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Summer of 2020

秋分の日が過ぎ雨が降り始めると、バンクーバーの冬はもうすぐそこまで来ています。今年の夏は海外渡航や国内移動に厳しい規制があったにも関わらず、「最高の夏だった!」と言う声をよく聞きます。私もその1人です。

国外に出られない分、自分のいる場所を思いっきり満喫した夏でした。前年よりもっとキャンプに出かけ、山を歩き、湖や海で過ごしました。ずっと行きたかったワインカントリー・オカナガンにも旅する事が出来ました。

短い夏を活動的に動き回りましたが、それでもブリティッシュコロンビア州内のごくほんの一部。カナダがどれだけスケールの大きい国土なのか、同時に思い知らされた年です。

旅もそうですが、今年の夏は私の中でハイライトとなるイベントが2つありました。1つは、ローカルサポートプロジェクトVOICEを通じて知り合った、Ocean Ambassadors Canada (オーシャン・アンバサダーズ・カナダ/ 以下OACの創設者アリソンとの出会い。OACはプロジェクトVOICEが継続的に寄付をしている非営利団体で、海洋汚染問題に積極的に取り組んでいます。「海を好きになってもらう事で、海洋汚染問題に興味を持ってもらう事」を目的とし、地元の小学生を対象にスタンドアップパドルを教えて、海で楽しく遊びながら海洋プラスチックの問題や危機に直面している海洋生物について教え、変化を起こす行動を呼びかけています。

夏の終わり、アリソンが人生初スタッドアップパドルに誘ってくれました。水際で海を見るのと、パドリングで沖まで漕いで観察するのとでは景色がまるで違います。自分の真下でアザラシが小魚を追っている姿や、クラゲの大群がふわふわと波に揺られながら浮遊していたり。目の前の海の中で繰り広げられる別世界に魅了され、OACの思惑通り海洋汚染についてもっと勉強しようと思うようになりました。

海の中で何が起こっているのかは地上と違って、自分の目で確かめる事は難しい。ですが、マリンスポーツを通じてとてもわかり易く、より親身に海洋汚染問題を考えるきっかけを作ってくれます。「海」と言う共通の好きなものを通じて、アリソンと彼女の活動に出会えた事は、私の夏をより有意義なものにしてくれました。

2つめのハイライトは、The North Shore News(ノースショア・ニュース)を通しての出会い。The North Shore Newsとは私が今住んでいる地元新聞社で、1969年創業以来コミュニティーに密着したネタを取り上げている新聞です。新聞と言うものが主流でなくなり、オンラインに移行するも今は毎週水曜日、1回だけ新聞が発行されています。以前から私はこのThe North Shore Newsの愛読者で、彼らから「ローカルコミュニティーを支援しているプロジェクトVOICEを取材したい。」と連絡が来たときは、もう大喜び!!そして、流石に情報網が広いよね、と感心しました(笑)。

何回かメールでやりとりをし、電話インタビューを受けている最中にふと気がついたのです。やりとりをしている記者の名前が何か聞き覚えがあるなぁ〜、と。すぐに電話後、新聞を探ってみるとやはり!!!The North Shore Newsで私が一番大好きな記事を書いているアンディーさんが担当者だったのです! アンディーさんは元はスポーツ記者ですが、The North Shore Newsでは「Laugh All You Want」と言うコメディータッチのコラムを書いています。社会的問題を独特のユーモアセンスで面白おかしく書いている文章が私はとても大好きなのです。

そんな敬愛するアンディーさんに記事を書いてもらえるなんて、人の巡り合わせとは何とも不思議です。ちゃっかりお茶の約束までして、つい先日直接お会いする事が出来ました。

この夏を振り返ると、そんな素敵な巡り合わせが多々ありました。限られた行動範囲で向かった美しい場所、出会った美しい人々、共有した有意義な時間…。とても身近なところで、人生の広がりを感じさせてくれた夏。パンデミックで強いられた特別な時間は、最高の夏を届けてくれました。

Potato Diary

「直心是道場」(じきしんこれどうじょう)と言う禅語を本で読んだことがあります。「大切なことは環境を整えることではなく、志を持つこと」と言う意味ですが、その言葉を胸に、今年の夏は自宅のバルコニーで小さな家庭菜園に励みました。

家庭菜園には庭が必要。庭でなくてもせめてコミュニティーガーデンでやってみたい。バルコニーでは難しい。毎年いろいろな思いがありましたが、今年は思いつく野菜を自由に育ててみる事にしました。

市販で購入したオーガニックのジャガイモに芽を生やしてしまったことがきっかけで、ジャガイモ栽培を試みる事に。いざ、ジャガイモ栽培といってもすぐに出来る訳ではありません。種芋から育てるには時間とケアが必要です。芽が生えたジャガイモを日当たりの良い室内に2週間ほど置いて、さらに芽を成長させます。十分な大きさに育ったら、ジャガイモを半分に切り、発芽した芽が両方に2つずつ残っていることがポイント。切り口を炭でカバーし、更に2日ほど日光に当て乾燥させると種芋の出来上がり。

3週間の種芋製作後、54日に植え付け。ジャガイモは深さと大量の土が必要なので、バルコニーでも身軽に出来るようポリ素材の鉢を使用しました。しかもこの鉢は脇にジッパーで開閉できる「窓」が付いているので、土の中のジャガイモの成長を確認する事が出来てとっても便利!土は鉢一杯に入れるのではなく、最初は1/3程度でOK!その中に種芋を優しく植え付けます。

 

5月と言ってもここはバンクーバー 。冷え込む日もありましたが、10日程でなんとも可愛らしい青い芽が顔を出してくれました!

