Mindful Face 8 – Be Conscious of the Unconscious

無意識を意識する作業は、顔面神経麻痺を経験した人であれば誰もが意識する大事なトレーニングの一部ではないでしょうか。日頃気にも留めない小さなものが、顔の片面が動かなくなる事で、どれだけ大きな働きをしてくれているか気付かされます。数ある無意識の中でも、特に「瞬き」は私に大きな影響をもたらしました。

そもそも、顔の異変に気が付いたのは瞬きが出来ない自分の顔を鏡で見た瞬間でした。あまりにも無意識な仕草故、「何か目が変だな」と言う感覚だけで、鏡を見るまで自分の右目が瞬きをしていない事に気が付きませんでした。それに気付いてからは、さぁ大変!

一般の成人で1分間に10~30回繰り返すこの繊細な仕草は、自分の目をありとあらゆる外的要素から守ってくれています。まず、目が乾くので頻繁に軟膏や目薬で潤い補給をしないといけません。就寝時は柔らかい医療用テープでまぶたを閉じないと、寝ている間に大怪我になりかねません。更に、ふわりと風でも吹けば目がしみる。小さなホコリや虫が飛んで来ても、目を見開いて待ち構えるしか出来ません。この時期、私の右目は沢山の虫をオープングローブの様にキャッチしていました。まつ毛も日々抜けて生え変わりますが、それが目の中に入らない様に守ってくれているのも瞬きです。髪の毛先が1本でも触れれば、「痛っ!」となるありさま。シャンプーや洗顔の時も細かい注意が必要です。瞬きなしの眼球は、素足で山登りをしている位、何とも過酷な状況に曝されるのです。

私の場合、最初の数ヶ月は軟膏とヒアルロン酸ナトリウム点眼液を毎日ヘビロテしていました。更に、医者からは充血がある時の軟膏と、痒みが出た時の点眼液、そして長期戦を考慮して長く安心して点眼できる無添加の人口涙液型点眼剤を処方され、目薬だけでも5種類以上も保持するという大掛かりな事になっていました。自分のポケットや化粧ポーチの中に、必ずお守りのごとく点眼液が装備されている状態が1年以上続いたのです。

薬を好まない性格上、ここ最近はアーユルヴェーダの自家製ギーを目のトリートメントに愛用しています。ギーはバターから水分と不純物(タンパク質)を取り除いた純粋なオイルで、消化促進、免疫力向上、悪玉コレストロールを下げ、質の良いエネルギーとして食用に幅広く使えます。また、眼のケアとしても有名で、ギーに含まれる豊富なビタミンAは眼の健康維持や視力改善に役立ちます。携帯やパソコンで目を酷使している人やドライアイの人にもナチュラルな眼のトリートメントとして、手足のマッサージオイルとして、アンチエイジング効果や抗酸化作用もあったりと沢山の効能が備わっています。食べて良し塗って良し、お家で簡単に作れる我が家の万能オイルです。

瞬きは無意識なだけに、トレーニングするのも一番根気がいる作業です。変に意識して瞬きを試みると、顔の他の部分に力が入ってしまったり、シワが寄ってしまったりで、綺麗に開閉出来ません。顔全体の力を抜いて、顔面神経麻痺スペシャリストに習ったピラティスの様に地味なトレーニングをコツコツと続けるしか道はありません。ミリ単位で瞬きが上手になっていく度に感極まる思いでした!

人は何かを失う事でそのありがたみを知ることが多々ありますが、不思議な事に、まず失ってみないとそれに気が付きません。顔に限らず日常の中の無意識を探して見ると、些細なものに守られているそんな日常が見えてくるのではないでしょうか。小さなものや、空気の様なもの、当たり前に存在するもの程、なくてはならない絶大なものなのだと、瞬きが教えてくれました。無意識を意識してみると、身の回りの小さなミラクルに感謝せずにはいられません。

注)これはRHSに対する専門的医療知識を提供するものではありせん。あくまでも個人的な経験を通して感じた事や学んだ事として参考にして頂ければ幸いです。