Monthly Archives: 2018年11月

Workation in Victoria

旅するように仕事をする。そんなワークスタイルが最近しっくりくる。「Workation」という言葉に聞き覚えがある人も多いのではないかと思うけど、「Work」と「Vacation」の単語を繋げたアメリカ発の言葉で、「仕事とバケーションを一緒にする」という意味。カナダでは少し遠くへ仕事で行く際、フェリーに乗り、レンタカーに乗りとそれだけでも旅なのですが、そんな時は少し滞在日数に余裕を持ってWorkationを心掛けています。

先日も仕事でBC州の州都・ビクトリアに行って来ました。州都と言ってもバンクーバーからBCフェリーで1時間半のバンクーバー島に位置しています。イギリスの植民地だった歴史が色濃く残る街並みと、穏やかな港を囲むように州議事堂やクラシカルな建造物が並ぶとても可愛らしい街です。

私のWorkationスタイルは、限られた時間の中でとにかく新しい土地の気になっているもの全てを試し、見て、感じること。ローカルのクリエイターやアーティストを突撃訪問することもよくあります。

バンクーバー島は気候が温暖でワイナリーやサイダリーも多く、今回オーガニックアップルサイダーを作っている「Sea Cider(シーサイダー)」ファームをまず最初に訪れました。

2007年からスタートしたファームとは言え、オーナーは6代続く農業を営む由緒ある家系。10エーカー程の果樹園の丘に可愛らしいサイダーハウスがあり、ここでは1年を通して15種類以上ものアップルサイダーが販売され、テイスティングも出来ます。

左から、定番の「King&Spies」→秋限定の「Sassamanash」は地元で採れたクランベリーとアップルのマリアージュ→アップルとラムの大人な香りを放つ「Rumrunner」は数々の賞を受賞しています。オーガニックのサイダーはとても優しい味がして危険なくらいスッキリ!今度は夏に戻ってきたいな~と思わせるパティオはハイシーズンには満席に賑わうのだそう。

ずっと口コミで気になっていた中心街から少し離れた「Nourish(ノリッシュ)」ではランチを。

重要文化財に指定されている一軒家を改築して出来たレストランは、友人のダイニングルームに招かれたような自然光が差し込む温かくアットホームな空間。テイクアウトバーも隣接していて、木製の階段を2階へ上がるとPC作業も出来ちゃうようなソファー仕込みのカフェスペースもあります。

ホリスティックなアプローチで、ホールフード、オーガニック、未精製で旬な食材を扱い、グルテンフリーやデイリーフリーのオプションも豊富。エッグベネディクトも、小麦粉の代わりにベイクドスイートポテト、オランデーズソースの代わりにターメリックカシューナッツソースと、とってもクリエイティブでヘルシー!!とにかく美しい食のプレゼンテーションと居心地の良さに完全にノックアウトされました。

もちろん、地元ならではのビューティーリサーチも欠かせません。ビクトリアに唯一のお店を構える「Nezza Naturalsは、父と娘で創業したアロマセラピーを基盤にしたオーガニックナチュラルブランド。フェィス、ボディー、ヘアケア、そして洗剤等のホームプロダクトとかなりの品揃えだけど全てオーガニックで手作りというから驚き!

ベストセラーのオーガニックVitamin C フェイスクリームとオーガニックフットバームを購入し、その晩はもちろんお試しタイム。ユーカリ、ローズマリー、ティートゥリー、メンソールの精油がたっぷり配合されたフットバームは私の頑固でドライなかかとを一晩で良い感じにしっとり保湿してくれました!

仕事の合間の寄り道とも言える時間は、旅を、仕事を、より豊かなものにしてくれます。その土地の空気と人々にコネクトすることで新しいインスピレーションが刺激され、より良い仕事に繋がります。自分が行く先の時間を思いっきり楽しむこと。Workationは誰にでも取り入れられる素敵なワークスタイルではないでしょうか。

 

A circle of life

食欲の秋。芸術の秋。スポーツの秋。と、秋には様々な形容詞が似合いますが、カナダの秋をひと言で例えるなら、やはり「恵みの秋」ではないでしょうか。

2018年はサーモン遡上の「Dominant Run」と呼ばれ、4年に1度の産卵のピークイヤーです。BC州にはサーモンが帰ってくる川が約2000本あると言われ、いつか見てみたいと思いつつも日々の色々に追われてなかなか遠出できず、時は既に11月。。。

もう遅いだろうと思いつつ11月も第2週になったある日、家から車で10分程で最も気軽にサーモンを見学できるCapilano Salmon Hatchery(キャピラノ・サーモンハッチェリー) と呼ばれる人口孵化場にトレイル歩きがてら寄ってみることに。すると驚くことに、ガラス越しではあるけれどSalmon Ladder(魚梯)を懸命に昇るサーモンの姿がまだありました!

