タグ: works

Plant a seed

カナダは移民の国です。移民対策に寛容で「多様性は国の力」と公言するカナダの裏側に、語られて来なかった影のストーリーがあります。過去160年もの間、先住民の子供たちは強制的に寄宿舎に入れさせられ、彼らの文化や権利が迫害を受けた悲しい歴史があります。寄宿舎に送られた子供の数は累計15万人と言われ、何と1996年まで続いたのです。今年の5月、BC州にあった先住民寄宿学校の跡地で215人の子供の遺骨が発見されたニュースが報道された時、カナダ人の誰しもに衝撃が走ったのではないでしょうか。
今年の9月30日に新しく出来た祝日「National Day for Truth and Reconciliation」(真実と和解のための日)は、国や州政府が過去の過ちを認め、問題と向き合うために生まれました。負の歴史と向き合い、新しい和解の歴史のスタートを切る1つの種になって行くのではないでしょうか。

そんな記念すべく祝日の翌日、個人的にも記念すべく1日がやって来ました!去年の4月からローカルに着目した支援活動に取り組んで来たオンラインメディア・VOICE。1年半と125件のインタビューを経て募った基金を、未来の種の為に使う日がやって来たのです。

コロナ禍の苦境の中で、VOICEに賛同し寄付をはじめ様々な形で応援してくれた人達の想いをど紡いで行くのがベストか?答えは、とても早い段階から「環境問題と未来の子供達にの為に役立てよう!」と決まっていました。

VOICEの活動を通して、地元で海洋プラスチック問題に取り組んでいるNPO団体のOcean Ambassadors Canada (オーシャン・アンバサダーズ・カナダ)と出会い、彼らが主宰する小中学生を対象にしたOcean Camp(オーシャン・キャンプ)という課外授業に低所得家庭の子供達を招待する事を目標に活動して来ました。先祖代々からの土地を奪われ、自然と共存する文化を忘れてしまった先住民の現状に敏感なOACから、「在学生の100%が先住民の子供や知的障害児であるX’pey Elemetay Schoolの生徒を招待してはどうだろう?」と提案された時も、迷わず賛成しました。

10月1日のこの日は長く続いた秋雨も止み、久しぶりに太陽の日差しが心地よく感じる穏やかな朝からスタートしました。課外事業の開催場所に選んだKitsilano Beach(キツラノビーチ)は、風もなく湖のような静かな海が広がっていました。「子供たちがパドリングするには最高の日だね」とスタッフと話していると、私達がアレンジしたスクールバスから降りてくる15人の子供たちの賑やかな声が聞こえて来ました。車で15分ほどの場所に学校があるにも関わらず、子供たちのほとんどは、バンクーバーの西側にあるキツラノビーチに来た事がありません。海を経験するのが初めての子もいます。朝起きた時には両親が不在で、登校するのに先生が迎えに行く生徒もいるそうです。そんな子供たちにこの日は思いっきり海を楽しんでもらおう。自然と触れ合ってもらおう。スタンドアップパドルを一緒に楽しもう。そう思うと、私自身の胸も高鳴って前日の夜はなかなか寝付けませんでした。

特に人生初のスタンドアップパドル体験をする子供たちは、もう大騒ぎ!水が冷たいだの、ウェットスーツが着心地悪いだの、色々騒いだ後にいざ海の上に出るとその眼差しは真剣。おっかなびっくりで大人しく漕ぎ始めるも、少し落ち着いて来るとわざと海の中に落ちてはしゃいだり、本当に可愛いらしい光景でした。

海辺での海洋生物の観察もまた微笑ましい。

自分が見つけたカニの赤ちゃんに名前までつけてずっ~と大切に手のひらに持っていた女の子もいました。カニの雄雌の分別方法や海洋プラスチックのライフサイクルなど、OACのスタッフの熱心な授業を子供たちと一緒に私まで楽しく勉強させてもらいました。

VOICEに賛同してくれたウェストバンクーバー のカフェ、Anchor(アンカー)のクッキーとブラウニー、そしてビーガンホットチョコレートを提供してくれたZimt Chocolate(ジムト・チョコレート)の差し入れもあって、子供たちのテンションは終始マックス状態に…!