芽が出たら後は放置プレーでも、たくましく育ってくれるのがジャガイモくん。4日後にはグングン元気な姿に成長していました。

芽が15~20cmの高さになったら、「Mounting」と言う土を盛る作業をします。一番上の葉だけが見えるくらいまで土を被せ、ジャガイモの成長を促していきます。この作業を2回ほど繰り返したら、うちの鉢はもう一杯になってしまいました。

成長中のジャガイモはバルコニーに小さな緑のオアシスを作ってくれて、何とも気持ち良い~~。このままずっと緑でいて欲しいと思ったほど。お水は土の中に指を深く入れて、乾燥していればあげる程度でOK

収穫は120日後~様子を見て行いますが、7月半ばに1週間程留守にしたら何とあんなに青々しかったジャガイモの葉が一気にしな垂れていました。早いけど収穫のサインと判断し、水やりをストップして1週間ほど掛けて茎と葉がカラカラに枯れるのを待ちます。

早くも約90日間で第一弾収穫の日を迎えました。最初は手探りで、土の中にちゃんとジャガイモが育っているか、幾つあるかとドキドキしながら掘っていくとゴロッとした手探りが!しかも何個も!思わず歓喜の声を上げてしまった嬉しい瞬間でした!

この鉢からは大小のジャガイモ計15個収穫しました。

もう愛おし過ぎて永久保存したい位でしたが、食べられるために彼らも立派に成長してくれたのでありがたく頂きます。我が子の写真撮影を済ませて、ホヤホヤの新ジャガを頂きました。ジャガイモが華となるメニューを考えるのもまた楽しいものです。

2弾収穫日はその1週間後。こちらは小粒も多かったけど、大中合わせて20個ほど収穫しました!

驚いたのは親となった種芋が薄皮1枚のぺらぺらの姿になっていた事。栄養分を全て注いでくれた証拠です。ちなみにもう一つの鉢では跡形もなく土となり消えていました。

ジャガイモ栽培は何か一つの命のライフサイクルを短時間で目撃した気がして、ちょっと胸が熱くなりました。命を育てるとは本当に学び多いものですね。

やりたい事全てのものは、志があれば今その場でクリエイトすることが出来る。場所に囚われず今いる場所で、あるもので、何が出来るのか。クリエイティブな家庭菜園はまだまだ続きます。

Go Camping!

7月も半ば過ぎようやくバンクーバーにも遅い夏がやって来ました。今年は新型コロナウィルスの影響で必要不可欠な海外渡航以外は奨励されていませんが、ローカルを楽しむのはOK! BC州立公園運営のキャンプサイトが予約を再開した525日の朝7時には、5万人以上のアウトドア好きカナダ人が殺到してシステムがクラッシュした程でした。

私も7月に入り、オカナガンへキャンプに行って来ました。オカナガンはBC州最大のワインの聖地。同じ州内でもバンクーバーから高速に乗りノンストップで4時間は掛かります。キャンプしながらワイナリー巡り、と言う少し早めの夏休みを満喫して来ました。

毎年夏の恒例となったキャンピング。今回の旅の前半はオカナガン地域の南端、カナダとアメリカの国境にあるOsoyoos(オソイヨーズ)にあるオソイヨーズ湖のど真ん中に突き出ている半島、Haynes Point(ヘインズ・ポイント)州立公園のキャンプサイトを利用しました。38ヘクタール程の小さくて細長い州立公園ですが、その人気はNo.1! 毎年キャンプサイトの予約が始まる4ヶ月前には秒殺で埋まる人気の場所なのです。

ここは鳥の生殖地でもあって、終日沢山の可愛らしい鳥が飛び交い、彼らの鳴き声がノンストップBGMのように聞こえて来ます。Burrowing Owl (アナフクロウ)の会話するような掛け声も初めて聞きました。

朝は鳥の声で目覚め、柔らかい朝日を湖畔で浴びて…

地消地産のフルーツを朝食にとり、

日中はワイナリー巡り。

オレンジやマゼンタに染まる岩山を眺めたあと…

火を起こしてキャンプファイヤーの前でゆっくりと夕飯の準備をしながら、オカナガンワインで乾杯!!満点の星を仰ぎながら寝る静かな夜は本当に贅沢の一言です。

しかし!キャンプなので優雅なシーンだけではありません。特にへインズ・ポイントは湖と谷間の真ん中に位置している為、夜になると突風が吹き荒れる事がしばしばあります。ある日の夜は時速92km強の風が一時的に吹き、テントが飛ばされるか壊れるか不安で、夕飯どころではありませんでした。そして、鳥達もびっくりしたのか翌朝は至る所糞だらけ

後半に泊まったオカナガン・レイク州立公園のキャンプ場では、乾燥を避けるために自動稼働するスプリンクラーに気がつかず、出掛けている間に干していたバスタオルがぐっしょり濡れると言うハプニングもありました。

キャンピングにはとにかく色々とありますが、美しい自然が目の前にあったらそんなことはどうでも良し!やはりどんな宿泊施設より最高に贅沢な時間を過ごさせてくれます。今年前半は「Stay Home」を経験したからなおさら。自然と一体となって過ごす楽しさと厳しさ、唯一無二の時間を経験させてくれます。

Life in New Normal

まだ緊急事態宣言が敷かれているバンクーバーですが、2ヶ月に及ぶロックダウンは終わり第2ステージに入りました。前代未聞のロックダウンを振り返ったとき、人の数だけ様々な時間の過ごし方があったと思います。そして、私の時間は「駆け抜けた」という言葉が一番しっくり来ます。

2ヶ月間必要不可欠な外出は禁じられていたものの、途中から始動したボランティア活動もあって、忙しくローカルコミュニティーを駆け巡る日々でした。まさか自分がこんなにもローカルの輪に入って行くとは正直思ってもいませんでした。常にバンクーバーを出たり入ったりしていた私に、1つの場所で「根を張る」面白さと奥深さをロックダウン生活は教えてくれました。

今までやろうと思っていたけど手をつけていなかった事柄にも、色々と着手する時間が増えました。

理想の自給自足生活に向かって、去年より多くの野菜の種とハーブを植えてお勉強。バルコニー栽培なれど、工夫をすると大きい野菜もちゃんと作れます。春先に3週間ほどかけてこしらえた種芋も、今ではバルコニーにグリーンオアシスの様にすくすく成長し、命を育てる楽しさを実感しています。

興味が湧いた料理も片っ端からチャレンジ!手間が掛かって苦手なお菓子作り、ボーンブロスやずっとトライしたかった手作りピザを仕込んでみたり。SNSで見た美味しそうなレシピをあれやこれやと試して、ロックダウン生活の前半はほぼキッチンに立って「食」と向き合っていました。

