Happy Gardening

今年のバンクーバーの夏は例年より涼しいスタートでしたが、ガーデニングは日々熱く盛り上がっています。夏になると自ら野菜や草花を育てるカナダ人は沢山います。そして私も、今年の春、ようやく空きを待っていたコミュニティーガーデンの一画が与えられたのです。

コミュニティーガーデンとは地域の未利用地を使って、その地域の人たちが共同で花や野菜、ハーブなどの植物を育てるオープンスペースのことです。それぞれスペースを与えられ、各自、自由に愛着を持って、いろいろな植物を育てています。とにかく人気があり、私のコミュニティーでは現在も100人ほどの人がウェイトリストに登録しているそうです。

コミュニティーガーデンのメンバーは定期的に勢揃いして顔合わせすると同時に、皆で草むしりや道具のメインテナンスをする集まりがあります。私の所属するコミュニティーガーデンは全部で50区画ほどあり、新入りもいれば、もう10年以上コミュニティーガーデンで栽培しているベテランもいます。コミュニティーガーデンの良い点は、それぞれのガーデニングスキルを共有できる事。そして、「Shack」と呼ばれる共同納屋にガーデニングに必要な全ての道具が揃っているのです。なので、ガーデンに行く際は、気軽に手ぶらで行くことが出来ます。バケーションなどで長期間不在になる時は、「WATER ME PLEASE」(お水を与えてください)という看板を立てておけば、他のメンバーが代わりに水やりをしてくれます。自分が持っている植物を分けたり貰ったり、エクスチェンジもあります。コミュニティーガーデンでは、それぞれのスペースを楽しみつつ、皆で集合体の「庭」を作っている、そんな印象です。

自分の区画で土作りをしていると、早速メンバーの1人がやってきて、「これを植えておくと蜂が寄ってくるよ」とお花の苗を譲ってくれました。害虫を食べてくれる鳥を誘う水飲み台を設置している人もいます。私は全て種から育てる派で、種まきの時期は何を撒こうか随分悩んでしまいました。結果、水菜、小松菜、きゅうり、枝豆など日本のお野菜を中心に、ケール、ラディッシュ、パセリ、ネギ、トマト、と花の種を数種類。畳2畳分くらいのスペースを最大限に活用しました。お陰で芽が出てきた時に、「何の芽だっけ?」と分からなくなることも…。「ちょっと多く蒔き過ぎたかしら?」と話していると、「何が生えてくるか分からないのもミステリーで楽しいじゃない!」とカナダ人らしい前向きなアドバイスをもらったり。

ちなみに植物の種は、「Seed Pod」と呼ばれる種を自主的に無料で配布している場所があって、そこにもらいに行きます。ほとんどのものがオーガニック、もしく近所の人達の庭で採取した種を集めたもので、安心安全です。

種だけでなく、苗も自由にもらえる機会も沢山あります。近所を散歩をしているとよく「トマトの苗お好きにどうぞ」と、庭の前に置いてある家があったりします。余分に育ってしまった苗を譲るこのような行為は、バンクーバーではよく見かける風景です。地域のオンラインガーデンコミュニティーに参加すると、何か困った時は、そこに質問を投げかることもできます。私がアブラムシ対策の質問をしたら、数時間で20件以上のフィードバックを貰い、皆熱心に問題解決のアドバイスをくれたのには驚きました。

ガーデニングコミュニティーでは土作り、肥料作り、種や苗の交換、知識の交換…、全て何の代償を払うことなく、植物を育てるという共通の目的に基づき、互いに助け合っています。「食」を作ると言うのは本来、共同で働き分け与える、とても当たり前で自由なものなのかも知れません。

コミュニティーガーデンで畑仕事をしていると、通り過ぎの人やメンバーの人から挨拶がてら「Happy Gardening!」とよく声をかけられます。共同の「庭」から、私は想像以上のハピネスを受け取っている気がします。