約4時間の課外授業が終わる頃には、大人の方がぐったり疲れましたが、別れ際に1人1人抱きしめてあげたくなる程の愛おしい時間を過ごさせて貰いました。

「学校のクラスの中での表情と違って、みんな生き生きしていたわ。それもそうよね、先住民の子供たちは本来なら自然と共に生きているんだから。」と、学校の先生と交わした会話がとても印象的でした。そして最後に、昨日の「真実と和解のための日」の為に学校で作ったと言うピンバッチをプレゼントしてくれました。何だか素晴らしい勲章を貰ったようなそんな気持ちになり胸が熱くなりました。

15人の子供たちが、この日のことをどれだけ記憶してくれるだろうか。海洋生物とプラスチック問題の話など、すっかり忘れてしまうのかもしれない。パドリングの楽しい思い出だったり、カニや貝を拾ったことだけでも覚えていてくれたら、それで良い。そんな小さな思い出がいつか大きな変化を起こす1つの種となるかもしれないから。未来に向けて小さな種蒔きをさせて貰えただけでも、私にとっては大きな大きな出来事でした。

Fly High

カナダにいると空を見るのが一段と好きになります。遮るものがない壮大なキャンバスに無限大の可能性を魅せる空の表情は、自分の中に様々な感情と感動を涌き起こしてくれます。

特に冬の澄み切った空気に広がる夕暮れ時。どうしたらこんなに美しいグラデーションが、カラーが創造出来るのだろうと、いつもぼーーっと魅入ってしまうのです。

仕事柄、飛行機に乗ることも多く、上空から眺める空の景色も大好きです。大自然の中にいる時と同様に、上空を飛んでいる自分と空とその下の広がりは、いつも人の存在をとても儚く、そしてちっぽけに感じさせます。

通り過ぎる空の下、どんな人や生活が繰り広げられているのだろう。そして、長く遠く伸びた地平線のそのまた先の空の下。そこには何が待っているのか、まだ見ぬ景色にちょっとしたロマンを抱きます。

インターネット上で指先一つ動かせば簡単に情報が手に入る時代。人はあらゆる情報を「知った」つもりになったり、どこへでも「行った」つもりになりやすいのではないでしょうか。でも、真実はやはり自分の目で見て、手で触れて、風を感じ、匂いを嗅いでこそ、その人に語りかけてくる気がします。

新年早々、仕事で初めて中国に行く機会がありました。中国は常に興味がありいつか行ってみたいと思っていた国です。中国系の友人や実際に行ったことのある人、もちろんネット上でも沢山の情報を入手していたので、ある程度の知識は持っていたつもりでしたが、やはり百聞は一見に如かず!!実際に訪れてみると、想像以上のサプライズ、今までの見解や関心を改めてくれる貴重な機会となりました。そして何より現地に住むローカルの人達と直接触れ合い交流することが、一番の「真」の体験となるのだと思います。

その瞬間その場所に居ないと味わえない感覚は、空が描き出す「瞬間の美しさ」と似ていて、自分にとって必要不可欠な肥やしであり、さらに新しい広い視野へと導いてくれます。

そんな5感で感じる体験を大切に、自分自身を育んで行きたい。まだまだ限りなく存在する未知なる世界へと繋げてくれる美しい空の広がりを見ながら、2020年がスタートしました。

 

Homecoming

新しい年を迎えてすでに25日目。早くも最初の1ヶ月が終わろうとしています。年末年始は仕事で日本に長期滞在していて、第2のホームグラウンドのバンクーバーに約1ヶ月半ぶりに戻ってきました。

久しぶりにバンクーバーの空気を思いっきり吸い込み、カナディアンブルーの空と水、深い緑の針葉樹、そして薄っすら雪化粧をした山々に囲まれると、本当に心が洗われます。美しい場所に住まわせてもらっているなぁ~と、改めて感動する日々の再スタートです。

東京とバンクーバーを行き来していると見える景色も時間のスピードもあまりに違い、まるで時差のように慣れるまで少々時間を要することもあります。コンクリートジャングルの東京は人・モノ・情報が渦巻いていて、日々圧倒されながらも世の中で起こっている最先端を一気に吸収できる場所です。

情報過多になったり、人工的な色が多過ぎてちょっと疲れますが、一歩地方に飛び立つと日本の長閑な美しい自然が広がりホッとする自分がいたり。

バンクーバーは人やモノが少ない分、自然の恵みが沢山あります。家から15分程のトレイルを歩くと、そこは人間がとてもちっぽけな存在で様々な生命と共存していることを教えてくれる場所です。

キツツキがせっせと木を蝕んでいる光景を目にしたときは、「おかえり!」と言われているようで微笑ましくなったと同時に、「この木そろそろ倒れない?」と不安になるほど小さな鳥の威力にびっくりさせられました。カナダの自然はいつも驚きに満ちています。