オンラインビューティーの新しい可能性を見出したのもこの時期です。少しでも癒しと自分磨きの時間を必要とする女性のためにオンラインレッスンをトライしてみた結果、現場主義の私の価値観を塗り替えてくれる良いきっかけとなりました。つい先日は、お声を頂き顔面麻痺で悩んでいる男女20名に向けてリンパドレナージュマッサージ ZOOMオンラインレッスンを開催しました。オンライン硬派の私が、まさかこんなレッスンをする日が来るとは数ヶ月前は全く想像していなかった出来事でした。

ロックダウンがなかったら、きっと出会わなかった人や後回しにしていた事が沢山あった事に気づかされます。

私の好きな本の中に、「Life is what happnes to you when you are making other plans」(人生とは、何かを計画している時に起きてしまう別の出来事)と言う印象的な言葉があります。ある意味、自分では全くコントロールが効かない予想外の出来事が、新しい情熱や人生で本当に大切なものを照らし出してくれるものだと改めて感じます。

まだ駆け抜けている途中ですが、この緊急事態のトンネルの先に「元の生活」ではなく、新しい世界、そして新しい自分がいて欲しい。「New Normal=新しい日常」を謳歌できるように、厳しさもあるけれどギフトの様な今の時間を与えられている事に感謝です。

 

Hear Our VOICE!

今、私の世界はローカル一色です。日本とカナダを頻繁に行き来している私にとって、カナダは心の充電をする大好きな場所。ロックダウン生活は、そんなカナダの生活環境に腰を下ろし、自分の周りを見つめ直す良い機会になっています。

クリエイターとして、ローカルを愛する1人として、今何が出来るだろう?そんな想いからVOICE(ヴォイス)はスタートしました。

VOICEは、カメラマンである夫と一緒に、現在苦境に立たされているローカルの飲食業に関わる人達を回り、彼らのポートレイト写真とメッセージをソーシャルメディアを通して紹介する活動です。彼らのリアルな「顔」と「言葉」で、地元に根付いた安心安全な食を知って貰うと同時に、テイクアウトやデリバリーで必死に経営を繋いでいるお店をサポートして欲しい、と言うメッセージを伝えています。

4月中旬から始めたVOICE。もうすぐ1ヶ月が経ちますが、お陰で毎日が忙しくあっという間に過ぎていきます。私達夫婦はこの壮大な国カナダで、敢えて車を持たない生活をしているので、徒歩やバスを乗り継いて目的の場所へと向かいます。その途中で偶然出会う隠れ家的なお店もあったり、自分の足で歩いて回る楽しさを日々実感しています。

そして何より、ローカルの食文化を築いている素晴らしい人達と日々出会えることは大きな喜びです。馴染みあるお店でも、普段は慌ただしくキッチンやフロアーで働くシェフやオーナーとじっくり会話する機会はなかなかありません。彼らから今の状況や食に対する想い、1皿ごとに込められたストーリーを聞くことで、私のローカル愛は益々強くなっています。

お互い大変な状況にも関わらず、「来てくれてありがとう!」と新鮮な食材を手渡してくれたり、その場でサッとおもてなしランチを拵えてくれたり。サポートに来ている私達が、逆にサポートされたり倍の元気を貰ったりと、どんなに大きな原動力となっているか計り知れません。

決して自分達ばかりでなく、どんな時でも他者を考え、「あのお店にはもう行った?」「あの人も訪ねてごらんよ!」と教えてくれる姿勢が心を温かくしてくれます。

VOICEがスタートしてから、お店を個人の名前で知ることができ、ローカルの食の繋がりにもかなり詳しくなりました!

長期に及ぶロックダウン生活の中で、私はより一層自分の住むローカルを愛おしい眼差しで見つめています。彩り豊かなコミュニティーにしてくれているのは、小さいながら存在するローカルの人達です。これからまた自由に移動が出来る世の中になっても、この小さなコミュニティーがカラフルであり続けて欲しい。VOICEを通しての新しい出会いは、ロックダウン生活で私の1番の宝物になりつつあります。

是非、VOICEの活動のフォローをお願いします💛

インスタグラム:@yushiin_labo_

フェイスブック:YUSHiiN LABO

Cherish Food Life

食材の鮮度=命をどう大事に長持ちさせるか?ロックダウンの日々の中で、スーパーマーケットに行く回数を減らす為、野菜を少し多めに買う事が多くなった私の最近のミッションです。

何年も前からバイブルの様な存在の「野菜の便利帳」は、100種類以上の野菜、果物、ハーブの効能や保存・調理方法が細かく記載されていてとっても便利!

私はお野菜を少し多めに買っては半分を冷凍保存します。そうすると1ヶ月はちゃんと鮮度を保つ事が出来ます。トマトの様な農薬が多く使われる野菜は、しっかりと残留農薬除去の一手間を加えてから丸ごと冷凍保存します。

キュウリの様な水分を多く含む野菜は、冷凍には不向きです。自家製ピクルスにしたりザワークラウトに入れたりすると、長期間美味しく頂けます。

自分でオーガニック野菜を買って冷凍保存用に仕込めば、市販の冷凍モノを買わなくて良いし、何より美味しくフレッシュな食感もキープ出来ます。長年大嫌いだったグリーンピースも自分で煮て冷凍したものを食べたら、甘くてホクホクしていてあまりの美味さにびっくり!!今まで市販のグリーンピースしか食べていなかったんだなと気がつかされました。

野菜は、栄養満点の糠漬けにもします。糠床に一晩漬け込む事で、ビタミンB110倍にも増えるそうです。その他にも植物性乳酸菌、タンパク質、カルシウム、酵素、鉄分など、体や免疫力、美肌に効果が期待出来るものが沢山揃っています。ぬか漬けを具材とした押し寿しにすると、とても華やかで立派なメイン料理ともなります。