ここに帰ってくるサーモン達は孵化場で産まれたサーモンです。サーモンは自分の生まれた川の匂いや体内の磁気コンパスなどの仕組みを巧みに使い、産卵期に必ず故郷に帰ってきます。偶然学習用に斬られたサーモンを運んでいる所に遭遇し見せてもらうと、お腹からギッシリ詰まったオレンジ色の宝石の様な卵が溢れ出し、何かとても神聖で、長い旅路の末にこんな姿になってしまったのかとやるせない思いにもなります。けれど、サーモンを食卓で美味しく頂いている日常とも重なり、いつも当たり前に頂く「食」への感謝の気持ちも一層に湧いてきます。

サーモンは自分の運命がどうなろうと、途中で釣り上げられたり、動物や鳥の餌になったり、故郷が孵化場であれ自然の川床であれ、ただただ産卵をするために命を張って必死に帰って来る。とても神秘的な行動と同時に、自分達の決められたライフサイクルにとても忠実な生き物ではないでしょうか。

サーモンには「海の顔」と「産卵期の顔」があり、遡上をする時になるとギョッとする程顔が別モノに変わります。険しい川上りをするための自然の適応術だけど、そこには「よしっ!!行くぞっっ!!」と最後の命を燃やすサーモンの意気込みが伝わってくる様です。私も沢山の顔に触れる仕事の中で「その人の生き様や内面が顔にでる」と常々感じますが、サーモンの産卵期の顔はそれを象徴している気がします。

孵化場のサーモンを見学出来ただけでも十分満足していたら、その後に奇跡的な巡り合わせが待ていました。孵化場を後にし、川沿いのトレイルを歩きながら下っていた時でした。ふと渡りかけた橋から川を覗いてみると、なんと自分の足元の真下に5匹ほどのサーモンの群がゆらゆらと流れに逆らいながら停滞していました。天然のサーモンの遡上です!少しの間興奮しながら眺めていると、ひときわ体の大きい雌が、砂を撫でる様に何か居心地悪そうに体を横に動かしているのです。体勢をまた整え近くにいた雄が並んだと思ったその瞬間、その周りで泳いだいた他の雌も含めて我先にと言わんばかりにいっせいに放精したのです!!(動画の一番最後のシーン)

サーモンの遡上ばかりでなく産卵の瞬間まで遭遇してしまったことに、もう大興奮!!私には感動的な初めての光景ですが、地元人は一緒に下を見ながら「あ、まだ居るね」とか「バンクーバーへようこそ!」なんて、いつもと変わらぬ表情で通り過ぎて行きます。こんな日常的な散歩道の真ん中で。都市と自然の狭間で。自分の歩く足元の下で。大自然の生命のドラマが繰り広げられていることがあまりにシュールで、でも何ともバンクーバーらしいハプニングなのでした。

よく見ると川の脇にはもう産卵が終わったか、別のサーモンが息絶えて横たわっていました。卵を狙う野鳥がジッと川底を睨んでいます。サーモンの死骸は、鳥や熊の食料となり、残りは土に還り森や川の養分となります。死骸によって肥えた土壌は、動植物だけでなく、孵化した稚魚たち、そして巡り巡って人間にも沢山の恵みを与えてくれます。

小さな支流の一角で、自然のエコシステムの一部を垣間見ることが出来た幸運。カナダの秋は何かとても大きな自然のゆりかごの中に私達がいることをそっと学習させてくれます。それを心の中に意識するだけで、毎日の生活がちょっと変化する気がします。生命の恵みに感謝する、そんな秋がカナダの秋です。

Sustainable Dining- part 1

「We are what we eat」=「あなたが食べたものがあなた自身である」の言葉を常に意識しながら健康的な食習慣を心掛けていますが、その代名詞とも言えるレストランがここバンクーバーにある。

地消地産と食のサステイナビリティーにとことんこだわり、地球の未来をも見据えた素晴らしいレストラン「Forage」。地元バンクーバーの新鮮で旬な食材を丸ごと楽しめるだけでなく、食について、環境について、考えさせてくれる貴重な場所でもある。

「スローライフ」、「ソーシャル」、「ローカル」などをキーテーマに掲げる日本のソーシャル・エコマガジン「ソトコト」12月号にてForageを特集させて頂きました。その記事(前編)をJOURNALでもご紹介したいと思います。

『バンクーバーの中心、観光客で最も賑わうロブソン通りにあるリステル・ホテル内に6年前にオープンしたレストラン、「Forage(フォレッジ)」。ここは観光客だけでなく地元人からこよなく愛され、サステイナビリティーと地消地産のコンセプトで自然の滋味あふれるバンクーバー料理を提供してくれる。

フォレッジとは「自分で採取したものを食べる」と言う意味。その言葉通りシェフのウェルバート・チョイが自ら仕入れる食材へのこだわりが旬毎頻繁に変わるメニューにしっかり反映されている。大地の恵み(肉)、海の恵み(魚)、水と太陽の恵み(野菜)と題するメニューリストにはバンクーバーの食のロードマップが凝縮されている。オーガニック認証の有無に拘らず、地球に優しく持続可能な農法を営む農家と採食家(Forager)の収穫、そしてバンクーバー水族館発足の「オーシャンワイズ」という生態系に配慮した漁法をもとに漁獲された、生命溢れる地元各地から集まった食材は美しい料理となって形を変える。

二酸化炭素排出量が多い牛肉は使わず、代わりに野生に近い状態で獲れる脂肪分も低く健康的なバイソン肉を扱う。キッチンでは一頭買いした豚からハムやプロシュート作りも行い、骨はスープにするなど時間も手間も掛かるが食材を無駄なく頂くホールフードの意識も高い。果物も輸入物は一切扱わず、地元で収穫される新鮮で旬なものからデザートが作られる。ワインもビールも全て地元産。近年では地元の酒造所とコラボレーションしたオリジナルウィスキーも作っている。

生産者からキッチンへ、キッチンからお客様へと繋ぐエクスペディター(Expediter)と呼ばれる担当者が一品一品丁寧に生産者の顔が見える料理と食の深い知識をテーブルに提供し、ダイニング時間を一層盛り上げてくれる。そんなこだわりは内装にも……』

後編は「ソトコト」1月号へと続きます。Forageのコミュニティー活動や環境への取り組み、シェフ・ウェルバートとの食についての会話も綴らせて頂きます。

お楽しみに!

写真:佐藤裕信