2019年、カナダはUS NEWS&WORLD REPORTから「世界最高の生活水準」の国でトップに表彰されました。日本は13位。反対に、同じレポートで「世界最高の国」部門では日本がスイスに続いて2位。カナダは3位でした。

どちらの国が良い悪いではなく、東京とバンクーバーと、ある意味正反対の2都市で時間を過ごし仕事出来ることで常に新しい視野とバランスを学んでいます。今までにない面白いスパイスを人生に加えてもらいながら。

互いの場所の良いところを持ち運んでそれを共有していける自分になれるよう、しなやかな心と頭を持って日々楽しみたいです。どこにいても自分らしく、2箇所のホームグラウンドがあることで見えるものを大切にしながら、ボーダレスなクリエイターでありたいです。

今年最初の満月は、SUPER BLOOD WOLF MOONでした。この名の由来は、①満月が地球に接近して大きく見える(SUPER-MOON)、②皆既月食により月が赤く照らされる(BLOOD- MOON)、③1年最初の満月(WOLF-MOON)、が重なることだそうで、私もバンクーバーでタイムリーに観測できました。

次に北米で観測できるのは2037年頃だそうで、その時の自分はどう在るのか想いを馳せながら、今年もカナディアンビューティーを綴って行きたいと思います。

*写真撮るのが遅過ぎて(笑)、SUPER BLOOD WOLF MOONの赤い月光は眼にしっかり焼き付けました!

Being a Global Makeup Artist

9月に入って一気に秋の空気になってしまいました。あっという間に駆け抜けてしまう短い夏だからこそ、思いっきりアクティブに過ごすのがカナダの夏のお約束。

撮影隊も一緒で、夏のロケ撮影は特に盛んで忙しい。「ノースハリウッド」と呼ばれるバンクーバーは、街を歩いていると至る所でロケバスが連なり撮影基地を作っています。私も先月、8日間に渡る某米国企業のクリスマス広告の撮影にメイクとしてお仕事させていただきました。

バンクーバーの住宅地は芝生や緑に囲まれて公園の様に美しく、どの場所もロケ撮影にピッタリ!

毎日違う個性的な豪邸を借りての撮影は、ここでの暮らしがいかに自然と密着しているかを実感させてくれます。窓からは絵画の様な裏庭の針葉樹だったり、山のシルエットがふわっと浮かんでいたり、あるお宅の裏庭には自然の滝のBGMと滝壺があった!!リスや鹿、アライグマが顔を出したりと、まさにワンダーランド!

市内から車で2時間半程のWhistler(ウィッスラー)と言うスキーリゾートに向かう途中のロケ地では、なんとオルカ(シャチ)の大群に遭遇!

他にもゴンドラライドや、トレイル歩きと何ともカナダらしくちょっぴりバケーション気分になってしまう様なとっても楽しい現場でした。

そんな楽しいロケとは裏腹に(笑)、メイクしたモデルの数は総勢80名!!毎日違うモデル10名の顔を朝晩せっせっと絶え間なくメイクアップ!!

日本のメイク現場と大きく違うのは本当に多種多様のスキンカラーと向き合うこと。白人、黒人、東洋系もいれば中近東も、そしてカナダらしくファーストネーション(先住民)の血が混じったモデルさんも。一つの場所にこんなにも背景と文化が異なる人々が暮らしているのだから、メイク道具も全てのスキンカラーと肌質に対応出来るよう、常に準備万端に道具を揃えておきます。多様性を重んじる国なので思想にだって対応しなければいけません。ビーガンやオーガニックコスメの要望をもらう事も驚きません。

そして撮影クルーもかなりマルチ!!今回はアメリカのクライアントですが、プロダクション&アーティストクルーは、トロント、ニューヨーク、LA、メルボルン、ロンドン、、と世界各地から大集合~~!!ふと気がつけば、日本人&アジア出身のクルーは私一人だけ。

「どこ出身?」とはじめましての挨拶の幅が広い広い!あまりにも日々飛び回って働いているある女性クルーの返答は「THE EARTH!!」(地球出身)だった。笑

住む場所、出身地、人種に縛られる事なく、世界が現場!とはなんて素敵な発想だろう。それぞれのプロフェッショナルが集まって一つの作品に一緒に打ち込む作業は、いつも私に素晴らしい充実感と緊張感を与えてくれる。どんな場所でもどんな要望にもMINAと言うメイクが出せる様に応えていきたい。常にグローバルプレイヤーのメイクアップアーティストでありたいと日々精進していきます。