根っこのついた野菜が手に入ったら、捨てずに水栽培するとグングンと新しい芽が出てきます。1番簡単な野菜は小ネギ。我が家はこの1年程、スーパーで$1程で買ったオーガニック小ネギを水栽培から土に植え替え元気に栽培しています。レタスも水栽培すると可愛らしい葉っぱが次々と育ってくれて、買い足す必要がありません。今年はバルコニーでじゃがいも栽培にチャレンジしてみようと、種芋も作っています。

また、最近ハマっているのがギー作り!オーガニック無塩バターで作るギーは、バターの中の水分と不純物を取り除いた純粋な油。アユールヴェーダでは「奇跡のオイル」と呼ばれています。料理にはもちろん、ビタミンAやビタミンEを多く含み、腸内環境を整え脂肪燃焼をサポートするなど、体の内側からあらゆる健康と美容のサポートをしてくれる!私は眼精疲労を感じた時に、ギーを目周りにマッサージして眠るのがお気に入り。そして、何と言ってもギーは常温で永久保存できる!消費期限が短いバターに比べて腐る事がないので、最高の保存食となります。

食材の命を伸ばすも縮めるも、自分次第。ちょっとしたひと工夫で、その命をありがたく長くいただく事ができます。ロックダウン生活を丁寧に、細く長く過ごす事はクリエティブでとても充実しています。

Get Creative with Hands

味噌作りには寒仕込みが適していると昔から言われますが、今年も日本とカナダで1月と3月に味噌を仕込みました。カナダでの寒仕込みは今回が初めて!せっかく仕込むなら全てローカルな素材でと、麹と大豆はチリワックでMade-in-Canadaの手作り醤油を仕込んでいるKoji Fine Foodsから仕入れました。味噌作りの日の為に出来たてホヤホヤのオーガニック生麹を作ってくれて、大豆もカナダ東部から仕入れたと言うオーガニック大豆を贅沢に使用。

今までは乾燥麹を使っていましたが、やはり生麹は香り豊かでふわふわの手触り!麹菌のパワーも強いので、発酵食品がより短い期間で出来るそう。味噌作りに興味ある友人達と一緒に、みんなで豆を潰したり、捏ねたり、お喋りを楽しみながら4時間程かけて仕込みました。

そんな毎年恒例に取り組んでいる普段通りの味噌作りが、とてもかけがいのないものであると思い知らされたのはそれから間もなくの事です。

世界中で感染が広がるコロナウィルスの危機がとうとうカナダでも深刻化して来ました。国境が閉鎖され、お店やレストランが続々と臨時休業を余儀なくされる中で、先の見えない不安にカナダ人も他の国々の人と同じく、食料のパニック買いに走っています。モノがなくなるから買込むのではなく、モノが少ないならば、いかに今あるモノを大切に活かしながら厳しい時期を乗り越えるのか、と言う方がサステイナブルな生き方に繋がるのではないでしょうか。そんな時、私はいつも自分の手に意識を戻すのです。

私はもともと手料理が大好きなので、今はキッチンで発酵食がフル活動中!!!味噌作りで余った麹で塩麹や甘酒を作って常備しています。オーガニックの大豆があれば、簡単に手作りのオーガニック納豆も作れます。一度では食べきれないので沢山冷凍保存してゆっくり楽しみます。

野菜はぬか漬けにしたり、ピクルスにする事で長期保存出来ます。料理で余ったくず野菜や少し古くなった野菜でもぬか漬けにするとビタミンB1たっぷりの栄養価を美味しく頂けます。

骨つきチキンの食べ残しや鳥ガラを利用してチキンストックも作ります。好みでナツメやジンジャーを入れて中華風にしたり、塩麹を入れてあっさり塩味にしてみたり。手作りチキンストック はスープには勿論、ソバ用のスープや炒め物にも使えてとっても万能!しかも骨をじっくり煮込むからコラーゲンを摂取でき、翌日の肌はプルンプルン♫

お菓子が食べたければ自分で焼けば良い!イーストさえあればパンやピザも作れるから、これからチェレンジしてみようと思います。

抗酸化作用・抗菌作用が優れたハーブティーやティンクチャーもメディカルハーブの知識と自然の恵みをちょっとおすそ分けして貰えば、簡単に家で作れ、日々の健康を守ってくれる薬となり得ます。

スプラウティングジャーがあればブロッコリースプラウト、レッドクローバー、ムングビーン、フェネリーグなど色々な種を発芽させてフレッシュに、より高い酵素を生きたまま沢山体内に取り込めます。

時間と労力はかかるけれど、何より手作りのモノは1番自分と相性の良い食べモノとなり、免疫力の高い心身を造ってくれるのです。

陽射しも暖かくなり始め、そろそろバンクーバーも春本番です。少しでも庭やバルコニーにスペースがあるなら、家庭菜園などいかがでしょう?自分の必要なモノを自分で生み出す事が少しでも出来るなら、よりストレスフリーに、より思いやりの心を持って、この不安定な時期をクリエイティブに過ごせるのではないでしょうか。

Mirror Lake

もし自分の内面を映し出す鏡があるとしたら、それは静止した湖面であって欲しい。ひと吹きの風もなく冬の澄み切った青空と柔らかい光とともに、外の世界と水面に映り込む内側の世界が完璧にシンクロした風景を見る度、そう思います。

私は「ビューティー」を語る際、必ず外側と内側のビューティーを一緒にお話します。若い頃は外観のビューティーにばかり関心が行っていたけれど、歳を重ね様々な経験を積んで来た中で、自分の外側と内側は密接に繋がり、どちらもそれぞれ色濃く反映していくものと感じるようになりました。

高価なクリームや美しいメイクアップで外側だけを整えても、暴飲暴食の生活をしていたり睡眠不足であったりと乱れたライフスタイルを送っていると、必ず「肌」に表れてきます。ストレスや自分の心情が、「顔」に表れてきます。反対に、綺麗なメイクを纏うことで幸せを感じたり、自信に繋がったり、その人の原動力を高めてくれたりもします。「ビューティー」とは、外側と内側が完璧なバランスにあってこそ、最大限に輝きを増すものではないでしょうか。

