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A circle of life

食欲の秋。芸術の秋。スポーツの秋。と、秋には様々な形容詞が似合いますが、カナダの秋をひと言で例えるなら、やはり「恵みの秋」ではないでしょうか。

2018年はサーモン遡上の「Dominant Run」と呼ばれ、4年に1度の産卵のピークイヤーです。BC州にはサーモンが帰ってくる川が約2000本あると言われ、いつか見てみたいと思いつつも日々の色々に追われてなかなか遠出できず、時は既に11月。。。

もう遅いだろうと思いつつ11月も第2週になったある日、家から車で10分程で最も気軽にサーモンを見学できるCapilano Salmon Hatchery(キャピラノ・サーモンハッチェリー) と呼ばれる人口孵化場にトレイル歩きがてら寄ってみることに。すると驚くことに、ガラス越しではあるけれどSalmon Ladder(魚梯)を懸命に昇るサーモンの姿がまだありました!

ここに帰ってくるサーモン達は孵化場で産まれたサーモンです。サーモンは自分の生まれた川の匂いや体内の磁気コンパスなどの仕組みを巧みに使い、産卵期に必ず故郷に帰ってきます。偶然学習用に斬られたサーモンを運んでいる所に遭遇し見せてもらうと、お腹からギッシリ詰まったオレンジ色の宝石の様な卵が溢れ出し、何かとても神聖で、長い旅路の末にこんな姿になってしまったのかとやるせない思いにもなります。けれど、サーモンを食卓で美味しく頂いている日常とも重なり、いつも当たり前に頂く「食」への感謝の気持ちも一層に湧いてきます。

サーモンは自分の運命がどうなろうと、途中で釣り上げられたり、動物や鳥の餌になったり、故郷が孵化場であれ自然の川床であれ、ただただ産卵をするために命を張って必死に帰って来る。とても神秘的な行動と同時に、自分達の決められたライフサイクルにとても忠実な生き物ではないでしょうか。

サーモンには「海の顔」と「産卵期の顔」があり、遡上をする時になるとギョッとする程顔が別モノに変わります。険しい川上りをするための自然の適応術だけど、そこには「よしっ!!行くぞっっ!!」と最後の命を燃やすサーモンの意気込みが伝わってくる様です。私も沢山の顔に触れる仕事の中で「その人の生き様や内面が顔にでる」と常々感じますが、サーモンの産卵期の顔はそれを象徴している気がします。

孵化場のサーモンを見学出来ただけでも十分満足していたら、その後に奇跡的な巡り合わせが待ていました。孵化場を後にし、川沿いのトレイルを歩きながら下っていた時でした。ふと渡りかけた橋から川を覗いてみると、なんと自分の足元の真下に5匹ほどのサーモンの群がゆらゆらと流れに逆らいながら停滞していました。天然のサーモンの遡上です!少しの間興奮しながら眺めていると、ひときわ体の大きい雌が、砂を撫でる様に何か居心地悪そうに体を横に動かしているのです。体勢をまた整え近くにいた雄が並んだと思ったその瞬間、その周りで泳いだいた他の雌も含めて我先にと言わんばかりにいっせいに放精したのです!!(動画の一番最後のシーン)

サーモンの遡上ばかりでなく産卵の瞬間まで遭遇してしまったことに、もう大興奮!!私には感動的な初めての光景ですが、地元人は一緒に下を見ながら「あ、まだ居るね」とか「バンクーバーへようこそ!」なんて、いつもと変わらぬ表情で通り過ぎて行きます。こんな日常的な散歩道の真ん中で。都市と自然の狭間で。自分の歩く足元の下で。大自然の生命のドラマが繰り広げられていることがあまりにシュールで、でも何ともバンクーバーらしいハプニングなのでした。

よく見ると川の脇にはもう産卵が終わったか、別のサーモンが息絶えて横たわっていました。卵を狙う野鳥がジッと川底を睨んでいます。サーモンの死骸は、鳥や熊の食料となり、残りは土に還り森や川の養分となります。死骸によって肥えた土壌は、動植物だけでなく、孵化した稚魚たち、そして巡り巡って人間にも沢山の恵みを与えてくれます。

小さな支流の一角で、自然のエコシステムの一部を垣間見ることが出来た幸運。カナダの秋は何かとても大きな自然のゆりかごの中に私達がいることをそっと学習させてくれます。それを心の中に意識するだけで、毎日の生活がちょっと変化する気がします。生命の恵みに感謝する、そんな秋がカナダの秋です。

Colourful Explosion

バンクーバーは今、紅葉真っ盛り! 夏の突き抜けるような青と眩しい緑の世界も大好きだけど、秋が描くカラーパレットはそれ以上に好きかもしれません。「芸術は爆発だー!」と言わんばかりに、ビビッドに燃える色彩がバンクーバーの街を鮮やかに染め、弾け散ります。

カナダ東の赤一色のメープル街道とは別に、赤・緑・黄色・茶色と様々なカラーが激しく衝突し合いモザイクの様に色を重ね、それはそれは息を飲むほど美しいグラデーションを作ります。秋晴れの日はコスミックブルーの空を画用紙に、より一層グラフィカルに力強く色を放ってきます。

夕暮れ時のゴールデンアワーには太陽の傾いたオレンジ色の光に照らされ、キラキラ輝く黄金世界に。まるでマッチ棒に火が灯された様な鮮やかなオレンジ・黄色・赤のロマンチックでノスタルジーなコンビネーションプレイ。

