりいません。何故ならケニアの茶葉は大企業に安価で買い占められ、ティーバックとして大量生産の道を辿るので生産地が表記される事がないのです。この様に茶葉を細かく潰して詰め込んだ安価のティーバッグの事を紅茶業界では「Dust Tea」(埃のお茶)と呼ぶそうです。

ジャスティーの茶葉はティーバックではなく、全てホールリーフ(茶葉そのままの形を残したもの)です。ブレンドされるその他の原料も全てフェアトレードです。お茶の缶には可愛らしいオリーブの木で作られた計量スプーンが付属されていて、このスプーンもコロナ禍で観光業が大打撃を受けたケニアの工芸職人の雇用に貢献しています。お茶ソムリエの資格を持つポールですが、起業前はBean Around the Worldと言う西海岸全域にある大型コーヒーショップで働いていた面白い経歴の持ち主でもあります。

私も数年前に仕事でケニアに行った事があり、一気に意気投合。4月22日(アースデー)までにジャスティー・オンラインショップで買い物をする際に「VOICE10」のクーポンコードを入力すると、全ての商品が10%引きになります。更に売上げの10%をVOICEと私達が支援する地元の環境保護団体に充てると言う太っ腹企画を提案をしてくれました!ジャスティーのお茶を来客に淹れると、必ず皆「美味しい!どこの紅茶?」と聞いて来ます。私はジャスティーを飲む度に、ポールの熱弁とケニアのロケの思い出が頭を駆け巡ります。

ジャスティーの他に、East Van Jam(イースト・バン・ジャム)というローカルジャムも3月末までVOICEとチャリティー企画を組んで貰っているブランドです。イースト・バン・ジャムの創設者のナタリーは2児の母親であり、個人事業主です。

一般のジャムはフルーツと砂糖の比率が1対1であるのに対して、ナタリーのジャムは4:1と圧倒的にフルーツが優勢。しかも、使用するフルーツは、ストロべリー、ブルーベリー、ネクタリン、ラズベリー等、全てBC州産のフルーツを扱っています。ノーズピアスをして個性的な彼女に相応しく、各ジャムのフレーバーに由来するユニークなキャラクターが瓶に描かれ、フレーバーの説明ではなくそのキャラクターの性格が記されていると言う、ちょっとユニークなブランドです。イースト・バン・ジャムは、ジャムというよりフルーツの塊を食べている様なそんなフレッシュさがあります。

またナタリーも慈善活動に熱心な女性で、売上げの一部をアーティスト基金や食料支援基金などに積極的に寄付しています。「いくら支援してもしきれない社会問題がまだまだ沢山ある。今年は沢山ジャムを作ってどの年よりも沢山寄付に充てる」と、涙ぐみながら話す彼女に感銘を受けました。

因みに、イースト・バン・ジャムの「Serene Nectarine」(セリーン・ネクタリン)という名の「独立して自給自足力があり、親切心と愛を常に持つ」ネクタリン・ジャムをオンラインショップで購入すると、20%がVOICEとローカル環境保護団体に寄付されます。このジャムはチェダーチーズとクラッカーと相性抜群なんだとか。

気がつけば、自分達のローカルサポートはお互いをサポートする関係になって来ています。互いに支え合い磨き合って、美しい光を世に放つことが出来たらと、そんな想いを胸にいつもVOICEの取材に出掛けます。美を表現する形は何であれ、そこに陰ながら貢献出来る事がやはり嬉しい毎日です。

VOICEはこちらより読みに来てください。週2位のペースでバンクーバーの美しいVOICEをアップしています➡️ https://yushiin.com/voice/

Photos by YUSHiiN LABO

Hope and Cheer

柔らかい日差しが半年ぶりに戻って来て、春の訪れを感じる季節になりました。バンクーバーで春を感じる最初のサインは、クロッカスの群衆とスノードロップでしょう。クロッカスの花言葉は「青春の喜び」「元気」、そしてスノードロップの花言葉は「希望」「慰め」。どちらも春めいてくる時間の中で、心が浮き立ってくるようなそんな響きがします。

カナダの春は、生命力の強さを教えてくれます。まだ背後の山々には雪景色が広がり、ピンと張り詰めた冷たい空気が吹く中で、新しい命が芽吹く瞬間が私は大好きです。

特にクロッカスの群生はお見事。誰かが袋一杯の種を溢してしまったかと思うほど、木の根元や日当たりの良い芝生の上にお花畑のように咲き乱れます。一斉に太陽の方向を向いて、小ぶりで鮮やかな花を咲かせる力強いクロッカスの姿が、長い冬の終わりと共にやって来る春の時間を知らせてくれます。

クロッカスに続いて、霜や凍結にも負けずに勢いよく芽吹いて来る命はこの頃どんどん加速します。家の外のプランターに忘れたように植えてあったチューリップの球根がニョキニョキ芽を出始めました。

冬に植え付けたガーリックの芽も日々元気に伸びて行きます。今年の夏は初めて自らガーリックの収穫が出来るかな、と今からわくわくしています。

芽吹くのは種や球根だけではありません。黄色い枝を茂らせるサボテンのような形をした不思議な樹木が近所の公園に存在するのですが、毎年冬も終盤になると根元の大きな幹だけを残して市の役員が容赦なく剪定します。今年は偶然その剪定日に遭遇して、公園に大量に切り落とされた黄色い枝が無作法に放置されていました。しばらく観察していると、おばさんがいそいそとやって来て枝を拾い始めました。思わず、「その枝どうするんですか?」と尋ねてみると、「この枝は強くて丈夫で、ガーデニングに使うの。トマトや胡瓜などの支柱に最適よ。しかも、土に差し込んで置くと可愛らしい緑の葉っぱが芽吹くのよ!」と詳しく教えてくれました。市の方も、近隣の住人がガーデニング等にこの枝を再利用するのを知っているそうで、切り落とした枝を「ご自由にどうぞ」と言わんばかりに放置しています。おばさんと立ち話をしている最中に、どこから噂を聞きつけたか、人々が続々やって来て枝を拾い始めていました。

私も真似して数本持ち帰り水挿ししておくと、数週間後に緑色の小さな葉っぱがあちらこちらから顔を出し始めて、とっても可愛い!今ではちょっとした室内のミニオアシスになっています。

とある海岸沿いに生息していたローズマリーの生命力も強いです。ちょっと摘んで持ち帰り生けておくと、可愛らしいラベンダー色の花を咲かせてくれました。ローズマリーは簡単に挿木も出来て比較的簡単に増やすことが出来ます。

一見止まった景色の中に、新しい小さなパワーが宿っている。生命とは短く、はかなく、けれど強く根性あるものなのではないでしょうか。「希望」と「元気」と言う言葉がぴったりの春になって欲しいと今年はより一層強く思います。