1ヶ月半ぶりにカナダに戻って来ると、日本にいた自分は外側の意識に偏りがちであった事に気がつきました。新商品や最高峰のスキンケアやメイクに触れる機会や、情報とモノが溢れる社会で刺激的で充実した時間を過ごしていた反面、「独りの時間」や「自分の内面を見つめる時間」が極端に少なくなっていました。生活のスピードが余りにも違うので仕方ないけれど、大好きなこのジャーナルを書く心のゆとりも減ってしまったり。文章を書く際に「言葉は書くものではなく内側から溢れ出てくるもの」と以前聞いたことがありますが、本当にその通りだと思います。自分自身の時間を大切にしてこそ、外に放つ言葉が生まれてくる気がしています。

先日久しぶりに近所の冬のトレイルを歩き、湖面に映る幻想的な景色を眺めていたら、「外も内も美しく生きる」と言う自分の目指す在り方を示してもらっているようでした。もし、私の外側のビューティーが「第一線の都会(日本)にいる自分」であるとしたなら、きっと私の内側のビューティーは「カナダの自然の中で丁寧に生きる自分」が育んでくれているのでしょう。どちらも自分を形成し切っても切り離せないからこそ、その完璧な鏡のようなバランスが自分の「個性」=「トータルビューティー」として輝かせて行けたらと思うのです。

2月のカナダの森では冬の長雨にさらされた苔がキラキラと明るい緑で照らしています。

地表から溢れ出た雨水や雪解け水が、可愛い音色の支流をあちらこちらに作っています。

今年は春の訪れが早いのか、クロッカスが一斉に顔を出し始めました。そろそろ目映い春色のカナディアンビューティーが私の内面をどう彩ってくれるのかと心待ち遠しいです。

Summer Abundance

生命の豊かさを感じる季節。それがバンクーバーの夏です。

7月中旬から8月初めまで本格的な夏を迎えたバンクーバーでは、花々が咲き乱れ、様々な種類のフルーツや野菜が収穫され、彩り濃くキラキラ輝く時期です。職業柄、カラフルな色彩に心惹かれるので、特に夏に咲く花の種類と鮮やかさには驚きます。初めて出会う花も多く、花の名前が写真で分かる携帯アプリを入れた程でした。

農作物も一気に賑やかになります。夏の間は出来るだけファーマーズマーケットで新鮮でお手頃な野菜を調達する様にしています。毎週土曜日にアボッツフォードからやって来る家族経営の小さなオーガニックファーム, Close to Home Organics がお気に入り。マーケットが始まる10時前に毎度長蛇の列になる人気店で、朝一で買い出しに行きます。

ちょっと変わったお野菜も並び、詳しく調理法も教えてくれるオーナーの丁寧な人柄がとても素敵。顔馴染みの常連さんには「See you next week!」と挨拶を交わし、そんなコミュニケーションが取れるファーマーズマーケットが大好きです。

マーケットだけでなく、自分の手で夏の恵みを得ることも出来ます。夏はベーリーシーズン。ストロベリーに始まり、ラズベリー、ブルーベリー、ブラックベリーとどんどんピークを迎えます。

今年初めて行ったブルーベリーピッキングは、自分が獲った分だけのブルーベリーの量り売りをしてくれます!カゴ一杯に摘んだ3ポンド程(約1.4kg)のブルーベリーが何と7ドル程!青空の下、広大なブルーベリーファームでのピッキングは何ともメディテーションに近い心地よさを体験させてくれました。

大量に持ち帰ったブルーベリーはやはりフレッシュで頂くのが最高ですが、残りはタルトにしたりマフィンにしたり。手積みした可愛らしいブルーベリーだけに、どう美味しく頂こうかと料理の時間も一層楽しくなります。

家のバルコニーで細々とやっている家庭菜園では、今年はきゅうりとミニトマト、レッドチリペッパーの収穫に成功しました。

特に真っ先に実った野菜を1粒手にする時の達成感と、「大きくなってくれてありがとう~~♡」と思わず口にしてしまう愛おしさはたまりません。不揃いなれどそれも個性と、愛着が湧きます。

ご近所さんから頂いた豊作のお裾分けも食卓を賑やかにしてくれます。

街の歩道には通行人が誰でも自由につまみ食い出来るベジタブルガーデンが設置され、ガーデニングを誰でも気軽に楽しんで貰おうと粋な試みも。If you are hungry, take a bite!」(お腹減ってたら、一口どうぞ!)と言うメッセージが微笑ましい。

レストランやカフェでも自家菜園で採れた野菜を提供するお店も多く、とにかく生命感に溢れる夏のバンクーバー。

真夏の太陽と共にやって来る沢山のカラフルな命は、一瞬で過ぎ去る短い夏だからこそ、より鮮やかにエネルギッシュに見えるのかもしれません。

来年の夏は、人にお裾分けできるくらい収穫出来る腕前になりたい、と夢膨らませています。

 

Beach Camping

夏至も過ぎてバンクーバーにも本格的なサマータイムがやって来ました。そして、待望のキャンプシーズン到来!

今年の初キャンプは自宅から車で40分程のPorteau Cove Provincial Parkへ。ここはHowe Sound(ハウサウンド)と言う海峡に面した絶景のビーチキャンプが楽しめて絶大な人気があるキャンプ場です。予約が取れたら超ラッキー!予約受付開始の4ヶ月前に問い合せても、既に埋まっているほどの激戦地なのです。

都市のすぐ背後に素晴らしい大自然が鎮座していて、海も山も楽しめる。この都市と自然の距離感がバンクーバーの最大の魅力です。

大自然の中でのキャンプは、気づけば私の中で最高に贅沢なホビーになっています。一箇所にとどまり、ただ刻々と流れゆくものを眺める時間ほど特別な過ごし方はありません。同じ場所でも朝・昼・晩と全く違った表情を魅せてくれる自然のシアターを見ている時間がとにかく大好きで、ゆっくり読書でもしようと持参した本さえ開くことはまだありません。笑

今回は初のビーチキャンプだったので、その楽しさは更に新鮮でした。目の前の海と空のパノラマパラダイスにかぶりつき放題!なのですから。

朝は静寂な時間。いきものの活動が始まる前の鏡のごとく静かな時間です。そんな何の気配も感じないフレッシュな景色を目撃するのは、ちょっぴり得した気分になります。

昼は眩しく賑やかな時間。風も波もエネルギッシュに動く時です。

テントを張り始めたのは昼の1時過ぎでしたが、暴風と言わんばかりの強い風。作業にどっぷり2時間弱も掛かり、万が一の雨用に持ってきたタープを風よけにしなければテントが吹っ飛ばされる勢いに圧倒!!