芝生の青緑と落ち葉のコントラスト。

雨に濡れた落ち葉も粋。何か一枚の絵画の中に足を踏み入れている感覚に落ち入ります。行く先々で思わず足を止め魅入ってしまう自然のギャラリー。

美しいメープルにも種類が様々あって、手のひらサイズのメープルもあれば顔面サイズの特大クラスも!これがメープルの大木から風に舞いながらはらはらと散っては地面を埋め尽くし、落ち葉の海になって行く。

色を操るメイクアップアーティストとして、自然が放出してくる爆発的なカラーには圧倒的な感動を覚えます。言葉では到底表現できようもない美しいカラープレイ。こんな表現をしたい、こんなカラーを再現してみたいとインスピレーションの嵐に襲われるのです。

自然界にしか創造し得ないビューティーの祭典をただただ脱帽し魅入る秋。美しい色を魅せてくれてありがとう、まだ知らない色を教えてくれてありがとう。ため息が出る程のこの眩ゆい瞬間に身を委ね、季節の変わり目を過ごす時間がとてもとても大好きです。

 

Fall Camping

人はなぜキャンプに行くのでしょう。私がキャンプの楽しさを知ったのはここカナダに来てから。

10月になると冬季閉鎖されるキャンプ場も多い為、9月最後の貴重な晴れの週末を利用し、いざ秋キャンピングへ!バンクーバーから車で東へ1時間程のRolley Lake Provincial Parkへ行って来ました。

カナダではProvincial Park(州立公園)が管理するキャンプ場が数多く点在し、夏のハイシーズンともなれば毎日予約で一杯になります。キャンプ場によっては水洗トイレ、シャワー、ファイアーピットがあったりと施設も充実してますが、デジタルデトックスも兼ねて敢えてWIFIが飛んでいない場所を選んで出掛けます。1$35程で泊まれるキャンプ場がほとんどで、車ごと自分のスポットに停泊でき気軽にキャンピングが楽しめちゃう。気軽と言っても州立公園の中。大自然の中でお隣のキャンパーとも距離感&プライベート感も確保されていて開放感は抜群!9月に入ると予約なしで入れるキャンプ場も多く、早い者勝ちでスポットゲットというのもカナダらしい。

美しい大自然の中に溶け込むように設営されているキャンプ場に向かう途中、海原のように広がる鬱蒼とした針葉樹の中から幾つもの細いキャンプファイアーの煙がもくもく立ち上がっている光景を見る度に、人間の営みはこの地球上で小さな点にすぎないと思いが巡ります。同時に何か愛おしく、微笑んでしまう。

暗くなる前にテントを組み、寝床を整え、火種になりそうな松ぼっくりや小枝を周辺から拾って来て身支度完了。あとは自由気ままにトレイルを歩いたり水辺でゆっくり過ごしたり。ゆらりとした時間の流れを気の向くままに過ごすのは何より贅沢なリラクゼーション。Lake周辺は美しい自然の宝庫。秋らしく食べられそうな?きのこ群も彼方此方に生息していました。

夕日が山に沈んだらファイアーピットでディナーの支度に取り掛かります。コンロやグリルもあるけれどキャンプファイアーでじっくり調理するのがとにかく楽しい。カットした野菜をオリーブオイルで焼くだけで魔法をかけた様に格別な美味しさになるのはなぜだろう?

料理だけでなく、夜の闇を明るく暖かく照らしてくれるのもキャンプファイアー。パチパチと心地よく弾ける薪のBGMとシダーウッドの焦げる香りに包まれながら、人間の文明は火を起こし操ることから始まったんだよね、なんて普段考えない様な事に想いを巡らせながらぼ~っと見入ってしまう。

設営地を少し離れるとそこは一寸先もが漆黒の闇。日常では出会わないちょっと怖さを覚える暗黒世界に包まれる時、月の明るさや頭上に瞬く無数の星達の存在に美しさだけでなく、安堵感を覚えありがたく感じたりもする。その暗い静けさの中で物音がするとこの土地には人間だけでなく他の何か生き物が共存し、私達が「お邪魔してます」というある種の緊張感も芽生えてくる。Bear Area (熊地区)という看板があればなおさら。身の回りの匂いのするものや食やゴミの扱いには十分に気をつけないと大惨事になり兼ねない。

実はキャンピング中で私の一番好きな瞬間は夜明けにやって来る。静かな夜の終わりにいつ気づいたか、どこからともなく1匹の鳥がピピピッと鳴き声をあげるとそれにつられて一斉に森中の鳥が元気にモーニングソングを歌い始める。一体何10種類の鳥が住んでいるのだろうと驚くほど、多種多様な鳴き声が可愛らしいハーモニーを奏でる。この自然のシンフォニーとも言える音色をテントの寝袋の中で初めて聴いた時、「キャンプって素晴らしい!」と大きな感動を覚えた。

キャンピングは都会で不自由なく暮らす日常から抜け出し、ある意味私達をごくシンプルな原点に立ち返らせてくれる。まだほんのビギナーで何も語れはしないけど、そのアナログさと一瞬なれど自然の生態系の中にお邪魔して一緒に「営む」非日常的な体験に究極のキャンプの楽しさがある気がする。来年はどこにテントを張りに行こうと今からワクワク待ち遠しい。