夕暮れ時は1番儚く、惚れ惚れする時刻。

私が一番好きな時間帯です。

日中遊んでいた海鳥たちが巣に帰る準備を始め、空のキャンバスでは毎分変わっていく色の芸術がゆっくりと繰り広げられます。気がつけば嘘の様に風が止み、潮も満ち、白い星がうっすらとチラつき始め、キャンプ場の彼方此方でパチパチとキャンプファイヤーの音が。薪の音と炎の灯だけを残して、辺り一面黒のカーテンに包まれ始めると夜になります。

そんな時を繰り返し過ごしていくと自分も自然の日課の一部に溶け込んでいるようで、大きなゆりかごの中のいきものの存在の小ささと尊さを感じます。

キャンプ場に立つテントも人間も本当に小さな小さな点の存在。

都心では気づかない、言葉でも表現しずらいそのスケール感を体感することはとても大事なライフレッスンではないでしょうか。キャンプを通して知るカナダの壮大なビューティー(美)にいつも胸一杯になり、また、この夏はあと何回行けるだろうと数えずにはいられません。

Slow Life is Busy Life

春が来たと思ってあれこれ過ごしているうちに、夏がやって来ました。バンクーバーの夏は最高の季節です。気温は25度前後ですが日差しが強いので、ジリジリと焼けるように結構暑さを感じます。そして、夜は21時過ぎまで明るい空に誘われて、1日を長く思いっきり楽しめる季節です。

我が家のバルコニーでは冬越えしたハーブ達が青々と生き返り、トマト、キュウリ、長ネギなど家庭菜園している野菜も、太陽が強いおかげもあって、1日でぐんぐん成長していきます。その成長を見ているだけで可愛らしいものです。

新鮮なレモンバームとミントを摘んではよくお茶にしています。レモンバームは自律神経や体の不調を整える効果だけでなく、抗酸化作用によるアンチエイジグ効果や冷え性の改善も期待できる万能ハーブ。フレッシュなグリーンイエローの色と香りにもとても癒されます。

日々の「食」は「スローフード」を心掛けているせいか、何もない日は、1日のうち半分以上はキッチンで過ごしているかもしれないと思う程、食いしん坊はやることがいっぱい!

最近、アーモンドミルクをまた作りはじめました。市販のアーモンドミルクはアーモンドよりも他の原料の方が多く、数%しかアーモンドは入っていません。自分で作るアーモンドミルクは100%アーモンドのみ!!

一晩水に浸したローアーモンドの皮を剥き、フードプロセッサーで砕いてから布で絞ると、真っ白なきれいなミルクが獲れます。

保存料はもちろんないので4−5日で消費しますが、グラノラに入れたり、チャイやホットチョコレートに合わせたりと色々と楽しめます。

朝食のグラノラも手作り。以前ソルトスプリング島のAirbBBのオーナーさんから教えてもらった秘伝(?)のグラノラレシピがお気に入り。ひまわりの種、かぼちゃの種、ココナッツチップ、カシューナッツ、オーツ麦、クランベリー、レーズン、ゴマ、ハニー、などを混ぜ合わせてオーブンでこんがり焼くだけ。もちろん、素材は全てオーガニック。種&ナッツ類はロー(生)のものを選びます。

春先には初めてチックピー(ひよこ豆)でお味噌も仕込みました。大豆や麦で作る味噌とは違って、ちょっと甘めでまろやかな白味噌っぽい味になるのでお気に入りです。

市販のチックピー味噌は少々お高く、量も少なめなので自分で作るのが一番!大豆製品に偏りがちな日本食からちょっと一休みしたい時にもオススメです。

水は水道水から直接飲めますが、カルキ抜きのために我が家は竹墨を入れたウォーターディスペンサーを使用しています。(お隣はコンブチャ!)

竹墨は木炭より水の浄化に優れていて、水中の汚れや化学物質を吸収するだけでなく、炭の成分が溶け込みミネラル豊富なバランスよい水を作ってくれます。毎晩新しい水を組み直すひと手間はあれど、この水は毎日の健康的な飲料水、そして料理用水として欠かせません。

スローライフとは、誰もが優雅でゆったりとした時間を想像するかもしれませんが、とんでもな〜い!!スローだからこそ、何気ない小さな手間暇かかることが沢山あって、干したり、耕したり、洗ったり、摘んだりを繰り返しているうちにあっという間に時間が過ぎてしまいます。

スローライフは実はとっても忙しい。でも、手作業から芽生える愛着と、美味しくできてくれてありがとうという喜びが、そのものを特別なものにしてくれます。

都市に住む生活の中で少しでもスローライフをクリエイトしていきたいです。

The winter wonder trail

トレイル好きな私は冬でもやはり山に入りたくなり、近所の裏庭(山)でスノーシューに初挑戦!家から車で30分程のMt. Seymour(マウントシーモア)は、標高1,449mでスキー場やハイキングコースも沢山あります。

今年のバンクーバーの冬は稀にみる晴天続き。あまり雨や雪に恵まれていませんが、Mt. Seymourのスキー場まで登るとそこには白銀の世界が待っていました!遠くにはアメリカのMt.Baker(マウントベーカー)が見える絶景ポイントからスノーシュースタート!

夏に歩くトレイルは木の根っこや起伏が激しい箇所がゴロゴロあるけれど、冬は全て雪の中。湖や川面も全て氷で覆われています。夏場より歩きやすいと思うほど、登り下りはあるものの緩やかな雪道にサクサクと響くスノーシューの足音が何とも心地良い!

白の世界は静寂でピンと張り詰めた緊張感みたいなものがあって、ちょっとの音や小動物の足跡まで敏感にキャッチできる無地のキャンパス。深い森に差し込んでくる冬の太陽の光が、キラキラと真っ白な表面を照らして宝石の様に眩く輝かせます。それを眺めるだけでとても清らかな気分になれる雪マジック。

白という色は何て無限大の色なのでしょう。白を見ているだけで頭も気持ちもスッキリ洗われていきます。澄みきったカナディアンブルーの晴天の空と重なれば最高の色のコントラスト!トレイルの道中、大自然が見せてくれる自然のギャラリーに心奪われるばかりです。

往復約5kmのDog Mountain Trail (ドッグマウンテントレイル)の頂きは、バンクーバーとその背後の山々が望める絶景ポイント!ここまで登って来るともう汗だく。

午前中仕事をして、午後からサクッとスノーシューに出掛け自然の世界に溶け込むことが気軽に出来てしまう日常。海あり山ありのバンクーバってやっぱり素敵な街だなぁと、しみじみ感動してしまいます。

冬のトレイルの美しさと楽しさを教えてくれてありがとう!と、また一つ私の中のカナディアンビューティーが増えました。

Homecoming

新しい年を迎えてすでに25日目。早くも最初の1ヶ月が終わろうとしています。年末年始は仕事で日本に長期滞在していて、第2のホームグラウンドのバンクーバーに約1ヶ月半ぶりに戻ってきました。

久しぶりにバンクーバーの空気を思いっきり吸い込み、カナディアンブルーの空と水、深い緑の針葉樹、そして薄っすら雪化粧をした山々に囲まれると、本当に心が洗われます。美しい場所に住まわせてもらっているなぁ~と、改めて感動する日々の再スタートです。

東京とバンクーバーを行き来していると見える景色も時間のスピードもあまりに違い、まるで時差のように慣れるまで少々時間を要することもあります。コンクリートジャングルの東京は人・モノ・情報が渦巻いていて、日々圧倒されながらも世の中で起こっている最先端を一気に吸収できる場所です。

情報過多になったり、人工的な色が多過ぎてちょっと疲れますが、一歩地方に飛び立つと日本の長閑な美しい自然が広がりホッとする自分がいたり。

バンクーバーは人やモノが少ない分、自然の恵みが沢山あります。家から15分程のトレイルを歩くと、そこは人間がとてもちっぽけな存在で様々な生命と共存していることを教えてくれる場所です。

キツツキがせっせと木を蝕んでいる光景を目にしたときは、「おかえり!」と言われているようで微笑ましくなったと同時に、「この木そろそろ倒れない?」と不安になるほど小さな鳥の威力にびっくりさせられました。カナダの自然はいつも驚きに満ちています。

2019年、カナダはUS NEWS&WORLD REPORTから「世界最高の生活水準」の国でトップに表彰されました。日本は13位。反対に、同じレポートで「世界最高の国」部門では日本がスイスに続いて2位。カナダは3位でした。

どちらの国が良い悪いではなく、東京とバンクーバーと、ある意味正反対の2都市で時間を過ごし仕事出来ることで常に新しい視野とバランスを学んでいます。今までにない面白いスパイスを人生に加えてもらいながら。

互いの場所の良いところを持ち運んでそれを共有していける自分になれるよう、しなやかな心と頭を持って日々楽しみたいです。どこにいても自分らしく、2箇所のホームグラウンドがあることで見えるものを大切にしながら、ボーダレスなクリエイターでありたいです。

今年最初の満月は、SUPER BLOOD WOLF MOONでした。この名の由来は、①満月が地球に接近して大きく見える(SUPER-MOON)、②皆既月食により月が赤く照らされる(BLOOD- MOON)、③1年最初の満月(WOLF-MOON)、が重なることだそうで、私もバンクーバーでタイムリーに観測できました。

次に北米で観測できるのは2037年頃だそうで、その時の自分はどう在るのか想いを馳せながら、今年もカナディアンビューティーを綴って行きたいと思います。

*写真撮るのが遅過ぎて(笑)、SUPER BLOOD WOLF MOONの赤い月光は眼にしっかり焼き付けました!

Workation in Victoria

旅するように仕事をする。そんなワークスタイルが最近しっくりくる。「Workation」という言葉に聞き覚えがある人も多いのではないかと思うけど、「Work」と「Vacation」の単語を繋げたアメリカ発の言葉で、「仕事とバケーションを一緒にする」という意味。カナダでは少し遠くへ仕事で行く際、フェリーに乗り、レンタカーに乗りとそれだけでも旅なのですが、そんな時は少し滞在日数に余裕を持ってWorkationを心掛けています。

先日も仕事でBC州の州都・ビクトリアに行って来ました。州都と言ってもバンクーバーからBCフェリーで1時間半のバンクーバー島に位置しています。イギリスの植民地だった歴史が色濃く残る街並みと、穏やかな港を囲むように州議事堂やクラシカルな建造物が並ぶとても可愛らしい街です。

私のWorkationスタイルは、限られた時間の中でとにかく新しい土地の気になっているもの全てを試し、見て、感じること。ローカルのクリエイターやアーティストを突撃訪問することもよくあります。

バンクーバー島は気候が温暖でワイナリーやサイダリーも多く、今回オーガニックアップルサイダーを作っている「Sea Cider(シーサイダー)」ファームをまず最初に訪れました。

2007年からスタートしたファームとは言え、オーナーは6代続く農業を営む由緒ある家系。10エーカー程の果樹園の丘に可愛らしいサイダーハウスがあり、ここでは1年を通して15種類以上ものアップルサイダーが販売され、テイスティングも出来ます。

左から、定番の「King&Spies」→秋限定の「Sassamanash」は地元で採れたクランベリーとアップルのマリアージュ→アップルとラムの大人な香りを放つ「Rumrunner」は数々の賞を受賞しています。オーガニックのサイダーはとても優しい味がして危険なくらいスッキリ!今度は夏に戻ってきたいな~と思わせるパティオはハイシーズンには満席に賑わうのだそう。

ずっと口コミで気になっていた中心街から少し離れた「Nourish(ノリッシュ)」ではランチを。

重要文化財に指定されている一軒家を改築して出来たレストランは、友人のダイニングルームに招かれたような自然光が差し込む温かくアットホームな空間。テイクアウトバーも隣接していて、木製の階段を2階へ上がるとPC作業も出来ちゃうようなソファー仕込みのカフェスペースもあります。

ホリスティックなアプローチで、ホールフード、オーガニック、未精製で旬な食材を扱い、グルテンフリーやデイリーフリーのオプションも豊富。エッグベネディクトも、小麦粉の代わりにベイクドスイートポテト、オランデーズソースの代わりにターメリックカシューナッツソースと、とってもクリエイティブでヘルシー!!とにかく美しい食のプレゼンテーションと居心地の良さに完全にノックアウトされました。

もちろん、地元ならではのビューティーリサーチも欠かせません。ビクトリアに唯一のお店を構える「Nezza Naturalsは、父と娘で創業したアロマセラピーを基盤にしたオーガニックナチュラルブランド。フェィス、ボディー、ヘアケア、そして洗剤等のホームプロダクトとかなりの品揃えだけど全てオーガニックで手作りというから驚き!

ベストセラーのオーガニックVitamin C フェイスクリームとオーガニックフットバームを購入し、その晩はもちろんお試しタイム。ユーカリ、ローズマリー、ティートゥリー、メンソールの精油がたっぷり配合されたフットバームは私の頑固でドライなかかとを一晩で良い感じにしっとり保湿してくれました!

仕事の合間の寄り道とも言える時間は、旅を、仕事を、より豊かなものにしてくれます。その土地の空気と人々にコネクトすることで新しいインスピレーションが刺激され、より良い仕事に繋がります。自分が行く先の時間を思いっきり楽しむこと。Workationは誰にでも取り入れられる素敵なワークスタイルではないでしょうか。

 

A circle of life

食欲の秋。芸術の秋。スポーツの秋。と、秋には様々な形容詞が似合いますが、カナダの秋をひと言で例えるなら、やはり「恵みの秋」ではないでしょうか。

2018年はサーモン遡上の「Dominant Run」と呼ばれ、4年に1度の産卵のピークイヤーです。BC州にはサーモンが帰ってくる川が約2000本あると言われ、いつか見てみたいと思いつつも日々の色々に追われてなかなか遠出できず、時は既に11月。。。

もう遅いだろうと思いつつ11月も第2週になったある日、家から車で10分程で最も気軽にサーモンを見学できるCapilano Salmon Hatchery(キャピラノ・サーモンハッチェリー) と呼ばれる人口孵化場にトレイル歩きがてら寄ってみることに。すると驚くことに、ガラス越しではあるけれどSalmon Ladder(魚梯)を懸命に昇るサーモンの姿がまだありました!

ここに帰ってくるサーモン達は孵化場で産まれたサーモンです。サーモンは自分の生まれた川の匂いや体内の磁気コンパスなどの仕組みを巧みに使い、産卵期に必ず故郷に帰ってきます。偶然学習用に斬られたサーモンを運んでいる所に遭遇し見せてもらうと、お腹からギッシリ詰まったオレンジ色の宝石の様な卵が溢れ出し、何かとても神聖で、長い旅路の末にこんな姿になってしまったのかとやるせない思いにもなります。けれど、サーモンを食卓で美味しく頂いている日常とも重なり、いつも当たり前に頂く「食」への感謝の気持ちも一層に湧いてきます。

サーモンは自分の運命がどうなろうと、途中で釣り上げられたり、動物や鳥の餌になったり、故郷が孵化場であれ自然の川床であれ、ただただ産卵をするために命を張って必死に帰って来る。とても神秘的な行動と同時に、自分達の決められたライフサイクルにとても忠実な生き物ではないでしょうか。

サーモンには「海の顔」と「産卵期の顔」があり、遡上をする時になるとギョッとする程顔が別モノに変わります。険しい川上りをするための自然の適応術だけど、そこには「よしっ!!行くぞっっ!!」と最後の命を燃やすサーモンの意気込みが伝わってくる様です。私も沢山の顔に触れる仕事の中で「その人の生き様や内面が顔にでる」と常々感じますが、サーモンの産卵期の顔はそれを象徴している気がします。

孵化場のサーモンを見学出来ただけでも十分満足していたら、その後に奇跡的な巡り合わせが待ていました。孵化場を後にし、川沿いのトレイルを歩きながら下っていた時でした。ふと渡りかけた橋から川を覗いてみると、なんと自分の足元の真下に5匹ほどのサーモンの群がゆらゆらと流れに逆らいながら停滞していました。天然のサーモンの遡上です!少しの間興奮しながら眺めていると、ひときわ体の大きい雌が、砂を撫でる様に何か居心地悪そうに体を横に動かしているのです。体勢をまた整え近くにいた雄が並んだと思ったその瞬間、その周りで泳いだいた他の雌も含めて我先にと言わんばかりにいっせいに放精したのです!!(動画の一番最後のシーン)

サーモンの遡上ばかりでなく産卵の瞬間まで遭遇してしまったことに、もう大興奮!!私には感動的な初めての光景ですが、地元人は一緒に下を見ながら「あ、まだ居るね」とか「バンクーバーへようこそ!」なんて、いつもと変わらぬ表情で通り過ぎて行きます。こんな日常的な散歩道の真ん中で。都市と自然の狭間で。自分の歩く足元の下で。大自然の生命のドラマが繰り広げられていることがあまりにシュールで、でも何ともバンクーバーらしいハプニングなのでした。

よく見ると川の脇にはもう産卵が終わったか、別のサーモンが息絶えて横たわっていました。卵を狙う野鳥がジッと川底を睨んでいます。サーモンの死骸は、鳥や熊の食料となり、残りは土に還り森や川の養分となります。死骸によって肥えた土壌は、動植物だけでなく、孵化した稚魚たち、そして巡り巡って人間にも沢山の恵みを与えてくれます。

小さな支流の一角で、自然のエコシステムの一部を垣間見ることが出来た幸運。カナダの秋は何かとても大きな自然のゆりかごの中に私達がいることをそっと学習させてくれます。それを心の中に意識するだけで、毎日の生活がちょっと変化する気がします。生命の恵みに感謝する、そんな秋がカナダの秋です。